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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

微分は引算、積分は足算

2009-10-31 13:13:48 | 電子回路
右側の数値表を見てください。

① 白の列は、π(rad)を8分割し、値を順に足して並べたものです。
② 水色の列は、白列の値(θ)の正弦波関数(sinθ)です。
③ 緑の列はsinθの値から1つ前の値を「引算」して並べたものです。
④ 黄色の列は、緑色列の値を次々に「足算」して並べたものです。

左側の波形が数値表の列の色に対応しています。
水色がsinθの値で、これが元波形です。
緑色は、ほぼcosθの波形になっていますね。(振幅の係数は省略)
黄色は、水色の波形、つまり元波形のsinθに戻っていますね。

今回はπ(rad)を8分割しましたが、この分割数をどんどん増やして、∞まで増やせば
(言い方を変えると、隣り合う角度差をどんどん0に近づけていけば)

緑色の列(引算値)はsinθの微分値、つまりcosθ
黄色の列(足算値)はcosθの積分値、つまりsinθ

になりますね。

よって標題のように、「微分は引算、積分は足算」と言えます。
(これはディジタルフィルタの原理そのものでもあります。)
そして、微分と積分が互いに逆演算であることもわかりますね。


関連記事:「エクセルでディジタルフィルタ」2009-09-22
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docomo フルブラウザの注!

2009-10-30 11:35:19 | その他レビュー
まず結論からお話します。
近頃のdocomの携帯電話には「iモードフルブラウザ」なる機能がおまけ?として付いてきます。これはPC専用サイトも詳細に表示できる高機能なものですが、料金システムについては明確に示されていないのが実情のようです。はっきり示されているのはiモード同様パケット数に連動することと、上限額が5,985円であることのみ。

とあるショップの店員さんは次のように説明してくれました。
「iモードフルブラウザで一度でも閲覧すれば、上限額(5,985円)に達すると考えてください」

これが結論です。

添付図に、パケホーダイダブル(iモード、およびフルブラウザ)の料金システムを示しました。iモードの上限である52,500パケットと、フルブラウザによる上限の71,250パケットとの差は18,750パケットです。18,750パケットをデータサイズに換算すると、18750×128=2400,000byte(2.4Mbite)になります。例えばPC向けYahooサイトのトップページは約200Kbite(らしい?)なので、10ページ程度の閲覧で上限に達することになります。

もう少し簡潔にお話しましょう。
iモードであれフルブラウザであれ「1パケット=0.084円」、これが基本です。そして使用したパケット数の合計が支払い額になるということです。これはiモードのみを使用しても、フルブラウザのみを使用しても、iモードとフルブラウザを併用しても同じことです。

ただし、いずれにせよパケホーダイなのですから「上限パケット数:上限額」が定めてあるということですね。iモードは52,500パケット:4,410円が上限で、単独で使用しようがフルブラウザと併用しようが、とにかく52,500パケット:4,410円です。同様にフルブラウザの上限は71,250パケット:5,985円ということです。単独で使用しようがiモードと併用しようが、とにかく571,250パケット:5,985円です。言い方を変えれば、iモードのみの使用の場合、上限は4,410円、フルブラウザを併用した場合は、上限は5,985円です。

図の例1はiモードをの上限を超えて使用し、フルブラウザもある程度使用した場合の支払額です。例2はiモードを30,000パケット:2,520円、フルブラウザを20,000パケット使用して、計50,000パケット:4,200円の支払い額になる例です。このような場合も理屈上ありえないことはありませんが、実際はどうかというと極めて非現実的と言わざるを得ません。

実際としては、iモードのみを使用しても月に52,500パケット(上限)以内に収まることは非常に希だと思われます。個人的な話で恐縮ですが、私の2009年8月の通信パケット数は207,604パケットでした。ということは1日あたり6,697パケットということです。感覚としては、1日平均10~20分程度、googleやWikipedia等を閲覧しているだけなのですが、結果はこうなります。

iモードのみでも、ライトユーズに使っていて楽勝で上限を超えるということは、まさに正直な店員さんのいう、
「iモードフルブラウザで一度でも閲覧すれば、上限額(5,985円)に達すると考えてください」

ということです。
中には上限を超えない方もいらっしゃるでしょう。しかしそれはケータイでは「インターネットを利用していない」に等しいと言えると思います。今のケータイは「電話機能の付いたパソコン」なのです。そう捉えなければケータイを持ち歩く意味は希薄になります。

docomoのパンフレットやカタログには、iモードフルブラウザの上限パケット数等、ここに記述したようなことはまったく明記されていません。よって私はdocomoは非常にけしからんと思います(他社も似たようなものかもしれませんが)。例えば我が家の家族が使用している機種F02Aはワンクリックでフルブラウザが立上ります。私が使用している機種もメニューの中に「フルブラウザ」があります。

確かにフルブラウザの「初回立ち上げ時」には、注意書きらしき文言がズラズラとでてきますが、これもPCにアプリケーションをインストールするときに、「同意する」「同意しない」を選ばされるのと同じこと。使いたいアプリをインストールするのに「同意しない」を選ぶ人はまずいないでしょう。長ったらしい注意書きやことわり事を全部読む人もたぶんいません。

分かりやすいハッキリとした説明がなく、「上限でとまるから安心」という雰囲気を漂わせながら、容易にフルブラウザが立上ってしまうような設計。これって、ほとんどワンクリック何チャラのようなものじゃない?

関連記事:パケホーダイダブルの実際 2009-11-08
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クレヨンしんちゃん「ヘンダーランド」

2009-10-25 01:47:01 | 音楽・映画
クレヨンしんちゃん「ヘンダーランドの大冒険」

公開 1996年4月13日
監督 本郷みつる

抱腹絶倒とはまさにこのこと。いやあおもしろい。テンポも抑揚も展開も実にいい。ダイナミックなアクションや構図も素晴らしい。細かいところまで作りこんであり、無駄なカットは一切ない。不条理演劇が成功している好例でもあり、知性的なギャグに大笑いさせられる。またメジャーからマイナー、マイナーからメジャーへの変調タイミングが非常に巧妙。それから「音」。人はどのような音に、どのような感情を抱くのか、正確に分析されている。テクニックを語れば切がない。と同時に深い内容もさりげなく持っていて、ふと気づけば、「う~ん」と考えさせられる。アクションビームもカンタムパンチもまったく歯が立たない敵、ス・ノーマン・パーが何故あんなものに倒されるのか?これはボスとの初戦でも再現される。思えば、人が人を超える時というのは確かにあるのだ。ここまで手を抜かずに作り上げられている本格的作品はもはや芸術の領域といえよう。

「ハイグレ魔王」に始まる、劇場版しんちゃんシリーズは回を追うごとにレベルを上げてきたが、本作で急上昇した。そして「暗黒タマタマ」「ブタのヒヅメ」と続き、「温泉わくわく」というトラップはあるものの「ジャングル」で復活、そして「オトナ帝国」「戦国大合戦」の金字塔へとつながる。もし、劇場版しんちゃんを観たことがない人に最初の一本を薦めるなら、隠れた名作「暗黒タマタマ」か、この「ヘンダーランド」を推すだろう。
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トランス(変圧器)の原理③

2009-10-23 13:37:25 | 電子回路
「無負荷状態」のベクトル図は、下記の式で表される電圧、磁束、励磁電流の関係を示したものです。

v0=V0 cosωt
i0=I0 sinωt
φ=Φm sinωt

e1=E1 sin(ωt-π/2)
e2=E2 sin(ωt-π/2)
(2009/20/21付記事「トランス(変圧器)の原理①」を参照してください)

電圧V0に対して磁束Φmと励磁電流I0は共に90°遅れ(つまりΦmとI0は同相)、誘導起電力E1、E2はΦmより90°遅れるので、V0とE1、E2は逆相の関係にあります。


2.負荷状態
2次側に負荷を接続すると電流I2が流れます。すると起磁力N2I2がφに追加されるので1次側電流も変化しなければなりません。この新たな1次電流をI1とおけば、合成起電力はN1I1+N2I2となります。しかし

V0+E1=0
E1=-V0

は不変ですから次の式が成立ちます。

N1I1+N2I2=N1I0  -----①

ゆえに
N2I2=-N1(I1-I0) =-N1I1+  -----②

I1+ /I2=-N2/N1  -----③

ここで、I1+(=I1-I0)を「1次負荷電流」といいます。
式③より、「1次負荷電流と2次電流は逆相の関係にあり」大きさは巻数比に反比例します。

磁束Φmを電圧V0が要求する値に保つために「励磁電流I0は変わらず」、I2の起磁力を打消すためにI1+が流入すると考えることもできます。

1次電流I1はI1+とI0とのベクトル和で表されますが、図を見やすくするためにI0を著しく拡大して描いています。コアを有する変圧器であれば、きわめて軽負荷の場合を除き、I1とI1+はほとんど一致します。

関連記事:
「トランス(変圧器)の原理①」2009-10-21
「スコットトランスのしくみ」2009-10-03
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トランス(変圧器)の原理②

2009-10-22 13:51:32 | 電子回路
【ティーブレイク】

巻線の向きは?

上図のトランスの1次巻線と2次巻線の巻き方をよく見てください。互いに逆巻になっていますね。これは何故なのでしょう。

下図は棒状のコアに1次巻線と2次巻線を同一方向に巻いたものです。これに交流電圧v0を加えれば1次と2次の同一方向に起電力e1、e2が生じます。ではこの棒をこのまま折り曲げて、トランスのコアのようにロ型にすればどうなるでしょう。起電力e1とe2は上下において互いに逆方向になりますね。ということは1次側と2次側の端子電圧も逆相になるということです。よって、ロ型コアを用いてトランスを表す場合、1次と2次の端子電圧を同相として扱うために、巻線方向を互いに逆にしているのです。

関連記事:
「トランス(変圧器)の原理①」2009-10-21
「トランス(変圧器)の原理③」2009-10-23
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トランス(変圧器)の原理①

2009-10-21 16:55:08 | 電子回路
1.無負荷状態

2次側を開放状態にして1次側に交流電圧v0を加えると励磁電流i0が流れ、(その起磁力によって)磁束φを生じます。この磁束φの変化によって、1次側にe1、2次側にe2の起電力が誘導されます。これらを式で表すと次のようになります。
(N1:1次巻数 N2:2次巻数)

v0=L1・d i0/dt [V] -----①
 =N1・dφ/dt [V] -----②
(L1:1次側の自己インダクタンス)

e1=-N1・dφ/dt [V]
e2=-N2・dφ/dt [V]

v0の最大値をV0、i0の最大値をI0、磁束の最大値をΦmとすると次式のように置けます。

v0=V0 cosωt -----③
i0=I0 sinωt -----④
φ=Φm sinωt

e1=-E1 cosωt
 =E1 sin(ωt-π/2)
e2=E2 sin(ωt-π/2)
(E1:e1の最大値、E2:e2の最大値)

以上の式より端子電圧vに対して起電力eは-180°の位相遅れ、つまり電圧と起電力は逆相の関係にあることが分かります。

式③④を式①②に代入すると
V0 cosωt=L1・I0・ωcosωt =N1・Φm・ωcosωt -----⑤
(cosωtは合成関数)

E1 sin(ωt-π/2)=-N1・Φm・ωcosωt
E2 sin(ωt-π/2)=-N2・Φm・ωcosωt

式⑤より
V0=ωN1Φm I0=V0/ωL1 Φm=V0/ωN1

(ω=2πf f:Hz)

よって、磁束Φmは電圧V0によって決まり、コアのμ(透磁率)に無関係であることがわかります。また周波数が高くなればΦmが小さくなるからコアの断面積も小さくてすみ、無線周波になるとコアが不要になります。励磁電流I0はL1に反比例するので、μの大きいコアを用いれば小さくなります。これがコアを用いる一つの理由です。

***

L1=N1φ/i0(1Aあたりの磁束鎖交数)
=(N1/i0)(N1・i0) / (b/μS)
=μSN1^2 /b

(b:コアの平均長[m]、S:コアの断面積[m^2])

関連記事:
「トランス(変圧器)の原理②」2009-10-22
「起電力と電圧」2009-10-16
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RS485(422)の結線

2009-10-18 00:20:48 | 電子回路
RS485(422)の結線は2線?それとも3線?
RS485は皆さんご存知のように差動出力・差動入力です。つまりドライバは2つの出力端を持ち、GD(ドライバグランド)に対する(+)と(-)の2つの信号を出力します。そしてレシーバも2つの入力端を持っており、ドライバが出力する2つの信号の電位差を入力信号として受取るためノーマルモードノイズ(線間ノイズ)の影響を受けにくいというものです。よってシングルエンド(RS232C等)よりも長距離の伝送が可能となります。

では、RS485のドライバとレシーバを電線で結ぶ場合、差動なのだから(+)と(+)、(-)と(-)を結ぶ2本の線でいいのでしょうか?実際としてはこの2結線で通信できてしまう場合が多いようです。ほとんどの場合は2線で通信できるとも言われます。しかし実はこの2結線は危険なのです。
図を見てください。

差動信号の(+)の電圧を0-+5V、(-)の電圧を0--5Vとすると、ドライバはGDを基準(0V)として±5Vを出力します。しかしレシーバ側はどうでしょう。レシーバはGRを基準(0V)として±5Vを受けなければなりませんが、GDとGRは絶縁されていますので(+)(-)信号がGRに対して不確定になります。2つの信号間電圧は確かに0-10Vと確定していますが、GRと各信号間の電圧は不明です。これでは、レシーバが確実に信号を受信するとは言えませんね。しかしながら多くの場合この2結線のみで送受信できるというのは、GDとGRが両者共に大地(フレーム等)に接地されていなければ、電線で2結線した折にGDとGRが概ね同電位になるからです。といっても高いインピーダンスで電位が保たれるので、この場合の同電位は脆弱なものです。よって、安定した送受信を行うためには下図のようにGDとGRを電線で結び、3結線にしなければならないのです。

*(-)の電圧を便宜上0--5Vとしましたが、実際は負論理の0-+5Vです。

もし、ドライバとレシーバの距離が比較的近く、GDとGRが共にアルミや鉄などの共通フレームに落ちて(接続されて)いれば、GDとGRを結線したことと同じですから、この場合は2本の信号線のみでオッケーということになりますね。

*電線で3結線した場合、GDとGRを両方フレームに落としたらダメですよ。フレームグランドは必ずどちらか一方だけにします。

[終端抵抗]
レシーバ側につないでいるRtは終端抵抗(ターミネータ)です。終端抵抗は「反射」による信号劣化を防ぐものです。水をはった風呂桶に小石をポチャンと投げ込むと、そこを中心に波が広がりながら伝わって行き、風呂桶の淵に達すると波は跳ね返って戻ってきますね。あれが「反射」です。そして反射した波は後から来た元の波にぶつかって乱れます。電線を伝わるパルス信号も波ですから電線の先端で反射します。しかし、もし電線が無限大の長さであれば、理屈上、反射は起きませんね。実は、終端抵抗を付けることにより、電線は無限大の長さと等価になるのです。よって反射は発生しません。ツイストペアの場合、終端抵抗の値は100~120Ωと概ね決まっています。電線における反射の詳細については「特性インピーダンス」をキーワードとして検索してみてください。

関連記事:
反射と終端抵抗、周波数と電線長 2010-01-16
ノイズと対策 ツイストペア、シールド線 2010-02-05
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起電力と電圧

2009-10-16 14:32:27 | 電子回路
電圧と電流それと電力、これらはそれぞれの概念が明確ですね。電圧と電流は「オームの法則」V=IR 、電力はW=VIと見慣れた数式が意味を確定的に示しています。

しかし「起電力」とは一体何でしょう。この言葉も一般的によく使われ、例えばインダクタンス(コイル)やトランスなどはこの言葉抜きに語ることはできませんが、「電圧」と同義である故になかなか理解しにくい概念です。

例として、コイルにおける端子電圧:vと、誘導起電力:eを表す式を示します。

v=N・dφ/dt  -----①
e=-N・dφ/dt -----②
(N:コイルの巻数、φ:コイルに鎖交する磁束、φ=NI)

一般に起電力の記号は[e]、単位は[V](ボルト)と、電圧と同じです。このように「起電力」と「電圧」は同じものと捉えられ、また実際問題として同じものなのですが、上記の磁気誘導(コイル、トランス)を考える場合など、電圧とは異なる起電力の言葉の意味を理解しておく必要があります。わざわざ別の名前を与えているのですから、電圧よりも起電力の方が好都合な場合があるということですね。

ここで[レンツの法則]を思い出してみます。図を参照してください。
「コイルは、これと鎖交する磁束の変化を妨げる方向に、磁束を発生させる誘導起電力を生じる」

この言葉が起電力の性質をよく表しています。「磁束の変化を妨げる方向に磁束を発生させる力」=誘導起電力、としていますが、コイルに磁束を発生させるのはコイルに流れる電流ですから、起電力とは「電流を流そうとする力」と言えます。このようにして生じる「起電力」が、結果として端子間の「電圧」に言葉を変えるのです。

イメージを捉えるために、空気圧縮機(コンプレッサ)に例えれば、空気の圧縮ポンプが起電力に相当すると言えるでしょうか。圧縮ポンプが動き始めるとエアタンクに取付けた圧力メータの値が上がって行きます。この空気圧が起電力に対する電圧に相当します。タンクが密閉であれば空気は流れず圧力がどんどん上がっていきますね。ここで、圧力メータを取外してそこにエアホースをつなげば、空気が流れホースの先から大気へと噴出します。これは端子電圧間に負荷をつなげば電流が流れることと等価と言えます。

エアホースをはずし再度圧力メータを取付けて圧縮ポンプを動かせば、また空圧は上がっていきます。そしてあるところで圧縮ポンプを止めれば、空圧は一定値に固定されます。これは起電力がゼロで電圧のみ存在しているという状態です。さてこの状態を表す電子回路はどのようなものでしょうか?そう。電荷を溜めているコンデンサです。このコンデンサには確かに端子電圧はありますが、内部に起電力はありません。
(コンデンサが放電によって電流を流す場合、コンデンサの起電力のせいだとは言いませんね。)

コンデンサに電荷を溜めたのは、コンデンサに電流を流し込んだ外部の起電力です。これも「起電力とは電流を流そうとする力」であり、結果として端子電圧の形で現れることを示していますね。

つまり、最もシンプルに言えば、”起電力は電源である”ということです。”電源”という概念の具体的な形態は「電池」や「発電機」ですね。ドロッパ型電源やスイッチング電源も一般に”電源”と呼ばれますが、実際は電源電圧の「変圧および安定化」回路です。

さらに厳密に言うと、電源とは種々の物理(化学)エネルギを電気エネルギに変換するもので、変換された時の電気エネルギが起電力ということです。


さて、誘導起電力の性質をもう少し詳しく見てみましょう。
式をもう一度記述します。

v=N・dφ/dt  -----①
e=-N・dφ/dt -----②
(N:コイルの巻数、φ:コイルに鎖交する磁束、φ=NI)

磁束がコイルに鎖交することにより生じる起電力は、このように微分値として現れます。つまり「磁束の変化の度合い」が起電力ですから、誘導起電力は過渡現象か交流のどちらかであると言えます。これが一つの性質です。

もう一つは、式②の頭にマイナス符号が付いていることです。これは端子電圧を表す式①と逆相ということですね。端子電圧vに対して磁束φ(電流i)は90°遅れ、起電力eは磁束φに対して90°遅れるので、端子電圧vに対しては、起電力eは常に逆相になります。

関連記事:
「トランス(変圧器)の原理①」2009-10-21
「コイルとは何か② 自己誘導起電力」 2012-10-21
「インダクタンスと磁気」2009-10-01
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クレヨンしんちゃん「温泉わくわく」

2009-10-11 03:26:09 | 音楽・映画
クレヨンしんちゃん「温泉わくわく大決戦」
公開 1999/4/17
監督 原恵一

いまだに信じ難いのですが、これが、本当にあの「暗黒タマタマ」や「戦国大合戦」「オトナ帝国」を監督した原恵一の作品?と思わず呟いてしまいました。クレヨンしんちゃんは一貫して、ストーリーや描写の中に、主題としての家族の絆や家族愛が強く語られているのですが、本作にほとんどそれが感じられることはありません。これがいつもの野原一家とはとても思えないのです。ラストではまるで押し売りかのように「家族!」「家族!」「家族!」と彼らは連呼しますが、絵はそれをまったく伝えてくれず、言葉はむなしく消え去ります。しんちゃん流のウィットの効いたギャグも皆無に近いと言えます。オリジナリティも非常に薄く、ネタのほとんどが多方面の既存作からの流用です。およそ「作品」から伝統と新しさを取去れば一体何が残るのでしょう。本作はこの問いにあっけらかんと答えています。つまりもっとも重要な「魂」が入れられていないのです。本当に「しんちゃん映画」シリーズとしては珍しい、底の浅いドタバタ喜劇ですが、一体何を狙ったのでしょう。小学生の低学年辺りなら楽しむかな?とは思えます。ただ、まったく別の観点から、これが「嵐を呼ぶジャングル」「オトナ帝国」と続く、一転してグレードの高い作品の一作前であることは大変興味深くはあります。たぶん何か事情があったのでしょうね。
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サブルーチンも間違える

2009-10-08 15:01:32 | 安全・品質
(09/09/26付記事「人は何故ミスをするのか」を参照してください)

冷たい缶コーヒーが飲みたかったのに、自販機のボタンを押して出てきたスチール缶を握った瞬間にショックを受けたり、家を出る前にいつも通り持つべきものを用意したはずなのに、電車に乗ってからケータイを忘れたことに気づいて家に取りに戻ったり、というようなことは多くの方が何度か経験しているのではないでしょうか。また、疲れていたり風邪で熱があるような場合、いつも普通にやったり考えたりしていることが面倒になり、無理にやろうとして何度も間違えるようなことも、よくあることでしょう。それから私事で恐縮ですが、車を運転していて交差点を通過してから信号が赤だったことに気づいたことが、実は過去2回あります。

これらはサブルーチンの対象パターンが変わったわけではなく、サブルーチンの中で発生するミスであり、これが一般的によく言われる典型的な「ミス」の一つでしょう。この理由としてサブルーチンの錯覚や疲労が考えられますが、一般化すると、サブルーチンの情報処理能力は時々の状況や感情に左右されるということです。機能低下により情報が正しく処理されなければ、ミスが発生するのは当然ですね。

しかし、人が「サブルーチンのジレンマ」から逃れられないように、サブルーチンも自らの問題をかかえています。サブルーチンを簡単に言うと「慣れ」であり、慣れの側面は「慢性化」です。つまり「サブルーチン⇔慢性化」と書けるわけです。ミスはサブルーチンが慢性化することにより、サブルーチンを構成しているブロックピースのいくつかが欠落して起こるのでしょう。認識の瞬間、あるいは認識から動作に至る過程において、必要な情報の一部を失えば動作はおのずと不正確なものになります。
 
具体的現象を眺めてみましょう。私も外出時にケータイをよく持忘れ、たびたび不自由な思いをしました。また現在進行形です。そこで対策として、玄関ドアの内側に大きく「ケータイ忘れるな」という文字を書いた紙を貼付けてみました。結果として、この張紙は多大な効果を発揮してくれました。出がけに目に映る風景が毎日見慣れたものと異なっているため一瞬立ち止まるのです。しかしながら、この効果も長くは続かず、ほどなくドアの貼紙は出がけの見慣れた風景と化してしまったのです。そこで次に紙の色を変えて貼り替えてみると、効果が復活し、やがてまた見慣れた風景に埋もれました。

このことはサブルーチンの慢性化とその要点を教えてくれています。サブルーチンの中のショートカットされやすい(忘れてしまいがちな)工程に「一瞬立ち止まらせる気づき」を促す何かを設けることが有効な対策の一つであること。しかしこれは、時間とともに効果が薄れていくということですね。

これに似たことが、クレヨンしんちゃんの「みさえ」と「ひろし」の会話にもあります。
(^^)
朝、出勤の準備をすませて家を出ようとする、ひろしに、みさえが声をかけます。「忘れものは?」「ない!」。これは、みさえの声が、ひろしを一瞬立ち止まらせる効果があった頃には有効だったでしょうね。
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クレヨンしんちゃん「戦国大合戦」

2009-10-04 23:48:46 | 音楽・映画
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦」
2002年4月20日 劇場公開
劇場映画シリーズ第10作目(映画化10周年記念作品)
監督:原恵一

前作「おとな帝国の逆襲」も名作として名高いが、この「戦国大合戦」は正にアニメ史に残る名作と言えよう。非常に良質なラブストーリー。これに、しんちゃん的テイストを加えることでオリジナリティ溢れる作品になった。ただしこの作品に限り、しんちゃんが脇役にまわっているので、しんちゃん映画シリーズの番外編とも捉えられる。よって、しんちゃん流の爆笑は無く、ウィットの効いた軽い笑いがさりげなく散在している。

問題のラストだが、よほどの偏屈でない限り、鑑賞する側は廉姫と又兵衛が結ばれてほしいと思うし、制作側もそれがわかっているから応えようとするわけだが、そのため(二人を結ぶ)にこの舞台設定では、又兵衛にこの最後の演技をやってもらうのが最も自然なのだろう。だから頷ける。これは結ばれ得る本質的形態の一つで、究極。

しかしながら、誰に観せるのかという意味(大きな問題)では、制作者は確信犯でもあるから、お小遣いをもらってこれを観に来た小中学生の良い子達に対しては、「ごめんなさい」と謝らなければならないだろう。
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スコットトランスのしくみ

2009-10-03 23:19:48 | 電子回路
二相交流というのはあまり耳慣れない言葉ですね?
家庭用の扇風機は単相交流、現在の電車のモータは三相交流電ですが、かつては電車も二相交流モータを使用している時期(区間)があり、現在もなお少数残っているようです。(ちなみに回転磁界を考案したニコラ・テスラが最初に作った交流誘導モータは二相交流だったそうです。1883年)複相交流は線間に位相差があるが故の交流ですが、この二相交流の位相差は90°です。

現在でも各所で使用されている二相交流ですが(新幹線の架線は二相交流から単相を取出している)、発電所から送電されるのは三相交流ですから、三相を二相に変換する必要があります。そのために「スコットトランス」と呼ばれる変圧器があります。さて、この覚えやすい名前のスコットトランスとは、どのようにして三相を二相に変換しているのでしょう。

図を見てください。
1次側va-vbの線間電圧を2次側のU相に、vcの相電圧をV相に変換しています。ベクトル図から、2次側U相の電圧はベクトル図のVabに等しく、vcに対してπ/2(90°)の位相差であることがわかります。(いそがずに、じっくり見てください)

よってvcとVは1次巻線と2次巻線の比を1:√3とすれば、Vの大きさがUと等しくなり、U-Vは位相差が90°の二相交流になります。名前の通りスコットさんが考案したのでしょうが、実に巧妙ですね。

関連記事:
「相電流(相電圧)と線間電流(線間電圧)」2009-09-25
「トランス(変圧器)の原理①」2009-10-21
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インダクタンスと磁気

2009-10-01 20:49:32 | 電子回路
[分かりきっていることを繰り返しやることに意味がある]

[起電力]
起電力(きでんりょく)とは、電流の駆動力のこと。 または、電流を生じさせる電位差(電圧)のこと。単位は電圧と同じボルト(V)を用いる。 起電力を生み出す原因には、電磁誘導によるもの(発電機)、熱電効果(ゼーベック効果)によるもの(熱電対)、 光電効果(光起電力効果)によるもの(太陽電池)、化学反応によるもの(化学電池)などがある。
(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

①インダクタンスには1/2・LI^2のエネルギが蓄えられる。
②単巻のインダクタンスに流れている電流を瞬時に遮断したり方向を変えたりできない。
③2次回路のあるものは、1次回路を遮断すると、同一のアンペア・ターンで2次回路に電流が流れ、磁界を同一に保つ。(そして2次回路の負荷によってゼロに収束する)
④インダクタンスを流れる電流の変化率は、端子電圧をVとすると、V/Lである。

*キャパシタンス(コンデンサ)には1/2・CV^2のエネルギが蓄えられる。

インダクタンスの両端電圧をv(t)とすると、電流iは、
i=1/L ∫v(t) dt

v(t)を定電圧Vとすると、
i=(V/L)t

*キャパシタンスに流れる電流をi(t)とすると、端子電圧vは、
v=1/C ∫i(t) dt 

i(t)を定電流Iとすると、
v=(I/C)t


以降は添付図を参照してください。

[磁気に関するクーロンの法則]
F ∝ (m1×m2)/r^2

2つの磁極m1、m2間に働く力は、磁極の強さの積に比例し、磁極間の距離の2乗に反比例します。

[磁化]
クギを磁束空間に置くと、はじめに磁気をもっていなかったこのクギに磁気が表れます。このような現象を磁気誘導といい、クギは磁化されたといいます。
(磁束は磁力線を足し合わせたもの:磁束密度)

鉄、ニッケル、コバルトは特に強く磁化され、磁束から離れても磁気をもっています。(これがコアのヒステリシスになる)。このような物質を強磁性体といいます。アルミニウム、すず、白金などは強磁性体ほど磁化されず、このような物質を常磁性体といいます。

磁石と磁石は逆極性で合わせるとくっつく。さて、鉄も磁石にくっつく。これは鉄が磁化されて磁石になったということです。くっつくのは、あくまでも磁石と磁石です。

[アンペアの円周路の法則]
磁界の強さをHとすると H ∝ I/r です。
両辺にrをかけて Hr ∝ I

左辺に2πをかけると H2πr ∝ Iで、H ∝ I/ 2πrとなります。
(2πr=円周)

ここでHとI/ 2πrが等号で結ばれるような比例定数kを用いると
H2πr =kIとなり、H =k(I/2πr) となります。

k=1とし2πr=1m(1メートル)とすると
H=I/m また Hm=I となります。

このようにして磁界の強さHの単位は(A/m)となります。これをアンペアの円周路の法則といいます。


[環状コイル(巻数Nが十分大きい)の性質]
(銅線を同心円状にくるくる巻いたものをコイルといいます)

①磁界はコイル内部だけに生じる。
②コイル内部の磁界はどの位置でもだいたい等しい。
③半径r(m)の円周上の磁界の強さは等しく、その経路の長さはD=2πr (m)である。
④半径r(m)の円周を経路に取ると、この経路に鎖交する電流の大きさは
巻数Nで電流がIならNI(A)である。
⑤半径r (m)の円周上の磁界の強さHは
アンペアの周回路の法則を用いてH×2πr =NI、故にH=NI /2πr
 
半径r=0.1m N=100の環状コイルに3.14Aの電流が流れている時の
コイル内部の磁界Hは
H=NI /2πr、H=100 /2r、故に、H=500(A/m)である。

[鎖交]
①コイルと磁束が鎖交しているとき、磁束が変化するとコイルに起電力が誘導される現象を電磁誘導という。相対的に次のようにもいえる。
②電流と磁束が鎖交しているとき、電流が変化すると磁束が変化する。

起電力の大きさ:eは、磁束をφ(t)、比例定数をkとすると
e = k・dφ(t)/dt

[磁束の単位]
N=1、e=dφ(t)/dt (k=1)においてe=1Vとなるφを磁束の単位とし
単位記号をWb(ウェーバ)とする。

巻数Nのコイルに発生する誘導起電力はe=N・dφ(t)/dt

[レンツの法則]
「コイルは、これと鎖交する磁束の変化を妨げる方向に、磁束を発生させる誘導起電力を生じる」

【有名な言葉:自然は(急激な)変化を好まない。】


[電磁誘導]
自己誘導起電力はコイルと鎖交する磁束φ(t)の微分値に比例する。

e =N・dφ(t)/dt -----①

磁束φ=kN・i(t) -----②
(巻数Nと電流i(t)に比例する k:比例定数)

②を①に代入すると
e=N・kN・di(t)/dt e=kN^2・di(t)/dt 

このkN^2をLで表すと
e=L・di(t)/dtとなり、Lを自己インダクタンスという。

単位はH(ヘンリー)(定義よりLは巻数の2乗に比例する)

di(t)/dt=1(A)のときe=1(V)となるようなLが1(H)である。


[トランスの原理]
(L:自己インダクタンス M:相互インダクタンス)
 
N1φ1=L1I1 N2φ1=MI1 M=N2φ1 /I1 (L1=N1φ1 /I1)
N2φ2=L2I2 N1φ2=MI2 M=N1φ2 /I2 (L2=N2φ2 /I2)

上2行は覚える必要がなくて、だいじなのは次。

1次側に発生する起電力=e1
2次側に発生する起電力=e2 とすると

e1=L1・d(I1)/dt+M・d(I2)/dt
e2=L2・d(I2)/dt+M・d(I1)/dt

M×M=N1φ1 /I1 × N2φ2 /I2
M^2=L1×L2


[単層ソレノイド] 
◎巻数Nの2乗に比例する。
◎透磁率μに比例する
◎断面積Sに比例し、距離Dに反比例する。


はい、本日ここまで。(^^)

関連記事:
磁界Hと磁束φ、電流Iと巻数N 2012-09-27
「絵で見るコイルとコンデンサの過渡特性」2010-11-11
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コメント (3)
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