The 34th America’s Cup 最新情報-01

2010年10月06日 | 風の旅人日乗
もう最新情報とは言えなくなってしまったけれど、先週の金曜日の10月1日、第33回America's Cup挑戦を目論んで結成されたイギリスのレーシング・チーム、Team Originが、第34回America's Cup挑戦を断念する、と発表した。


[TeamOrigin photo]

Team Originのチームオーナーであるキース・ミルズ氏は挑戦断念を発表した翌日、様々な側面から第34回アメリカズカップ議定書とAC72クラスのクラスルールを検討した結果だ、とインタビューに答えており、その中で、レースフォーマットへの懸念が主たる理由だと述べている。

数ヶ月前にアリンギから移籍したばかりのCEOのグラント・シマー氏にとってはミルズ氏の判断は突然のことで、少なからずのショックを受けているように見える。それというのも、ミルズ氏の発表の前日まで、シマー氏はパリで第34回America's Cupレースマネージメント組織のメンバーと、前向きなミーティングを持っていたという。
時間がない中で非常に大変なのは事実だとしながらも、艇の開発やクルーのトレーニングプログラムの構築をうまくやる自信を持っていたとも語っている。


[TeamOrigin Photo]

私には、ミルズ氏の今回の決断に最も大きく関わっているのは、当初2014年になると認識されていた開催年が2013年に早まったことではないかと、思われてならない。

ミルズ氏は、オリンピック招致活動の段階から、中心人物の一人としてロンドンオリンピックに深く関わっている。運営関係者として再来年2012年のオリンピック開催年は超多忙になるはずだ。

第34回America's Cupがその数ヵ月後に開催ということになれば、ミルズ氏はオリンピック運営とAmerica's Cup挑戦チーム運営の二つを同時に掛け持ちでこなさなければいけないことになる。現実的には、それは不可能だろう。

このことに加えて、チーム・オリジンにはロンドンオリンピックでメダルが期待されているイギリス人セーラーが3人も所属している。スキッパーのベン・エインズリー(アトランタで銀、シドニー、アテネ、北京で、3連続金メダル)、タクティシャンのイアン・パーシー(シドニーと北京で金メダル)、ストラテジストのアンドリュー・シンプソン(北京で金メダル)の3人だ。

もし2013年のAmerica's Cupにチーム・オリジンが挑戦するとなると、この3人は、ロンドンオリンピックを諦めざるを得なくなる。
オリンピックキャンペーンのために彼らがチームを去るという選択肢もあるが、ベン・エインズリーはイギリス人のプライドを示すチーム・オリジンの顔でもあり、少なくとも彼にはチームを去るという選択肢はない。


[TeamOrigin Photo]

一つでも多くのメダルが欲しいイギリスのオリンピック委員会からミルズ氏にプレッシャーがかかったことは想像に難くないし、ミルズ氏自身にも、念願叶ったロンドンオリンピックで彼らにメダルを狙わせたいという強い気持ちがあることだろう。

チーム・ニュージーランドのスキッパー、ディーン・バーカーも、今回発表された第34回America's Cup議定書の内容で最も驚いたことは、制式艇がカタマランになったことではなく、開催年が早まったことだ、と述べている。
防衛側はキャンペーンコストを少しでも抑えるために開催年を早めたと説明しているが、そのことによって急ピッチで艇の開発をしなければならないなど、逆にキャンペーンコストを引き上げる恐れがあるとの指摘もある。
開催地もまだ発表されていない現在、開催年が今後変更されることはまったくあり得ないことではないように思う。