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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

jωとsのコラボ

2009-06-27 00:26:09 | 電子回路
フーリエ変換とラプラス変換。
電気回路でのCRフィルタや、「バネ-質量系」の振幅倍率など、周波数特性を知りたい場合にはこの両者は真骨頂とも言える威力を発揮します。LCR回路をラプラス変換した折に、インピーダンス(Ls+R+1/Cs)が現れ、これの逆数1/(Ls+R+1/Cs)を伝達関数といいましたね。実はこの「伝達関数」が周波数特性なのです。
 
CRのローパスフィルタでやってみましょう。
L[交流電源] =Eo
L[出力電圧] =Ec
インピーダンス =R+1/Cs

とすると 
Ec=Eo{(1/Cs) / ( R+1/Cs)} という式になって
Ec/ Eo=(1/Cs) / ( R+1/Cs)
Ec/ Eo=(1/sCR) / ( 1+1/sCR) 分母分子にsCRをかけて
Ec/ Eo=1/ ( sCR+1) ----- ① となります。

これがCRローパスフィルタの伝達関数の式です。右辺がCRローパスフィルタの中身を示しているということですね。

s=δ+jω として、ラプラス変換の式を記述すると
F(s)=∫[0-∞] f(t)・e^-δt ・e^-jωt dt ですが

ここでδ=0とすれば(周波数特性では不要)ラプラス変換の式は
F(s)=∫[0-∞] f(t)・e^-jωt dt となります。

これはフーリエ変換そのものですね。
(t < 0)の範囲で f(t)=0 となる関数の場合、
フーリエ積分の範囲を( 0≦ t ≦∞)としても結果は変わりません。

よって、CRローパスフィルタの伝達関数
Ec/ Eo=1/ ( sCR+1)  のsは s=jω としてよいということです。
sをjωに書き換えます。
Ec/ Eo=1/ ( jωCR+1) ----- ②

ここでCRに値を入れましょう。カットオフ周波数をfc=100Hzに決めれば
ωc/2π=100 ωc=100・2π 1/(CR)=628.32 CR=1.6m

Ec/ Eo=1/ ( jω1.6m +1 ) ----- ②-2

複素数の絶対値を求めます。
[Ec/ Eo]=1/√{1+(ω1.6m)^2}

これが振幅特性です。

位相を求めます。
絶対値[Ec/ Eo]=1/√{1+(ω1.6m)^2} より

∠(Ec/ Eo)=-tan(-1)ω1.6m

以上の計算によって求めた振幅比と位相の周波数特性は図のようになります。つまり、周波数特性を求める場合は、伝達関数のsをjωに置き換えればよいということですね。

関連記事:
周波数変換(フーリエ変換)2009-07-12
フーリエ変換とラプラス変換 2009-06-20
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フーリエ変換とラプラス変換

2009-06-20 16:43:21 | 電子回路
時間tの関数f(t)をフーリエ変換すること、またラプラス変換することは、次式のような数学的演算を行うことです。

F(ω)=∫[-∞ ∞] f(t)・e^-jωt dt ----- ①

F(s) =∫[ 0 ∞ ] f(t)・e^-st dt ----- ②

式①がフーリエ変換、式②がラプラス変換です。
こうやって並べると、見れば見るほどそっくりですね。式が示す意味や目的が別物であるとは思えないくらい似ています。違うのは積分範囲と、指数のsとjωだけ。この「似ている」に着目して、この両者の関係をちょいと探ってみましょう。

いろいろ調べると、両者は似ていて当たり前、大胆に捉えると同じものと言えそうです。そもそもsはjωを虚数として持つ複素数で、①と②は1つの式に集約されます。
(sの実部と積分範囲によって両者に分かれる)

では複素数 s=δ+jω を使って両者を式③にまとめます。

F(s) =∫[-∞ ∞] f(t)・e^-(δ+jω)t dt ----- ③

式③において

δ=0 とすると、式③はフーリエ変換の式①になりますね。
δ>0 かつ積分範囲を[ 0 ∞ ]とした場合がラプラス変換です。

よってラプラス変換の式は次のようになります。

F(s) =∫[0 ∞] f(t)・e^-(δ+jω)t dt (δ>0) ----- ②-2

δ+jω=s として記述したものが、おなじみの
F(s) =∫[ 0 ∞ ] f(t)・e^-st dt ですね。

さて、式②-2を変形すると

F(s) =∫[0 ∞] f(t)(e^-δt)(e^-jωt) dt

となります。
ということは、ラプラス変換はフーリエ変換されるf(t)に更に e^-δt をかけたものということです。[t<0 においてf(t)=0 の場合] 何はともあれ s=δ+jω これがポイントです。
δ>0 であり、δ=0 に限りフーリエ変換ということですね。

【余談】
そもそも「数」=「複素数」です。
複素数には特殊な場合が2つあり、虚数部=0の場合が「実数」、実数部=0の場合が「虚数」ということですね。

関連記事:
jωとsのコラボ 2009-06-27
LCR回路の過渡特性 2009-05-11
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開閉サージ の考察②

2009-06-17 00:46:58 | 電子回路
添付の波形は「開閉サージの考察①」で求めたv(t)とi(t)をグラフ化したものです。
(E=10V L=2mH R=33Ω Rs=10kΩ)

オームの法則で単純に計算されるとはいえ、たった300mAの回路電流に10kΩが挿入されるとサージ電圧のピーク値は3000Vになるのですから凄いですね。実際にはRsは遥かに高抵抗であることが多く、もし∞Ωであれば∞Vのサージが発生するということですね。

関連記事:
開閉サージ の考察① 2009-06-17
フーリエ変換とラプラス変換 2009-06-20
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開閉サージ の考察①

2009-06-17 00:25:32 | 電子回路
みなさんは、「開閉サージ」という現象をご存知ですか?電子機器の電源スイッチを入り切りしたときなどに、時々ピカッとスパークが飛ぶことがありますね。あれが開閉サージの仕業です。いったい何であんなことが起こるのでしょう。原因は回路の中のインダクタンス(コイル)にあります。実は、同様のことがコンデンサでも起こります。コンデンサとコイルは相補性のような関係にありますが、電荷を溜めたコンデンサの端子をショートすると、理屈上∞放電電流が流れますね。これは電流サージと言えます。よって、インダクタンスによるサージ電圧を「電圧放電」という人もいます。

さて、電流が流れているインダクタンスは(LI^2)/2のエネルギを蓄えています(コンデンサの場合は(CV^2)/2ですね)。このエネルギが開閉サージの源です。では、サージを検討する準備運動としてLR回路の動作を考えてみましょう。

左図の回路で、スイッチが電源から0Vに切り換った場合のi(t)とv(t)の動作を考えます。これは前にやったLR回路の、スイッチの切り換りが逆になっただけですね。

回路の微分方程式は

Ldi(t)/dt+Ri(t)=v(t) ----- ①
(初期条件 i(0)=E/R v(t)=0 )

式①をラプラス変換し
L{sI-i(0)}+RI=V

(初期条件i(0)=E/R v(t)=0 より)
LsI+RI=V+i(0)L  LsI+RI=LE/R   (Ls+R)I=LE/R

分母分子をLでわって
I=(LE/R)/ (Ls+R)  I=(E/R)/ (s+R/L)

[ f(t)=e^at ⇔ F(s)=1/ (s-a) の変換式より ]

逆ラプラス変換すると
i(t)=E/R e^-(R/L) t が得られます。

これがこの回路の方程式です。簡単ですね。さて、では右図の場合はどうでしょう。0VラインにRsが入りました。スイッチが0V側に切り換れば電流i(t)がRsを流れますね。ということは、v(t)=-Rsi(t)になりますね。仮にスイッチが電源につながっているときの回路電流を1Aとし、またRsを100kΩとして、スイッチが0V側に切り換ったらv(t)は何Vになるでしょう。瞬間値としてv(t)=-100kVになります。ものすごい高電圧ですね。これがインダクタンスによる開閉サージです。
これが発生すると同じ電線につながっている他の機器を壊したりするので、サージは一般に悪者扱いされ忌み嫌われます。バリスタなんて素子が考え出されたのも、このサージ電圧をなんとか低減させようとして生まれた産物です。

さてRs=0の場合は左図と同じで回路電流は
i(t)=E/R e^-(R/L) t ですね。
この式のE/R と e^-(R/L) tを分けて考えると

E/Rは回路の最大電流
e^-(R/L) t は時間経過に伴う減衰を意味しています
e^-(R/L) 0 =1、以降tの増加とともに0に近づいていきます。
スイッチが電源側のときはE/Rが電流の最大値であり、Rsはまったく関与しません。スイッチが0V側に切り換ると、RとRsが直列となって減衰に関与することが図から明らかですね。よってこの場合のi(t)の方程式は

i(t)=E/R e^-{ (RL+R) /L} t となります。

サージ電圧v(t)は、このi(t)と-Rsをかけたもの

v(t)=-RsE/R e^-{ (RL+R) /L} t となります。

関連記事:
開閉サージ の考察② 2009-06-17
LCR回路の過渡特性 2009-05-11
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練習しよう

2009-06-10 14:33:39 | 思索
練習というのは非常に大きな意味があります。脳の中にはCPUに相当するプロッセッシングユニットがありますが、すべての思考をCPUがやってるわけではありません。CPUの周囲には、論理ブロック、計算ブロック、運動ブロックなど、非常に多くのサブルーチンが存在します。ある計算をするとき、CPUは必要な計算ブロックを呼び出すだけなので、非常に速く回答が得られるのです。だから何度も経験したことのある計算(思考)および運動はスムーズに運ぶわけです。10年以上の自動車運転歴をお持ちの皆様、一度「運転サブルーチン」を呼び出さずにCPUを使って運転してみてください。とてもギクシャクすると思いますよ。「自意識過剰のムカデの苦悩」もこれと同じ話です。練習する、あるいは稽古するという行為は、頭の中に必要なサブルーチンを作るということなのですね。
だから、じゃんじゃん練習しましょう。(^^)
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種としての存続

2009-06-02 21:45:58 | 思索
生は死の裏返しである。もし不死であれば人の生に意味はない。それは死んでいるに等しい。最期に死があるが故に人は人生を生きることができる。よって個人に死が定められているのは必然であるが、種としては存続し続けるように仕組まれている。

人は地球上で20万年生きてきたと言って、論理に間違いはない。何故なのかは分からないが、原生物を除き地球上のすべての生物は子孫を残すことにより、種として生き続けようとする。そしてその種の継続手法は、またすべて同じであり、雄と雌との生殖による。よって、同一種の生物個体は雄か雌かのどちらかであり、これ以外の形態はない。この点において、人は犬や猫あるいは昆虫などと何ら変わらない。

一対の雄雌が子を成し命を新生することにより、自らは朽ち果てても、種を未来へと繋いでいく。これは、生物が永遠に生き続けようとする具体的メカニズムとして大変合理的であり、納得できるものではある。とはいえこの一点が、昆虫から野性動物、そして人に至るまですべて同じ構造というのは、不思議にも思えるし、何やら割り切れなくもある。あるいはビッグバン宇宙のように、生態系も1点の生命からすべて派生した(進化論)ことの演繹的な証なのだろうか?であれば同義として神の不在の証とも言えよう。
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