やむやむやみー

やみーのやむやむな毎日

つながり読書 7 「風林火山」 井上靖

2012-04-29 22:36:26 | ヨムヨム ネタバレチュウイ!!!
1994年文藝春秋の1000号創刊にあたり、同誌への執筆回数を
番付形式で紹介された際、東横綱清張に対し、西横綱は井上靖と発表された
とのこと。そのつながりで今回は井上靖。

日本史にあまり興味なく、よって歴史小説読もあまり好んで選ぶことはない私。

井上靖といえば、読書感想文での課題で読んだ「しろばんば」でさえあまり記憶に
定着しておらず・・・今回は若干の不安があったのだが、途中何度か失速しながらも、
うわっと一気に読みたくなるシーンが織り込まれているおかげで、思った以上に
のめりこめた。

山本勘助、という人物については実在したか否か、という根本的なところに
諸説がある、というミステリアスさこそ、小説をおもしろくする条件なのかも
しれない。

私には実在したかどうかなどはどうでもよいことで、ただ読み進めるほど
勘助という人物に愛着が湧くのが楽しかった。
由布姫が亡くなったときに感情をあらわにした勘助、そして由布姫が残した
10歳の勝頼に自分の初陣を見るまで死ぬな、と言われたときの勘助、
「主君の女遊びをやめさせ作戦」に悩む勘助、高坂昌信と出会い武田の
弱点をつかれ初めて老いを感じた勘助・・・

それにしても交通手段の乏しい時代に、あれだけの距離をよく行ったり来たり、
できたものだなあ、と感心する。今でも馬頭観音や旅の途中馬を休ませたであろう
場所の名残があるのは、この馬大活躍!の時代あってこそなのだ。