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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

記号の精神的変換

2010-01-30 02:42:22 | 思索
当然ながら、作曲は人間の精神的行為であり、作曲家の精神は楽譜という記号配列に置き変わる。その記号をルールに従って音という物理現象に変換すると、そこに音楽が現れる。記号を音に変換すること自体は、人はもとより機械にもできるが、生み出される音楽は当然にも歴然と異なる。機械による変換には精神が不在であるが、人による変換は作曲同様、精神的行為であるということだ。機械に精神を読み取ることはできない。よってその音楽は無機的であり表情の乏しいものになる。これに対して、人は楽譜の中に作曲家の精神を読み取り解釈する。解釈とは作曲家の精神と演奏家の精神の融合と言えるだろう。

演奏家が指揮者の場合、オーケストラを使って記号を音に変換し、その解釈を具現化する。しかしオーケストラは楽器ではなく人であるから、ここにもまた精神のせめぎ合いが生じる。作曲家の精神と指揮者の精神と楽団員の精神、困難を伴うこれらの相関が音楽に命と魂が吹き込むことによって、交響楽はまるで生きているかのような表情豊かな音楽に創り出されるのだ。

世の中には多くの指揮者、多くのソリストがおり、多くのオーケストラがある。よって、たった一つの楽譜から創造される音楽は無数に異なる。名演奏と賞されるものにもなり、凡庸なものにもなり、機械による演奏にも劣るような低級なものにもなる。名演奏のファクタとは何なのだろう?これは恐らく、作曲家の精神と演奏家の精神が激しい衝突を経て、調和、融合し、一体化することではないだろうか。精神の一体化による結実。このロストロポーヴィチの「ショスタコーヴィチ交響曲第5番」は、その代表的事例としての揺るぎない名演奏と言えるだろう。
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オペアンプ入門③非反転増幅回路

2010-01-27 22:33:31 | 電子回路
次に、前出の10kΩの抵抗を入れたフィードバック回路(ボルテージフォロワ)を少しいじってみましょう。

図のように、5kΩを追加してみました。さて、オペアンプの出力は何Vになるでしょう。オペアンプの出力は、とにかく+入力端の電圧と-入力端の電圧が等しくなったところで安定するのですから、出力がある電圧で安定しているとすれば、-入力端の電圧は2Vであるはずです。5kΩの片端は0Vですから、これはもうオームの法則で解けますね。

というわけで、オペアンプの出力は6Vになります。回路図で表す場合は、電源を省略して右の図のようにシンプルに書きます。この回路は、入力の2Vを3倍に増幅して出力する増幅回路といえます。この回路は一般に「非反転増幅回路」といい、ゲイン(増幅度)は、5kΩをR1、10kΩをR2とすると、

ゲイン= 1 +(R2 / R1)となります。

では次に+入力端に交流電圧を入力してみましょう。
+入力端に図のような1V(0-P)のSin波を入力しました。さて出力電圧はどのようになるでしょう。オペアンプの出力は電源電圧の範囲を自由に動いて、-入力端が+入力端と同じ電圧になるように変化しますから、-入力端の電圧(波形)も入力の電圧(波形)とまったく同じになります。とするなら、入力が1Vの時には出力は3Vとなり、入力が0Vの時には出力は0Vとなり、入力が-1Vの時には出力は-3Vとなって、右のSin波のような出力電圧になります。

ということで、ここでオペアンプとは何者か?ということについて簡潔に言い表すとすれば、「ネガティブフィードバックして使用する限り、+入力端の電圧を目標値として、目標値が静止していても変化しても、-入力端の電圧が目標値と同一電圧になるように制御電圧を出力する、目標値追値制御器である。」ということができます。私たちはこの制御電圧を入力に対する出力として利用し、高性能な増幅器などを構成できるのです。

関連記事:
オペアンプ入門④反転増幅回路と応用 2010-02-01
オペアンプ入門②負帰還 2010-01-24
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西本智実の「革命」

2010-01-26 00:50:56 | 音楽・映画
ショスタコーヴィチ 交響曲第5番 ニ短調「革命」

指揮:西本智実
演奏:ロシア・ボリショイ交響楽団 ”ミレニウム”

何はともあれ驚いた。まずはこの一言。指揮者の仕事は延べ100人の野郎ども、百戦錬磨の猛者たちに指示を与え思うように操ること。さて弱冠33才の女性にこの仕事がどこまでできるのか?

まあお手並み拝見と高を括っていたが、西本智実、恐るべし!曲が始まるやいなやガチンと強烈なパンチを食らった。さぞかし線も細かろうという予測も見事に外れ、実に無骨な音が出現した。足取りもしっかりしており盤石の構え。特に管楽器がよく鳴るのだが、ただうるさいだけではない。管弦共にでかい音は限りなくでかく、小さい音は消え入るように小さくともしっかりと存在している。さすがにロストロポーヴィチなどと比べると底が浅く思えるが、西本智実はこの曲をずいぶん勉強しただろうことが覗えるし、バーンスタインやロストロポーヴィチなども研究したのだろう、西本智実はこの曲の心を掴んでいる。やや荒削りではあるが、全体に実にバランスのいい聴き応え十分な名演奏だと思う。

さらに、カップリングされているチャイコフスキーの「序曲1812年」がまた良い演奏に仕上がっている。ショスタコーヴィチ同様、オーソドックスだか堂々として味わい深い。好きな曲なので、スヴェトラーノフ、カラヤン、ドラティ、デュトワ、オーマンディ等々、色々な指揮者の演奏を聴いたが、個人的には一番好きなスヴェトラーノフと双璧。「革命」も「1812年」も何度も聴きたくなる、多からぬコレクションの一つに加わった。
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オペアンプ入門②負帰還

2010-01-24 16:46:52 | 電子回路
さて、このような特性のオペアンプですが、いったいどのように使えば我々の役に立つのでしょうか。その方法はたった一つです。実は出力を(-)入力端に接続するのです。出力を(-)入力端に戻すので、これを負帰還(ネガティブフィードバック)といいます。ではさっそくやってみましょう。図をみてください。

出力を-入力端に直結した場合と、10kΩの抵抗を入れた場合の2種類を作ってみました。さて出力電圧はそれぞれ何Vになるでしょう。左の図で、仮に出力が3Vとすると、-入力端も3Vとなって出力は一気にマイナス側へ移動します。その結果出力が1Vになったとすると、-入力端も1Vとなって今度は一気にプラス側へ移動します。そして、出力が2Vになればどうでしょう。-入力端も2Vとなって+入力端と同じ電圧になります。つまりこの時には+入力端と、-入力端の差が0となり、出力電圧は2Vで静止し安定するのです。

では右の図の、10kΩを入れたほうはどうでしょう。先述のように、オペアンプの入力インピーダンスは∞Ωですから、出力電圧がどんな電圧であっても10kΩに電流は流れません。ということは10Ωの端子間電圧は0Vであり、この場合も左の図と同様、出力電圧は2Vです。さて、ではこの回路はどのように使われるのでしょう?下図をご覧ください。

「ボルテージフォロワ」
5Vで点灯するランプがあるとします。しかし、手持ちの電源は15Vです。そこで、抵抗を使って分圧し5Vを作りました。さて、この方法でランプは点灯するでしょうか?

左の図が抵抗分圧で作った5Vでランプを点灯させようとする回路ですが、これではランプに電流が流れていき、分圧の5Vが低下してランプは点灯しません。そこで、さっきのオペアンプ回路の登場です。オペアンプの入力インピーダンスは∞Ωですから、分圧の5Vが低下することはありません。また、出力インピーダンスは0Ωですから、ランプがいくら電流を流しても、出力の5Vも低下しません。というわけでランプは明るく点灯するのです。オペアンプのこの使用方法をボルテージフォロワといい、インピーダンス変換器としてよく用いられます。

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オペアンプ入門③非反転増幅回路 2010-01-27
オペアンプ入門①理想オペアンプ 2010-01-19
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五嶋みどり、のチャイコフスキー

2010-01-22 01:50:15 | 音楽・映画
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35
演奏:五嶋みどり(ヴァイオリン) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:クラウディオ・アバド

名曲、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。こいつは驚いた。五嶋みどりのこれほどの横綱相撲にはムターも諏訪内もヴェンゲーロフもぶっ飛ぶだろう。まるで足に根が生えたかのような安定感はどうだ。と言っても、「どうだ!」というような力みなどまったく無く、いたって素直に楽想のままに演奏している。音の贅肉を極限まで削ぎ落としてシェイプアップしているので、グラマスなムターの演奏などに慣れていると、線が細いようにも感じるが決してそうではない。ゆったりと開始し、十分に間を持たせた運び方は実に堂々としている。むしろ図太い。正統的かつ完成度の高いヴェンゲーロフの演奏に近いようにも思えるが、五嶋みどりの確信が穏やかに、ハッキリと語られているのがよく分かる。決定版といえば、この協奏曲の決定版ともいえそうだが、そもそも音楽とはそう決めつけるものでもないだろう。演奏グレードが要求レベルに達していれば、時には諏訪内で、時にはツィンマーマンで、時にはムターで聴きたい場合もある。音楽を聴く時の心持ちはその時々で違うのだから。とはいえ、五嶋みどりのこの演奏はこの先聴く機会が増えそうだ。Amazonの商品説明に「カーネギーホール100周年記念コンサートでの歴史的演奏の記録」とある。良質な録音によるライブ版だ。
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オペアンプ入門①理想オペアンプ

2010-01-19 23:47:57 | 電子回路
オペアンプは一般に上図のようなシンボルで表され、二つの入力端、出力端、+V電源供給端、-V電源供給端、の5個の端子をもっています。オペアンプの最も特徴的な性質を下記に示します。(理想オペアンプ)

① 入力端子の入力インピーダンスは+側、-側ともに∞Ωである。
② 出力端子の出力インピーダンスは0Ωである。
③ ゲイン(増幅度)は∞である。

入力インピーダンスが∞Ωというのはどういうことでしょう。左の図を見てください。電源電圧の15Vを10kΩと5kΩで分圧し、分圧電圧の5Vを+入力端に入れています。+入力端のインピーダンスは∞Ωですから、電流はまったく流れ込みません。よって、分圧電圧の5Vは電圧降下することなく、正確に5Vを保ちます。これは-入力端も同じです。

次に、出力インピーダンスが0Ωというのはどういうことでしょう。右の図を見てください。出力端が5Vを出力しているとして、10Ωの負荷抵抗を入れると500mAが流れ、1kΩの負荷抵抗を入れると5mAが流れます。このように出力電流がいくら変化しても、出力の5Vはまったく変化しません。これが、出力インピーダンスが0Ωであるということです。

最後に、ゲイン(増幅度)は∞というのはどういうことでしょう。下図を見てください。
電源は±15Vを与え、+入力端には2V、-入力端には例えば1Vを入力しているとしましょう。「オペアンプは+入力端の電圧から-入力端の電圧を引いた値に∞の倍率を掛け算し出力します。」図の例では、2V-1V=1Vですから、(1×∞)Vが出力される計算になりますが、出力電圧は電源電圧の範囲の値しかとれません。よってこの場合の出力電圧は+15Vでストップします。では、-入力端が3Vになったらどうなるでしょう。今度は出力が瞬時に-15Vになります。

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オペアンプ入門②負帰還 2010-01-24
オペアンプとは何か? 2007-09-02
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反射と終端抵抗、周波数と電線長

2010-01-16 00:23:42 | 電子回路
一般に、終端抵抗(ターミネータ)は信号電圧の反射を防ぐために、ケーブルの先端部分に取り付けるものとされる。同軸ケーブルなら50Ωか75Ω、ツイストペアケーブルなら100~120Ωと抵抗値も決まっている。では、ケーブルの長さにかかわらず、また信号電圧の周波数にかかわらず、必ず反射が問題となり終端抵抗は取り付けなければならないのか?

この答えを得るために、多くの専門サイトを閲覧してみたが、どうにも明確な回答を見つけることが難しい。どうやらケーブルの「特性インピーダンス」というものと反射は関わっているようであり、またケーブルの長さにかかわらず「特性インピーダンス」は一定値であり終端抵抗は常に必要と説明されていることが多いようだ。

ところが、目から鱗というか、灯台もと暗しというか、フリー百科事典Wikipediaに、かなり明確な回答が記述されていた。以下に同記事を転載する。

(伝送線路と配線:Wikipedia)
【多くの電気回路において、素子に接続される配線の長さはほとんどの場合無視される。これは、ある時刻における、配線の電圧が全ての点で同一であると仮定することができるためである。しかし、信号電圧が配線を伝達するためにかかる時間と同じくらいの時間で変化する場合、配線長は重要となり、その配線は「伝送線路」とみなす必要がある。別の言葉で言うなら、配線長に相当する波長の周波数を扱う場合、配線長が重要となる。

経験則では、ケーブルや配線の長さが波長の100分の1を超える場合、これを伝送線路とみなさないといけない。この長さでは、位相の遅延や配線における「反射」における干渉も重要となり、伝送線路の理論を用いて慎重に設計されていない系の振る舞いを予測不能とする。

解析においては、伝送線路は2端子対回路モデルとして扱われ、これは図の様に表される。

最も単純な場合、伝送線路の回路は線形であると仮定する。すなわち、反射が無いと仮定した場合、両端子間の電圧は、その端子から流れ込む電流に、(複素成分も含め)比例する。この時、伝送線路が、その長さ全体において均一である場合、2つのポートは交換可能であると考えられる。すなわち、この振る舞いは、「特性インピーダンスZ0」と呼ばれる1つのパラメータで記載が可能である。この特性インピーダンスは、伝送線路上の任意の点において同一の波形である複素電圧波形と複素電流波形の比を表している。同軸ケーブルではZ0は50もしくは75Ωであることが多く、ツイストペア線は約100Ω、一般的な平行線は約300Ωである。

伝送線路に、電力を入力する場合、ほとんどの電力が負荷に到達し消費され、電源への反射が極小となるのが望ましい。これには、電源と負荷のインピーダンスをZ0にすることが必要であり、この場合、伝送線路は、「整合」していると言う。】

ケーブルの特性インピーダンスについては、多くの専門サイトが詳しく解説しているので参照されたい。

さて、このWikipediaの記述を読み解くと次のようになるであろう。
電線で出力端子と入力端子を接続することは、出力端子の電圧と入力端子の電圧を同時刻において等しくするということが、そもそもの目的である。例えばファンクションジェネレータの出力端子に1mの同軸ケーブルを接続して、100Hzの正弦波を出力した時、ファンクションジェネレータの出力端の電圧と接続した同軸ケーブルの先端の電圧は同時刻においてほとんど一致している。この場合は何ら問題ない。

しかし、電気の伝播速度を30万km/secとすると、正弦波が1MHzの場合、波長は300mであり(波長=300[m]/f [MHz] )、もしケーブルの長さが100m程度もあれば、出力端の電圧とケーブルの先端の電圧は同時刻において一致しない。この時、ケーブルはもはや単なるケーブルではなく「伝送線路」に姿を変えており、伝送線路とは「特性インピーダンス」である、と言ってるのである。そしてこの場合において反射による干渉が問題となり、特性インピーダンスと整合する終端抵抗を取り付けて反射の発生を防ぐ必要があるということである。また経験則として、ケーブルの長さが波長の100分の1を超える場合に、これを伝送線路とみなさなければならないとしている。つまり信号電圧が1MHzの時、出力端と入力端を3mのケーブルで接続した場合は、そのケーブルは伝送線路であり、よって終端抵抗をとりつける必要があるということになる。

また、以上は正弦波で考えているが、信号波形が矩形波の場合は奇数倍の高調波成分を含むため、1MHzであれば1mのケーブルでも伝送線路とみなす必要があるだろう。

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定電流②

2010-01-13 01:48:17 | 電子回路
一般的な小信号用トランジスタ2SC495Aの定電流特性を確認してみましょう。

右のグラフのIc=1mAの特性をみるとVce=45Vまでなかなかの定電流特性を示していますが、これではVceの最小値が分かりません。左のグラフのIc=20mAの特性を見ます。「定電流①」のトランジスタ回路のICよりも20倍大きな値ですがVce=0.6V~0.8V以上で定電流となっています。Ic=1mAならばVce=0.4Vを下回っても定電流を保っているかも知れませんね。

Ieはエミッタ抵抗で決まります。Icはコレクタ抵抗の影響を受けず、ひたすらIc=Ieの定電流であり続けます。このおかげで私達は電圧増幅回路のゲイン(増幅度)をRc/Reと簡単に決めることができ、またIcの値はエミッタ抵抗で自由に決めることができるので、Vcの動作点なども簡単に設計できるわけですね。Icを定電流にしてしまうトランジスタの機能ってホントに素敵でしょ?
(^^)

トランジスタ以外にはFETやMOS-FETもほとんど同じ機能を持つ定電流素子です。FETの和訳は「電界効果トランジスタ」ですから、トランジスタという名称に定電流という意味が含まれているのかも知れませんね。他にはCRD(定電流ダイオード)というものもありますが、これはダイオードというよりも、FETのG-Sを短絡したようなものです。

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行儀、礼儀、作法

2010-01-11 20:05:33 | 思索
行儀、礼儀、作法とは何か?何故そのようなものが存在するのか?それらは本当に必要なものなのか?と、あれこれ思い巡らせているうちに、それはたぶん「快感と不快感」に関係するものであり、またそれは「美的感覚」に起因し、根本にあるものは「感性」だろうと思うに至った。

「感性」、これは非常に難しい概念であり、いまなお心理学や哲学の研究対象となっているようであるが、Wikipediaは「感性」について次のように概説している。

【感性とは、美や善などの評価判断に関する印象の内包的な意味を知覚する能力と言える。これは非言語的、無意識的、直感的なものであり、例えば何らかの音楽に違和感を覚えるように人間に作用することもある。】

やはり。以降、「感性」の意味はこの記述を基準として考えてみる。
一般に人は感性として美的感覚を持つ。絵画や音楽が成り立つのもそれ故のことだろう。この感性は人であること故の普遍性と、地域や時代の文化、風土が大きく反映する流動性を併せ持ち、本質的に個々人が別々であることにより、個人固有のものである。つまり美的感覚は全体性が占める割合があるものの、個人によって異なる。

行儀、礼儀、作法における評価判断は、個々人の異なる美的感覚に基づくものと考えられる。例えば、肘をついてご飯を食べるという行為を、多くの人は美しくない、つまり行儀が悪いと感じるだろうが、そう思わない人もいる。よってその行為を美しくないと感じる人にとっては悪であり、そう感じない人にとっては悪ではない。ということは、行儀を絶対的に決めつけることはできないということであり、礼儀、作法についても同様である。ただし集団において、美的感覚の是非が圧倒している場合、少数派は悪として決めつけられることになる。ここで注意しておきたいのは、少数派は本質的な悪ではなく圧倒的多数決に過ぎないということだ。これは地域性や時代の変遷によって逆転する場合もあり得る。

食事の本来的目的は空腹を満たすことである。その時、手でつかんで食べようが、箸を使おうが、フォークとナイフを使おうが、肘をついて食べようが、寝転んで食べようが、本来的目的に対してまったく関係がない。あえて言えば、自分がもっとも食べやすい方法や動作で食べるのが快適であり合理的である。

しかしながら、人の美的感覚は如何なる場合も働くもので、それは動作に対しても同様であり、何故かはともかくとして、ここに行儀、礼儀、作法が生まれたものと考えられる。私個人としては、たぶん徹底した唯物論者であることもあり、行儀、礼儀、作法に反する行為を見ても特に美しくないとは感じない。とはいえ私も集団の中の一員であり、その集団には行儀、礼儀、作法というものが実際にあるのだからそれに背くつもりはない。バカバカしいとは思いながらも、できるだけその集団が決めた行儀、礼儀、作法の通りにしようと思う。

しかしながら、この行儀、礼儀、作法というものは、にわかにやろうとしてもできるものではない。ここが大きな問題なのである。行儀、礼儀、作法は無意識な自然な立ち振る舞いなのだ。これには訓練が必要であり、とりわけ幼少であるほど効果が高いため、「しつけ」「教育」なる用語も含めて、大人は子供に行儀、礼儀、作法を教えようとする。大人向けの教室なども商売として成り立ち、けっこう繁盛していることは驚きでもあるが、ではお前は子供に行儀、礼儀、作法を教えないのか?と聞かれると、う~ん、と考え込んでしまう。結果としては、家庭ではまったく教えてこなかった。(自分が行儀、礼儀、作法をさして知らなかったこともあるかも知れない)。その子供も今や大学生。けっこう友達と楽しくやっているようではあるが。

蛇足ながら、行儀、礼儀、作法はとどのつまりとして「品格」とか「品位」という、これまた不可思議で胡散臭い言葉へと至ることになる。後日また、品格、品位、上品・下品について考えてみよう。

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定電流①

2010-01-08 21:30:31 | 電子回路
定電圧源があれば定電流源もあります。定電流源の回路記号は図のように瓢箪(ひょうたん)で表します。とにかく定電流なのですから、その意味は読んで字のごとく常に電流が一定なのです。仮に左図の電流源を1Aの定電流源とすると、R=10ΩならRの端子電圧、つまり定電流源の端子電圧は10Vです。100Ωなら100Vです。1Ωなら1Vです。そして0Ωなら0Vとなります。とにかく抵抗値がどんな値でも電流値は変わらず1Aなのです。ふむふむ、それがどうした。ってところですかな?

もう少し我慢して付き合ってください。定電圧源の内部インピーダンスは直列に入りましたが、定電流源の内部インピーダンスは右図のように並列に入ります。そして定電圧の場合とは逆に、抵抗値が大きければ大きいほどよい定電流源となります。
 
定電流:I=I1+I2ですからRiが大きいほどよいことは図から明らかですね。うん?わかんない?I2が一定だったらまだいいんだけど、Rの値で端子電圧が変動するとI2も変動してしまうわけですね。はてさて、この定電流という概念がなぜ私達にとって重要かというと、まず第一に私たちはもっぱらトランジスタを使うことになるからです。実はトランジスタは定電流を実現する代表格の素子なのです。

そのことによって電圧増幅など私たちにありがたい機能をたくさん提供してくれるのです。ではトランジスタの定電流機能を見ていきましょう。

さて下図の回路の場合、IEの電流値はいくらですか?これはもう、ちょちょいのちょいで1mAとなりますね。いまはIBは考えません。よってIE=ICです。このICが実は定電流なのです。コレクタ抵抗CR=10kΩとするとCRの両端電圧は10Vです。CRが1kΩなら両端電圧は1Vです。CRが100Ωなら両端電圧は0.1Vです。CRが50kΩなら両端電圧は50V...、ちょっと待ってください。それでは電源電圧を越えてしまいます。

そもそもICが定電流を保つためにはC-E間にある程度の電圧を必要とします。CR=10kΩの場合はコレクタ電圧が10VですからVce=9Vです。これは全然問題ありません。CR=18kΩの場合はVce=1Vとやや怪しくなってきます。

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スルーレート

2010-01-06 22:09:16 | 電子回路
オペアンプには「スルーレート」という応答速度を示す特性があります。スルーレートが大きいほど応答速度が速く高周波信号を処理することができます。理想オペアンプではゲイン=∞などといいますが、このスルーレートも∞が理想です。例をみてみましょう。

オペアンプをボルテージフォロワ(ゲイン:×1)とし、図のように直角に立ち上る電圧を入力した時、入力がそのままの形で出力されるのが理想応答です。しかし実際には応答速度は有限値であり、中段の図のような台形波となりスルーレートが大きいほど立ち上がりの角度が急峻になります。

スルーレートは1μsecあたりの立上がり電圧(V/μsec)で表します。右の図は左に比べてスルーレートが大きい例です。このような場合は1μsecあたりの換算値になります。概ね10V/μsecくらいでしょうか。左の方は4V/μsec程度ですね。

高速オペアンプの誉れ高いLF357のスルーレートは50V/μsec、汎用のLM741は0.7V/μsecとデータシートに記載されています。私がよく使うLM358はデータシートにスルーレートの記載がありませんでした。恐らくお話にならないくらい遅いのでしょうね。またLM358はマイクロパワーのオペアンプですからそんなことはハナから問題にしていないのでしょう。それでもボルテージフォロワなら1MHzくらいまでの信号は扱えるのです。

ちょっと冗長ですがスルーレートについては一般解説も載せておきます。以下はNECエレクトロニクスのホームページからです。

【スルーレートとは、大振幅のパルス波形入力に対する応答性を規定したもので、1μs当たりの出力電圧の変化量(単位:V/μs)で表示します。一般的にスルーレートはAv=1のボルテージ・フォロワ回路のパルス応答によって規定されています。図にμPC451のパルス応答特性を示します。

このスルーレート(応答性)が悪い場合、たとえばオペアンプに入力信号として10kHz以上の周波数の電圧を印加し、出力を数V以上の大振幅で動作させると出力波形が三角波のようになってしまう現象が発生します。さらに周波数を上げていくと急速に出力振幅が減少し、正常な特性が得られません。したがって、使用条件によって最適なオペアンプを選択することが大切です。】

NECのHPにしては説明が不適切ですね。日本語も下手くそです。ボルテージフォロワの動作で、たかだか10kHzのsin波入力が、三角波出力になってしまうような汎用オペアンプなんてあるのでしょうか。遅いLM358でも数100kHzくらいまではへっちゃらです。1mV(0-P)以下の入力信号で1000倍に増幅して出力するのならまだ話は分かりますが。

そうそう、さっきは無いと言いましたが、LM358のスルーレートがパルス応答特性として載っていましたので右隣に添えておきました。μPC451よりちょうど2倍速いですね。0.2V/μsecくらいでしょうか。因みに調べてみたところμPC451は+5V単電源使用のオペアンプでした。

関連記事:オペアンプとは何か? 2007-09-02
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悪魔のトリル

2010-01-05 20:21:11 | 音楽・映画
演奏: アンネ・ゾフィー・ムター
ジェイムズ・レヴァイン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

このチャーミングな名を持つヴァイオリンソナタが、今まで聴いたすべての曲の中で一番好きかも知れない。作曲者タルティーニの夢枕で悪魔が弾いた曲という逸話も、あながち作り話ではないようにも思えてくる。それほどまでに、この世のものと思えぬ怪しい美しさを持つ曲だ。霊感という言葉は、あまり日常的に使われないが、この曲にこそふさわしい。深淵な短調の旋律には神的、霊的なものを感じずにはいられない。

ジュゼッペ・タルティーニ(Giuseppe Tartini)
出生:1692年4月8日 死没:1770年2月26日(満77歳没)

ジュゼッペ・タルティーニは、イタリアのバロック音楽の作曲家・ヴァイオリニスト。
おそらく、タルティーニの最も有名な作品は《悪魔のトリルDevil's Trill sonata》であろう。このソロ・ヴァイオリンソナタは、数多くの高度な技術を要求されるダブルストップのトリルが必要とされ、近代の規範をもってしても難易度の高い曲である。今日の研究では作風の考察から1740年代後半以降の作との説が有力である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

さて「悪魔のトリル」、誰の演奏で聴こう。ここはやはり、グルミョーかムターだろうな。ムターの演奏は非常にアクが強いものだが、それがこの曲には絶妙にフィットする。まるで彼女のために書かれたのではと思わせるほどだ。
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挨拶とは何か

2010-01-04 20:04:37 | 思索
挨拶という行為には必ず相手が存在し、おおむね相手に対する好意を示すものである。これは社会的動物である人間において自然発生的に現れる現象であり、強要されたり教えられたりするものではない。挨拶は義務でも責任でもマナーでもなく自然な心の発動である。

挨拶の示す意味はおおむね次の3つである。
① 俺たちゃ仲間だ~!
② ありがと~。
③ よろしく~。

一般的には見ず知らずの人に対して挨拶はしない。また知人であっても嫌いな奴には挨拶しない。もししたとしても、すれ違った後で「ケッ」と、はき捨てるだろう。挨拶が好意を示すものである所以である。こんな挨拶ならしないほうがましだ。

登山道で別のパーティに出会ったときの挨拶、バイクツーリングで対向車線から来るバイクと交わすピースサイン、これらは挨拶の意味①に相当する。職場や学校の教室、隣組の集会など至る所で、この意味①の挨拶は交わされる。車の運転中に道を譲ってくれた相手に送るハザードやクラクション、これは意味②に相当する挨拶である。それから、引越し先で粗品片手にご近所さんを回る挨拶は意味③、および意味①が含まれる。

さて、二昔前の学校の教師に対する生徒の挨拶や、現在でも会社の上司に対する挨拶は意味が少し異なる。「あなた様は私の上位におわすお方でございます。よきにお計らいのほどを」という意味が含まれ、しばしば頭を下げる動作が伴う。「いまどきの生徒や学生はろくに挨拶もできない」と、超時代錯誤的発言をする教師や大人は、このことを言っているのであろう。(ちょいと小耳にはさんだのだが、日本中の小学校でオアシス運動なるものが行われているらしい:オはよう、アりがとう、シつれいします、スみません)なんとバカバカしいことか。

しかしまあ、世の中は広いもので、「挨拶ができない奴に仕事ができるはずがない」とか、「多少仕事ができるよりも挨拶ができることの方が重要だ」と、まことしやかな決まり文句が長年の風土を形成している会社なども実際にある。

余談ながら、初めての人に声をかけるのは勇気が要る。多少なりとも怖い。何が怖いのかと言うと、無反応(無視)が怖いのだ。中学や高校の入学式で初めて隣り合った学友。いずれ親友になるかも知れない二人も、最初に声をかけたときには少なからず勇気が要っただろう。

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FETの相互コンダクタンス(gm)

2010-01-03 03:16:47 | 電子回路
[知らなくてもいい話]

トランジスタの増幅率はhFE(直流電流増幅率)で示されましたが、同様にFETにも単体の増幅率を示すパラメータがあります。それがgm(相互コンダクタンス)です。hFEはトランジスタを語る上で欠くことのできないものですが、gmの場合はそれほど云々されません。というのもhFE=Ic/Ibは常に正比例の関係にあり設計計算が楽なのですが、gm=ΔId/ΔVgsは特性図に見るようにVgs(Id)の動作点をどこに取るかで変わるのです。

つまりhFEとgmは使われ方が逆で、hFEは回路を設計する折に必要ですが、gmは設計後に決まるわけです。gmはデータシートのId-Vgs特性とVgsの動作点から読み取ります。

2SK30AのId-Vgs特性をGRタイプで見て見ましょう。Vgs=-1.6VではΔId/ΔVgs=1、Vgs=-0.8VではΔId/ΔVgs=1.5くらいです。これは平均変化率ですから、Vgsの各ポイントにおけるIdの増分は接線の傾き、つまりgm=dId/ dVgs ということですね。

ということで、gmという言葉はもう忘れてしまいましょう。FETはIdssを実測してId-Vgs特性と照らし合わせて使ってください。

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相互コンダクタンスとエミッタインピーダンス 2007-11-19
FETの話① 2009-12-07
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