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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

ゲーテの色彩論

2008-04-02 20:56:56 | 思索
量子力学は、自然と人間を切り離したニュートン以来の近代科学に対する問題提起となった。しかし、量子力学のはるか以前に、ニュートンの自然科学を批判したのがドイツの詩人ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe 1749-1832)だった。ゲーテがみずから、最も重要な著作と考えていたのは、戯曲「ファウスト」ではなく「色彩論」だった。ゲーテは、光と闇の境界線にこそ「色」は存在すると考えていた。プリズムを通して光を見ても、色は現れない。光と闇の境界の部分にだけ、あざやかに色が並ぶことを、ゲーテは発見した。ニュートンの光の理論には表わされてない現象だった。「色彩は、なかば光、なかば影である。そして、光と闇の結婚である」それが、ゲーテの結論であった。ゲーテは、観測する者と観測されるものが、一体となったときに初めて、自然が本当の姿を現すと考える。実験によって切り刻まれた自然、数字に置き換えられた自然は、もはや、本当の姿を失っているのである。ゲーテの思想は、量子力学者によって再評価されている。「不確定性原理」を発見したハイゼンベルクは、こういっている「ゲーテがニュートンを攻撃したのは、深い意味があった。もし、ゲーテに非難すべき点があったとすれば、ニュートンにとどめを刺さなかったことだ」
(アインシュタイン・ロマン NHKエンタープライズ 1991年)より

個人的には、「事物は人に認識されて初めて意味を持つ。人に観測されない存在はもはや存在してはいない。」とする量子力学者達の意見に賛成である。つまり外の宇宙は内の宇宙の源ではあるが、どちらが重要かと問えば、内の宇宙が重要であると言わざるを得ない。逆説的には、人は時として実在しないものを見、聞くことがある。これも実際にはそのようなものが存在しないということよりも、見たこと聞いたことの方が重要であり、それは存在していると言ってよい。
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