ツェナダイオードのみの回路では最大40mAの負荷電流でしたが、エミッタフォロワを追加することにより1A以上を取り出せるようになりました。しかしレギュレーションを厳密に求めるなら、これもあまり良い回路ではありません。上図は2SC5000のIc-Vbe特性です。
Tc (周囲温度)=25℃のときの特性を見ます。Vbe=0.6V辺りからIcが立ち上り、少し見にくいですが、Ic=1A辺りではVbe=0.7Vくらいです。つまり1A取り出せばVbeは0.1V変動し、これはそのままエミッタフォロワの変動となります。これがこの回路のレギュレーションの限界です。
とはいえ1Aの電流負荷でわずか0.1Vの変動ですからツェナのみに比べると大した性能向上です。0.1Vの変動くらいええやないか、という向きもおられましょうが、人は常に理想を追い実現させようと努めるものです。そこで、電圧がずれたらずれた分修正して元に戻そうという「制御」の概念がここに初めて登場します。
下図の定電圧回路こそアナログ制御の原点です。みなさんしっかりと目に焼き付けておいてくださいよ。これが世に言うフィードバック制御です。フィードバック制御はこの回路から始まったのです。
いきなり回路が難しくなったように思えますか?さきほどのエミッタフォロワ回路にQR一個と3個の抵抗を追加しただけですが、確かに接続は少し込み入ってる感じがしますね。でも順を追って考えていけば難なく理解できますのでご安心あれ。47μFの電解コンデンサは理屈上必要ないのですが、実際は発振止めとして必ず入れます。すでに何度もお話ししていますがこの回路はフィードバック制御によって「正確な定電圧」を得ようとするものです。実はフィードバック制御には発振がつき物なのです。発振のメカニズムは少々難しいのですが追々説明していきます。
*「正確な定電圧」は「出力インピーダンスをできるだけ小さく」とした方が厳密です。
さて回路の動作解析に入りましょう。追加したトランジスタQRが制御の中心的役割をしています。QRがIcを増やすと10kΩの電圧降下でVcが下がり、エミッタフォロワのVbが下がって出力電圧が下がります。逆にQRがIcを減らすと10kΩの電圧降下が小さくなりVcが上がり、エミッタフォロワのVbが上がって出力電圧が上がります。ね、QRがエミッタフォロワを制御してるって感じでしょ。あとは出力電圧が常時目的の電圧を保つように、QRが自動的に動いてくれればいいのです。
QRがそのように働くこの回路のヤマ場を説明しましょう。QRのVeはツェナ電圧の5.1Vです。ということはQRのVbは0.7Vの電圧降下を足して5.8Vです。QRのVbは出力電圧VOUTを2.2kΩと3.3kΩで分圧した値ですから、Vb={3.3k/(2.2k+3.3k) }×Vout。Vb=5.8VですからVout=9.67Vで計算が合います。もしVoutが9.67V以上になればQRのVbは5.8Vよりも大きくなりIcが増加しエミッタフォロワのVbが低下しVoutは下がります。もしVoutが9.67V以下になればQRのVbは5.8Vよりも小さくなりIcが減少しエミッタフォロワのVbが増加しVoutは上がります。ということはつまり、Vout=9.67Vで回路が安定し、Voutは常に9.67Vを保つということです。
はい、QRがVoutを常に9.67Vに保つように自動制御しているのが見えてきましたか?QRは目(センサ)と腕(アクチュエータ)を持っていて、この目と腕をくまなく動かして制御しているのです。QRのベースが目でVbが5.8Vであることを常に監視しています。そして、もしVbが5.8V以外の値になれば腕であるコレクタを引っ張ったり押し上げたりしてVbを5.8Vに戻すのです。結果としてVout=9.67Vとなるわけですね。
ここで皆さんは1つ重要なことに既にお気づきですね。そう、QRのVb=5.8Vは常に変わらないのですから、2.2kΩと3.3kΩの分圧比を変えてやればVoutは自由な電圧値に設定できるのです。よってQRのベースは出力に対するリファレンス(基準)であると言います。実は最初のツェナダイオードのみの回路やエミッタフォロワを追加した回路は求める出力電圧値への設計にかなり苦労するのですが、この自動制御の定電圧回路ならまったくもって自由です。定電圧回路としての性能が高いだけではなく設計の自由度がうんと高まるわけですね。どうですか?皆さん自動制御が好きになってきたでしょ?
(^^)
余談ですが一般にフィードバック制御はどのようなものであれセンサとアクチュエータで構成されており、それによって全体を制御しています。センサでとらえた誤差をアクチュエータに戻して修正操作を行うのでフィードバックと呼ばれるわけです。アクチュエータによる修正結果もセンサは常に監視して、誤差修正を延々と続けているのですね。
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とはいえ1Aの電流負荷でわずか0.1Vの変動ですからツェナのみに比べると大した性能向上です。0.1Vの変動くらいええやないか、という向きもおられましょうが、人は常に理想を追い実現させようと努めるものです。そこで、電圧がずれたらずれた分修正して元に戻そうという「制御」の概念がここに初めて登場します。
下図の定電圧回路こそアナログ制御の原点です。みなさんしっかりと目に焼き付けておいてくださいよ。これが世に言うフィードバック制御です。フィードバック制御はこの回路から始まったのです。
いきなり回路が難しくなったように思えますか?さきほどのエミッタフォロワ回路にQR一個と3個の抵抗を追加しただけですが、確かに接続は少し込み入ってる感じがしますね。でも順を追って考えていけば難なく理解できますのでご安心あれ。47μFの電解コンデンサは理屈上必要ないのですが、実際は発振止めとして必ず入れます。すでに何度もお話ししていますがこの回路はフィードバック制御によって「正確な定電圧」を得ようとするものです。実はフィードバック制御には発振がつき物なのです。発振のメカニズムは少々難しいのですが追々説明していきます。
*「正確な定電圧」は「出力インピーダンスをできるだけ小さく」とした方が厳密です。
さて回路の動作解析に入りましょう。追加したトランジスタQRが制御の中心的役割をしています。QRがIcを増やすと10kΩの電圧降下でVcが下がり、エミッタフォロワのVbが下がって出力電圧が下がります。逆にQRがIcを減らすと10kΩの電圧降下が小さくなりVcが上がり、エミッタフォロワのVbが上がって出力電圧が上がります。ね、QRがエミッタフォロワを制御してるって感じでしょ。あとは出力電圧が常時目的の電圧を保つように、QRが自動的に動いてくれればいいのです。
QRがそのように働くこの回路のヤマ場を説明しましょう。QRのVeはツェナ電圧の5.1Vです。ということはQRのVbは0.7Vの電圧降下を足して5.8Vです。QRのVbは出力電圧VOUTを2.2kΩと3.3kΩで分圧した値ですから、Vb={3.3k/(2.2k+3.3k) }×Vout。Vb=5.8VですからVout=9.67Vで計算が合います。もしVoutが9.67V以上になればQRのVbは5.8Vよりも大きくなりIcが増加しエミッタフォロワのVbが低下しVoutは下がります。もしVoutが9.67V以下になればQRのVbは5.8Vよりも小さくなりIcが減少しエミッタフォロワのVbが増加しVoutは上がります。ということはつまり、Vout=9.67Vで回路が安定し、Voutは常に9.67Vを保つということです。
はい、QRがVoutを常に9.67Vに保つように自動制御しているのが見えてきましたか?QRは目(センサ)と腕(アクチュエータ)を持っていて、この目と腕をくまなく動かして制御しているのです。QRのベースが目でVbが5.8Vであることを常に監視しています。そして、もしVbが5.8V以外の値になれば腕であるコレクタを引っ張ったり押し上げたりしてVbを5.8Vに戻すのです。結果としてVout=9.67Vとなるわけですね。
ここで皆さんは1つ重要なことに既にお気づきですね。そう、QRのVb=5.8Vは常に変わらないのですから、2.2kΩと3.3kΩの分圧比を変えてやればVoutは自由な電圧値に設定できるのです。よってQRのベースは出力に対するリファレンス(基準)であると言います。実は最初のツェナダイオードのみの回路やエミッタフォロワを追加した回路は求める出力電圧値への設計にかなり苦労するのですが、この自動制御の定電圧回路ならまったくもって自由です。定電圧回路としての性能が高いだけではなく設計の自由度がうんと高まるわけですね。どうですか?皆さん自動制御が好きになってきたでしょ?
(^^)
余談ですが一般にフィードバック制御はどのようなものであれセンサとアクチュエータで構成されており、それによって全体を制御しています。センサでとらえた誤差をアクチュエータに戻して修正操作を行うのでフィードバックと呼ばれるわけです。アクチュエータによる修正結果もセンサは常に監視して、誤差修正を延々と続けているのですね。
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