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老化現象としての便秘の漢方治療

2008-05-30 15:45:18 | アンチエイジング

便秘の治療は便を出せば済むものではありません。腸管の機能を回復させるのが真の目的なのです。

老人に多い便秘は、老化現象の表れであると漢方医学は考えます。昔から老化は腎虚といいます。腎虚には大別して、腎陰虚、腎陽虚の2種類がありますが、老化は若いころに比較して、腎陰も腎陽も少なくなってくる陰陽両虚の状態です。腎陽は身体のすべての陽気の元であり、同じく腎陰は身体のすべての陰の元と漢方では考えます。腎陽がより少ない腎陽虚の場合には、体が冷えてきます。特に腰周り、下肢の冷えが強くなってきます。

漢方では「腎は水を主り、また二便(大小便)を司る」と考えます。

老化と共に、腎の陽気が衰えて来ると「腎陽虚衰」といい、便秘 冷え性 浮腫などの症状が出現します。このような便秘を漢方では「冷秘(れいひ)」と言います。

冷秘は老化だけに起こるわけではありません。日常生活で冷たいものを過食したり、気温の低い冬場などでも肌を過剰に露出し、薄着をする生活をし続けると陽気を損傷し冷秘を起こしやすくなります。

老人の冷秘は腎陽そのものが虚衰した真陽不足の状態です。大腸そのものが冷えて、陰寒が内結し、大便を降ろすことが出来なくなり便秘となります。

日本ではエキス剤として市販されていませんが、腎虚便秘にとても効果のある中国の処方がありますのでご紹介します。

済川煎(さいせんせん)

温腎益精 潤腸通便の作用をもつ名方です。お年を召された方の便秘に是非とも服用していただきたい煎じ薬です。組成は以下のようになります。温薬は赤、涼薬はブルー 平薬はグリーンで表記しました。

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肉従蓉(にくじゅよう)温腎、通便に作用します。帰経は腎、大腸です。

腎陽を補い、腎陽虚によるED、早漏、不妊などを改善する作用に優れます。腸を潤す潤腸の働きがあり、老人や虚弱者などの腎虚、腸燥便秘に効果があります。

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当帰(とうき)養血 通便に作用し、肉従蓉と当帰の2薬は腸を暖め、潤すことによって通便させるという意味で温潤通便の作用があるといいます。済川煎の生薬の配合の中でもっとも量が多いものが肉従蓉と当帰です。

当帰は甘 辛 温で肝 心 脾の3経に入ります。補血 養血の要薬と呼ばれます。有名な養血剤である四物湯は熟地黄 川芎 白芍 当帰の4薬からなります。当帰には活血作用があり、淤血による痛みを除く作用があります。臨床的には打撲による痛み、淤血による生理痛などに多用されます。そもそも、婦人科領域でもっとも多く使用される薬剤のひとつで、補血活血調経といい、血虚、淤血による生理不順の要薬です。漢方薬の中の補薬は熟地黄、亀板などのように、長期服用すると胃腸がもたれるなどの症状が出ることが多く、これを中国語で滋?といいますが、「動かないで停滞している」性質が滋?を起こすとされ「補中不動」といい、補薬の一般的な性質としていますが、当帰は不滋?であるために、「補中有動」であるといい、「気薬」が有動であることから、「行中有動」と一般化されている言い方に習い、当帰は「補薬の気薬」とも称されます。

当帰の副作用ともいえるものは便通が良くなることです。腸を潤す潤腸作用があるからです。この通便作用はありがたい副作用とも言えます。

中国漢方病院では腎陽虚の便秘には補腎剤で潤腸作用のある肉従蓉を、血虚に便秘を合併した場合には当帰を配合することが当たり前のように行われています。一般に、当帰の根塊の尾のほうを当帰尾と呼び、活血作用に優れているといわれています。中央部分は当帰身といい、養血作用に優れます。養血活血目的で当帰を使用する場合は全当帰と処方箋に書きます。

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(きこく)胃腸の気分を良くし、腸の気を下ろすという意味で寛腸下気の作用があるといわれます。中国語の寛とは、調子を整えるとか、気分を良くさせるという意味で、日本語の整腸剤の整に相当するものと考えてもいいようです。ダイダイ、イチャンレモンの成熟果実を乾燥させて使用します。枳実(成熟果実でなく幼果)に比べ作用が穏やかです。

中国の家庭では、すっぽんなどの料理を楽しんだ後に、ダイダイを食べる習慣があります。すっぽんは究極の滋陰薬で大寒の性質を持ちます。ダイダイを食べることは、温薬で大寒による冷えすぎを緩和させる目的と、胃腸のもたれを改善させる2つの目的があります。中国の家庭では、このような伝統医学の考え方が、極く自然に生活の中に取り入られています。

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牛膝(ごしつ)補肝腎に働き、血を下へ下降させる引血下降の働きがあり、下に下ろされた血は腸を濡養する働きがあります。

帰経は 肝 腎で、 いくつかの効能がありますが補陰剤の一面もあるととらえておけばいいようです。中国の伝統的な補陰剤である左帰丸の中には、枸杞子、亀板、牛膝の3薬が補陰薬として配合されています。

河南省産の准牛膝 四川省産の川牛膝が有名です。写真は准牛膝です。

川牛膝は活血作用に優れ、准牛膝は風湿、補肝腎に優れているという産地の特徴があります。手触りは准牛膝の方がやわらかく、弾力性を感じます。色も准牛膝は川牛膝に比べ明るい印象があり、いかにも「補肝腎」の「補薬」という感じを与えます。

効能:①涼血祛瘀 ②補肝腎 強筋骨 ③利水通淋 ④引血(火)下行

涼血淤作用とは、淤血を除き炎症を鎮める作用です。子宮の収縮作用も報告されています。中国民間では乳香、没薬と共に打撲捻挫の症状改善に用いられています。

補肝腎 強筋骨作用

血と精を補い、体質を丈夫にすることです。中国の病院では

腎虚による腰痛に牛膝と杜仲の組み合わせが良く処方されています。

利水通淋

わかりやすく言えば、膀胱炎、尿道炎を改善する作用です。三妙丸や四妙丸が古来から有名な方剤です。

三妙丸は黄柏 蒼朮 牛膝の3薬からなる方剤です。(四妙丸は三妙丸に苡仁を加味したものです)

引火下行、あるいは引血下行という牛膝の作用は、体の上部に異常な反応として上昇した熱や血を体の下部に導き降ろす作用のことです。重症高血圧によく用いられる中国の鎮肝息風湯では牛膝が君薬の重要な働きをします。

また、諸薬を下へ導くという引経薬としての牛膝の働きも見逃せないところです。

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澤瀉(たくしゃ)腎虚にともなう体内の老廃物質を体外に排泄する泄腎濁の作用があります。帰経は腎 膀胱です。最近の中国の研究では事務室総合症という日本での生活習慣病に相当する高血圧症、高脂血症、糖尿病にも効果があるとされます。

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升麻(しょうま)升清陽、あるいは昇挙陽気といい、気を上に挙げる作用があります。枳壳(きこく)の下気作用と升麻(しょうま)の升陽作用は、中国漢方でいう、対薬の関係になります。

昇挙陽気の作用は柴胡(さいこ)と類似していますが、特に肝陽気が低下している場合は柴胡を使用し、肝陽気が関係してない場合は升麻を使うと中国漢方の教えがあります。内臓下垂、脱肛などの昇陽挙陥(中気下陥に対して)の要薬(かなめの薬)とされます。

なぜ、便秘に対して升麻を使用するのかというと、たとえて言えば、瓶につめた米を瓶をさかさまにして出そうとする場合、ただ押し詰めて出すより、上下に振って出す方が米が出やすいという考え方で、気機の下降と上昇の対薬を用いるのです。

面白いアイデアですね。

確かに臨床的には升麻を配合したほうが通便効果に優れているようです。

アンチエイジング漢方治療のお問い合わせは下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 

漢方専門医院 岡本康仁堂クリニック


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