前回朱川湊人が結婚後、専業主夫時代があった、というつながりで鈴木光司。
樹海とどこかでつながった6つの作品のオムニバス。
ということに最初気付かず、「リング」や「らせん」の読者としては、この路線で続くホラーかぁ、
これはこれでコワイかも、と思っていたら違ったのでちょっと拍子抜け。
パーソナルな「死」であっても、植物、動物、海、陸、地球、宇宙・・・というスケールに
近づけて考えることもできる、と教えてもらった気がした。
各章のあらすじ一行と、私がつけたテーマ。
原田正吾 樹海で自殺した男。意識だけが残った状態で世界を見つめ続けている。
「肉体が死ぬということを想像してみる」
井口輝子 樹海で自殺をとどまる。虐待して別れた息子は原田の父を介護施設で殺した事実を知ると同時に孫の存在を知る。
「生きていくために、不幸を作り出すことをやめられない人間も存在する」
細田剛 瀕死の状態のまま樹海に捨てられた男。
「何も分からぬまま死ぬこともあれば、何も分からぬままその死に加担していることもある」
篠沢遠子 隠し子が樹海で死にきれず別人となって生きていることを知る。
「みんな死ぬのだから、どんな死に方も大差ない。狭められていく世界だからこそ何をすべきか
見えてくることがある」
矢掛弘 遠子の叔父として遠子の隠し子を助けたい気持ちが結果的に幸信につながる。
「幸運だと思うときは根の部分で働く力あってのこと」
君子 植物になりたかった和之が死に、その死体を置いたまま君子は生きる選択をする。
「いい役、損な役、どちらも存在するのは仕方ないことだ、あきらめろ」