electric

思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

ローパス ハイパス バンドパス

2009-09-27 16:19:33 | 電子回路
フィルタ回路こそがオペアンプの真骨頂といえるでしょう。図はバンドパスフィルタの回路です。微分回路と積分回路が合体したものですね(2008/10/16付の記事「微分回路と積分回路」を参照してください)。ですから不完全微分回路と不完全積分回路を別個に作って直列につないでも同じ特性になります。でもオペアンプ1個でできるんだから、1個ですましちゃいましょう。

-------------------------
 バンドパスフィルタ :BPF
 ハイパスフィルタ  :HPF
 ローパスフィルタ  :LPF
-------------------------

バンドパスフィルタの特性は添付のボード線図(赤の実線)のようになります。ボード線図における各ポイントの周波数は次式で求めることができます。
(単位:Hz)

fx1=1/ (2πC1R2) :出力/入力 =1
fo1=1/ (2πC1R1) :カットオフ周波数1
fo2=1/ (2πC2R2) :カットオフ周波数2
fx2=1/ (2πC2R1) :出力/入力 =1

BPFの回路からC2を取外せば不完全微分回路、つまりHPFになり
fo2、fx2が無くなってボード線図は点線で示す(HPF)形になります。

BPFの回路からC1を取外して直結すれば不完積分回路、つまりLPFになり
fo1、fx1が無くなってボード線図は点線で示す(LPF)形になります。

このように、1次のBPF、HPF、LPFはオペアンプ一個で簡単に作れます。フィルタ出力はオペアンプの出力ですから、出力インピーダンスが非常に小さく扱いやすいものです。(つまり出力に低インピーダンスの負荷をつないでも特性は変わりません。また高い次数が欲しければ、そのまま直列に何段もつないでいくことができます)

とても実用的な回路ですから覚えておいて損はないですぞ。
(^^)

関連記事:
微分回路と積分回路 2008-10-16
微分はハイパス、積分はローパス 2007-09-11
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人は何故ミスをするのか

2009-09-26 05:16:08 | 安全・品質
標題の問いに対して、「人の定義は“間違える”ということだ」という普遍的「解」があります。つまり「人」の概念から「間違える」という要素を取り除いたとき、もはやそれを人と見なすことはできなくなるのです。一般的に、これに異論を唱える人はいないでしょう。

(しかるに今なお、夢想を追うかのように「ミスをゼロにしよう」「ミスはゼロにできる」と本気で考え、それに労力を費やそうとする、あるいは費やしている人、集団が存在します。これは彼らの信念と考えられますが、つじつまの合わない信念はもはや妄想あるいは信仰ですから、訂正は不可能です。よって不可能なことはほどほどにして、ただ一言「人がミスをすることは問題ではない。事故を起こさないことが問題だ」とだけ言っておきましょう。)

さて、人が人である故のミスですが、それにしてもこれは何故なのでしょう?ここからは、人が「必ずミスをする」メカニズムについて考えてみます。

まず、09/06/10付の記事「練習しよう」を転記します。

「練習というのは非常に大きな意味があります。脳の中にはCPUに相当するプロッセッシングユニットがありますが、すべての思考をCPUがやってるわけではありません。CPUの周囲には、論理ブロック、計算ブロック、運動ブロックなど、非常に多くのサブルーチンが存在します。ある計算をするとき、CPUは必要な計算ブロックを呼び出すだけなので、非常に速く回答が得られるのです。だから何度も経験したことのある計算(思考)および運動はスムーズに運ぶわけです。10年以上の自動車運転歴をお持ちの皆様、一度”運転サブルーチン”を呼び出さずにCPUを使って運転してみてください。とてもギクシャクすると思いますよ。”自意識過剰のムカデの苦悩”もこれと同じ話です。練習する、あるいは稽古するという行為は、頭の中に必要なサブルーチンを作るということなのですね。」

この記事は人が何故ミスをするかについて逆説的に説明しています。つまり私たちが普段スムーズに物を考え行動しているのは、サブルーチンをコールするだけで済むからですが、このメカニズムにこそ人がミスをする根源が裏腹のように存在するのです。

かなり昔の話ですが、旅行でグァムに行った折にレンタカーを借りて各所を回りましたが、当地はアメリカなので自動車は右側通行です。走り始めは何度となく左側を走ってしまい怖い目にあいました。何故このようなことが起こったのでしょう。つまり私の「車を運転する」サブルーチンには左側通行が書かれていたわけです。これも1日目、2日目、3日目と次第に間違えることは少なくなりました。つまり役に立たないサブルーチンの1部を削除して新しいサブルーチンを作ったということですね。

また、数学であれ何であれ、ある問題が解けるということは多くの場合、以前にその問題を解いたことがあるということです。しかし問題に少し仕掛けを入れられると、簡単に引っ掛かって間違えてしまう。もっと端的な例は、トリックやマジックに人は驚き、あたかもそれが事実であるかのように錯覚しますね。(余談ですが、3~4才くらいの幼児がマジックを見ても、さほど驚かないというのは面白いと思いませんか?)

これらのことを要約すると、慣れている行動や思考パターンの対象が一部変化するとミスが容易に発生するということです。サブルーチンは基本的に無意識に行われます。パターンの変化に対しては意識(頭の中枢部)が対応しようとしますが、無意識は意識よりも遥かに強力ですから変化に十分対応することはできません。また逆にここで意識を過剰にし過ぎるとサブルーチンそのものを止めてしまうことになります。つまり動けなくなるということですね。

人は慣れや練習を重ねてサブルーチンを作らなければ、まったく行動し思考することができません。だからサブルーチンを作ることが人本来の営みと言えます。しかしそのサブルーチンによってミスを招くという宿命にあるのです。人はこのジレンマからは逃れることはできません。(本質的には、このサブルーチンが既成概念です)

以上が人が必ずミスをするメカニズムの一つの理論です。次回は、パターン変化が無いにも関わらず、サブルーチンの中で発生するミスについて考えてみたいと思います。

*「自意識過剰のムカデの苦悩」は、正確にはどういう順番で足を動かしてるのか?と聞かれて、ムカデはまったく動けなくなったというお話です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Δを循環する第3高調波

2009-09-26 02:10:11 | 電子回路
図は、三相交流電圧の降圧、昇圧を目的としてよく使用されるYΔ、ΔY変圧器のモデル図です。YY、ΔΔで構成される場合もありますが、そもそも変圧器は1次側の電圧を降圧あるいは昇圧することを目的とするもので、その意味において、YΔ、ΔY 構成は合理的です。以下にそのポイントについて記します。

YΔ、ΔY の合理性

① Y型の相電圧は線間電圧の1/√3であり、1次側Yと2次側Δの巻線比が1:1であれば、2次側の線間電圧は1/√3に降圧される。またΔ巻線の線間電流は相電流の√3倍である。つまり、YΔ型は1次側電圧を降圧し2次側から大きな電流を取出す場合に合理的な構成といえる。
②ΔY 型は YΔ型の逆説として、昇圧に対して合理的であることが理解できる。
③またYΔ、ΔYの大きなメリットは、「コアの磁気飽和」によって生じる第3高調波がΔ巻線に循環電流として流れることにより、純度の高い(歪みの少ない)正弦波を出力として取出せることである。

と、一般的によく説明されます。
①②はいいとして、なぜ第3高調波が循環電流になるの? なぜそれで出力歪が小さくなるの?って疑問が湧きません?私だけかな?(^^;

で、これも確認してみましょう。添付図の右端の「Δ結線」を参照してください。
ia ib ic は 図に示す相電流とします。

 iAはa端子からa相に入出する電流
 iBはb端子からb相に入出する電流
 iCはc端子からc相に入出する電流 とします。

もし、iaに3次高調波が含まれているとするなら次式のようになります。
(3次高調波が含まれなければiA=ia )

 iA=ia・sinθ-i3・sin3θ 
 iB=ib・sin (θ-2π/3)-i3・sin3(θ-2π/3)
  =ib・sin (θ-2π/3)-i3・sin3θ 
 iC=ic・sin (θ+2π/3)-i3・sin3(θ+2π/3)
  =ic・sin (θ+2π/3)-i3・sin3θ 

再度、並べて書けば
 iA=ia・sinθ-i3・sin3θ 
 iB=ib・sin (θ-2π/3)-i3・sin3θ 
 iC=ic・sin (θ+2π/3)-i3・sin3θ
 
変圧器から線間電流が流れるとき、a、b、c 相に3次高調波(i3・sin3θ)を含む相電流が流れます。しかし相電流に含まれる3次高調波電流は、各々振幅も位相も同じですからΔ結線内を循環し外部電線に入出しませんね。よって、abc端子から外部に出入するiA iB iCは、相電流から3次高調波が差し引かれ純度の高い正弦波になります。

[解説] そもそも相電流の位相差は、相電圧の位相差に起因します。つまり相電圧の位相差が端子間電圧となり、相電流が流れるわけです。ということは相間に位相差の無い3次高調波電流の端子間電圧はゼロ(端子間電圧に現れない)ということになります。

関連記事:
「相電流(相電圧)と線間電流(線間電圧)」2009-09-25
「三相交流(YΔ結線)」2009-09-25
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

相電流(相電圧)と線間電流(線間電圧)

2009-09-25 22:03:22 | 電子回路
三相交流において

Δ結線の「線間電圧」=「相電圧」
Δ結線の「線間電流」=「相電流」×√3

Y 結線の「線間電圧」=「相電圧」×√3
Y 結線の「線間電流」=「相電流」

といわれます。確認してみましょう。

上図のようにΔ結線の線間電流Iabは相電流iaから相電流icを引いたものです。これをベクトル図に示したものが下図です。

線間電流は Iab=ia-ic ですから Iab=ia+(-ic)であり
赤矢印のベクトルが線間電流Iabとなります。角度が-π/6 rad (-30°) 横軸からの垂線の長さが√3 /2の直角三角形の斜辺がIabの大きさですから

ia=1とすると
Iab=√3 ∠-30°となります。(iaに対して30°遅れ)


Y 結線の線間電圧は各々の相電圧の電位差ですから
線間電圧Vabは Vab=va-vbです。

ベクトル演算は上の線間電流の場合とまったく同じ要領です。赤矢印が相電圧、青矢印が線間電圧Vabです。よって

va=1とすると
Vab=√3 ∠30°となります。(vaに対して30°進み)


【参考】

直交座標系による線間電流、線間電圧の計算
 
Δ結線の線間電流 Iab=ia-ic を三角関数で表すと
 Iab=sinθ-sin (θ+2π/3)
 
θ=0として、直交座標に変換すると
 Iab=(1+j0)-(-1/2+j√3 /2)
 Iab=3/2-j√3 /2

 絶対値は
 [Iab]=√{ (3 /2)^2+(√3 /2 )^2 } 
 [Iab]=√(9/4+3/4 ) 
 [Iab]=√(12/4 ) 
 [Iab]=√3 

 偏角は
 ∠Iab=tan-1{-(√3 /2) / (3/2) }
 ∠Iab=-tan-1 (√3 /3 )
 ∠Iab=-π/6 (rad) :-30°


Y 結線の線間電圧 Vab=va-vb を三角関数で表すと
Vab=sinθ-sin (θ-2π/3)
 
θ=0として、直交座標に変換すると
 Vab=(1+j0)-(-1/2-j√3 /2)
 Vab=3/2+j√3 /2

となってΔのIabの虚軸符号が変わるだけ。
 よって絶対値は
 [Vab]=√3 

 偏角は
 ∠Vab=π/6 (rad) :+30°

関連記事:
「三相交流(YΔ結線)」2009-09-25
「スコットトランスのしくみ」2009-10-03
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

三相交流(YΔ結線)

2009-09-25 17:10:27 | 電子回路
三相交流電源の結線の妙

図の結線が三相交流電源のY型、Δ型と呼ばれるものです。Y型は分かりやすいですね。3つの交流電源の片端を接続して(中性点)、そこを基準(0V)として、もう一方の片端が交流電圧を出力している。そして、それぞれの位相差を120°とすれば、確かに三相交流電源が成り立ちます。

「妙」はΔ型です。「こんな結線やっていいの?」って直感的に感じません?(私だけかな?)。例えばこれが直流電源だったらえらいことになりますね。3個の直列電源のプラス側とマイナス側を銅線でつなぐのと同じです。交流電源でも三相が同相なら同じことです。ということは、逆説的に各々120°の位相差によってΔ結線が成り立つと考えられます。

確認してみましょう。
Δ結線において、Ea Eb Ec の位相差は120°:2π/3 (rad) だからEaを基準にすると
Ea=sinθ、Eb=sin (θ-2π/3)、Ec=sin (θ+2π/3) となります。
[Emax=1とする]

直列電圧をもとめます。
Ea+Eb+Ec=sinθ+sin (θ-2π/3)+sin (θ+2π/3)

θ=0とすると
Ea+Eb+Ec=0+sin (-2π/3)+sin (2π/3)
Ea+Eb+Ec=0-sin (2π/3)+sin (2π/3)[sin(-A)=-sin(A)]
Ea+Eb+Ec=0

このように3つの電源の直列電圧は0です。ということは、直列の両端は共に0ですから銅線で結線しても問題ありませんね。また当然にも銅線に電流は流れません。ってことは電源にも電流は流れない、つまりΔ結線にループ電流は流れないということですね。

関連記事:
「相電流(相電圧)と線間電流(線間電圧)」2009-09-25
「Δを循環する第3高調波」2009-09-26
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エクセルでディジタルフィルタ

2009-09-22 01:57:03 | 電子回路
ディジタルフィルタと言っても、とても簡単な差分回路(微分回路)と積算回路(積分回路)です。図のデータに添付しているブロック図はディジタル信号処理の解説書のたいがい初めに登場します。[Z^-1]は1サンプル前のデータという意味です。

差分回路は1つ前のデータを今のデータから引算して出力します。積算回路は今のデータを次のデータに足算して出力します(つまり出力データを次のデータに足算)。ただそれだけ。

たまたまHIOKIのメモリハイコーダで測定したエクセルデータが手元にあったので、差分(微分)と積算(積分)がブロック図の通りであるなら、エクセルでもできるのでは?と思い立ってやってみたのが図の波形です。

青の波形がアナログ波形を測定したもの(2.5μsecサンプル)、赤の波形が差分演算、黄色の波形が差分波形を積算演算したものです。こいつぁおもしろい。当たり前ですが理屈通りの波形になっていますね。アナログ的に見れば確かに微分演算と積分演算になっています。見事なものです。

離散信号は意外と扱いやすいのかも?と目からウロコの試みでした。

関連記事:「微分は引算、積分は足算」2009-10-31
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熱回路への誘い⑤

2009-09-15 12:10:14 | 電子回路
「熱回路への誘い④」の続きです。
ラプラス変換式を解いていきましょう。

ΔT=(W/s)(Ra/sCS)/ (1/sCS+Ra) ----- ③

式を変形します。
ΔT=(W/s)(Ra)/(1+sCSRa) 
ΔT=(W/s)(1/CS)/(1/CSRa+s) 
ΔT=(W/CS) /s(1/CSRa+s) 
ΔT=(W/CS)(CSRa){1/s-1/(1/CSRa+s)} 
ΔT=(WRA){1/s-1/(1/CSRa+s)} 

逆ラプラス変換します。
ΔT(t)=WRa{1-e^-(1/CSRa)t } ----- 解

結果的にこれも1次遅れ特性になりました。

各パラメータに数値を入れます。
空気の熱抵抗:Ra=103.2(K/W)

ですが、「放射」による熱の拡散を考慮して2/3を乗じた値とします。

空気の熱抵抗:Ra=68.8(K/W)
セラミックの熱容量:Cs=3.17(J/K)
熱(I2R):W=3 とします。

もとめる式は 1/ CsRa=1/218.1 =0.00459 だから

ΔT(t)=206.4 (1-e^-0.00459t ) となります。

上図に、求めたΔTの応答波形を示します。

理論値による数値計算のみで求めたわりには、けっこういい線いっているようです。しかしながら、やはり実際との誤差はかなり大きく表れています。これを整合させるためには、恐らく、もっと多くの複雑なパラメータを考慮する必要があるのでしょう。抵抗メーカーや、ハンダコテメーカーが「温度上昇」に関しては、すべて測定値を仕様書に記載している理由がわかる気がします。複雑な計算のわりには実入りが少ない。

というわけで、今回計算で求めた値も、経験的値に基づいて強引に数値補正をします。

空気の熱抵抗:Ra=68.8(K/W) ですが
抵抗の実測温度 / 計算温度:206/344=0.6 を補正係数としてかけます。

空気の熱抵抗:Ra=68.8×0.6 =41.3(K/W) となります。
セラミックの熱容量:Cs=3.17(J/K)
熱(I^2R):W=5 とします。

1/ CsRA=1/131 =0.007638 となって

ΔT(t)=206.5 (1-e^-0.007638t ) となります。

下図に、得られたΔTの応答を示します。

これなら、まあ使えないこともないでしょう。しかし、「抵抗の上昇温度の算出」というテーマは、試みとしてはおもしろいけど、実利が薄いというのが結論ですね。完

関連記事:
熱回路への誘い④ 2009-09-14
熱回路への誘い① 2009-09-08
抵抗の温度 2009-08-24
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熱回路への誘い④

2009-09-14 13:33:37 | 電子回路
抵抗の温度上昇

ではいよいよ、抵抗の上昇温度にトライします。
抵抗器Rに定電圧Vを印加すると、電流Iが流れRI^2またはVI(W)の熱が発生し、Wtの熱量(J)によって抵抗器の温度が上昇します。これにより、抵抗器と周囲の空気との間に温度差が生じ、対流によって抵抗器から空気に放熱されます。なかなか厄介なメカニズムですが、これを熱回路で示すと上図のようになります。

熱回路図において

Rs セラミックの熱抵抗(抵抗の母材)
Cs セラミックの熱容量
RA 空気の熱抵抗

抵抗器Rは電流Iが流れることにより、熱(W:RI^2)を発生する定熱源(電気回路では定電流源)であり、熱WはRsを通りW1とW2に分流します。図からわかるように抵抗器の上昇温度ΔTはCsの端子温度ですが、熱Wが「定熱」(定電流)ですから、Rsに関わらず、Wは一定の大きさで流れます。よってRsはこの回路における存在の意味はなく、便宜上Rs=0とします。

熱回路のパラメータを求めていきましょう。
下図に抵抗器の外形図を示します。

図より5Wの抵抗の場合、セラミックの外形は、おおむねφ8長さ24mmの円柱です。
よって、半径0.4(cm)、長さ2.4(cm)の円柱の体積は以下のようになります。

セラミックの体積Vs=(0.4×0.4)×π×2.4 =1.21(cm^3) 
セラミックの質量=比重:3.5(g/cm^3)×体積:1.21(cm^3) =4.23(g)
セラミックの熱容量Cs=比熱:0.75(J/gK)×質量:4.23(g)=3.17(J/K)

抵抗の外周面積Ss=0.9×π×2.5+2×(0.4×0.4)×π =8.074(cm^2)
空気の熱伝達率h=0.0012(W/cm^2K)
空気の熱抵抗率b=1/0.0012(cm^2K/W)
空気の熱抵抗RA=1/(0.0012×8.074) =103.2(K/W)[熱抵抗率/面積]

必要なパラメータは以上です。


回路方程式
図の熱回路方程式をたてます。

定熱Wから見た回路のインピーダンスは、CSとRAの並列合成インピーダンスですから、ΔT(t)は次のようなラプラス変換式で表されます。
 
ΔT=(W/s)(RA/sCS)/ (1/sCS+RA) ----- ③

次回はこの式を解いて、求めたパラメータから結果に至ります。
さて、どうなることやら。

関連記事:
熱回路への誘い⑤ 2009-09-15
熱回路への誘い③ 2009-09-13
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

部分分数分解

2009-09-13 12:59:48 | 電子回路
図のLR回路の過渡電流i(t)を求めます。

まずは方程式から。
L di(t)/dt+Ri(t)=e(t) (ただし i(0)=0 )

ラプラス変換します。
sLI+RI=E/s
(sL+R)I=E/s
I=E/s 1/( sL+R)
右辺の分母分子に s/L をかけます。
I=E/L 1/s( s+R/L)

ここで【部分分数分解】という技を使います。
(添付の図を参照してください)
I=E/L 1/(s-s+R/L) {1/s-1/(s+R/L)}
I=E/L L/R {1/s-1/(s+R/L)}
I=E/R {1/s-1/(s+R/L)} これで準備OK

f(t)=1  → F(s)=1/s
f(t)=e^at → F(s)=1/(s-a)
(ともに変換表より)

逆ラプラス変換すると次式になります。

i(t)=E/R ( 1-e^{-(R/L)t})

解を味わいましょう。
i(0)=E/R (1-e^{-(R/L)0}) =E/R (1-1) =0
i(∞)=E/R (1-e^{-(R/L)∞}) =E/R (1-0) =E/R
ですから

i(t)はゆっくり流れ始めて、最終的にE/R(最大値)で一定になることが分かりますね。

関連記事:
部分積分(LCR回路)2009-08-04
LCR回路の過渡特性 2009-05-11
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熱回路への誘い③

2009-09-13 12:13:21 | 電子回路
1次遅れ特性

図1において、右面の温度が定温でない場合、対面から伝導する熱によって温度が上昇し、伝導する熱Wが減少し、対面の定温度60℃に達した時点でΔTおよびWがゼロとなり一定温度(60℃)になります。(これは容易にイメージできると思います)

右面の温度をToutとし、熱回路に表すと図2のようになります。
つまり、この熱回路は電気回路におけるCRの1次遅れ回路(CRローパスフィルタ)と一致します。よって入出力特性は次式で表すことができます。

Tout=(Tin/s) 1/sC / (R+1/sC)
(sはラプラス演算子。単位応答だからTin/s)

Tout =(Tin/s) 1/ (sCR+1)
Tout =(Tin/CR) 1/ s(s+1/CR)

右辺を部分分数分解して
Tout =(Tin/CR) CR { 1/s-1/(s+1/CR) }
Tout =Tin { 1/s-1/(s+1/CR) }
(この次の記事「部分分数分解」を参照してください)

逆ラプラス変換すると
Tout =Tin ( 1-e^{-(1/CR)t } )+20 ----- ①

となります。(+20は初期温度)


図1の角柱をアルミ材とし、温度上昇の過渡特性を求めてみましょう。
(断面1cm^2、長さ10cmとします)

[アルミの物性(特性)]

熱伝導率:236(W/mK)
熱抵抗率:1/236(mK/W)
熱抵抗:R=(0.1/236)/0.0001 =4.24(K/W)
(長さ×熱抵抗率)/ 面積

比熱:0.902(J/gK)[25℃にて]
比重:2.7(g/cm^3)
質量:断面1cm2、長さ10cmだから、質量=10×2.7 =27g
熱容量:C=比熱×質量 =0.902×27 =24.35(J/K)

これで必要なパラメータがそろいました。

熱抵抗R=4.24(K/W)、熱容量C=24.35(J/K)を式①に代入します。
1/CR=1/(4.24×24.35) =0.00969 だから

Tout =40 ( 1-e^-0.00969t )+20 ----- ② となります。

下図のグラフが求めたアルミ角柱の熱伝導過渡特性(Tout)です。

関連記事:
熱回路への誘い④ 2009-09-14
熱回路への誘い② 2009-09-10
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熱回路への誘い②

2009-09-10 18:54:59 | 電子回路
用語の紛らわしさ

「熱回路への誘い①」ではたいへん簡単なことをお話ししたのですが、まだどうもピンとこないと感じられる方も少なくないと思います。というのも、電気回路と違って、熱の場合は用語を明確に切分けにくいという特徴があるからです。例えば一般には、「熱」と「温度」を混同して使うこともよくあります。“風邪をひいて38℃の熱がある”、とかね。実際は「熱」と「温度」は物理量として明確に区別されます。よって、ここではオリジナルの命名も含めて、用語の意味を明確にすることに注意を払っていきたいと思います。

熱伝導における「熱」と「温度」の関係は、熱W(t)、熱量Q(t)、温度ΔT(t)、物質の熱容量Cとすると、次のように表せます。

Q(t)=∫W(t) dt[J]
ΔT(t)=Q(t)/C
ΔT(t)=1/C ∫W(t) dt 

これも電気回路とまったく同じですね。つまり、「熱」を時間で足算したものが「熱量」(電荷に相当)、「熱量」を物体の「熱容量」で割ったものが物体の「温度」ということです。


熱回路の各種パラメータ(Kはケルビン)
(覚える必要はありません。熱回路を計算するときに参照してください)

[伝導]
名称--------記号---単位------関係式

熱:----------W----(W)------=Q/t(電気ではRI^2 または IV)
温度(差):----ΔT---(K)[℃]--=Q/C(熱量 / 熱容量)

熱伝導率:----G----(W/mK)---=1/B
熱抵抗率:----B----(m K/W)--=1/G

熱伝導:------S----(W/K)----=1/R
熱抵抗:------R----(K/W)----=1/S

熱量(電荷)---Q----(J)(Wt)=C×ΔT
比熱:--------c----(J/gK)
熱容量:------C----(gJ/gK)(J/K)=比熱c×質量g

[対流]
熱伝達率------h-----(W/ cm^2K)
熱抵抗率------b-----(cm^2K /W)
熱伝達--------s-----(W/K)
熱抵抗 ------- r ----(K/W) [熱抵抗率/面積(cm^2)]

空気の熱伝達率 h=0.0012(W/ cm^2K)
空気の熱抵抗率 a=1/0.0012(cm^2K /W)


(例題)
断面1cm^2、長さ10cmの銅の角柱において、正方形の両面の温度差が40℃の場合に伝導する「熱」の大きさを求める。

断面1cm^2=0.01×0.01(m^2)=0.0001m^2 
銅の熱伝導率:403(W/mK)であるから
熱抵抗R=(0.1/403)/0.0001 =2.48(K/W) :(長さ×熱抵抗率)/ 面積
熱W=40 / 2.48 =16.1(W)

回答: 16.1Wの熱が伝導する。(両面の温度差:一定)

関連記事:
熱回路への誘い③ 2009-09-13
熱回路への誘い① 2009-09-08
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

デシメーションフィルタ

2009-09-09 18:52:59 | 電子回路
9/2付けの記事「Δ∑変調とAD変換」の続きです。
Δ∑変調式のAD変換器では、1ビットのΔ∑変調信号をディジタルローパスフィルタに入力し、マルチビットのディジタル信号に復調してAD変換値として出力しますが、このディジタルフィルタは一般に「デシメーションフィルタ」と呼ばれます。

デシメーションフィルタの内容については、「ΔΣ変調器から出力された1ビット信号の量子化雑音をディジタルローパスフィルタで除去してから、標本化周波数を間引いて(ダウンサンプリング)マルチビット化する」というような説明がよくみられますが、具体的にどのようなメカニズムなのかについて解説している記述はWeb上にも少ないようです。(誰か知ってたら教えてください。m(_ _)m )

そこで、想像をめぐらし理屈上可能であるという観点から、デシメーションフィルタの動作メカニズムを考えてみました。で、はたと思いついた方法は実に簡単なものです。

図を見れば一目瞭然ですが、Δ∑変調信号をマルチビットのディジタル信号に復調するのは、単なるパルスカウンタです。一定時間毎にビットをカウント(加算:積算)することにより加算平均(ローパスフィルタ)がなされ、同時にダウンサンプリングされることになります。パルスカウンタは単体のデバイスとして昔よく使ったものですが、ディジタルフィルタとダウンサンプラの仕事をするとは思ってもみませんでした。でも、たぶん理屈は合ってるはずです。

また、このビットカウントの理屈では、オーバーサンプリング時間とダウンサンプリング時間の比が大きいほど量子化精度が上がり、オーバーサンプリング時間が短いほど、高周波までAD変換できるという一般論も説明していますね。

関連記事:「ΔΣ変調とAD変換」2009-09-02
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熱回路への誘い①

2009-09-08 17:07:50 | 電子回路
熱伝導と熱抵抗

ある直方体(立方体含む)の物体があるとします(図1参照)。この直方体の正方形で対面する2つの面に「温度差」がある場合、温度の高い方から低い方へ「熱」が伝導します。この物体の熱伝導についての考え方は、少し電気を知っている人には容易に理解できます。何故なら、電気回路におけるオームの法則と合致するからです。

まったく同じ寸法の直方体でも、物性が異なれば伝導する「熱」の大きさが変わります。この物性の違いによる、熱の伝えにくさ(伝えやすさ)を「熱抵抗」Rとし、「温度差」ΔT、「熱」Wとすれば、それぞれの関係は次式で表すことができます。

ΔT=WR
W=ΔT/R
R=ΔT/W

熱回路
これを電気回路に当てはめると、温度差ΔT:電位差ΔV、熱W:電流I、電気抵抗R:熱抵抗Rに対応します。(熱Wは、量の概念としては、「熱流」です。)よって図1は、下図のような回路図に表すことができます。

熱容量
熱回路におけるもう1つ重要なパラメータが「熱容量」Cです。これも電気回路におけるコンデンサCに相当します。熱容量Cは「C=物質の比熱×物質の質量」で求められます。

熱容量Cの大小により、いったい何が変わるのでしょう。「C=比熱×質量」の式からも分かるように、熱容量が大きいほど「熱しにくく冷めにくい」ということです。例えば空気の比熱=1(J/gK)、水の比熱=4.18(J/gK)ですから、両者の質量が同じとすると、水の熱容量は空気の4.18倍ということです。言い換えると、温度を1℃上げるためには、水の場合は空気の4.18倍の「熱量(J)」が必要になります。


「対流」と「放射」
話が前後しますが、熱の移動は、「伝導」、「対流」、「放射」の3つの形態があります。これまでの記述は、実は「伝導」による熱移動についての話しでした。

「伝導」は物質中を熱エネルギーが分子の振動として伝播していくことです。
「対流」は物質の表面から周辺空間物質への熱の拡散です。エンジンの空冷や水冷などがこれに当たります。また石油ストーブなども「対流」を利用したものです。
「放射」は物質の熱エネルギーが直接外部の空間へ赤外線などの電磁波として放出され拡散することです。オーブントースターや電気ストーブなどがこれに当たります。

関連記事:
熱回路への誘い② 2009-09-10
抵抗の温度 2009-08-24
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

議事録とは何ぞや

2009-09-05 01:46:00 | その他レビュー
会議や打合せには必ず目的がある。その目的とは議題に対して、その時点における回答を与えることである。会議におけるディスカッションは議題が回答を得るまでの過程であり、ストーリーである。また論理の組立てである。様々な軌跡を描く思考の流れとも言えるだろう。

これは数学問題を解き回答を得ることにも似ている。与えられた数学問題の直後に回答を記述することはまずない。回答に至るまでには必ずいくつかの計算過程を通らなければならない。証明問題などは論理の組立てそのものである。しかし議論の目的にのみに着目すれば、回答あるいは結論のみ得られればそれでこと足りる。では、数学問題の計算過程を記述したものとはいったい何なのか。またそれは何を意味しているのか。

これを会議に置き換えるなら、これこそが議事録に他ならない。そして議事録とは対象とした議題が、如何なる過程を経て、どのような論理の組立てによって、思考がどのような軌跡を描いて結論に至ったのか、回答を得たのかを説明するものである。数学問題の計算過程と等価とみなすことのできる記述、これが最も簡潔な議事録と言えるであろう。また極めて秀逸な議事録であると言えるであろう。つまり議題と結論を結びつける要素はすべて揃っており、不要なものは一切無い。

しかし、秀逸であることに違いはないが、これを議事録の理想と決め付けるものではない。そもそも人が語り合う会議は数学ではない。論理と理論、およびメカニズムによって回答を得る数学と異なり、人は多くの場合、論理と感情の交点から回答を得る。数学の計算過程はまったく無味乾燥であるが、人の手になる議事録には多かれ少なかれ味わいがあり、書く人によって味わいが異なるのもそのためである。

議事録の定義付けにも幾つかの方法があろうが、要は議事録に何を求めるかによって大きな差異が生じる。行われた会議が業務の的確かつ確実な遂行を目的とした手段であるなら、記述内容の客観性は高いほどよい。つまり、おのずと数学の計算過程に近い内容の議事録になる。結果として文字数が最少となるためボリュームの小さな簡潔なものになる。故に要点が浮き彫りになる。片や、場の雰囲気や出席者の気持ちなども含め、可能な限り忠実に会議の様子を再現することを議事録に求めるのであれば、議題に直接関係がないものであっても情報量は多いほどその目的に接近する。これの究極が録音であり、昔でいうところのテープ起こしである。業務の一環とはいえ、状況によってはこのような記録や記述が必要となる場合もあるであろう。

しかし、もし議事録に求めるものを取り違えた場合は、ノイズだらけで極めて要点が読み取りにくい等の問題が発生し得るので、この点要注意である。

議事録には両極がある。一方が数学計算であり、他方が録音である。その折々に対応して、この両極の範囲内のどこかの点に求められる議事録の姿が存在する。「文書によって、第3者にいったい何を伝えたいのか」。文書作成の基準、および方法論の起点はこの一言に尽きるであろう。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ΔΣ変調とAD変換

2009-09-02 16:54:04 | 電子回路
そもそも、隣の机の山田君が「ホロンさん、オーディオでよく言う1ビットディジタルって、単なるパラレル-シリアル変換ですよね?」とたずねられ、「ちゃうちゃう、ぜんぜんちゃう」と答えたあと言葉が続かず、絶句してしまったことがきっかけで、改めてΔΣ変調について調べることになりました。ΔΣ式AD変換器が20年ほど前に登場したことは知ってはいましたが、実際に使う機会もなく、特に頓着することなく今日まできました。で、いまさらですがΔΣ変調の概要について、私が理解した範囲で書いてみようと思います。

図1に、一般のAD変換とΔΣ変調のブロック図を示します。AD変換器は3bit精度、サンプリング周波数はFs=3kHz、ΔΣ変調はFs=9kHzとします。
 
図2に3bitAD変換出力とΔΣ変調出力を示します。
AD変換された3bitのディジタル信号は、アナログ信号と1:1でリニアに対応します。しかしΔΣ変調された信号は、これは一体何を意味しているのでしょう。
(図案は、三重大学 工学部 道木慎二さんのプレゼン資料を参考にさせていただきました)

アナログ信号をΔΣ変調した信号は、図2に見るように、振幅(縦軸)は0と1の値しか持たないのでデジタル信号と言えます。しかし、時間軸(横軸)で見ると、単位時間辺りのパルス数(密度)が異なっているので、これはアナログ信号と言えます。つまり、ΔΣ変調された1bitの信号は、ディジタルとアナログの両方の成分を持っているということになります。(FM変調やPWMに似たものと考えてもいいでしょう)

ΔΣ変調信号をアナログLPF(ローパスフィルタ)に入力するとどうなるでしょう。
図3にその様子を示します。

このように、元のアナログ信号に戻り、これは「アナログ復調」したことになります。しかし、アナログ信号を変調して、直後にアナログ復調しても意味がありません。多かれ少なかれ信号を劣化させるだけです。これはむしろ、ΔΣ変調信号をディジタルフィルタに入力することにより、ディジタル復調するメカニズムの説明のための話法として便利です。

では、ΔΣ変調信号をディジタルフィルタLPF(マルチビット出力)に入力するとどうなるでしょう。
図4にその様子を示します。

このように、ΔΣ変調信号はマルチビットのディジタル信号が出力されます。これは「ディジタル復調」したと言え、これこそがΔΣ式AD変換の動作原理そのものです。

【ΔΣ式AD変換のサンプリング周波数】

①ΔΣ変調により標本化(サンプリング)と量子化が同時に行われ、サンプリング速度がAD変換精度(分解能)を決める。

②つまり、AD変換において発生する量子化ノイズの周波数を、元のアナログ信号の周波数に対して高周波に追いやるほどAD変換精度が上がる。よって、サンプリング周波数は高いほど望ましい。

③この比率をどの程度にするかは、最終的に必要なbit長で決定される。結果としてナイキスト周波数の数十倍から数万倍の周波数でサンプリングするので、これをオーバーサンプリング法(oversamplingmethod)という。

④最終的に16bitのディジタル出力を得るためには、少なくとも160倍程度のオーバーサンプリングが必要である。

ナイキスト周波数とは、ある信号を標本化するとき、そのサンプリング周波数 Fsの1/2の周波数を言います。ナイキスト周波数を超える周波数成分は、標本化した際に折り返し (エイリアシングとも言う)という現象を生じ、再生時に元の信号として忠実には再現されません。ハリー・ナイキストにより1928年に予想されたこの再現限界の定理は、「標本化定理」(サンプリング定理)と呼ばれます。オーディオ帯域のサンプリング周波数が44.1kHzであるのは、可聴帯域限界の20kHzをナイキスト周波数としているということですね。

次回はDA変換への応用を考えてみましょう。

関連記事:
「デシメーションフィルタ」2009-09-09
少し詳しいΔΣ変調①序 2010-03-21
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする