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政策がナチュラルに無秩序な日本で、スウェーデンのコロナ対策を素直に見てみる|オオカミ少女に気をつけろ!

2020-08-20 14:03:40 | Web News
幻冬舎plus

政策がナチュラルに無秩序な日本で、スウェーデンのコロナ対策を素直に見てみる|オオカミ少女に気をつけろ!

泉美木蘭
2020/08/05(水) 16:00配信

全国各地で新型コロナのPCR検査陽性者が多数見つかり、報道がふたたび同じパターンで過熱している。7月30日には、東京都での新規陽性者数が367人と発表され、「過去最多の感染者数」として各社が派手に報じた。ただ、分母である検査数は、東京都発表のデータによれば6113人にものぼり、この日、重症者は前日から増加せず、死者もいなかった。

2月に集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」では、乗員乗客3711人全員にPCR検査を行った結果、陽性者696人(18.8%)のうち410人(58.9%)が無症状だったと報告されている。クルーズ船と市中とでは条件が異なるとはいえ、やはり大量の検査を行えば、大量の無症状・軽微な症状の人を含めた陽性者が発見されるということなのだろう。

元厚労省医系技官で医師の木村もりよ氏から直接お話をうかがう機会があったのだが、現時点で感染が急増している国々では、経済活動を止めることへの懸念が根強く、人々も自粛に嫌気がさしており、感染しても多くの場合は大したことがないということもわかってきたので、もはや感染拡大を人為的に止めるのは難しいという。

ワクチン開発も期待できないなか、結果的には、スウェーデンのように集団免疫を達成しなければ終息しない可能性のほうが高いが、日本を含めた世界各国はスウェーデンと異なり、そこが秩序立っていないとのことだ。また、感染者数の増減に一喜一憂することには意味がなく、ICU崩壊を起こさないように重症者の推移に注目し、医療体制を整えることのほうが重要だという。

もちろん、介護施設や病院のように体の弱い人たちが集まる施設については注意を払い、重症化しやすい人たちに対する配慮をしましょうという啓蒙はあって然るべきだろう。

しかし、現在のように、感染者数を速報して、興奮気味に「もっと検査して隔離するべきだ」と煽り立てたり、感染の起きた場所や施設を吊し上げて騒ぐような風潮は、「ウイルスとの戦い」としてはまったく的外れな気がするし、病院や介護施設などで働く人々に過重な圧力をかけ、苦しめているだけではないだろうか。

現状、日本においては、新型コロナウイルスよりも、季節性インフルエンザのほうが死者数は多い。もちろん、コロナの疑いがあり、医師が「検査が必要」と判断した患者については、PCR検査をスムーズに受けられるようにしたほうがよいが、無症状者にも検査を広げて隔離する政策をとるとなると、今後は毎年、季節性インフルエンザの時期が来るたびに、同じように対応するのだろうか。

また、無症状や軽症でも、子供や若者のあいだで感染が広がり、抵抗力のない高齢者などに感染した際に、死に至ってしまう病原体はたくさんある。インフルエンザや肺炎球菌はコロナと似たような感染経路とされているし、肝炎のウイルスや子宮頸がんのウイルスなども毎年少なくない人々を死に至らしめている。

いま多くの人が抱いている「うつしたら大変なことになる」という心情は、マスコミが、普段から多くの死を招いているほかの病原体をすべて無視して、コロナだけに注目し、強力に煽り報道したことによって引き起こされているように思う。ウイルスの様子がだんだん見えてきている今、一度、落ち着いて考えてみてはどうだろうか。

■集団免疫を獲得したと報道されたスウェーデン

「スウェーデンに対してネガティブな新型コロナ報道のこと」で紹介したが、休業要請もロックダウンも行わずに独自路線を貫いたスウェーデンは、世界中のマスコミから非難され、事実をねじ曲げて報道されてきた。日本においては、いまだに「スウェーデンはやっぱりダメだった」という論調が強く、誤解されたままだ。そのスウェーデンから、新たな発表があった。

7月17日、スウェーデン公衆衛生局が行った記者会見によれば、首都ストックホルムにおける住民の新型コロナ抗体獲得率が17.5%~20%に達し、さらに、「T細胞」を介した免疫とあわせると、40%近くが免疫を獲得していると推定されるとし、集団免疫はほぼ達成されたという。

集団免疫の獲得には、一般に人口の60~70%の感染が必要と言われていたが、ストックホルム大学では、5月頃から「40~45%で十分ではないか」という予測が出されていた。

病原体に感染したとき、免疫担当のリンパ球「T細胞」がその病原体と戦って、情報を記憶することで抗体を持つ。これを「獲得免疫」という。集団免疫は、当初はこの「獲得免疫」を前提としていたが、研究の結果、過去に従来の風邪を引き起こすコロナウイルスに感染して、その情報を記憶した「T細胞」が、今回の新型コロナウイルスに対しても有効に働いているケースがあるとわかってきたのだ。これを「交差免疫」という。

世界3大科学誌のひとつ、アメリカの『セル』誌に掲載された論文では、新型コロナの流行前に採取して、保存していた血液を調べたところ、半数の人から新型コロナに反応する「T細胞」が検出されたことが明らかにされてもいる。

そして、現実にスウェーデンは、休業も休校も行わずに、極力自然に得た「獲得免疫」を持つ人と、「交差免疫」を持つ人とで集団免疫の獲得が完成しつつあるというのだ。

実際に、2020年2月初めから7月末までのスウェーデンの新規感染者数、死者数、ICU入室者数の推移をグラフ化してみると、一目瞭然で終息していることがわかる。6月に入ってからPCR検査数を増やしたために、1日1000~1800人ほどの感染者が発見されていたものの、それも7月に入ってからは減少。現在は、希望者すべてがPCR検査を受けているが、新規感染者は減少しているという。

■T細胞免疫についての研究も行うスー・アレマン医師の話

ストックホルムのカロリンスカ病院で、新型コロナ治療の最前線に立ちながら、T細胞免疫についての研究を行ってきたスー・アレマン医師は、イギリスの動画番組のインタビューで次のように語っている。

集中治療室は空っぽになり、病棟も空っぽになりました。ビーチは混雑していて、ソーシャルディスタンスも特に保たれておらず、人々はゆるんでいますよ。それでも数は減っているんです。私たちは現実に、集団免疫完成に近づいています。他に理由があるとは思えません。

現在は、新たな感染者が増えているのではなく、検査によってより多くの感染例を検出しているだけだと思います。

軽症であれば、その後、抗体を持っていなくても、PCR検査陰性になる場合があることもわかりました。こういったケースでは、ほとんどの人が強いT細胞活性を持っていました。抗体を持たずとも、強いT細胞反応によってウイルスに対する免疫を築いたことを意味します。

日本ではその発言をねじ曲げられて、「失敗の責任者」という扱いで報道されているスウェーデン公衆衛生局の責任者アンデシュ・テグネル博士は、地元ラジオ番組に出演し、各国の抑圧政策について、大量失業や心理不安、家庭内暴力、自殺などの副作用を生む「狂気の沙汰だ」と表現。

「世界が狂ってしまったかのようで、それまで話し合われていたこと全てが忘れられた」「感染者数があまりに増え、政治的な圧力が極めて強くなった。そしてスウェーデンだけが残った」とも述べた。

また、別のインタビューでは「ウイルスの撲滅はできない。共に生きることを学ばなければならない」「マスクの効果は科学的根拠が非常に弱いのに、いまだに着用を強制している国があることに驚いている」「私を裁くなら1年後にしてほしい」とも述べている。

■集団免疫を獲得後、人の交流も復活

スウェーデンは貿易依存度が63%と非常に高く、外需中心の国だ。そのため、他国が国境を閉じたことで、経済的な影響を受けた。海外の一部左派メディアは、これをやり玉に上げて「多数の死者を出し、経済も悪化し、何のメリットもなかった」という論調でいまだにスウェーデンを叩いている。それが翻訳記事となって日本でも流れているのだが、世界の空気に飲まれることなく、内需を守り、子どもから学習の機会も奪わなかったのだから、冷静だったと言えるだろう。

日本は、外国人観光客の来日や「爆買い」のニュースに盛り上がっていたため、なんとなく貿易大国のようなイメージを持つ人もいるようだが、現実には内需大国だ。感染者数・死者数の規模もスウェーデンに比べてずっと小さく、医療レベルが高いことを思えば、冷静な政策さえとれていれば、もっと優れた成功例になれたのではなかったかと悔やまれる。今後は、倒産・失業の報告が増加するばかりだろう。

スウェーデンからの「集団免疫獲得達成宣言」の翌週、スウェーデンの隣国ノルウェーが一部国境を開放した。地元メディアによると、開放直後、国境に接するスウェーデンの街にノルウェー人がなだれ込んで買い物にいそしみ、スウェーデンの国営酒屋には、ノルウェー人ばかりが300メートルの大行列を作ったという。

ノルウェーは非常に物価が高い国で、普段からスウェーデンへ買い出しに出かける人が多かったのだそうだ。行列に並ぶノルウェー人にインタビューが行われていたが、マスクをしている人はひとりもいなかった。大バッシングされてきたスウェーデンだが、それが嘘のような光景に見える。

だが、こういったことは日本ではほとんど報じられない。せめてスウェーデンの感染終息の推移グラフは、今後の見通しを立てるにもかなり貴重なデータのひとつになると思うのだが……。

日本と国境を接しているわけでもなく、直接ウイルスを持ち込まれたわけでもないのに、わざわざ北欧の国の負の部分のみを取り上げて、「失敗だ」「やっぱりダメだった」とだけ印象付け、それ以外の部分を一切無視しているこの現象は一体なんなのか。

スウェーデンの事例を認めれば、もちろん、これまでわからない部分があったとはいえウイルスの危険を過剰に煽り、甚大な経済的被害を出しながら「自粛しろ」「休業要請しろ」と騒ぎ続けてきたことのマズさも同時に検証されなければならなくなる。そこには重大な責任がともなう。マスコミはそこを直視しないように、視点をずらしているのではないか……今日もつづく煽り報道を眺めながら、そんな気さえするのだ。


■泉美木蘭
昭和52年三重県生まれ、作家、ライター。日々、愛しさと切なさと後ろめたさに苛まれている不道徳者。社交的と思わせて人見知り。日頃はシャッターをおろして新聞受けから世間を覗いている。趣味は合気道、ラテンDJ、三浦大知。
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