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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

神仏と萌えキャラ

2009-12-28 23:24:52 | 思索
神仏の像とは一体何だ?

ただの銅板や粘土の塊である像を、人はなぜ崇めたり祈ったりするのか。それらはすべて人の造りしもの。この問いに対し、ある信仰者はこう答えるだろう。神仏の御霊がその像に宿っているのだと。しかしまた、ある信者はこうも答えるだろう。無意味、そこに神仏は居ない。偶像崇拝についての論争は宗教界において延々と続けられている。至極もっともなことだ。

そもそも神仏は観念である。古の画家や彫刻家はその観念を人に似せて形にした。素朴な人たちにとっては、観念を観念として理解するより、(見本となる)形として理解する方がずっとわかりやすいからだ。布教を目的とする時、神像や仏像は大いなる効果を発揮したことだろう。しかしもし今、現代の画家が神仏の像を「萌えキャラ」として描いたとしたら、人々はそれを神体として受け入れるだろうか。

少し前の話だが、「お寺が萌えキャラで大ブレーク」という記事が夕刊フジに掲載された。

「了法寺は先月、同寺の案内看板などに、アキバオタクに人気の歌手兼漫画家、とろ美さんが描くキャラクターを採用。これがネットの掲示板などを通じ一気に広まり、記念撮影目的のオタクファンが連日訪れるようになった。とはいえ、場所柄ワイワイはしゃぎまわることもなく、一様に礼儀正しくお参りして引き上げているという。」
(2009年8月1日17時00分)

写真に見るように、住職は袈裟をまとい鏡のように光沢のある頭の手入れにも余念がない。しかるに順路の案内人は萌えキャラ。数千年に渡り引き継がれた頭と、瞬間に現れたキャラ。別にこのことの是非どうこうをいうわけではない。しかし多くの人が驚くだろうことも疑いない。「らしい」とか「ふさわしい」とか「普遍性」という言葉にどういう役割があるのだろう。

関連記事:消滅する文化 2009-05-08
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定電圧電源を作ろう⑤温度特性

2009-12-27 08:57:53 | 電子回路
「定電圧電源を作ろう」のエピローグ

作動増幅回路の大きな利点の一つに温度ドリフト(変動)が小さいということがあります。2SC1815の温度特性を見てみましょう。真ん中がTa(周囲温度)25℃左が100℃、右が-25℃です。通常の使用条件を考えるとほんのわずかですがVbeは温度によって変動するのです。

右の回路でのVbeの変動はそのままリファレンスの変動となります。下の回路ではQR1とQR2を特性のあったペアにしておくとVbeの変動は両者共に均一の大きさとなるのでリファレンスが変動することはありませんね。

さてさて皆さん大変お疲れ様でした。定電圧電源回路については差動増幅回路のエミッタ抵抗やコレクタ抵抗を定電流素子に変えて応答速度を高速化するとか、まだまだ色々あるのですが今回はここまでにしておきましょう。何はともあれこの定電圧制御回路はアナログ回路のエッセンスをほとんど含んでおり、この回路の理解はアナログ回路の90%を超える理解と言っても過言ではありません。

関連記事:
定電圧電源を作ろう④差動回路 2009-12-25
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夏休みの宿題 2009-08-10
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定電圧電源を作ろう④差動回路

2009-12-25 22:28:38 | 電子回路
「高性能定電圧電源の定番回路」

では先述の定電圧回路(制御)を一部修正してこの節を終えることにしましょう。まあ大したことではないのですが、先の定電圧回路はQRのIcがIeとしてツェナダイオードに流れ込みます。ツェナダイオードの電流変化はわずかですがツェナ電圧を変動させましたね。基準電圧が変動するのは定電圧回路にとって致命的です(と目くじら立てるほど大きな変動ではないですけどね。)よってツェナ出力にもエミッタフォロワを付けてツェナ電圧をできるだけ安定化させようということです。

はい、図の回路が定電圧電源回路のとりあえずの最終形態です。定番中の定番回路ですからこれもしっかりと目に焼き付けておいてくださいね。それから皆さんに一つだけ設問です。リファレンスの電圧は何ボルトですか?さてこの定番回路はQR1を追加しただけですね。このQR1については、先ほどツェナダイオードにエミッタフォロワを付けるとさらりと言ってのけました。しかしこの説明が第一義的に正しいのかそうでないのか実は筆者も「?」です。というのもQR1とQR2をこのように構成したものを「差動増幅回路」といってなかなか意味深で巧妙な回路なのです。この差動増幅回路に注目してみましょう。

例えばリファレンスの電圧が上がるとIc2が増えてその分Ieも増えてリファレンス電圧が変動してしまうのではないかという気がしますね。ところがそうはならないのです。Ieが増えればQR1、QR2のエミッタ電圧が上がりQR1のVbeが下がってIc1が減少し、その分Ieが減少して結果的にIeはほぼ一定値を保つのです。つまりIe=Ic1+Ic2で、Ieは一定値であり、Ic2が増加するとその分Ic1が減少し、Ic2が減少するとその分Ic1が増加するという動作をするのです。よってエミッタ電圧はほとんど変動しません。

ツェナ電圧=リファレンス=5.1Vの時Ic1=Ic2とすると、リファレンス電圧+αはIc2+α、Ic1-αとなり、QR1のVbとQR2のVbの差分αがQR2のVcとして出力されます。これが差動増幅回路といわれる所以です。

関連記事:
定電圧電源を作ろう⑤温度特性 2009-12-27
定電圧電源を作ろう③制御 2009-12-21
定電圧電源を作ろう①ツェナ 2009-12-14

差動増幅回路の妙② 入出力とゲイン
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定電圧電源を作ろう③制御

2009-12-21 21:13:33 | 電子回路
ツェナダイオードのみの回路では最大40mAの負荷電流でしたが、エミッタフォロワを追加することにより1A以上を取り出せるようになりました。しかしレギュレーションを厳密に求めるなら、これもあまり良い回路ではありません。上図は2SC5000のIc-Vbe特性です。

Tc (周囲温度)=25℃のときの特性を見ます。Vbe=0.6V辺りからIcが立ち上り、少し見にくいですが、Ic=1A辺りではVbe=0.7Vくらいです。つまり1A取り出せばVbeは0.1V変動し、これはそのままエミッタフォロワの変動となります。これがこの回路のレギュレーションの限界です。

とはいえ1Aの電流負荷でわずか0.1Vの変動ですからツェナのみに比べると大した性能向上です。0.1Vの変動くらいええやないか、という向きもおられましょうが、人は常に理想を追い実現させようと努めるものです。そこで、電圧がずれたらずれた分修正して元に戻そうという「制御」の概念がここに初めて登場します。

下図の定電圧回路こそアナログ制御の原点です。みなさんしっかりと目に焼き付けておいてくださいよ。これが世に言うフィードバック制御です。フィードバック制御はこの回路から始まったのです。

いきなり回路が難しくなったように思えますか?さきほどのエミッタフォロワ回路にQR一個と3個の抵抗を追加しただけですが、確かに接続は少し込み入ってる感じがしますね。でも順を追って考えていけば難なく理解できますのでご安心あれ。47μFの電解コンデンサは理屈上必要ないのですが、実際は発振止めとして必ず入れます。すでに何度もお話ししていますがこの回路はフィードバック制御によって「正確な定電圧」を得ようとするものです。実はフィードバック制御には発振がつき物なのです。発振のメカニズムは少々難しいのですが追々説明していきます。

*「正確な定電圧」は「出力インピーダンスをできるだけ小さく」とした方が厳密です。

さて回路の動作解析に入りましょう。追加したトランジスタQRが制御の中心的役割をしています。QRがIcを増やすと10kΩの電圧降下でVcが下がり、エミッタフォロワのVbが下がって出力電圧が下がります。逆にQRがIcを減らすと10kΩの電圧降下が小さくなりVcが上がり、エミッタフォロワのVbが上がって出力電圧が上がります。ね、QRがエミッタフォロワを制御してるって感じでしょ。あとは出力電圧が常時目的の電圧を保つように、QRが自動的に動いてくれればいいのです。

QRがそのように働くこの回路のヤマ場を説明しましょう。QRのVeはツェナ電圧の5.1Vです。ということはQRのVbは0.7Vの電圧降下を足して5.8Vです。QRのVbは出力電圧VOUTを2.2kΩと3.3kΩで分圧した値ですから、Vb={3.3k/(2.2k+3.3k) }×Vout。Vb=5.8VですからVout=9.67Vで計算が合います。もしVoutが9.67V以上になればQRのVbは5.8Vよりも大きくなりIcが増加しエミッタフォロワのVbが低下しVoutは下がります。もしVoutが9.67V以下になればQRのVbは5.8Vよりも小さくなりIcが減少しエミッタフォロワのVbが増加しVoutは上がります。ということはつまり、Vout=9.67Vで回路が安定し、Voutは常に9.67Vを保つということです。

はい、QRがVoutを常に9.67Vに保つように自動制御しているのが見えてきましたか?QRは目(センサ)と腕(アクチュエータ)を持っていて、この目と腕をくまなく動かして制御しているのです。QRのベースが目でVbが5.8Vであることを常に監視しています。そして、もしVbが5.8V以外の値になれば腕であるコレクタを引っ張ったり押し上げたりしてVbを5.8Vに戻すのです。結果としてVout=9.67Vとなるわけですね。

ここで皆さんは1つ重要なことに既にお気づきですね。そう、QRのVb=5.8Vは常に変わらないのですから、2.2kΩと3.3kΩの分圧比を変えてやればVoutは自由な電圧値に設定できるのです。よってQRのベースは出力に対するリファレンス(基準)であると言います。実は最初のツェナダイオードのみの回路やエミッタフォロワを追加した回路は求める出力電圧値への設計にかなり苦労するのですが、この自動制御の定電圧回路ならまったくもって自由です。定電圧回路としての性能が高いだけではなく設計の自由度がうんと高まるわけですね。どうですか?皆さん自動制御が好きになってきたでしょ?
(^^)

余談ですが一般にフィードバック制御はどのようなものであれセンサとアクチュエータで構成されており、それによって全体を制御しています。センサでとらえた誤差をアクチュエータに戻して修正操作を行うのでフィードバックと呼ばれるわけです。アクチュエータによる修正結果もセンサは常に監視して、誤差修正を延々と続けているのですね。

関連記事:
定電圧電源を作ろう④差動回路 2009-12-25
定電圧電源を作ろう②エミッタフォロワ 2009-12-18
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兵隊さん

2009-12-18 23:13:35 | 思索
兵隊さんは世界各国に必ずいるが、日本で兵隊さんと言えば自衛隊員をおいて他にない。

兵隊さんのお仕事は、その良し悪しはともかく人殺し。また兵隊さんは自らの考えや意志を持たず、鉄人28号のようにリモコンの操作(上官の命令)によってのみ動かなければ兵隊さんにはなり得ない。

とはいっても兵隊さんもやはり人なのである。武器を置き、ヘルメットを外し、制服を脱げば、意志や感情の多くの部分が蘇る。

人は誰しも、今の在り方、今やっていること、これからやろうとしていることが個人として「良きこと」「正しいこと」と思いながら生きている。逆に言えば、そう思わなければ生きていけない。自分の考えや認識や判断や行動が「間違っていて、悪である」と思いながら、それをやり続けることはまず無理だろう。

ということは、兵隊さんにとっては、相手が人であってもそれが敵兵であれば射殺することが正しいのは疑いの余地がない。さらに、相手が一般市民でも上官の命令であれば引き金を引くことが正しい。ただし、これは蛇足ではあるが、どのような場合にも兵隊さんに一切の責任はなく、命令者にすべての責任が有る。

さて、軍隊は強くなければ意味がない。軍隊は兵隊の集まりだから個々の兵隊が強くなければ成り立たない。さて、ではどんな兵隊が強いのか?これは、腕力や格闘術などよりも、「正義と確信する精神」を有すること。これに勝るものはないだろう。

自衛隊。日本国を守る軍隊。その存在の是非はともかく、実際に存在し莫大な税金を食ってるのだから強くあることは必然。ということは、自衛隊にとって守るべき「お国」は、無条件に絶対正義ということになる。これは現在のみならず、過去においても絶対正義でなければ筋が通らない。過去に間違ったことのある絶対正義などどこにあろう。

よってかの元幕僚長、田母神氏の投稿したトンデモ論文の内容については、彼は至ってクソ真面目に本心を語っているのだ。到底世間一般に受け入れられない非常識な内容ではあるが、これが彼の本心でなければ自衛官としての立場に矛盾する。

よって、自衛官や自衛隊員に人権はない。これが軍隊の定義なのだ。
兵隊さんが訓練を終え、家庭で人に戻った時の思いや苦悩はいかばかりだろう?これは察するに余りある。
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定電圧電源を作ろう②エミッタフォロワ

2009-12-18 02:28:33 | 電子回路
さてここからが本格的な定電圧電源の製作です。楽しみながらいきましょう。まずは1A以上の電流負荷が取り出せる電源にトライします。さすがにツェナダイオードだけで1Aの電源は無理ですが、ツェナダイオードの基本回路にトランジスタをくっつければできます。

NPNトランジスタをエミッタフォロワにして、はい一丁上がり。おまけにダーリントン接続にした豪華版です。C1815とC5000のhFEを共に100とするとダーリントンによってhFEは10000。OUTから1A取り出した場合にはベース電流は0.1mAとツェナダイオードからほとんど負荷電流が流れませんね。

これはちょっとやり過ぎでしたか。ツェナダイオードのみでも10mA以上の負荷電流容量を持っているのですから2SC5000のみのエミッタフォロワでもいいでしょう。まあ設計思想にもよりますが、ダーリントンの方がレギュレーション(安定化:定電圧化)がよいことは間違いありません。トランジスタ2個分のVbe≒1.4Vを考慮してツェナダイオードは6.8V(ツェナ電圧)にしています。計算上この定電圧回路は5.4Vの出力となります。ところでここで使用した2SC5000はどんなトランジスタなのでしょう。ちょっと特性表を見てみましょう。

Icの最大定格はなんと10Aです。コレクタ損失25W以内なら負荷電流10Aの電源も作れます。そのかわり、ものごっついヒートシンクが要りますよ。しかしまあ1Aの電源用にはちょっともったいないくらいのトランジスタですね。それから「電気的特性」ではhFEが最低でも120あり、このタイプの電力用トランジスタとしては珍しいくらい大きな値です。これはなかなか愛い奴じゃ。入手性もよく、いろんな用途に使えそうなトランジスタだって気がしますね。

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定電圧電源を作ろう①ツェナ

2009-12-14 23:08:46 | 電子回路
[ツェナダイオード:定電圧源の基本素子]

ダイオードは一般に電流を片方向にのみ流すものですが、逆方向にも着目してみると、なかなかおもしろい特性をしています。

ダイオードに逆方向の電圧を与えると、ダイオードは電流を流すまいとしばらく踏ん張りますが、電圧をどんどん上げていくとある地点でドッと電流が流れます。この電流を降伏電流とかツェナ電流と呼びます。ついにダイオードが降伏してしまうわけですね。(降伏電流に至るまでにも、ほんの少し逆電流が流れていることに注目してください。これがダイオードの漏れ電流です。)

さて、この降伏電流とVRの関係をみますと、VRに対してほぼ直角に電流増加していることがわかります。ということは降伏電流が流れているときのVRはほぼ一定の電圧であるということです。VRをツェナ電圧といい一般にVZと表します。この特性を積極的に使う目的(定電圧を得る目的)で作られたのがツェナダイオードです。NP接合をいろいろと工夫して、ツェナ電圧:2V~120Vくらいのものまであります。

関連記事:
「ツェナダイオードの特性」2007-09-04
定電圧電源を作ろう②エミッタフォロワ 2009-12-18
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変革と「再生」

2009-12-14 18:41:21 | 安全・品質
旧来より脈々と続く文化と風土。自らもその中で育ち、その文化風土が存在基盤であったにもかかわらず、現社長は「間違いであった」、社会的存在意識としてはもはや「非常識」と明確に認め、「再生」の決意を広く内外に言い切った。その勇気、潔さは見事としかいいようがない。

私もこの先そう長くここに居るわけではないが、現社長の思いや具体的活動に対して、個人としてできる最大限の協力をしたいと思う。

個人ができることは、基本的には非常にシンプルかつ簡単である。現在を含め今までを「間違い」とし、これを払拭し「再生」する、つまり現社長と同じ決意と意志を持てばいいのだ。社員および従業員全員が、タイミングを合わせてこう思えば、「再生」は一瞬にして達成される。

しかしこれは、実際にはあり得ない。誰がそう簡単に自己否定などできよう。ほんの些細なことでも、長く信じていたものが覆ればただならぬ不安に襲われる。それが今回は根幹部についての自己否定を求められるのだ。ここはまだ多くの信者が全体を占めている。信仰とは理由無く信じることだから、教祖が急に「間違っていた」と身を翻したところで、強烈なショックは受けても、そう安々と信仰を捨てることはできるものではない。

だから世代交代も想定して、本当に「再生」が実現するのは20~30年を要するだろう。その「再生」への道のりにおいて、現社長の理念がしっかりと継承されていくことを祈りたい。

関連記事:「グラスノスチ」
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倫理と道徳

2009-12-14 18:21:01 | 思索
倫理と道徳、これらは用法を間違えると極めて危険な言葉である。下に、倫理と道徳の辞書による意味を示す。

【倫理】人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。道徳。モラル。(大辞泉)

【道徳】人々が、善悪をわきまえて正しい行為をなすために、守り従わねばならない規範の総体。外面的・物理的強制を伴う法律と異なり、自発的に正しい行為へと促す内面的原理として働く。(大辞林)

大辞泉が倫理の説明として、道徳の二文字を用いているように、倫理と道徳は言葉の意味として密接している。これは大辞林による道徳の意味を見てもわかる。よってここでは、倫理と道徳を共に「倫理」という一つの言葉で表すことにする。

さて、「人として守り行うべき道」「善悪・正邪の判断において規準となるもの」このようなものが普遍的に存在し得るのかどうか。日本においては、戦前の倫理と戦後の倫理は明らかに異なる。また西欧諸国の倫理とアラブ諸国の倫理は明らかに異なる。さらに私の倫理と隣のおばちゃんの倫理が明らかに異なることを私は知っている。このように倫理に普遍性はない。倫理に普遍性がない以上、倫理そのものが存在し得ないことになるが、実際には倫理はそれぞれに存在しているわけで、これは言葉の曖昧さによる矛盾であろう。辞書の示す意味を表し、実際に使用可能かつ正確(安全)な言葉は「倫理観」あるいは「道徳観」である。「-観」が付くことで、倫理も道徳も人それぞれに異なる主観であることが明確になり、集団による統一思想となる危険性は減少する。

倫理と道徳がなぜ危険な言葉であるのかは、大日本帝国、ナチス・ドイツ等の国家主義、民族主義が犯した犯罪や歴史上の多数の宗教犯罪などが証明している。演繹的には、大辞林が説明している「自発的に正しい行為へと促す内面的原理として働く」、これが要点であり重要。自由や平和なども同様であるが、倫理と道徳に比べれば、現時点では危険性は小さい。(自由と平和の名の下にであれば、アメリカを始め地球上のほぼすべての国が犯罪国家であるが、冗長になるので割愛)

とりわけ昨今において、倫理や道徳の文字が記述されている文書等には十分注意すべし。それが、もし文書内に多用され、奨励されていればなおさらである。子供の倫理観や道徳観は、心配せずとも、家庭や集団の中での成長過程において彼らは自然に学んでいく。そもそも倫理や道徳は教え教えられるものではなく(ここが重要!)、自然に「知って」いくものである。その時、彼ら一人一人の倫理観、道徳観が微妙に異なっていれば、その集団や社会は健全であるといえよう。

関連記事:
「正義」2007-09-11
「しつけ」2009-12-01
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ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲集「四季」

2009-12-10 22:31:28 | 音楽・映画
演奏:アンネ=ゾフィー・ムター、トロンヘイム・ソロイスツ

とあるコラムに、ムターのこの四季は好き嫌いが別れるだろうと書かれてあったが、初めて聴いたときにはなるほどと納得した。

「四季」はイ・ムジチ合奏団の模範的演奏をリファレンスとして、もっぱら他の演奏を聴いているが、その観点からのムター盤は、強烈なパンチと癖の強さにまず驚かされた。これは最初の印象として決して心地よいものではなかった。しかし人の驚くべき順応性はどのような場合にも働くようで、苦手なものもやがて好物に変わっていくのは不思議としか言い様がない。もう二度と口にしたくないと思ったミョウガが、今では冷奴には欠かせないと思ったり。

ともかく、多少の我慢をこらえて何回か聴いているうちに、うまうまとムターの思うつぼにハマった。これが世に言うところのムター節なのであろう。こうなってしまうと、イ・ムジチの模範演奏ではまったくもって、もの足りない。

ムターの四季は非常に人間臭い、つまり音楽の中にムターの主張がふんだんに投入されているのだ。これはおのずと、共感する人と拒絶する人に別れるだろう。これはソロ部において最も顕著であるから、春の二楽章、夏の二楽章、冬の二楽章は、現時点ではムター以外のものは聴きたいとは思わない。玄人好みの「秋」。イ・ムジチの演奏ではつまらないので、よく「秋」だけを飛ばして聴いていたが、ムターなら聴ける。そして、実は「秋」がソリストが最も頑張る曲であったことに初めて気づいた。「秋」は、これくらいのインパクトが必要なのだ。(余談だがカルミニョーラの秋もいい)

「冬」の一楽章では、ムターは思い切った試みをしている。これにはまいった。あんた、いくらなんでもこれはないでしょと最も違和感が強かったが、それも今では、これもあり得るなと思うようになった。むしろ一般的な演奏と同様に心地よい。その他、ムターのすべての演奏について言えることだが、演奏に込められた生々しく強い主張、つまりムター節、これにハマるかどうかということだろう。

(関係ないが、一度ムターに指揮棒を持たせてブラームスなどをやらせてみたい気がする。すごいことになるのではないだろうか。)
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グラスノスチ

2009-12-10 22:31:25 | 安全・品質
【2chから検索ワードをたどってきた方々への補足】

旧ソ連のゴルバチョフがやった「グラスノスチ」という情報公開政策をご存知ですか?
情報公開とは「物事を秘密にせず公に開示する」「国などの公の機関が業務上の情報を一般に開示する」ということです。

以下に、グラスノスチについての 『ウィキペディア(Wikipedia)』の記述を貼り付けます。

1986年4月に起こったチェルノブイリ原発事故をきっかけに、種々の社会問題を解決するために言論・思想・集会・出版・報道などの自由化・民主化が行われた。1986年末までには一部のテレビ・新聞がソ連社会の問題点を率直に批判するようになった。

1987年頃より、ブレジネフ時代に上映を禁止されていた映画が次々と公開された。党の統制下に置かれない市民団体の結成などもみられた。歴史学においてもネップ(新経済政策)の再評価、1930年代の大飢饉の考察など、それまでタブー視されていたテーマが扱われ始めた。

それまで西側にとって秘密のヴェールにつつまれていた軍事面の情報も徐々に公にされるようになり、1988年にはイギリスの国際航空ショーに出展、更に翌年にはSu-27、Su-25、Mi-28など最新鋭の軍用機がパリ航空ショーに出品披露されるなど、積極的な公開が進んだ。

(以上)

そして、結果として世界は(破滅に至る)冷戦の危機から開放されるに至ったのです。そしてもはや完全に機能麻痺に陥っていたソ連は、その主要部がロシアとして蘇えりました。ベルリンの壁もなくなりドイツも一つになりましたね。

まあ、ここまで大げさな話しではないにしても、例えば企業の公開掲示板なども基本は同じだと思います。ある程度、規模が大きくなった組織というものは、可能な限り最大限の情報公開をしなければ、いずれ死ぬのです。公開される情報の中には組織にとって耳の痛い話しも、まったく事実に反するものも当然あるでしょう。しかしそれ故に客観性が保たれ、多くの情報の中から物事を正確に判断することが可能になります。組織が有機的な自己修正作用を活性化させて、健全な状態を継続していくためには、情報公開は不可欠なのです。

変革と「再生」2009-12-11
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FETの話③ 増幅回路

2009-12-09 20:33:50 | 電子回路
実験と考察
では左の「静特性」のグラフに用いられている、IDss=2.8mAの2SK30Aを使っていろいろ試してみましょう。

まず特性表より、Vds=10VにおいてIDが0AになるVgsは-1.6Vです。これをゲートソース遮断電圧といいます。よってこの2SK30Aを電圧制御できるVgsの範囲は-1.6~0Vということになります。ここでもう一度特性表を見てみます。

「静特性」を見ると、Vgsが固定値であればVdsが10~50Vの範囲では、IDはほぼ定電流であることが分かります。例えばVgs=-0.8Vの時にはID=0.8mAの定電流になっています。Vgsの変化に対するIDは右表「ID-Vgs」から読めます。ではトランジスタの代わりに2SK30Aを使って、ゲイン=20dB(10倍)の増幅回路を作ってみましょう。電源電圧は20V、コレクタあるいはドレインの動作点は10Vとします。

トランジスタの場合はこのように抵抗定数が決まります。では2SK30Aの場合、R1とR2の抵抗値はいくらになるでしょう?

ドレインの動作点が10Vと定められているので、IDは1mAです。「ID-Vgs」特性からID=1.2mAのラインをたどると、Vgsは約-0.6Vです。0.2mAの誤差は大目にみていただいて、VG=1-0.6V=0.3Vとします。R1、R2を流れるバイアス電流を0.1mAとすると、R1=0.3(V) / 0.1m (A) =3k(Ω)となります。R2=19.7(V) / 0.1m (A) =197k(Ω)となります。はい、めでたくFET式ゲイン20dBの増幅回路ができあがりました。

ところがギッチョン
シャンシャンと締めたいところですが、実はFETの場合そうは問屋が卸してくれないのです。トランジスタはICの大きさにかかわらずVbeはほぼ0.7Vですが、FETのVgs-ID特性は1次関数に近い特性をしています。この増幅回路に用いた2SK30Aの場合、Vgs=-0.8Vの時はID=0.8mA 、Vgs=-0.4Vの時はID=1.6mAとほぼ正比例になります。つまりIDに比例してVgsが変化することがゲインに作用し、結果的にはソース抵抗1kΩの場合は(VSが入力信号電圧のほぼ1/2になり)ドレイン抵抗を10kΩとするとゲイン14dB(5倍)になります。

ほ~、これはすごい!つまりゲイン20dBとするためには、ドレイン抵抗をソース抵抗の20倍にするのが答えということですね。

*14bB=5(倍)を求めるのは簡単です。20dB(10)-6dB(1/2)=14dB(10×0.5=5)です。

関連記事:
「FETの話①」2009-12-07
「FETの話② 2SK30A」2009-12-08
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FETの話② 2SK30A

2009-12-08 21:11:27 | 電子回路
古から現在に至り、特にオーディオ用として最もよく使用されている不朽の名作Nch-FET:2SK30Aの特性を見てみましょう。

「FETの話①」にて、FETはG-S間電圧が0Vの時にもっとも大きなドレイン電流を流すとお話しましたが、このときのドレイン電流をIDssといいます。IDはドレイン電流、ssはG-S間電圧が0VつまりG-SショートのSです。実際には、このIDssにはかなりのばらつきがあり、2SK30Aもこの大きさによってランク分けされています。特性図の下にランク(単位:mA)を示していますが、例えばGRランクでも2.6~6.5mAものばらつきがあるのですね。

右側の特性図を見てください。VDS=10VにおいてVGSが0Vの時の最も大きなIDssは6mAくらいです。このカーブを示すものはGRランク、反対に最も小さな0.4mAくらいのものはRランクということです。

トランジスタの場合は、動作領域においてベース-エミッタ間電圧が必ず0.6~0.7Vになりますから回路の定数設定が簡単にできました。しかしFETの場合は上記のようにゲート-ソース間電圧を一定値として考えることができません。よってFETを使って増幅回路を設計する場合は、必ずIDssを測ってデータシートのID-VGS特性と照合することになります。多くの場合、トランジスタでもFETでも、どちらを使っても増幅回路は実現できますが、設計が楽なトランジスタが多用されるのでしょう。

関連記事:
「FETの話①」2009-12-07
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FETの話①

2009-12-07 15:58:23 | 電子回路
トランジスタのようでトランジスタではなく、トランジスタほどには一般的には使われないFET(電界効果トランジスタ)という素子があります。特性を知って実際に使ってみればなかなかおもしろく、しだいに愛着がわいてきたりもします。添付図に簡単に構造を示しますが、動作原理などはほどほどにして、いきなり特性から実用回路を経てFETの世界に入っていってみましょう。

まず一目で分かるのは、トランジスタがN-P-Nと接合されているのに対し、FETはP-Nしか接合されていません。この構造からトランジスタをバイポーラトランジスタ、FETをユニポーラトランジスタと呼ぶこともあります。NchがNPNに相当し、PchがPNPに相当します。

端子はどちらも3端子ありますが、記号も名称も異なります。トランジスタのC、E、Bに対し、FETの場合はD(ドレイン)、S(ソース)、G(ゲート)となります。また、製品名はトランジスタの場合NPNが2SC、PNPが2SA、FETはNchが2SK、Pchが2SJとなります。

【 Nch FETについて】
トランジスタのコレクタ電流に相当するものがドレイン電流で、DからSへ流れます。トランジスタはベース電流を流すことによりコレクタ電流が流れますが、FETはG-S間の電圧によってドレイン電流が流れます。よって、トランジスタは電流制御素子、FETは電圧制御素子といわれます。

FETが電圧制御素子だからといって、Sに対してプラス電位をGに与えるとどうなるでしょう。PNが順方向になってGからSへ電流が流れてしまいます。これでは電圧制御にはなりません。実はFETはG-S間電圧が0Vの時に、もっとも大きなドレイン電流(IDss)となります。そしてNch-FETはG-S間にはマイナス電圧を与え、その絶対値が大きくなればなるほどドレイン電流は小さくなり、ある限界値に達するとドレイン電流は0Aとなります。

つまりNch FETは、動作領域において、G-S間にマイナス電圧をバイアスとして与えておき、そのG-S間電圧に信号電圧を加えることによってドレイン電流を制御するわけです(Pch FETのG-S間電圧はプラス)。G-S間のバイアス電圧の大きさによってドレイン電流の動作点が決まります。これはトランジスタを動作領域で使う場合に、ベース電流の値によってコレクタ電流の動作点を決めることとよく似ていますね。

関連記事:
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絶対値回路

2009-12-06 13:20:52 | 電子回路
絶対値回路はその名の通り入力の絶対値を出力(全波整流)する回路ですが、理想ダイオードの応用として構成することができます。

上の図は、2つの理想ダイオードと差動増幅器を組合わせたものです。これは動作が見えやすい回路ですが、オペアンプが3個必要です。一般的にはオペアンプ2個でできる下の回路がよく使われます。この回路が絶対値回路として動作する動きが見えてきますか?これはなかなか複雑ですので動作が分かればたいしたものです。この動作メカニズムをじっくり順を追って考えてみてください。おもしろいですよ。オペアンプの基本動作をしっかりおさえながら進めば必ず解けます。
(^^)

関連記事:
「理想ダイオード」2009-12-04
「DCキャンセラ回路」2007-10-26
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