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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

コイルとは何か② 自己誘導起電力

2012-10-21 17:24:38 | 電子回路
発電機の原理はご存知のことと思います。

磁界の中でコイルを動かせば、あるいはコイルを変動する磁界の中に置けば、コイルの端子間に起電力が発生します。これを「誘導起電力」といいますが、前述のようにコイルに電流を流せば磁界(磁束φ)が発生し、この磁束の変化によってやはり起電力が発生します。これをコイルの「自己誘導起電力」といい、次式で表わされます。

自己誘導起電力 e = -N dφ/dt [V] (N:巻数)

最も重要な点は「マイナス符号」が付いていることです。これは、この起電力は「コイルの端子電圧に対し常に『逆極性』である」ことを意味します。

例えば、コイルの端子にDC10V を印加したとします。これにより電流I が流れますが同時に磁束φが生じ、e = -N dφ/dt の起電力が生じます。電流I が増加しようとすると dφ/dt は「プラス」となり結果として e は「マイナス」になります。電流I を増加させようとするのは DC10V の電圧ですが、これと逆極性の起電力 e が電流増加に抵抗します。ここでコイルの端子電圧をDC-10V に入れ替えた場合は e はプラスとなって、こんどは電流減少に抵抗することになります。(この e の仕業によって、この場合、コイルL に流れる電流 I は、I= ±10/L t と1次関数になります。もし e が無ければ短絡ですね)

つまり

誘導起電力 e = -N dφ/dt は磁束φの変化によって生じ「磁束φの変化を妨げる」ということです。

また、磁束φの一般式は φ=NI [μ(S/d) =1]です。よって誘導起電力の式は

e = -N dNI /dt   よって
e = -N^2 dI /dt   となり、N^2 を記号 L で表せば  [ L は巻数N の2乗に比例します]
e = -L dI /dt   となります。

この「 L 」がインダクタンス[H ](ヘンリー)であり、この場合は

誘導起電力 e = -L dI /dt は電流I の変化によって生じ「電流I の変化を妨げる」ということです。
(φ=NI だから同じことですが)。


【まとめ】
e = -L dI /dt が存在する時、コイルの端子に電圧 v = L dI /dt が存在します。「 v があるとき e があり、e があるとき v がある」。これは「電流と磁気」の関係のように、「ペア」として把握しておくべきでしょう。

余談ですが、端子電圧の式 V = L dI /dt からコイルに流れる電流 I の一般式が得られます。

V = L dI /dt   の両辺を積分します。
∫V dt = LI
I = 1/L∫V dt   ということですね。

関連記事:
コイルとは何か① 電流と磁気 2012-10-15
磁気の話① 磁界Hと磁束φ、電流Iと巻数N 2012-09-27
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磁気の話② 磁束φと鎖交磁束数Φ(磁束鎖交数)

2012-10-19 15:26:50 | 電子回路
(画像は http://www.ike-dyn.ritsumei.ac.jp/~hyoo/em0.pdf からお借りしました)



磁束ΦとインダクタンスL の関係は、一般的に次式で表わされます。
Φ= LI

これは磁気の解説書などに必ず登場するポピュラーなものですが、いささか注意が必要です。それは φ=LI ではなく、Φ=LI ということです。よく見てくださいね、記号φとΦが違うのです。つまり異なる2種類の磁束があるということですが、これは一体どういうことなのでしょう。

「磁気の話①」では、コイルにおける磁束φを次のように定義しました。
φ=μ(S/d)NI [μ:透磁率 S:コイルの断面積 d:コイルの長さ N:巻数]

一方、コイルのインダクタンスL は、実際のコイルの設計資料などでは、しばしば次式のように示されています。
L=Kμ(S/d)N^2 [K:長岡係数(コイルの形状等による)]

K=1 として、磁束φ=μ(S/d)NI に代入すると
Nφ=LI となります。

これが磁束φとインダクタンスL の関係式ですが、実はφはコイル1巻きを貫通(鎖交)する磁束であり、実際にはN 数に鎖交するのでコイルの全磁束はNφとなり、それを記号Φで表わすのです。これはWeb上の説明も借りてみましょう。

http://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/30/30671/30671_1syo.pdf
「巻き線が生む磁束は、すべてがコイルを貫くわけではありませんが、コアが十分長く、かつ透磁率が高ければ、生じた磁束φはすべての巻き線と鎖交し、巻数をN とすれば鎖交磁束数Φは、Φ=Nφに近似することができます」

さすがは専門書。こちらの方がフィットしているかも知れませんね。φを「磁束」、Φを「鎖交磁束数」といいます。

誘導起電力を示す式は、e =-N dφ/dt と e =-dΦ/dt のどちらがしっくり来ますか?
私は e =-N dφ/dt がいいですね。N があるからφの変動が巻き線に鎖交して誘導起電力e を発生させる様子が見えるようではないですか。

関連記事:
磁気の話① 磁界Hと磁束φ、電流Iと巻数N 2012-09-27
電荷と電気③ 電気力線と電束 2011-02-06
コイルとはなにか (電流と磁気) 2012-10-15
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コイルとは何か① 電流と磁気

2012-10-15 20:37:52 | 電子回路
電流と磁気は常に共に存在し「電流のあるところ磁気あり、磁気あるところ電流あり」です。

例えば1本の電線に電流が流れると、その電線を中心として円を描くように磁気が発生します。(磁気の強さが及ぶ範囲を「磁界」といいます)。磁気の強さは円の中心に近付くほど強くなりますが、それを表すために半径の異なる同心円をたくさん書いて、半径が隣り合う円の粗密で磁気の強さを表します。つまり中心に近付くほど半径の差が小さく、遠ざかるほど差が大きいということですね。(この円周を描く線を「磁力線」といいます)。この円は電流が流れている点すべてに存在するので、円×電線の長さが生じている磁界になります。

磁界中の任意の点の磁気の強さをH で表わし、その点が接する円の半径をr [m]とすると、H=i / 2πr [A/m]となります。

通常、1本の電線に生じる磁界はさほど気にしません。というのも、パワーエレクトロニクスの世界でもなければ、電線に流れる電流は相対的に小さく、生じる磁界も無視できるほど小さいからです。しかし電線をスプリング(引バネに近似)のような形に何回も巻けば、電線に流れる電流は小さくても大きな磁界が生じるようになります。これが「コイル」です。基本的にコイルの磁界の強さは「電流と巻数の掛け算」になります。

【コイルは電流増幅器】
ではなぜ、形状の異なる1本の電線でしかないコイルが大きな磁界を生じるのでしょう。それを考えるために、電線が隙間なく50回 巻かれた長さが3cm のコイルを想定します。このコイルに1A が流れているものとし、円筒を縦に切る方向のコイルの断面を思い浮かべて下さい。まず1巻目の電線には1A が流れています。そして2巻目の電線にも同じ個所、同じ方向に1A の電流が流れています。そして3巻目の電線にも1A が流れており、結局、隣り合う50巻すべてに1A が流れています。これは幅が3cmの平らな電線に50A が流れているとみることもできますね。よって巻数をN とすると、コイルはN 倍の電流を流す電線と見なせるのです。比喩的には「コイルは電流増幅器」といえますね。

【コアは磁気増幅器】
コイルが生成する基本的な磁界の強さはNI によりますが、磁界を表す磁力線の粗密が磁界の強さであることは前述しました。コイルが生じる磁力線は巻線の内部が最も密になります。(参考図)。NI が大きくなれば磁力線の数が増えます。ということは巻線の内側の磁力線はさらに密になるということですね。そして次に登場するのが「コア」です。

市販のコイルは鉄やフェライトなどの「磁性体」に電線を巻いてあるものが多いですね。この磁性体がコアです。コイルの巻線内にコアがあれば、磁力線の数がまた更に倍増するのです。しかも100倍、1000倍という桁違いの増え方になります。これはコアの有する「透磁率」という物性の効果です。透磁率は記号μで表し、空気(真空)の透磁率をμ=1とすると、センダストはμ=100、鉄はμ=5000 のようになります。よってコイルが生成する磁界の強さを μNI で表せばより実際に近くなります。コアを用いることによって、巻線のN 数を大幅に減らすことができるので、電子部品としてのコイルを小型にすることが可能になります。

磁気の話は詳しく語り始めると切がないのですが、下の関連記事「磁気の話① 磁界Hと磁束φ、電流Iと巻数N」で細かく説明しているので興味のある方はどうぞ。

関連記事:
磁気の話① 磁界Hと磁束φ、電流Iと巻数N 2012-09-27
コイルとは何か② 自己誘導起電力 2012-10-21
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LC共振回路の解(ラプラス変換)

2012-10-04 01:47:12 | 電子回路
まずは方程式をたてます。

L di(t)/dt+1/C∫ i(t)dt =e(t) (ただし i(0)=0 )

ラプラス変換します。

sLI+I/sC=E/s
(sL+1/sC )I=E/s
I=E/s 1/ (sL+1/sC )
 
右辺の分母分子に s/L をかけます。

I=E/L 1/ (s^2+1/LC )
√(1/LC)=aとおくと

I=E/L 1/ (s^2+a^2 )

ここで、1/ (s^2+a^2 ) が変換表にあれば逆ラプラス変換できるが、ない!
しかたがないので両辺にsをかけてみる

sI=E/L s/ (s^2+a^2 ) ----- ①

cos at → s/ (s^2+a^2 )であるから(変換表)
式①を逆ラプラス変換すると

d i(t)/dt=E/L cos at

両辺を積分すると

i(t)=E/L 1/a sin at

√(1/LC)=a だから 1/√(LC) =a
代入すると

i(t)=E/L 1/a sin at
i(t)=E/L √(LC) sin {1/√(LC)}t ----- 終わり

さらに
√(LC) =1/ω  だから
i(t)=E/ωL sinωt

関連記事:
LCR回路の過渡特性 2009-05-11
LC共振回路 2007-10-03
コメント (9)
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