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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

差動増幅回路の妙② 入出力とゲイン

2011-04-21 17:15:33 | 電子回路
差動増幅回路の妙① エミッタ接地増幅回路

図中の珍妙な回路は「差動増幅回路」といい、これが本稿の主題です。この差動増幅回路もエミッタ接地増幅回路の変形であり、誰が考えたのか、実におもしろい動作をします。回路の形も左右対称で分かりやすいので、ぜひこの形を覚えてください。電子回路は動作の中身を理解することと同じくらい、回路の形を覚えることが重要です。

この回路はエミッタ抵抗Reを共有する、2つのエミッタ接地増幅回路(電流帰還増幅回路)と見ることができますね。つまり図から明らかなように、この回路は入力と出力が2つずつあるということです。

さて、この回路はいったいどんな動作をするのでしょう。順を追ってみていきます。図に示されている条件において、まずエミッタ抵抗1kΩに1mAが流れていることが分かります。OKですか?ということは、トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1と、トランジスタQ2のコレクタ電流Ic2は、共に0.5mAが流れています。(ベース電流は無視量として)。OKですね?ということは、OUT1(Q1のコレクタ電圧Vc1)とOUT2(Q2のコレクタ電圧Vc2)は同じ電圧値になっています。これが直流的(静的)に見た各値、すなわち各部の動作点です。

この状態で、IN1の電圧を⊿V上げたとします。するとQ1のVbeがわずかに増えてIc1が増加します。この時Ic1の増加分がRe(1kΩ)に流れてエミッタ電圧Veが増加するように思えますが、実はそうはなりません。Q1のVbeがわずかに増えればQ2のVbeはわずかに減少しますね。ということはQ2のIc2も減少します。つまりIc1が増えればIc2が減り、Ic1が減ればIc2が増えるという動作をするわけです。そして、Ic1+Ic2は常に(ほぼ)1mAを保ちます。よってRe(1kΩ)には一定値の1mAが流れ続け、結果としてエミッタ電圧Veは、ほぼ一定の電圧値を保つことになります。

さてエミッタ電圧Veが一定ということは、Q1、Q2の増幅動作は、最初に見た「エミッタ接地増幅回路」と同じ、ということになります。(エミッタ接地増幅回路のエミッタはグランドに直結ですから、Ve=0Vと一定です)。こうなると差動増幅回路のゲインは、電流帰還増幅回路でやったように、Rc/Reという具合に簡単に求めることはできません。再び最初に戻り、指数関数のグラフをにらみながら、Vbe-Ib特性を考えることになります。しかしまあ、それも面倒なのでやめにして、エミッタ接地増幅回路のゲインを思い出してください。「エミッタ接地増幅回路のゲインは非常に大きい」でしたね。差動増幅回路のゲインもこれと同じで、“非常に大きい”のです。×100くらいでしょうか、×1000くらいでしょうか、まあその程度に捉えておけばいいでしょう。”そんないい加減な”と思われるでしょうが安心してください。話しの最後に辻褄が合ってスッキリします。


次に入出力の関係を見てみます。信号電圧はIN1にもIN2にも入力できます。このとき出力電圧はOUT1からもOUT2からも取り出せます。OKですか?そしてIN1に入力した場合OUT1は逆相、OUT2は同相出力となり、IN2に入力した場合はOUT1が同相、OUT2が逆相出力となります。OKですね?では、IN1とIN2、両方に入力するとどうなるでしょう?

はい。ここで一旦、コーヒーブレイクにしましょう。(^^)

関連記事:差動増幅回路の妙③ 2段目とエミッタフォロワ 2011-04-27

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2 コメント

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SPICEしても?が消えない (あっこ@Bee)
2011-10-15 23:26:46
> エミッタ抵抗1kΩに1mAが流れている
ええ。1.7-Vbe/1K=1mAはおkです。

> Ic1とIc2は、0.5mAが流れています。
Ib微小前提ですから
Ic1+Ic2≒Ie=1mAなのでおkです。

> OUT1とOUT2は同じ電圧値
上記よりおkです。

> IN1の電圧を⊿V上げたとします。
> Q1のVbeが増えてIc1が増加します。
おkです。普通にエミッタ接地です。

> Ic1増加分がReに流れてエミッタ電圧 Veが増加する
そうですよね。それが普通だと思います。

> 実はそうはなりません。
シミュレータでも増えますけど…。

> Q1Vbeが増えればQ2Vbeは減少します。
…シミュレートだと減少してない気がする

> Reには一定値が流れ続け、結果としてエミッタ電圧Veは、ほぼ一定の電圧値を保つことになります。
私のブログにシミュレート結果をあげました。
何がおかしいのかご教授願います><
返信する
素晴らしい! (ホロン)
2011-10-16 17:26:46
あっこびーさん、こんにちは。(^^)

さっき、LTSPICEのシミュレーション結果を見せてもらいました。今度は私が感動させて頂きました。こうなるんですねえ、素晴らしい!

実は私は今もCMの無償版を苦労して使っています。LTSPICEの方が断然良いですね。

さて、LTSPICEのシミュレーションは間違っていません。私が嘘というか、いい加減に話しを流していたのです。こうやって、あっとびーさんのように食いついて下さる方の出現も期待しながら。というと、ちょっと偉そうですね。ごめんなさい。でも、あっこびーさんも、なかなかの使い手ですねえ。

さて、

>> Ic1増加分がReに流れてエミッタ電圧 Veが増加する
>そうですよね。それが普通だと思います。

はい。

>> 実はそうはなりません。
>シミュレータでも増えますけど…。

そうですね。

>> Q1Vbeが増えればQ2Vbeは減少します。
>…シミュレートだと減少してない気がする

はい。ここで私は話しを端折っているんですね。補足します。

「Q1Vbeが増えればVeが増加し、”そのVeの増加分だけ”Q2Vbeは減少します」

と書くのが丁寧ですね。Q2のVbは1.7Vに固定ですから、これは当たり前の話しですよね。
「シミュレートだと減少してない気がする」は、シミュレート結果ではどのラインになるのでしょう?Q2VbeはQ2のベース-エミッタ間電圧ですが、そこをモニタされてますか?

老眼が進んで、シミュレート結果の文字が小さいのがちょっと辛い。(; ;)

シミュレートのラインは、たぶん「緑」がVeですね。Veはプラス側に0.08V、マイナス側に0.02Vくらい変動していますね。これくらいの変動になるのですね。非直線で結果が得られているのも素晴らしい。

さて、エミッタ接地の増幅回路ではベース電流がIc/hFEだけ流れますね。しかし非常に僅かな量ですから、設計時にはベース電流=0と見なして差し支えありませんね。私がここで、Veは「実は変動しない」と少し乱暴な言い方をしたのも同じような意味です。実際にはLTPSICEで見たようにVeは微少量変動しますが、設計時には「変動しない」として考えても殆ど問題はないということですね。

ここを更に拘って設計する場合は、エミッタ抵抗の代わりに1mAのCRD(定電流ダイオード)を使います。重要なのはVeが一定ということよりも、Ieが一定であるということなのです。こうしてやれば、差動増幅回路はより理想的な動作をすることになります。

でも、こうやって厳密に物事を考えるという拘りは大切ですよね。今回、あっこびーさんが、この疑問を呈して下さったことは、私も大変嬉しいです。
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