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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

FETの話③ 増幅回路

2009-12-09 20:33:50 | 電子回路
実験と考察
では左の「静特性」のグラフに用いられている、IDss=2.8mAの2SK30Aを使っていろいろ試してみましょう。

まず特性表より、Vds=10VにおいてIDが0AになるVgsは-1.6Vです。これをゲートソース遮断電圧といいます。よってこの2SK30Aを電圧制御できるVgsの範囲は-1.6~0Vということになります。ここでもう一度特性表を見てみます。

「静特性」を見ると、Vgsが固定値であればVdsが10~50Vの範囲では、IDはほぼ定電流であることが分かります。例えばVgs=-0.8Vの時にはID=0.8mAの定電流になっています。Vgsの変化に対するIDは右表「ID-Vgs」から読めます。ではトランジスタの代わりに2SK30Aを使って、ゲイン=20dB(10倍)の増幅回路を作ってみましょう。電源電圧は20V、コレクタあるいはドレインの動作点は10Vとします。

トランジスタの場合はこのように抵抗定数が決まります。では2SK30Aの場合、R1とR2の抵抗値はいくらになるでしょう?

ドレインの動作点が10Vと定められているので、IDは1mAです。「ID-Vgs」特性からID=1.2mAのラインをたどると、Vgsは約-0.6Vです。0.2mAの誤差は大目にみていただいて、VG=1-0.6V=0.3Vとします。R1、R2を流れるバイアス電流を0.1mAとすると、R1=0.3(V) / 0.1m (A) =3k(Ω)となります。R2=19.7(V) / 0.1m (A) =197k(Ω)となります。はい、めでたくFET式ゲイン20dBの増幅回路ができあがりました。

ところがギッチョン
シャンシャンと締めたいところですが、実はFETの場合そうは問屋が卸してくれないのです。トランジスタはICの大きさにかかわらずVbeはほぼ0.7Vですが、FETのVgs-ID特性は1次関数に近い特性をしています。この増幅回路に用いた2SK30Aの場合、Vgs=-0.8Vの時はID=0.8mA 、Vgs=-0.4Vの時はID=1.6mAとほぼ正比例になります。つまりIDに比例してVgsが変化することがゲインに作用し、結果的にはソース抵抗1kΩの場合は(VSが入力信号電圧のほぼ1/2になり)ドレイン抵抗を10kΩとするとゲイン14dB(5倍)になります。

ほ~、これはすごい!つまりゲイン20dBとするためには、ドレイン抵抗をソース抵抗の20倍にするのが答えということですね。

*14bB=5(倍)を求めるのは簡単です。20dB(10)-6dB(1/2)=14dB(10×0.5=5)です。

関連記事:
「FETの話①」2009-12-07
「FETの話② 2SK30A」2009-12-08
コメント (4)
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