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都市閉鎖の愚策にはめられた人類

2020-05-28 16:29:22 | Web News
都市閉鎖の愚策にはめられた人類

田中 宇
2020年5月16日

人類のコロナ危機が始まって4か月経ち、新型コロナウイルスに関する世界規模の指標情報がいろいろ出てきた。感染者数、死者数、抗体保有者数などだ。コロナ危機は全体的に、政治的に強いバイアス・価値観の歪曲がかけられているので、これらの数字を使った歪曲報道もいろいろ出ている。報道や権威筋による御託宣に騙されないよう、公開されている指標を使って自分なりに考察する必要がある。私が今回考えたのは、コロナの致死率についてだ。

コロナは世界的に90%程度の人が感染の自覚がない無発症か軽症で終わっている。これらの無自覚者は政府の感染者統計にほとんど含まれない。ランダム調査や、発症者の濃厚接触者の調査では、無自覚者の感染がわかるが、それらは無自覚感染者全体のごく一部だ。感染者のうち何人が死んだかという致死率は、政府統計の感染者を分母にしてはならない。それを分母にすると、コロナの致死率は6.6%(死者31万人/感染者460万人)というとんでもない数字になる。季節性インフルエンザの致死率が0.1%と言われるので、その66倍となり「ワクチンができるまで全人類の外出を禁止せねばならない」という話がまかり通る。

さすがにこの数字は多すぎるということになっているようだが、今の危機に対するマスコミなどの歪曲はコロナの危険性を誇張する傾向なので、この種の手口は危機発生以来日常的に繰り返され、人々はすっかり軽信させられている。コロナの恐怖戦略は大成功している。「恐怖戦略」という言葉を使った私は「コロナの恐ろしさに気づかない妄想屋」とレッテルされる。私のような者が馬鹿扱いされるほど恐怖戦略は大成功していることになる。

致死率の分母になる数字として、より適切なのは、各地で行われるようになってきた広範な抗体検査の結果として出てきた抗体保有率(人口に占める抗体保有者の割合)だ。権威ある(笑)マスコミであるFTによると、欧州各国の抗体保有率(全国規模)は、ベルギー6.4%、スペイン5%、イタリアは4.4%。英国が3.8%。ドイツは0.7%だ。このほか、スペインの首都マドリードでは10-14%、集団免疫策をやっているスウェーデンのストックホルムでは30%(4月末)から40%(5月)、米国のNY市では21%、NY州全体では5%台、米国の加州で3%前後(4月後半)、日本では神戸の病院で3%、東京で6%などの抗体保有率が検査の結果として発表されている。日本の大都市は意外に抗体保有率が低い。米国全体で5%との概算もある。半面、中国では、武漢の病院での検査で抗体保有率が2-3%しかなかった。

地域によって抗体保有率はバラバラのようだ。これらは先進国の話であり、もっと貧しい発展途上国では、住環境が悪くて密集した状態をやめることができず、都市閉鎖が機能せず無発症や軽症での感染が拡大して抗体保有者が50-80%とかの大多数になり、誰も調査しないまま自然に集団免疫が形成されている都会も多そうだ。そうした地域は、人類全体の抗体保有率を押し上げている。半面、人類の2割が住んでいる中国では、強烈な都市閉鎖策の結果、コロナ発祥地の武漢でさえ抗体保有率が2-3%という調査結果だ。中国は、人類の抗体保有率を押し下げている。ドイツや日本などクソまじめ民族の国は、社会距離やマスク着用などの感染拡大策をクソまじめにやるので、人類の抗体保有率を押し下げる。半面、もっとケセラセラな諸民族は日常生活を変えたくないので抗体保有率を押し上げる。さらに半面、そういう民族の政府は、厳しい都市閉鎖策をやるので、その厳しさは抗体保有率を押し下げる(しかし政府自体がケセラセラだと、閉鎖をやってるふりしてやってない)。

これらを踏まえて、私が推測した現時点の人類全体の抗体保有率は5%だ。集団免疫には遠い。スペインや米国は人類平均値、中国や日独はそれより低く、都会はこの平均値より高く、とくに途上諸国の大都会は抗体保有率がものすごく高そうだ。だから人類の抗体保有率は5%でなく7-10%かもしれない。だが、長期の都市閉鎖を正当化するため現状をできるだけ集団免疫から遠い状態として描きたい権威筋は、人類の抗体保有率をできるだけ低く見積もりたいだろう。今回はそのような権威筋とその軽信者たちに配慮し、控えめな数字として5%を使うことにした(コロナ危機は既存の地球温暖化などと同様、自然科学のふりをした政治であり、ネゴや談合、詐欺の産物だ)。

検査キットが不良品でない限り、抗体検査の確度は99-100%だ。PCR検査のように検査の精度を問題にする必要はない。抗体保有者数は、これまでにコロナに感染した人数になる。人類の総数は76億人なので、抗体保有率を5%とすると、3.8億人がすでにコロナに感染したことになる。コロナの世界的な感染者総数は3.8億人だ。コロナによる世界の死者数は31万人なので、31万/3.8億で、コロナの致死率が計算できる。答えは、0.08%だ。

毎年やってくる既存のインフルエンザの場合、ワクチンを接種していない大人の人類のうちの10%が感染し、そのうち50万人前後(29万-65万人)が死ぬと概算されている。算出される致死率は0.07%だ。新型コロナの致死率は、既存のインフルエンザとだいたい同じということになる。既存のインフルエンザがどんなに蔓延しても、世界的な都市閉鎖をすべきだという話は、これまで一度も出たことがない。そんなことを提案する人は頭がおかしいと思われる。対照的に、今回の新型コロナは、都市閉鎖をすべきでないと提案する人の方が頭がおかしいと思われている。コロナは大変な病気だという恐怖戦略の扇動に押され、合理的な議論が何も行われないまま、世界的に都市閉鎖が延々と続けられている。まさに愚策である。

新型コロナによる死者数は、発表されている数よりはるかに多いという説がある。コロナの重症者の多くは他の持病を持っており、死亡時の主な死因がコロナなのか持病なのか判断が難しい。世界的に、死亡診断書の「死因」を何と書くか、死をみとった医者の判断でかなり変わってくる。「死因」自体が政治的な存在だ。その上に、コロナ危機の政治性が加わる。米国や英国では、4月以降の死者数が例年より多めだと指摘されている。これは、コロナが主因で死んだ人が統計外で多くいるということでなく、都市閉鎖で病院に行きづらくなり、持病やなどコロナ以外の疾病が悪化して死んだ人が多かったからだと考えられる。

「わが国には感染者がいない」と独裁者が豪語しつつ実質的な都市閉鎖をやっていない途上諸国は、感染者と死者の数を少なめに出す。中国は強烈な都市閉鎖をやっているが、コロナの発祥地としての責任を取らされたくないので感染者や死者の数を少なめに発表している。対照的に、リベラル民主体制を演じている先進諸国は、コロナが大変な病気であることを喧伝する恐怖戦略を展開しないと都市閉鎖をやれない。それらの国は死者を多めに発表する動機がある。ドイツから援助資金(EU国債発行)をもらいたかったイタリアやスペインも同様だ(もらえなかったので死者数の誇張はやめたようだ)。

先進諸国の中には英国やドイツのように、できれば集団免疫策をやりたいと思いつつ米軍産リベラル系からの恫喝や扇動があるので仕方なく都市閉鎖をやっている国もあり、それらは検査数を多くして感染者数や死者数を正確に出そうとしている観がある(とても政治的なコロナ危機においては「正確に」という表現も、正確に表現できなかったりするが)。などなど、世界的に見ると、死者数を多めに出そうとする国と、少なめに出そうとする国の両方があり、総合的に判断すると、各国の公式発表の合計値である31万人の死者数のままでいいのでないかと考えた。

新型コロナは、既存のインフルエンザと同程度の致死率なのに、世界中で長期の都市閉鎖をやることになり、経済が大恐慌に陥り、人類の10%(8億人)が極貧層に転落してコロナ危機の何倍もの犠牲が出ることになり、米連銀(FRB)に巨大な負担がかかってコロナ危機が解決する前に米連銀とドルと米覇権の体制が崩れると予測されるなど、無茶苦茶な事態になっている。

都市閉鎖は、コロナ危機への対策としてほとんど意味がないのに、経済面で人類に強いる苦痛がものすごく大きい。都市閉鎖・経済全停止は、外出禁止や社会距離の拡大によって一時的に感染拡大を減らすが、永久に経済を全停止し続けるわけにいかないので、いずれ閉鎖がを緩和される。そうすると、再び感染者が増える。免疫力が低かったり持病があったりしてコロナに感染して重症化する人の多くは死ぬ。感染するのが今だろうが来年だろうが、低免疫・持病持ちの人は感染したら一定の割合で死ぬ。都市閉鎖は、彼らの死をしばらく先延ばしするだけだ。しかも、都市閉鎖している間に彼らの免疫力がさらに落ち、病院に行きにくくなるので持病が悪化する。

持病持ちの人々の中には、親族に養ってもらえず、生活費を稼ぐために仕事をしなければならない人も多い。持病持ちなので、雇用は不安定だ。そのような人々は、今回の都市閉鎖・経済全停止の中で、真っ先に仕事を失っている。再就職はまず無理だ。彼らは世界的に貧困層へと落ちぶれ、住環境が格段に悪化し、米国などでは持病の治療のための医療費も払えなくなり、死んでいく。コロナでなく、都市閉鎖が彼らを死なせる。都市閉鎖を喧伝している人々は、まさに彼らのような持病持ちを保護するために経済を犠牲にするのが良いと言い続けてきた。しかし実際は、都市閉鎖が持病持ちを殺す。都市閉鎖策を擁護している人々が、持病持ちの人々を殺している。

スウェーデンで実践され、英国などで提案されてきた集団免疫策は、持病持ちや低免疫者を死なせないための策として提案されてきた。ワクチンがない以上、集団免疫策はコロナ危機を乗り越える唯一の政策だ。ワクチンがいつ完成するかという予測は、コロナ危機の政治歪曲が多量に入っている分野の一つだ。ワクチンの完成時期を、実際より早めに歪曲する方向に喧伝されている。ワクチンはなかなか完成しないし、効く人と効かない人が出てきたりして、不完全なものになるだろう。ワクチンには期待できない。となれば、集団免疫しかない。

集団免疫も、形成されている場所とされていない場所が出てくる。コロナ以前のような激しい人々の移動が続けられていたら、1年ぐらいで世界的な集団免疫がワイルドに形成されていただろうが、その場合、持病持ちや低免疫者が重症化して多数死んでいた。スウェーデンなどの集団免疫策は、持病持ちや低免疫者を感染から守りつつ、残りの人々が集団免疫を形成し、持病持ちや低免疫者がずっと感染せずにすむような「管理された集団免疫の形成策」である。コロナは正体不明な部分が多いので、完璧な管理は無理だ。集団免疫がうまく形成される地域では犠牲者が少ないが、そうでない地域も出てくる。ロシアンルーレットと非難されるゆえんだ。しかし、ワクチンに期待できないとなれば、とるべき方法はそれしかない。

都市閉鎖策は今回のコロナ危機の初期に、集団免疫が形成されていく際、持病持ちや低免疫者の感染と重症化が急増して医療崩壊を起こすのを防ぐための策として提案されていた。一時的に、一時しのぎとして短期間の都市閉鎖をやることで、感染拡大を統御し、犠牲者をできるだけ少なくしつつ集団免疫に到達するのが、都市閉鎖の効能だった。

しかしその後、都市閉鎖策は全く違う使われ方をしている。都市閉鎖(日本では外出自粛策)をできるだけ強烈にやることで、日々の新たな感染者を減らすことが至上命題になっている。これは全く本末転倒で近視眼的だ。日々の新たな感染者が十分に減ったら、都市閉鎖を緩和・解除していけることになっているが、そうなると必ず新たな感染者が再び増える。本末転倒な都市閉鎖策を続ける限り、感染者の増加幅が拡大したら都市閉鎖を再開せざるを得なくなり、都市閉鎖の緩和と再開を延々と繰り返すことになる。日々の新たな感染者をできるだけ減らすという目標は、集団免疫の形成をできるだけ遅らせることになり、経済の全停止が長引き、コロナによる損失より、経済停止による損失の方がはるかに大きくなる。

しかも、目標を日々の感染者数の増分に切り替えてしまうことで、唯一の解決策である集団免疫の形成に対して無自覚になってしまい、最終的な持病持ちや低免疫者の死者数が増えてしまう。最終的な持病持ちや低免疫者の死者数を減らすには、集団免疫に至る過程をうまく管理することが必須だが、それが全く行われなくなるからだ。集団免疫を重視する文書を配信すると必ず「あなたは持病持ちや低免疫者の命を軽視している」という批判を受けるが、話が逆である。今の愚策な都市閉鎖を軽信・支持している人こそ、人の命をうっかり軽視している。

都市閉鎖策は、開けたり閉めたりの今後のどっちつかずな期間を含めると、おそらく世界的に長期間(2-3年かそれ以上)続けることになる。その間、無数の倒産、失業、貧困化が発生し、ドルや米覇権も崩壊し、最終的な経済損失が莫大になる。ワイルドな無管理・放置型の集団免疫策の方がましだった、というとんでもない結論になりそうだ。

日本政府の都市閉鎖策(外出自粛・経済全停止)の政策は、安倍首相が米トランプ大統領から個人的に命じられて開始した。4月初めまで安倍政権は、できるだけ検査をしないことでこっそり集団免疫に近づこうとしていた。そんな安倍にトランプがダメ出しし「都市閉鎖策をやれ。ロックダウンを宣言しろ」と命じたのだろう。ロックダウンという、それまで日本政府の使用言語に入っていなかった用語が突如として頻発され、今の非常事態という正式名称の準都市閉鎖策が開始された。非常事態宣言に際し、先頭に立ったのは安倍自身でなく、東京都の小池知事だった。ロックダウンという言葉を記者会見で初めて頻発したのも、安倍より先に小池だった。「安倍はダメだ。小池の方が有事政策に長けている」といった見方が流布したが、私は違う見方をしている。

安倍はトランプに命じられて、それまでの「こっそり集団免疫策」をやめて都市閉鎖策に切り替えざるを得なくなったが、都市閉鎖をやると経済全停止が長期化して経済が崩壊すると予測したのだろう。安倍自身が都市閉鎖策の音頭をとってしまうと、いずれこの策の失敗が決定的になった時に安倍の責任にされてしまう。そのため安倍は、都市閉鎖策の音頭取りを小池や、その他の道府県の知事たちにやらせることにした。全国的に名が売れて政治家として有利になるので、知事たちは喜んで音頭取りをやり、小池は誇らしげにロックダウンを宣言した。非常事態の宣言対象から外された県の知事たちは口々に「うちの県にも非常事態を宣言してください」と安倍に懇願した。安部は狡猾だ。

トランプは、英国がいったん宣言した集団免疫策を潰している。米覇権放棄屋・隠れ多極主義者であるトランプは、世界各国に都市閉鎖策をやらせることで、米国覇権の自滅を不可避にした。日銀は日本だけの世話をすることに専念せざるを得なくなり、コロナ以前のように日銀がドルや米連銀を献身的に助ける構図が失われた。このように考えると、4月初めに日本のコロナ政策を集団免疫から都市閉鎖に大転換させたのはトランプから安倍への命令である。米国以外の国際社会やWHOは、日本の政策を転換できない。4月初めの政策転換は唐突であり、日本内部の議論によるものでない(トランプは3月から安倍に転換しろと圧力をかけていたが、当初安倍は東京五輪に固執するふりをしてやんわりトランプを無視していた)。トランプが電話する相手は安部だ。小池ではない。小池は、安部に命じられてやっている。

実のところ日本は、スウェーデンやドイツと並び、集団免疫の形成をうまく管理できる「クソ真面目さ(国民の自己規律の力)」を持っている。日本は何も法律で縛らずに強力な都市閉鎖策をやれている。ドイツの抗体保有率は欧州で最低の0.7%だ。ドイツ人は、社会距離などの感染防止策をクソ真面目にやっているのだろう。私はこれまで、日本のコロナ感染開始が米国より早かったので、東京の抗体保有率をNY市(21%)より多い30%ぐらいでないかと推測していた。だが最近の調査では東京の抗体保有率はもっと低いと概算されている。国民が自主的な感染防止策をクソ真面目にやれる国は、集団免疫の形成もうまくやれる。日本はその典型だ。集団免疫形成の観点から言うなら「東京の人はもう少し外出したり、隣の人との間隔を少し詰めても良いですよ。少しずつね」ということになる。

日本は、4月初めまでのように、経済(消費、店舗)を開けたまま、感染拡大を一定以下に抑え続け、スウェーデン同様、効率的に集団免疫に到達できたはずだ。日本がそれをできなかった理由はただひとつ、徹頭徹尾の対米従属であるため、安倍を筆頭に日本の上層部がトランプの命令に逆らえず、政治的な理由から都市閉鎖に転換せざるを得なかったことだ。コロナ危機は科学のふりをした政治の問題である。トランプが世界を長く無意味な都市閉鎖に引っ張りこんだのも、世界の覇権構造を転換(多極化)するという政治目標のためだ。

最近、米国の覇権運営の奥の院的な存在であるロックフェラー系のCFR(外交問題評議会)の機関紙「フォーリンアフェアーズ(FA)」がスウェーデンの集団免疫策を礼賛する論文を発表した。CFRの本質は隠れ多極主義だが、内部の勢力的な本流は軍産複合体だ。FA誌は、テロ戦争やイラク侵攻、イランやロシアに対する敵視など、軍産の主張のほとんどを支持してきた。FA誌が集団免疫策を礼賛したのは、軍産が都市閉鎖策の長期化と愚策性、米国覇権を自滅させる特性に気づき、いまさらながらに世界のコロナ対策を集団免疫策に転換したがっているからでないかというのが私の推測だ。

しかし、私の推測が正しいとしても、世界各国がちかぢか都市閉鎖策を放棄して集団免疫策に転換することはない。不可能だ。トランプら隠れ多極主義者が軍産を乗っ取ってやらかしたコロナに関する誇張された恐怖戦略が大成功し、人類の多くはコロナをとても恐れている。みんな感染することをとても恐れており、集団免疫策を受け入れる素地が失われている。素地の回復は困難だ。集団免疫策は、すでに実施しているスウェーデン以外の国々になかなか広がっていかない。軍産は、世界的な都市閉鎖と経済全停止が延々と続き、米国覇権が崩壊していくのを傍観するしかない。軍産は騙された側だ。そのため、軍産の言いなりである人類も騙されている。多極派が軍産を騙して経済自滅への道にはめ込んだので、軍産の傘下にいる人類の経済活動もこれから破滅していく。
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コロナ危機に関する私の認識のまとめ

2020-05-24 23:29:33 | Web News
コロナ危機に関する私の認識のまとめ

田中 宇
2020年5月13日

今年1月23日に中国が武漢と湖北省の1億人に対して閉鎖政策を始めた時から危機になった「コロナ危機」は、リーマン危機やテロ戦争を超える巨大な危機だ。2度の世界大戦に匹敵する影響を人類に与える可能性が高い。コロナ危機は、ウイルスや病理の特性、感染対策のあり方に関する是非と、感染対策に政治的な陰謀が入っている可能性が高いこと、都市閉鎖策や社会距離策が経済に大変な問題を引き起こしていること、QE(量的金融緩和政策)依存によるドル崩壊への道の不可避性、グローバリゼーションと米覇権体制を終焉させるであろうことなど、問題がとても多岐にわたっている。コロナ危機はまだ初期段階であり、事態はどんどん変わっているし、新たな政策や扇動も各国や各勢力から頻繁に出されており、状況が不安定だ。ここいらで、これまでに考え散らかし、書き散らかしたことをまとめるのが良いと思って今回の記事を書く。これまでの繰り返しが多くなる。

まず新型コロナがどうやって発生したかについて。中国の武漢が唯一の発生地(動物からヒトへの感染開始地)だ。中国政府は、中国以外の国での発祥を示唆したが、稚拙なプロパガンダの域を出ていない。覇権国っぽく偉そうな態度をとるなら、英国系の巧妙なプロパガンダを見習いなさい(笑)。もともとコウモリが持っていたコロナウイルスがハクビシン(野生猫)など野生の中型哺乳類に感染し、そこからヒトに感染したことはほぼ確定的だ(コウモリから直接ヒトにはたぶん感染しない)。ただ、中型動物からヒトへの感染の舞台が、武漢の野生動物市場だったのか、武漢のウイルス研究所だったのかが未確定だ。私はウイルス研究所からの漏洩だろうと思っている。

中国政府は当初、武漢の野生動物市場で食肉用に生きたままま売られていた哺乳類からヒトに感染したと言って、武漢の動物市場でDNA採取などをやったのだが、その結果を詳細に発表していない。中国政府は、コロナの発祥経路について米国など世界の中国敵視派から非難されている。もし武漢の動物市場が舞台だったなら、中国政府は動物市場での調査結果を詳細に発表し、世界からの疑いを晴らすことができる。しかし、中国政府はそれをやっていない。中型動物からヒトに感染した舞台は、動物市場でなかった可能性が高い。

すると、可能性が高い説で残っているのは、武漢のウイルス研究所からのウイルス漏洩しかない。この研究所はSARS発生後、SARSやMERSなどコロナウイルス全般の感染ルートの解明、ワクチン開発など、まっとうなウイルス研究をやっていた(SARSは華南の野生動物市場で野生猫からヒトに感染した)。華南全域からインドまで行ってコウモリのウイルスを集めて研究していた。こうした研究を生物化学兵器の開発と決めつける人は稚拙であり、中国敵視派として失格だ。英国系の巧妙な敵視策を見習いなさい(笑)。

武漢ウイルス研究所では、コウモリが持ついろいろなウイルスを中型哺乳類に感染させて、どうなるかを実験していた。この研究所には隔離度が最も高い「P4バイオラボ」があり、感染実験はP4ラボ内で行われていたはずだ。さもないと実験者が感染し、家族や他の人々をも感染させてしまう。そして、何らかの経緯で、中型動物の新型コロナのウイルスが付着した物質がP4ラボから外に出され、そのウイルスに研究所の要員が感染して中型動物からヒトへの感染が起こり、それが世界に広がってコロナ危機になったと考えられる。

中国では当初、北京のP3バイオラボでSARSのウイルス研究をしていたが、その際に何度か過失によってSARSウイルスが研究所の要員に感染するかたちで外部に漏洩している。ウイルスが付着した物質は、消毒液をかけたりして不活性化(殺)してからバイオラボ外に出すことになっているが、消毒液を全体にかけたつもりがかかっていない部分があり、活性化したままのウイルスがラボ外に出てしまい、研究所の要員が感染して漏洩が起きた。SARSは重篤に発症しないと他人に感染しにくかったので大事にならなかった。今回の新型コロナは無発症の人からどんどん感染するので世界的な危機になった、というのが一つの仮説だ。

武漢のP4ラボは北京のP3ラボより漏洩抑止策が強いが、抑止システムがどんなに強くても作業手順が厳格に守られないと漏洩が起きる。ラボからの漏洩がコロナ危機の発祥だった場合、ラボの管理が不十分だったことになり、中国政府の責任になる。だから中国政府は武漢ラボ発祥説を躍起になって打ち消しているのだと考えられる。中国政府はEUに圧力をかけ、EU域内の新聞が社説で武漢ラボ発祥説を書かないようにせている。これは本末転倒な稚拙な策で、むしろ「やっぱり発祥地は武漢ラボなんだ」と世界の人々に思わせてしまう。何度も言うが、巧妙な英国系を見習いなさい(笑)。

ただ、コロナの発祥が武漢ラボからの漏洩だったとしても、漏洩を引き起こしたのが米国の諜報機関だった可能性は残る。武漢ウイルス研究所の研究者の多くは米国の大学への留学経験がある。留学中にCIAなどから脅されたり贈賄されたりして米国のスパイに仕立てられ、中国に帰国後に武漢ラボに就職してスパイをやり続け、その者が米国側からの命令で新型コロナをラボ外に漏洩されたというシナリオがありうる。米国の諜報界(軍産複合体)が中国を破壊するためにウイルスを漏洩させたという筋書きだ。しかし今回のウイルスが、中国だけでなく米欧にも蔓延して米国中心の世界経済を破綻させることは事前に予測できたはずで、このシナリオは軍産にとって自滅的だ。このシナリオが現実なら、挙行したのは軍産のふりをして米国覇権をぶち壊してきた隠れ多極主義のネオコンやトランプ系だ。

このシナリオだとしても、中国政府は、自国の重要な研究所が米国のスパイに入り込まれていたという不名誉を認めたくない。だから、どっちにしても中国政府が武漢ラボ発祥説を認めることはない。中国政府が認めなくても、武漢ウイルス研究所の発祥である可能性が高い。

▼誇張されているコロナの脅威

新型コロナウイルスに感染した人の80-95%は、無発症か軽症だ。無発症者は感染した自覚がない。軽症者は多くの場合、2-3日以内に症状がなくなる。のどの痛みや発熱、倦怠感、息苦しさが発生して「コロナかも」と思っても、翌日ぐらいに治ってしまうと「まあいいや。もう治ったし」で終わってしまう。だから、無発症と軽症は同じ範疇で考えられる。こういう人が感染者の80-95%だ。残りの人々の中に、入院が必要な人、呼吸器の着装が必要な人、死ぬ人が出てくる。入院した時点で致死率が25%、呼吸器を着装した時点で致死率が90%前後と言われている。恐ろしい病気であるが、ほとんどの人は感染しても大したことない。大半の人の無発症と、ごく一部の大変な重症が併存している病気だ。しかも、無発症で感染するので感染防止策が難しい。重症になる人の多くは、呼吸器疾患や糖尿病などの持病がある人だ。英国や米NYでは、コロナによる死者の95%が持病持ちだった。コロナは恐ろしい病気だと喧伝されているが、それは全体のごく一部の人の症例を、感染者全員の症状であるかのように報じる手法だ。

米国の監獄で囚人と職員にPCR検査を実施したところ、検査対象の80%が感染していた。このニュースは日本で「3密が起こりやすい監獄で、囚人がみんな肺炎になってしまった」みたいな感じで報じられた。だが実のところ、このニュースの最重要点は、日本語で報じられていない点にある。それは、この監獄での検査での感染者の96%が無発症だったことだ。ロイターの英文記事では、何人が重症だったか書いていない。しかし、無発症が96%なら、軽症が3%台、中程度以上の症状の人は1%以下だろう。ほとんど誰も肺炎どころか症状そのものが出ていない。無発症で蔓延するコロナを象徴する出来事だ。それなのにマスコミは、感染者の中にけっこうな数の重症者がいるかのような印象を日本人に持たせたがる報道(のふりをしたプロパガンダ発信)を続けている。

こうしたコロナの危険性を誇張する方向の歪曲プロパガンダによる「恐怖戦略」が、コロナ危機の政治的な特徴だ。報道の歪曲は世界的なものであり、偶然の産物でなく、何らかの意図的なものだ。マスコミ自身は傀儡なので、その意図についての分析をやらないし、そんな歪曲は存在せず、陰謀論者のたわごとだとしか言わない。「心ある専門家」たちはすでに、今のコロナ対策はおかしいと言い始めている。だが、なぜおかしなことが延々と行われるのか、覇権側の動機について考えている人はほとんどいない。911の時もそうだった。ブッシュ政権や軍産の陰謀だと感じる人は多かったが、なぜそんな陰謀が展開されるのか、考えていた人が世界にほとんどいなかった。深い分析をする人が必要だ。

米国では、共和党支持者(保守派)より民主党支持者(リベラル主義者)の方が、マスコミによるコロナに関する報道を軽信し、コロナを過剰に恐ろしいものとして考えている。コロナによる実際の死亡者数は報道されている人数より多いと思うかという世論調査の質問に対し、民主党支持者は63%が「報道より多いと思う」と答え、29%が「事実の人数を報じている」、7%が「実際は報道より少ない」と答えた。共和党支持者は3つの答えがいずれも30-40%で一定していた。民主党支持者が「死者数が報道より多い」と考える傾向なのは、民主党系のリベラル派のマスコミが、そのように報じているからだ。米国のマスコミの多くはリベラル系だ。

共和党系の新聞であるWSJ(Wall Street Journal)は最近「コロナは実のところそんなに大それたウイルスでないとわかってきたのに(中道派とリベラル派の)マスコミはコロナを過剰に恐ろしいものと喧伝する恐怖戦略の第3弾をやっている」という社説を掲載した。WSJによると、恐怖戦略の第1弾は「EUを離脱したら英国は経済崩壊する」で、第2弾は「トランプが当選したら米国は崩壊する」で、いずれの恐怖戦略も失敗した。「コロナは実のところそんなに大それたウイルスでない」!!。よくぞ言った。WSJや共和党右派はえらい。今の時点でこんなことを大手紙が社説で書けることが米国の底力だ。米国の本質は左派(リベラル、民主党)でなく右派(保守、共和党)にある。

イラク戦争後、共和党はネオコン(親軍産のふりした反軍産)にとられてしまったので、軍産はリベラルと結託している。コロナ危機を扇動しているのは軍産リベラルだ。日本は軍産リベラルの傀儡国だ(安倍は、隠れ反軍産のトランプの個人的傀儡だが)。戦後の日本の知識人は全員がリベラル系(しかも小役人だし、うっかり軍産傀儡)なので、日本人は対米従属のくせに永久に米国の本質を理解できなかった(コロナで米国覇権終了で間もなく対米従属も終わるけど)。

コロナ危機の前に「地球温暖化問題(温暖化人為説)」というのがあった。あの問題も、米国ではNYTやCNNなどリベラル系のマスコミが人為説を過剰に喧伝していた。気候変動の最大の原因は人為の石火燃料の燃焼でなく、太陽の活動の変化だ。軍産リベラルは、それを人為だと歪曲してきた。WSJは人為説の詐欺性を書き続けてきた。正しい。温暖化問題は、コンピュータのモデル計算でのシミュレーションによって「正当化」されてきた。コロナ危機での死者数の予測と都市閉鎖策の効果も、英国政府に雇われた専門家であるインペリアル大学のファーグソン教授らが作ったシミュレーションが根拠になっている。温暖化問題とコロナ危機の歪曲の手口は似ている。

だが事態は「歴史は繰り返す」の下の句だ。温暖化人為説のシミュレーションはインチキとばれるまで何年か権威を持っていたが、コロナ危機のシミュレーションは、作られてから2か月もしないうちにコード的にインチキだと指摘され、早々と権威を失った。ファーグソン自身、先日コロナに感染して自宅療養中に人妻の不倫相手を家に呼び込んでいたことが発覚し、政府顧問を辞めた。まさに喜劇だ。ホッケーの棒とかも喜劇だったけど。

コロナ危機は世界経済を全停止させているが、地球温暖化問題も、うまく人類を騙せていたら、温暖化対策として世界の燃料使用を強制的に減らし、世界経済を減速・縮小させていたはずだ。コロナと温暖化は軍産リベラル系の同じ勢力が扇動しているので、同じ目的を持った戦略っぽい。両者に共通する「目標」は、世界経済を長期間(数年間とか)の縮小に追い込むことだ。これによって、世界の政治経済の体制を大転換する意図でないかと思われる。世界を転換する戦略として、コロナの方がはるかにうまくいっているので「前のバージョン」のうまくいかなかった戦略である温暖化問題は、もうやらないことにした。そんな感じだ。

WSJはコロナ危機を扇動された「恐怖戦略」と看破したが、世の中の多くの人々は歪曲報道を軽信してコロナに怯え上がり、政策に対してものすごく従順になっている。恐怖戦略は大成功している。英国では国民の9割が、政府に都市閉鎖を延長してもらいたいと思っている。経済の即時再開を望んでいる人は4%しかいない。また英国民の50%は、政府が生活費をくれるなら、このまま仕事が再開されなくても構わないと思っている。少し前までリベラル左派の妄想だったUBIとかMMTの実現まで、あと一歩のところまで来ている(財源が中央銀行群のQEしかなく、QEの恒久化が可能だと思えないので、結局のところ社会主義と同様、人類を巻き込んだ妄想なのだが)。世界をUBIやMMTに追い込む「究極の社会主義革命」が温暖化問題とコロナの目的だったのか??。左派的すぎる感じがする。

コロナによる「医療崩壊の危機」が喧伝されるが、これも簡単に歪曲できる事象だ。病院はもともと中に入るためのセキュリティが厳しい場所で、それがコロナ危機によってさらに厳しくなった。誰も、国内のすべての病院の病棟を見まわって医療崩壊しそうかどうか確認できない。軽症者を入れる病院代替のホテル群の部屋の埋まり具合も発表されていない。しかも、もともと都市閉鎖政策をやる最大の理由は各国とも、集団免疫を意識しつつの「医療崩壊の回避」(感染が拡大していくこと自体は止められないが、それを遅延させることで医療崩壊を防ぐ)だったのが、いつの間にか「感染拡大を減らすこと」自体が都市閉鎖の目標になっている。この転換は愚鈍だ。都市閉鎖で感染拡大を減らしても、都市閉鎖をやめたら感染が再拡大する。この事態はすでに韓国やドイツで起きている。

今のように集団免疫を無視する場合、永遠に断続的な都市閉鎖が必要になる。実際には都市閉鎖をやっても2-5年で集団免疫に達し、都市閉鎖をやめても感染拡大しなくなる。結局のところ、集団免疫しか最終着地点はない。ワクチン開発に2-5年かかるとして、集団免疫がこっそり達成されるころにワクチンが完成する。無意味だ。そのころには長期間の経済停止によって世界経済が破綻し、世界で10億人ぐらいが貧困層に転落している。都市閉鎖は愚策だ。集団免疫について、感染しても免疫の期間が不明だと批判されるが、それならワクチンの効果の期間も不明だから同じことだ。集団免疫を阻止したいリベラルのマスコミはコロナ感染者の免疫期間が短いに違いないみたいな書き方をしているが、それだけに実際の免疫期間は意外と長いのでないかと思う。大学も、米国のジョンズホプキンスとか、コロナの恐怖をあおっているところは、研究機関のふりをしたプロパガンダ機関である。

リベラル系のマスコミは「報道より多くの人が病院に行けず、在宅のままコロナで死んでいる」と報じ、多くの人がそれを軽信している。実のところ、在宅での死者が増えたのは都市閉鎖政策が原因だ。英国では年初来の自宅での死者数が過去5年間の平均より8196人多いが、そのうちの6546人がコロナ以外の死因だという。80%がコロナ以外の死だ。死亡の前後にPCR検査して感染が確認されたら、主な死因が何であれコロナによる死亡と診断される可能性が世界的に高いので、実際のコロナ以外の自宅での死亡はもう少し多いだろう。90%とか。イタリアでも同様の傾向と報じられている。たぶん世界的に、在宅のまま死んでいる人のほとんどはコロナでない。都市閉鎖にせいで、コロナ以外の持病か悪化したのに病院に行けず、治療を受けられずに死んでしまった人が、世界的に、コロナによる(主な死因がコロナである)真の死者数よりはるかに多いはずだ。それなのに、人の命を大事にするはずのリベラルな人々は、歪曲された話を軽信している。

今回はリベラル派をいろいろ批判したが、実のところ軍産やリベラルは、コロナ危機の「被害者」だ。コロナ危機の今のような展開にした「犯人」は、軍産リベラルになりすました隠れ多極主義者、ネオコンとかトランプ系の勢力だ。トランプはすでに諜報界・軍産リベラル(マスコミ、民主党)との戦いに勝ち、米国の諜報界・軍産を乗っ取っている。トランプ系は乗っ取った軍産リベラルに、犯人であるかのように演じさせつつ、コロナ危機を今のような展開に持ち込み、都市閉鎖によるグローバリゼーション=米国覇権体制の自滅、QEによるドルの破綻への道を作っている。これは最近のいつもの結論だ。話が長くなったので、このあたりでいったんやめて配信する。歪曲されたコロナ危機はまだまだ何年も続く。先は長い。
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検察蹂躙法案強行へ 造反が出なければ自民党はオシマイ

2020-05-17 20:43:45 | Web News
検察蹂躙法案強行へ 造反が出なければ自民党はオシマイ

日刊ゲンダイDIGITAL
公開日:2020/05/16 17:00 更新日:2020/05/16 17:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/273253

それにしてもひどい悪相になってきた安倍首相。コロナの補正予算を人質に強行突破の算段だろうが、その薄汚さに国民の怒りは倍増。自爆に突き進んでいくだろう。

 ◇  ◇  ◇

これも国民が「おかしい」と声を上げた成果だ。国会外のデモの「反対」の叫びが委員会室に響く中、野党の抵抗もあって希代の悪法、検察庁法改正案の採決が来週以降に先送りとなった。

15日、ようやく衆院内閣委員会に森法相が出席。案の定、検察幹部の定年延長の特例要件に関し「現時点で具体的に全て示すのは困難」などとポンコツ答弁連発で、審議は紛糾した。その後、野党は国家公務員法改正案を担当する武田大臣の不信任決議案を提出。採決は持ち越されたが、政府・与党は懲りずに来週中の採決と、衆院通過を諦めていない。

松本文明衆院内閣委員長は不信任案提出について「委員会進行に大きな影響を与えるものが突如として出されるのは、委員長として良いことだとは思っていない」と野党を批判したが、どの口が言うのか。国家公務員法改正案との束ね法案化による“森隠し”などで、委員会進行に大きな影響を与えてきたのは、政府・与党の方である。

15日の審議のネット中継にはアクセスが集中。視聴しづらい状況になるほど人々の関心は高い。皆、政権のもくろみ通り悪法が成立するのを恐れている。最大の問題は、時の内閣の胸ひとつで検察幹部の定年を引き延ばすことが可能な点だ。

「検事総長は65歳、その他の検察官は63歳で退官」との規定は、1947年の検察庁法成立時から存在する。実はこんな法律は他にない。81年に国家公務員法が改正されるまで一般の国家公務員には定年がなかった。首相や大臣、国会議員には今も定年がない。

なぜか。検察官は時に最高権力者の逮捕も辞さないほど強い捜査権限があり、人を裁判にかける公訴権を持つ唯一の存在だ。そのため、強大な権力の“防波堤”として職に居座り続けないように定年を設け、自動的な退職を促してきたのだ。

政治からの一定の独立性も維持され、気に入らない検察官の罷免や、お気に入りの定年延長も免れてきた。しかし改正法案が成立すれば防波堤は一気に崩れる。検察官だって人の子だ。定年間際で本来は就けなかった検察トップにも、時の政権の覚えがめでたければ就任できるとなれば、その検察官は政権の顔色を一切気にせず、疑惑を捜査できるだろうか。

松尾邦弘元検事総長らロッキード事件の担当者を中心に大物OB14人がきのう、改正法案に反対する意見書を森宛てに提出。「検察組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きで看過できない」と非難したが、その通り。つまり検察に対するアメとムチを一方的に時の政権に与えるシロモノで、「検察蹂躙法案」にほかならない。

■目に見えないウイルスが可視化した政権の正体

〈これは検察を「政治検察」にする暴挙だ。旧ソ連の独裁者スターリンすら想起する〉

15日付の毎日新聞オピニオン面で、そう喝破したのは早大教授の水島朝穂氏(憲法学)だ。政権の意のままに動く政治検察の危険性について、〈捜査は野党など政権の反対者にばかり向かいかねない〉と指摘。ひどい悪相になってきた安倍首相の政治姿勢を皮肉って、こう批判した。

〈思えば安倍政権はNHKの会長や経営委員、日銀総裁に自分の思想や政策が重なる人物を据え、果ては自身の憲法解釈変更を認めてくれる人物を内閣法制局長官に据えた。最後に残ったのが検察庁ということなのだろう〉

騒動の発端は“官邸の守護神”の定年を閣議決定で勝手に延長したこと。

そのデタラメを指摘されると、慌てて無理筋の法解釈変更。それも批判されると、後付けで法律そのものを変えようとする。この政権はいつだってそうだ。その場しのぎのゴマカシが常套手段である。

安保法制でも見られた勝手な「解釈変更」、人事の「お友達優遇」、モリカケや桜を見る会の「公私混同」、官邸の意向に沿うよう、ツジツマ合わせの大臣と役所の「忖度」――。こうして逃げ切ってきた憲政史上最長政権。その全ての姑息さが検察蹂躙法案には凝縮されている。

「新たなコロナ対策を盛り込んだ2次補正予算案の審議を盾に取れば、野党も国会を長く空転させられないし、与党議員もおとなしく従う。そう見くびって強行突破の算段なのでしょうが、今回の不正義には、いつもの手口は通用しません」(政治評論家・森田実氏)

国民は完全に気づいたのだ、安倍の薄汚い正体に。類似投稿も含め、1000万件を超えた「#検察庁法改正案に抗議します」のツイート。8日夜に最初に投稿した都内女性が朝日新聞に語った言葉が象徴的だ。

■捨て身になれば国民は拍手喝采する

もともと政権に不満があったわけではないが、新型コロナウイルス騒ぎが見方を変えた。〈みんなが困っているのに対応ができていない。そういう政府の思うままになったら危ないと思った〉と。

いまだにアベノマスクを引っ込めず、口から出まかせのPCR検査拡充、休業補償を願う声には耳を閉ざし続ける。「自分は政治と無関係」と思い込んでいた人々も、ずさんなコロナ対応を見て「政治判断が自分の生活に直接影響する」と実感した。この政権に任せていたらヤバい。国のため、国民のためじゃなく、首相自身のための政治なんだ。そう目覚めた結果、普段は政治的な発言を控えがちな芸能人にも「ツイッターデモ」が飛び火し、大きなうねりとなったのだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

「一致団結してコロナと対峙すべき時期に不要不急な法案を提出。野党と無用な対立をあおり、国民を分断する。ステイホームで政治の動きを知る機会が増えた私たちに、現政権はあり得ない姿を見せつけています。見えないウイルスのおかげで安倍政権の正体が可視化されるとは皮肉ですが、採決を強行すれば国民の怒りは倍増し、自爆に突き進むだけです」

検察蹂躙法案の採決には、自民からも造反者が出なければおかしい。自身のツイッターに「強行採決は自殺行為」と投稿した泉田裕彦衆院議員が内閣委の委員を外され、縮みあがっているのかも知れないが、世論の大勢は造反者の味方だ。

石破元幹事長も希代の悪法に「これを通すというのは政権どうのこうのって話じゃない。日本国の民主主義の問題」と語ったが、ならば民主主義を守る行動に移すべきだ。前出の森田実氏が言う。

「自民党議員は公認剥奪を恐れ、火事場泥棒の不正義を見過ごすのでしょうか。石破氏も離党を覚悟して自派閥議員を引き連れて造反すべきです。その覚悟がないなら、口先ばかりで現政権の暴走を止められなかったとの評価が後世に残るだけ。“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”ですよ」

捨て身で造反すれば国民は拍手喝采し、再起の目は必ず出てくる。逆に造反が出なけりゃ、自民党はもうオシマイだ。
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コロナより不気味 強いリーダーへの渇望と同調圧力の蔓延

2020-05-11 20:08:03 | Web News
コロナより不気味 強いリーダーへの渇望と同調圧力の蔓延

日刊ゲンダイDIGITAL
公開日:2020/05/11 17:00 更新日:2020/05/11 17:00

新型コロナウイルス対策で、都道府県知事が脚光を浴びている。とりわけ評価を上げているのが、ボンクラ政府に先んじて自粛解除基準とする「大阪モデル」を発表した大阪府の吉村知事だ。テレビに出まくり、もてはやされている。

これまでも大阪のローカルメディアは、吉村が所属する日本維新の会を持ち上げるきらいがあったが、それが今は全国レベルで行われ、「吉村知事が総理になればいい」なんて声まで聞こえるようになってきた。

6日に実施された毎日新聞の世論調査でも、コロナ対応で「最も評価している政治家」の1位に吉村が躍り出た。2位の小池東京都知事に大差をつけるぶっちぎりだった。

「吉村知事も小池知事も、会見ではちゃんと数字を出して説明するし、自分の言葉で話す。何もできない政府との対比で、有能に見えるのでしょう。ただ、それは政治家として当たり前のことをやっているだけで、プロンプターの原稿を棒読みしているだけの安倍首相の方がおかしいのです。

テレビが連日、吉村知事や小池知事の会見を垂れ流し、目立ちたがり知事がテレビ出演で好感度を上げようとする。コロナ対応というなら、国の基準に従わずにPCR検査を徹底して早期に蔓延を封じこめた和歌山県知事や、1人の感染者も出していない岩手県知事がもっと評価されるべきでしょう。協力金など、リッチな自治体のパフォーマンス競争や、キャッチコピー合戦で危機対応が政治ショー化し、メディアのチェック機能が働いていないことは問題です」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

■世論に火をつけるスケープゴート

“吉村効果”で日本維新の会の政党支持率まで上昇しているが、そもそも、大阪の公的サービスを削減しまくってきたのが維新だ。橋下徹知事以後、救命救急センターへの補助金を削減したり、公立病院を閉院させたりと、「改革」の名のもとに医療機関や保健所を切り捨ててきた。つまり、大阪府民の命を軽視してきたのだ。病床を減らし、防護服の備蓄もなく、雨ガッパの寄付を呼び掛ける惨状を招いたのは自業自得と言っていい。

PCR検査も徹底できない状況にしておいて、孤軍奮闘のように持ち上げられている吉村の動きはマッチポンプみたいなもんだ。

「小池知事にしても、東京五輪の延期が決まった途端、コロナ対応の前面に出てリーダーシップをアピールしています。それまでダンマリを決め込んでいた吉村知事が休業要請に応じないパチンコ店を公表したことを評価する声もありますが、では、維新が推し進めるIRはどうなのか。カジノ誘致で、ギャンブル依存症は確実に増加するのではないですか? パチンコ店をやり玉に挙げた強権発動をやみくもに支持すれば、もっと悪い事態が待っている可能性もあるのです」(角谷浩一氏=前出) 

作家の適菜収氏も、2日付の日刊ゲンダイコラム「それでもバカとは戦え」で、こう書いていた。

<新型コロナ騒動で人々の不安や不満はたまりにたまっている。連中にとっては最大のチャンスだ。世論に火をつけるにはスケープゴートが必要になる。今回ならパチンコ屋だ>

<「社会の共通の敵」を設定し、さらしあげ、密告と私的制裁を奨励する。毛沢東の紅衛兵、ナチスのゲシュタポ、スターリンやポル・ポトがやったことも同じだ>

<異常ともいえる維新礼賛報道が続いているが、ボロボロの安倍政権に見切りをつけた売国壊国勢力は今度は維新を担ぐ可能性がある>――。

■安倍政権と維新の新自由主義がコロナ危機を招いた

安倍政権の無能ぶりを嘆いて見限り、吉村や維新を支持するのは何の問題解決にもならない。安倍政権と維新は一心同体だからだ。安倍首相は返り咲いた2012年の党総裁選で負けていたら、自民党を割って維新の代表になるつもりだったという話もある。

8日には、“官邸の守護神”と呼ばれる東京高検の黒川検事長の定年延長を正当化するための検察庁法改正案が野党の反対を押し切って衆院内閣委で審議入りしたが、これを強行採決しようとしているのも、自公の与党と維新だ。政権維持のためなら、三権分立も法の支配の原則も破壊する。安倍独裁政権の別動隊が維新だということを忘れてはいけない。

維新が大阪でやってきたことは、不採算を理由にした公共の切り捨てであり、新自由主義の権化だ。そして、国レベルでそれをやっているのが安倍なのである。政治ジャーナリストの山田厚俊氏が言う。

「伝統芸能や芸術を真っ先に切り捨てたところも似ています。アベノミクスで、日本の食や文化を海外に輸出する『クールジャパン』を掲げていましたが、今回のコロナ禍で、安倍首相が芸術・文化をカルチャーではなくビジネスの観点でしか見ていないことがハッキリした。ドイツのメルケル首相が『文化・芸術は人が生きていくための大切な生命線だから、アーティストを守る』と宣言したのと対照的です。

安倍首相は会見で医療従事者に対する感謝の辞を述べますが、あまりに表層的で、社会全体に目が向いていないように感じてしまう。もちろん、現場で懸命に働いている医療従事者には感謝していますし、頭が下がります。しかし、仕事を休みたくても休めず、命がけで働いている人は他にもたくさんいる。医療従事者だけを英雄視すれば、福祉関係の人たちやゴミ収集業者などは声を上げにくくなり、職を失った生活困窮者ら、光が当たらない人たちが取り残されかねません」

「ステイホーム」していたくても、生活のために働かざるを得ない人がいる。安倍政権は不安定な非正規雇用を増やし、社会保障をバッサバサと削ってきた。

■私刑で憂さ晴らしする負のスパイラル

緊急事態宣言下でスムーズにテレワークに切り替えられたのは、多くが大企業のホワイトカラーだ。いまも感染リスクに怯えながら満員電車に乗り込むしかない労働者や、東京都内に4000人もいるとされるネットカフェ難民は、過酷な状況に耐えるしかない。

国はコロナ対策でも大企業や業界団体への支援を優先し、休業要請は知事の権限だからと、補償はしない。丸裸でやれ、国民は自粛で耐えろというのである。それなのに、休業要請に応じない店には罰則を科すべきだなどと、さらなる強権を求める世論が湧き上がっていることが不気味だ。

「感染拡大の不安が強いリーダーを求めるのは当然かもしれませんが、強権発動を望み、それに従うことを美化する風潮は一種の思考停止状態です。政権に不満があるのに選挙を棄権して、結果的に政権に白紙委任する有権者と似ている。

みんなガマンしているんだから連帯して頑張ろうというメッセージは間違っていませんが、それで国民の生活と命を守る政策が小さなマスク2枚でいいのかという批判の声がなくなってしまうのは、問題の本質を見えなくする側面もあるのです。“自粛ポリス”と呼ばれる私刑が正当化され、お上の要請に従わなければリンチで憂さ晴らしする負のスパイラルに陥ってしまう。そうやって国民が監視し合う社会でいいのか。この国の民主主義は危機にひんしています」(山田厚俊氏=前出)

政府や知事の会見を垂れ流し、市民への行動自粛要請を広報するだけのメディアは、完全に大本営化している。同調を強要する装置と化しているのだ。それは畢竟、政治の失態を覆い隠し、責任逃れを許すことにつながる。その結果、無能なリーダーがズルズルと居座り、いつまで経っても危機から脱出できないことになりかねない。

コロナ終息を本気で願うのなら、一層の強権を求めるより、政権を代える方がずっと建設的だ。
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緊急事態は半永久的? なぜ韓国、台湾に学ばないのか

2020-05-03 17:33:19 | Web News
緊急事態は半永久的? なぜ韓国、台湾に学ばないのか

日刊ゲンダイ

感染状況も知らないコロナ本部長、責任を押し付け合う政治家と専門家、司令塔不在の場当たり、出口戦略なき自粛の長期化。“巣ごもり”で感染者が減っても一時しのぎにしかなりゃしない。

◇  ◇  ◇

新型コロナウイルスの感染を封じ込める緊急事態宣言は、やはり1カ月ほど延長されることになった。1日、報道陣のぶら下がり取材に応じた安倍首相は「5月4日に決定したい。国民の協力に感謝しているが、さらなる協力をいただく以上、記者会見を開いて私から説明したい」と表明。4日午後に衆参両院の議院運営委員会で事前報告後、コロナ禍をめぐる6回目の記者会見を開く見通しだ。

これに先立って開かれた政府の専門家会議は、引き続き外出自粛など感染防止対策の徹底を要請。その後の会見で、尾身茂副座長は全国の感染状況について「新規感染者が減少していることは間違いないが、スピードは期待したほどではない。(対策期間は)半年か1年か誰もわからない」と言葉を濁し、対応は長丁場になるとの認識を示した。おそらく緊急事態は半永久化するのではないか。国内感染1例目の確認から5カ月。PCR検査はいまだ16万5609件(4月30日正午現在)しか実施されず、政府も専門家も感染の実態を把握せず、コトに当たっているからだ。

緊急経済対策実施に向けた2020年度補正予算案が審議された先月29日の参院予算委員会。国民民主党の森裕子議員が「感染状況わかんないんじゃないですか? そんなに検査してますか? いま現在、一体どれくらいの国民が感染しているんですか?」と質問すると、閣僚席はシーン。新型コロナ対策本部長の安倍はあからさまにろうばいし、後列の加藤厚労相の方を何度も振り返り、落ち着きなくキョロキョロ。事務方の耳打ちを経てようやく答弁に立つと、「今の感染者数というご質問はいただいていなくてですね。これ(質問通告)にあるのではですね、緊急事態宣言を解除延長する……あの質問でございまして、今しておられることについては、質問の通告がされていない。ということは、まず申し上げておきたい。それはそうですよ、だってこれに書いてない。これに書いてないじゃないですか」と早口でまくしたてて逆ギレ。敵を知らず、己も知らず、どう闘うというのだろう。

■また科学的知見ナシの場当たり

専門家会議の無責任体質にしたって、周知の通りだ。PCR検査を待つ間に容体が急変した女優の岡江久美子さんが急逝すると、メンバーの釜萢敏氏(日本医師会常任理事)は「4日様子を見てくださいというメッセージと取られたのですが、そうではなくて、体調が少し悪いからといって、みなさんすぐ医療機関を受診されるわけではないので、いつもと違う症状が少なくとも4日続くのであれば、ぜひ相談していただきたい。そういうことでありました」と言い訳。厚労省が2月17日に定め、全国の医師会にも通知されたルールには、PCR検査受診の相談ができるのは〈風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続く方〉との条件がしっかり記されているのに、だ。同じくメンバーの押谷仁東北大教授に至っては、「私やクラスター対策班が参加する前に、PCR検査の目安は出されていた。これには私は関わっていない」と自己弁護に走った。

感染状況も知らないコロナ本部長、責任を押し付けあう政治家と専門家、司令塔不在の場当たり、その先にあるのは出口戦略なき自粛の長期化である。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

「安倍政権のコロナ対策は一貫して行き当たりばったり。補正予算が成立すると、安倍首相は自民党の二階幹事長らに緊急事態宣言の延長方針を真っ先に伝え、専門家会議の議論は後付け。イベント自粛や一斉休校の要請もそうでしたが、科学的知見に基づかない思い付きの判断を相変わらず繰り返している。これでは事態を収束させられるとはとても思えない。PCR検査件数を画期的に増やさなければ、陽性者の増減が政府の方針に左右されている疑惑もぬぐえません」


安倍は「5月7日から、かつての日常に戻ることは困難だ。ある程度の持久戦を覚悟しなければならない」とも言っていたが、なぜ長期戦になるのか。韓国、台湾を見習わないのか。

■PCR検査予算は「1日500回分」

安倍が何かと見下す韓国は正常化に向けて動きだしている。PCR検査の徹底で陽性者を把握し、トリアージ(優先順位)を活用した隔離措置で医療崩壊を防いだ結果、先月30日に新規感染者が初めてゼロになった。政府の緊急承認で増産された検査キットは引く手あまたで、企業はテレワークから通常勤務に切り替え始めたという。WHO(世界保健機関)にいち早く情報を提供し、警戒を呼び掛けていた台湾も防疫措置の緩和を探り始めている。世界に先駆けて中国人の入国を禁止し、入国者の隔離措置を実施。マスク増産と事実上の配給制で感染と混乱を抑え、死者は6人にとどまっている。

各国がそのノウハウを学び取ろうとする中、この国は隣国の成功事例に見向きもしない。水際対策に失敗し、「医療を守る」と全力投球したクラスター潰しにも大失敗。市中感染が蔓延し、無症状感染者の診療などで院内感染が広がっている。本末転倒だ。PCR検査を積み上げて感染実態の把握に努めるのが急務なのに、厚労省の補正予算に計上された検査費用は49億円。55万回分で1日当たり1500件だという。安倍がブチ上げた「1日2万件への倍増」を実行すれば27日で予算は底を尽き、1500回に抑えれば366日分。トコトンふざけている。

■どんどん出口を遠ざけるアジア蔑視と新自由主義

高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。

「安倍首相に近い閣僚経験者のテレビでの発言にはア然としました。〈韓国や台湾はMERS(中東呼吸器症候群)の知見があるが、わが国は経験がないから対応が遅い〉と言うのです。弁解にもならないでしょう。百歩譲って、そうであるならば、余裕の出てきた隣国に知恵を借りるとか、支援を求めればいいものを、アジア蔑視に根差したおかしなプライドが邪魔してそれもしない。その上、効率化優先の新自由主義ムキ出しで、この状況下でも医療費削減を推し進め、公的医療機関の病床削減に644億円も費やしている。失敗を認めなければ、さらなる過ちを積み重ねるのは必至です。どんどん出口は見えなくなっていく」


“巣ごもり”で感染者が減っても一時しのぎにしかなりゃしない。そもそも、都合の悪い公文書は隠蔽・改ざんし、統計データをいじくって好景気をデッチ上げてきた政権だ。大不評のアベノマスクをめぐっても、安倍は「配ったおかげでマスクの市場価格が値崩れしているという人もいる」とうそぶいていた。菅官房長官によると、汚れや異物混入問題で未配布分が回収されたため、配布率は全世帯のたった3・4%だという。出回っていないアベノマスクが市場に影響を与えるわけがない。ウソ、ゴマカシは日常茶飯事。必死で守っているのは「国民の健康と生命」ではなく、自分の政治生命。7年を超えるアベ政治のツケがコロナ危機を人災へと変貌させ、この国の形を変えようとしている。
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