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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

抵抗の温度

2009-08-24 22:38:15 | 電子回路
抵抗に電流を流した時、その抵抗はi^2Rtの熱量を得て温度が上昇しますが、例えばその抵抗が空気中にあるとして、どのような温度上昇曲線を描き、何℃辺りで一定温度になるのか?これは多くの方が素朴に思う疑問の1つだと思います。しかし実際にこの解を正確に算出するのはかなり難しく、抵抗器のメーカーやハンダコテのメーカーに問合せても、なかなかシンプルな解法に巡り合うことができません。

そこで、ここでは結果のみをお話します。
抵抗の上昇温度:ΔT(t) とすると、ΔT(t)は次式の指数関数にて表すことができます。

ΔT(t)=(W/ kC)(1-e^-(1/ 3000kC)t ) ----- ①
 
ΔT(t)は抵抗の増加温度ですから、得られた値に周囲温度を加算すれば抵抗温度になります。
 
eは自然対数の底で、約2.718の定数
W=Ri^2 または iV(抵抗の消費電力):熱
Cは抵抗の周囲物質の比熱、例えば抵抗が空気中にあるならC=1(J/gK)、抵抗が水中にあるならC=4.2(J/gK)とします。

係数kに含まれるパラメータは、抵抗器および周囲物質(空気、水等)の「熱抵抗」「熱容量」etcですが、リード線を含めた抵抗器の正確な体積や表面積の算出が困難なことと、塗装皮膜の材質や厚みなど複雑な要素が多く、なかなか計算値と実測値が合致しません。

そこでともかく、kには次の数値を入れてください。
(抵抗の種類は酸金抵抗とします)

定格
1/2W ----- k=0.009
1W ------- k=0.009
2W ------- k=0.013
3W ------- k=0.016
5W ------- k=0.024

1/4Wの金属皮膜抵抗なども、k=0.009として大きな誤差はないでしょう。

指数部のkに掛けている3000は、抵抗の温度上昇の実測値から上昇勾配が近似する値として得たものです。スマートではありませんが、実用レベルとして大きな問題はないでしょう。

また、過渡特性は不要で、最大温度のみを知りたいという場合は式①の
ΔT(t)=W/ kC のみを計算すれば得られます。

添付のグラフは、式①によって抵抗(3Ω3W)の温度上昇をグラフ化したものです。
尚、抵抗を基板から少し浮かせて実装した場合、リード線のハンダ付け部の温度は抵抗温度の約1/2辺りになります。(銅箔パターンの面積によって多少異なります。)

【1次遅れ特性について】
今回用いた式①を一般化すると

f(t)=A(1-e^-Bt)

という式で表すことができます。式①の場合はA=W/ kC、B=1/ 3000kCとなっているわけですね。
この一般式は、実は「1次遅れ特性」を示しています。例えば、火のついていないコンロに厚手のフライパンを置いて、フライパンに手のひらを当てて、コンロに火をつけた瞬間から1秒以内に手を離せば、手は熱くはありませんね。つまりフライパン底面の熱が表面に伝わるまでに遅れがあるということです。これがフライパンの熱抵抗と熱容量による「1次遅れ特性」です。

電気回路ではCRによって1次遅れ特性を構成できます。
CRの1次遅れ特性は

e(t)=E(1-e^-(1/CR)t ) で表されます。

この回路において
E=Tin [ 温度(源) ]
i(t)=W(t) [ 熱 ]
e(t)=T(t) [ 出力温度 ]
R=Rn [ 熱抵抗 ]
C=Cn [ 熱容量 ]
のように置き換えれば、出力温度T(t)は、そのまま

T(t)=Tin (1-e^-(1/ CnRn )t )
[ W(t)=(Tin /Rn ) e^-(1/CnRn)t ]

のように記述することができます。

関連記事:熱回路への誘い① 2009-09-08
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夏休みの宿題

2009-08-10 22:33:31 | 電子回路
①この回路の動作メカニズムを説明しなさい。
②R1~R10に適当な抵抗値とワット数を入れなさい。
③C1~C8に適当な容量値と耐圧を入れなさい。

回答には添削をしてお返しします。(^^)

関連記事:定電圧電源を作ろう①ツェナ 2009-12-14
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オイラーの公式を使う

2009-08-05 23:56:58 | 電子回路
今度は「オイラーの公式」を使って

f(t)=∫e^-Bt・sin At dt

を計算してみましょう。Let us トレーニング!(^^)

e^ jAt=cosAt+jsinAt 
e^-jAt=cosAt-jsinAt 

e^jAt-e^-jAt=(cosAt+jsinAt)-(cosAt-jsinAt)
e^jAt-e^-jAt=2jsinAt
sinAt=(e^jAt-e^-jAt)/2j

よって与式 f(t)=∫e^-Bt・sin At dt は

f(t)=1/2j∫e^-Bt (e^jAt-e^-jAt) dt 
f(t)=1/2j∫e^(jA-B)t-e^-(jA+B)t dt 

積分します。
f(t)=1/2j {1/(jA-B)e^(jA-B)t + 1/(jA+B)e^-(jA+B)t } 
f(t)=1/2j {e^(j A-B)t/(jA-B) + e^-(jA+B)t/(jA+B) } 
f(t)=-e^(jA-B)t/ 2(A+jB) - e^-(jA+B)t/ 2(A-jB)

2項(分数)の足し算をします。
f(t)={-(A-jB)e^(jA-B)t - (A+jB)e^-(jA+B)t }/ 2(A^2+B^2)
f(t)={-(A-jB)e^jAt e^-Bt - (A+jB)e^-jAt e^-Bt }/ 2(A^2+B^2)
f(t)={-(A-jB)e^jAt - (A+jB)e^-jAt } e^-B / 2(A^2+B^2)
f(t)=(-Ae^jAt+jBe^jAt-Ae^-jAt-jBe^-jAt ) e^-Bt / 2(A^2+B^2)

再び「オイラーの公式」によって三角関数に戻す。
f(t)={-Ae^jAt+jB(cosAt+jsinAt)-Ae^-jAt-jB(cosAt-jsinAt) } e^-Bt/ 2(A^2+B^2)
f(t)=(-Ae^jAt+jBcosAt-BsinAt-Ae^-jAt-jBcosAt-BsinAt) e^-Bt/ 2(A^2+B^2)
f(t)=(-Ae^jAt-Ae^-jAt-2BsinAt) e^-Bt/ 2(A^2+B^2)

f(t)={-A(cosAt+jsinAt)-A(cosAt-jsinAt)-2BsinAt}e^-Bt/ 2(A^2+B^2)
f(t)=(-AcosAt-jAsinAt-AcosAt+jAsinAt-2BsinAt )e^-Bt/ 2(A^2+B^2)
f(t)=(-2AcosAt-2BsinAt )e^-Bt/ 2(A^2+B^2)
f(t)=(-AcosAt-BsinAt ) e^-Bt/(A^2+B^2)
f(t)=-(AcosAt+BsinAt ) e^-Bt/(A^2+B^2) +C

積分は簡単にできてしまうけど、あとの整理がチトじゃまくさい。
これは部分積分の方が楽やな。

関連記事:
部分積分(LCR回路)2009-08-04
LCR回路の過渡特性 2009-05-11
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部分積分(LCR回路)

2009-08-04 20:19:45 | 電子回路
どのような技もスキルも実用として使うためには、その技を発揮するためのサブルーチンが頭の中に作られなければ役に立ちません。これは物事の考察であれ、足し算やかけ算などの計算であれ、スポーツであれ、アクションゲームであれ、頭が司るものすべてについて言えることです。「達人」とはその技についてのサブルーチンが多彩かつ頑強に構成されている人のことを言うのでしょう。頭の中枢部はそのサブルーチンをコールするだけでいいのですから、「達人」は凡人が驚くような仕事を労なくやってしまえるのです。そもそも頭の中枢部はその使命たる仕事として、いろんな事柄についてのサブルーチン作成作業を日々せっせとやっているのでしょう。以前にも「練習しよう」に記しましたが、このサブルーチンを作るためには、「稽古」「練習」しかありません。こればかりは頭の中枢部をフル稼働させてやりますから、とにかくしんどい。サブルーチンが形成されてくるまでは忍耐の一語に尽きますね。
というわけで、計算の練習をやりましょう。(^^)

さて、図のようなLCR回路の「単位応答」(スイッチが0V側に切り換ったときの電流の過渡応答)は一般に次式で表すことができます。

i(t)=G・e^-Bt・sinAt

例えば
G=5
B=200
A=400

などの数値を入れて、エクセルのグラフで波形を確認してみてください。
(約64Hzの減衰波形です)

i(t)=G・e^-Bt・sinAt
ならば、LCRの各素子の端子電圧は

RV(t)=R(G・e^-Bt・sinAt)
LV(t)=Ld(G・e^-Bt・sinAt)/dt
CV(t)=1/C ∫(G・e^-Bt・sinAt)dt

RVはぜんぜん問題ないですね。LVもまあ何とかなるでしょう。
問題はCVです。

かけ算の積分。
めんどうな「部分積分」ってやつをやることになります。
しかしやるしかありませんね。

f(t)=∫e^-Bt・sinAt dt

の計算は電気回路ではしょっちゅう出てきますから慣れるとなかなか便利ですよ。この際、頭の中にサブルーチンを作っちゃいましょう。


かけ算の積分は、かけ算の微分から攻めます。(中川流)
(「中川流」の詳細は「中川研究室」のサイトをご確認ください)
http://www.ice.tohtech.ac.jp/~nakagawa/laplacetrans/Laplace1.htm

(e^-Bt・sin At)’= -B e^-Bt・sinAt + e^-Bt・AcosAt
∫(e^-Bt・sin At)’dt=∫-B e^-Bt・sinAt dt+∫e^-Bt・AcosAt dt
e^-Bt・sin At= -B∫e^-Bt・sinAt dt + A∫e^-Bt・cosAt dt
-B∫e^-Bt・sinAt dt=e^-Bt・sin At-A∫e^-Bt・cosAt dt ----- ①

第2項の∫e^-Bt・cosAt dt を部分積分します。
(e^-Bt・cos At)’= -B e^-Bt・cosAt - e^-Bt・AsinAt
∫(e^-B t・cos At)’dt=∫-B e^-Bt・cosAt dt -∫e^-Bt・AsinAt dt
e^-Bt・cos At= -B∫e^-Bt・cosAt dt - A∫e^-Bt・sinAt dt
-B∫e^-Bt・cosAt dt=e^-Bt・cos At+A∫e^-Bt・sinAt dt

両辺を -B でわって
∫e^-Bt・cosAt dt=-1/B e^-Bt・cos At-A/B∫e^-Bt・sinAt dt ----- ②

式②を式①に代入します。
-B∫e^-Bt・sinAt dt
=e^-Bt・sin At+A/B e^-Bt・cos At+A^2/B∫e^-Bt・sinAt dt  

両辺にBをかけます。
-B^2∫e^-Bt・sinAt dt
=B e^-Bt・sin At+A e^-Bt・cos At+A^2∫e^-Bt・sinAt dt
 
A^2∫e^-Bt・sinAt dt + B^2∫e^-Bt・sinAt dt
=-(A e^-Bt・cos At+B e^-Bt・sin At)

(A^2+B^2)∫e^-Bt・sinAt dt=-(A cos At+B sin At) e^-B t
∫e^-Bt・sinAt dt=-(A cos At+B sin At) e^-Bt /(A^2+B^2)+C
(C は積分定数)

はい。お疲れさまでした。

関連記事:
オイラーの公式を使う 2009-08-05
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