山本文緒へのインタビューの中で、好きな作品として選ばれていた、というつながり。
けっこう苦労して読んだが、苦労の甲斐がある、読み応えのある作品となった。
もちょっと年を取ってからもう一度読みたい、と思える作品。
マシアスの職は大統領なのだが、この作家、大統領だったことがあるんじゃないかと
思うくらい、その政治的な思考や悩みが細部まで描かれている。
その描写が若干くどくて読みづらさを感じたけれど、グッと心に深く響く文がちりばめられて
いる楽しさがあり、南国のひざしや風やババナの葉が見えてくるような文が魅力。
物語は題名そのまま、一人の大統領が昔の罪を暴かれることで失脚するまで、であり、
エメリアナという女性がキーマン。
彼女の描写を読むとどうしてもERに出ていたジェニーに重なる。
そして失踪した「バス」。
ファンタジックな要素として関わっているが、もしこのエピソードがなかったら、
物語はさびしくなるに違いない。
そしてケッチとヨールの最後の語らい。
「ぼくたちがたまたまアンジェリーナの館に暮らしてその幸運を持ち合わせて
いたので、それで物語の方が寄ってきて、ぼくたちを利用した。物語って
いつでも機会をうかがっているものだから」