前回作品は、舞台の西側の海、が色濃く、
今回は、北の海、というつながり。
辻さんが北海道に居住歴があることを知っていたので、
小説を書くときには、きっと自分のなじみの海が
舞台になるはず、と想像して選んだ。
その目的はばっちり果たされ、
函館の海の風景とともに
北の大地の厳しさと、
刑務所という無機質な緊張感を
満喫できた。
とても読みやすく、想像しやすい
情景描写が心地いい。
主人公の斉藤よりも
受刑者花井に焦点を当てることで
また別の見方ができるような
奥深さがある作品。