山茱萸酒(サンシュユ酒)
老化現象が見えはじめたら服用開始。昔は愛妾を多くかかえた富豪の愛用酒。
少し酸味のある薬用酒である。仕込んでから約1月で賞味することができる。杜仲酒や桂皮酒との相性もいい。相性で思い出すのが愛妾である。同じ読みである。中国では多くの愛妾を持つことが男の甲斐性のひとつであり、そうした富豪も多かった。しかし、金銭がいくらあっても、老化、老衰は人の世の常である。古今の書物や医者の知恵を借り、作り出したのが山茱萸(サンシュユ)酒である。
山茱萸は秋珊瑚と呼ばれるくらい美しい赤い実である。
材料
山茱萸50g 人参 当帰 枸杞子 黄耆 白朮 各20~30g 干地黄を入れても入れなくてもいい。氷砂糖200g 焼酎1リットル
作成方法
材料を絹の袋に入れ、焼酎1リットルに氷砂糖と一緒に仕込む。
1月で十分に薬効が酒に移行する。
山茱萸とは?
山茱萸は固精縮尿止帯薬に分類され、収斂薬に属する。収斂薬の中ではもっとも高価である。別名を中国では棗皮(ザオピー)という。種を除いた成熟果肉の部分であるから、英語ではFlesh of matured fruit of Cornus officinalis SIEB.et ZUCCと表現されている。古くは「神農本草経」に「中品」として記載されている。
固精縮尿の作用とは、精液の漏れる遺精、頻尿、尿失禁などを改善する作用のことである。一般的には菟絲子と配合して用いられる。止帯とはご婦人のオリモノを止める作用のことである。山茱萸には斂汗作用もあり異常な発汗を抑える効果もある。老化を腎虚と考えると、山茱萸は補腎陽、補腎陰の両方の作用があるので貴重な薬剤である。
六味地黄丸
山茱萸が配合されている中成薬でもっとも有名なものが補陰の基礎方剤の六味地黄丸である。温薬を赤、寒涼薬をブルー、平薬をグリーンで表記すると、六味地黄丸の組成と効能は、
熟地黄君薬:滋陰補腎、山茱萸(萸肉)補肝腎、山薬 補脾 以上が補薬である。
澤瀉:泄腎濁、防滋?、牡丹皮:涼血、防温燥、茯苓:利水滲湿助健脾 以上が瀉薬となる。したがって、中国の方剤学では「三補三瀉」の方剤といわれている。
難しい漢方用語で恐縮だが、適当な日本語が見つからない。問題の山茱萸は温性であるので、直接の補陰には向かないが、牡丹皮の涼性が対薬となっている。熟地黄の長期連用にありがちな胃腸のもたれや食欲低下を澤瀉が防いでくれる。これが防滋?(ジニ)作用である。六味地黄丸はバランスのとれた補陰方剤である。より補陰効果を強くしたものが左気丸である。左帰丸は胃に対して障害作用(滋?ジニ)があるので、胃モタレや食欲低下などの副作用が出現したら六味地黄丸に変えるとよい。ちなみに、中国では陰陽を左右で言えば、右が陰で左が陽であるが、左帰丸とは補陽の方剤ではなく補陰の方剤であり、「左」の逆の意味で用いられているので注意すべきだ。中国に旅行に言った際には、右と左には注意して薬を買うべきである。左は補陰、右は補陽である。冷えが強い場合には右帰丸、肌の乾燥や、皮膚の痒みなどには左帰丸と覚えるのがいい。
さて
左帰丸の特徴は鹿角の強い補陽(左)効果をアクセントとして補陰剤に配合し、善補陰者 必干陽中求陰、即陰得陽昇 而源泉不竭「善く補陰する者 必ず陰を求める中に陽を用い、即ち陰、陽の昇るを得れば源泉尽きず」の中医学理論に基づき、補陰効果を強めていることにある。禅問答のようだが、感覚で捉えられるかの問題である。中医学を勉強する欧米人にとっては「quite difficult to perceive」「感覚で理解しがたい」のであるが、日本人には比較的「easy to understand」「理解しやすい」のである。要は「隠し味」のごときものであり、左帰丸の「左」は鹿角の補陽の「左」の意味なのである。
参考までに六味地黄丸の加減方剤をあげておく。
知柏地黄丸:
六味地黄丸+知母、黄柏:陰虚火旺に対する滋陰降火 更年期障害などに。
杞菊地黄丸:六味地黄丸+枸杞子 菊花
清肝明目:私の愛用の薬である。パソコンで目が疲れてたまらないのだ。
麦味地黄丸:六味地黄丸+麦門冬、五味子(補肺陰)
腎虚喘咳に対して用いる。
石斛夜光丸:目の老化に良い
耳聾左慈丸:耳に老化に良い
山茱萸の現代医学的研究
男子不妊症の精子運動率を増加させるという報告がある。動物実験であるが、インスリンの分泌を促し、糖尿病に効果があるらしい。ヒトでの臨床データの蓄積はまだ無い。活性酸素を抑制、あるいは中和する作用が動物実験で報告されている。ヒトでの実験の報告はまだ無いようだ。肝細胞が破壊されと血中に増加するGOT,GPTの降下作用があるらしいが、ヒトでの系統的な治療効果の成績はまだ無い。抗アレルギー作用が報告されているが、その作用メカニズムに関しての精密な報告は無い。
老化、衰弱死は必ず訪れるものである。健やかに老いて、天寿を全うするために「山茱萸酒」を仕込んではいかがであろうか?
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