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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

エネルギとしての電荷と磁気①

2010-11-29 19:12:14 | 電子回路
電荷

あたかも水道の蛇口から流れ出る水をバケツに溜めるように、コンデンサは流入する電流(Ic)を電気量として溜める容器として働きます。この溜めた電気量を「電荷」といいます。

電荷はQ(クーロン)で表し、Q=CVの式が成り立ちます。この式のVはコンデンサの端子電圧を意味し、図の回路の場合、スイッチオンの時点ではQ=0であり、時定数(CR)secにてQ=0.63CV、その後、定常状態に至りIc=0、Q=CVとなります。(過渡特性)
Q=∫i(t) dt と表すこともできます。

Q=CVとQ=∫i(t) dt は重要。とくに前者は必須です。覚えましょう。(^^)

Q=CVの両辺をCで割れば V=Q/ Cとなり、この式より、電荷Qが一定であれば、Cのキャパシタンス(容量)が大きければCの端子電圧は小さく、キャパシタンスが小さければ端子電圧は大きくなることがわかります。

【電流放電】
上の回路が定常状態にあるとき、Vc=Vですから、抵抗Rの端子間電圧は0Vですが、下の回路のようにRの片端を0Vに接続するとどのような動作になるでしょう。

抵抗Rの端子間に電圧Vcが加わり、図のように電流Icが反対方向に流れます。これがコンデンサCの電荷による電流放電です。抵抗Rで消費される電力W(i^2R)は下図のような特性になります。(放電が終わると、電荷は0になり、Vc=0になります)

電力Wの曲線が構成する(黄色の)面積が電力量Wsです。電力量Wsはエネルギ消費量ですから、Cは電荷としてエネルギを溜めるということですね。

このエネルギは:
Ec=1/2 CV^2 の式で表されます。導出は添付図の式を参考にしてください。

関連記事:
エネルギとしての電荷と磁気② 2010-12-03
絵で見るコイルとコンデンサの過渡特性 2010-11-11
コイルとコンデンサの無限大放電 2010-12-07
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交流の実効値③ サイン波

2010-11-24 22:10:42 | 電子回路
交流の値(大きさ)の表し方には

最大値:Em(0-P)
平均値:E ave
実効値:E rms

の3つがあります。実際には、最大値(0-P値)と実効値がよく使われます。
サイン波交流電圧の瞬時値は

e(θ)=Em sinθ の式で表されます。(θ=ωt)rad

では、この瞬時値の式から、最大値、平均値、実効値を求めてみましょう。
最大値=Em ですから、これは問題ないですね。

【サイン波交流の平均値】
さて平均値とは、半周期の瞬時値を加算平均した値です。図で見ると、黄色の面積が瞬時値の加算値で、この面積を半周期:πで割り算したものが平均値です。

早速やってみましょう。
e(θ)=Em sinθ の半周期の面積:Esは
Es=∫0→π Em・sinθdθ です。
Es=Em[-cosθ]0→π 
Es=Em{1-(-1)}
Es=Em・2 これが半周期の面積ですから、平均値はπで割って

E ave=Em・2/π となります。簡単でしょ?(^^)

【サイン波交流の実効値】
さて次は、少しだけ計算がじゃまくさい、実効値を求めてみましょう。
実効値=√(瞬時値の2乗の平均値) でしたね。

よって、実効値:E rmsは
E rms=√Em^2 √{(∫0→π sin^2θdθ)/π}
E rms=Em・√{(∫0→π sin^2θdθ)/π} を計算すれば得られます。

まずは、「瞬時値の2乗の平均値」(定積分の部分/π)を計算します。
さて sin^2θ はどうやって積分すればいいのでしょう。

これは少し技を使います。「加法定理」より
cos(θ+θ)=cos^2θ-sin^2θ
cos2θ=cos^2θ-sin^2θ

sin^2θ+cos^2θ=1 ですから cos^2θ=1-sin^2θ よって

cos2θ=1-sin^2θ-sin^2θ
cos2θ=1-2sin^2θ (2倍角の公式を知っていれば、一気にここまで来ます)
2sin^2θ=1-cos2θ
sin^2θ=1/2(1-cos2θ)
∫sin^2θdθ=∫1/2(1-cos2θ)dθ これなら積分できそうです。

∫0→π sin^2θdθ
=∫0→π 1/2(1-cos2θ)dθ
=1/2∫0→π 1-cos2θdθ
=1/2[θ-1/2 sin2θ]0→π
=1/2(π+0)
=π/2

これを実効値の式に当てはめます。
E rms=Em・√{(∫0→π sin^2θdθ)/π}
E rms=Em・√{(π/2)/π}
E rms=Em・√(1/2)
E rms=Em・1/√2 

となってサイン波交流の実効値は、最大値:Em×1/√2 ということですね。

【おまけ】
加法定理

sin(A+B)=sinA・cosB+cosA・sinB (サインコサイン、コサインサイン)
cos(A+B)=cosA・cosB-sinA・sinB (コスコス、ひく、サンサン)
tan(A+B)=(tanA+tanB)/(1-tanA・tanB) (1ひくタンタン、タン加タン)

関連記事:交流の実効値② 算数としての微分と積分 2010-11-22
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交流の実効値② 算数としての微分と積分

2010-11-22 21:56:03 | 電子回路
y=x^4+x^3+x^2+2 を微分すると 
y’=4x^3+3x^2+2x 

y=4x^3+3x^2+2x を積分すると
Y=x4+x3+x2+C (Cは何らかの定数であり、積分定数といいます)

y=2x^4+4x^3+3x^2+5 を微分すると
y’=8x^3+12x^2+6x 

y=8x^3+12x^2+6x を積分すると
Y=2x^4+4x^3+3x^2+C

では
y=10x^4+12x^3+12x^2+5 を積分すると? はい、やってみましょう。(^^)


さて実は、「積分は面積を求める計算」です。
やってみましょう。

図の三角形の面積は、はい1ですね。([底辺×高さ]/2)
これを積分で求めてみます。

この三角形の斜辺は
関数:y=2x の x=0の点とx=1の点を結んだものですね。

y=2x を積分すると、Y=x^2 。そしてxに1を代入するとY=1となって、先に求めた面積:1と一致します。順を追ってやれば次のようになります。

Y=∫(0→1) 2x dx (2xをx=0~1まで積分するという意味です:定積分といいます)
Y=[x^2+C]0→1 (積分演算をして[ ]で囲みます)
Y=(1^2+C)-(0^2+C) (積分した式にx=1とx=0を代入して引き算します)
Y=1 (解:この三角形の面積)

もし、x=0.5~1までの面積を求める場合は、Y=∫(0.5→1) 2x dx と書いて、同じ計算をします。


【ランプ波(ノコギリ波)の実効値】
では、図のようなランプ波の実効値(rms)を積分で求めてみましょう。

黄色の面積は平均値ですよ。勘違いの無いように。
このランプ波の最大値=1、平均値=0.5であることは、この図から明らかですね。

さて、実効値はどうなるでしょう。
実効値(RMS)は:Root Mean Square(2乗平均、平方根)ですから
2乗平均して、平方根を計算すればいいわけですね。

このランプ波の半波が作る三角形の斜辺は、関数 v=t で表せます。これを2乗すると
v^2=t^2 です。この関数を波形として表すと、2次関数ですから下図のようになります。
 
黄色で示している面積が2乗平均です。さっそく定積分して面積を求めてみましょう。

V^2=∫(0→1) t^2 dt
V^2=[(1/3)t^3]0→1  t=1を代入して
V^2=1/3 =0.33   これが2乗平均です。よって実効値は
V=√(1/3)=0.577 と求められます。

関連記事:
交流の実効値①(RMS) 2010-11-16
積分(意味と約束事) 2007-10-10
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交流の実効値①(RMS)

2010-11-16 19:22:15 | 電子回路
「基礎電子工学 交流編」松下電器工学院 編著 p39~p41の補足


【実効値の定義】直流と同じ「仕事」をする交流の値

電力:W=i^2・R
電力量(仕事量):Ws=i^2・Rt [電力量=電力×時間]

上のグラフは縦軸に電力(I^2・R)、横軸に時間(t)をとったものです。よって黄色で示す面積は電力量(I^2・Rt)になります。
左の交流と右の交流の半周期の面積が同じであれば、この2つの交流の電力量は同じですね。ということは左の交流の実効値をi(rms)、右の交流電流の実効値をIとすると、

i(rms)=Iになります。(上の定義より)

さて、右の波形の電力量は
Ws=I^2・Rt4

左の波形の電力量は
Ws=i1^2・Rt1+i2^2・R(t2-t1)+i3^2・R(t3-t2)+i4^2・R(t4-t3)
=R{i1^2・t1+i2^2・(t2-t1)+i3^2・(t3-t2)+i4^2・(t4-t3)}

両者の電力量は同じだから(Rを払って)
I^2・t4=i1^2・t1+i2^2・(t2-t1)+i3^2・(t3-t2)+i4^2・(t4-t3)
I^2={i1^2・t1+i2^2・(t2-t1)+i3^2・(t3-t2)+i4^2・(t4-t3)}/ t4

この式から、実効値の2乗は「各電流値の2乗の加算平均」であることがわかりますね。
そして実効値は
I=√[{i1^2・t1+i2^2・(t2-t1)+i3^2・(t3-t2)+i4^2・(t4-t3)}/ t4]となります。

よって実効値のことを「2乗平均、平方根」Root Mean Square の頭文字を採って、RMSと呼ぶわけです。


【サイン波での試み】
サイン波の半波を10分割して「2乗平均、平方根」を計算してみました。
下図のエクセルの表です。
実効値(RMS)は理屈どおり、0.707107=1/√2 となりますね。

関連記事:交流の実効値② 算数としての微分と積分 2010-11-22
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絵で見るコイルとコンデンサの過渡特性

2010-11-11 23:23:34 | 電子回路
図の2つの回路において、スイッチを入れた時の電圧:VLとVCの変化(過渡特性)と、電流:ILとICの過渡特性をグラフに示しています。

コイルの端子電圧VLは電源電圧Vから減少し始め、一定時間後に0Vとなります。回路電流ILは0Aから増加し始め、一定時間後V/R(A)に達し安定します。コンデンサの端子電圧VCは0Vから増加し始め、一定時間後、電源電圧Vに達し安定します。回路電流ICはV/R(A)から減少し始め一定時間後に0Aとなります。

このように、コイルとコンデンサは互いに鏡像のような特性を示しています。まるで利き腕が逆の、双子の兄弟のようですね。

過渡特性以降を定常状態といいますが、定常状態においては、コイル回路の場合コイルの端子電圧は0Vであり、V/R(A)の電流が流れています。コンデンサ回路の場合は、端子電圧は電源電圧Vと同電圧であり電流は0Aで静止しています。このことは先に示した特性グラフから読み取れますが、直流回路におけるこのコイルとコンデンサの逆特性は重要なポイントとして理解しておく必要があります。

【時定数】
下図はコイル電流:ILと、コンデンサ電圧:VCの過渡特性グラフを再度示しています。
電源オンの時点から、ILの場合はV/R(A)の63%に達する時間:TL 、VCの場合はVの63%に達する時間:TCを時定数(sec)といいます。(* Vは電源電圧)

TLは計算式: L/R 、TCはCRで、求められます。
例えば

L=100mH、R=200Ωとすると
100×10^-3 ÷ 200 = 500×10^-6  TL=500μSec

C=1μF、R=300Ωとすると
1×10^-6 × 300 = 300×10^-6 TC=300μSec
となります。


【おまけ】
しかしなぜ電源オンから時定数後に電源の63.2%になるのか? これは

v(t)=Ldi(t)/dt+Ri(t)  v(t)=1/C ∫i(t)dt+Ri(t)

この方程式(微分方程式)を解けば得られます。
解は
i(t)=V/R e^-(1/CR)t v(t)=V(1-e^-(1/CR)t) 

あるいは
i(t)=V/R (1-e^-(R/L)t) v(t)=V e^-(R/L)t 

となります。(1/CRとR/Lは一般にωの記号で表します)
CRとLRの過渡特性(1次遅れ系)を示す、
x=e^-ωt と x=1-e^-ωt は覚えておくとなかなか便利ですぞ。


さて、i(t)=E/R e^-(1/CR)t を積分すると
∫ i(t)dt=E/R ∫e^-(1/CR)t dt
∫ i(t)dt=(E/R)(-CR e^-(1/CR)t)

t=0からt=CRまで定積分すると、t=CRのCの端子電圧が得られるはずです。

=(E/R)[-CR e-^(1/CR)t]0→CR
=(E/R){-CR e^-1 +CR}
=(E/R)(CR)(1-0.368)
=EC×0.632 これがt=CRの電荷Qです。

1/Cをかけて
端子電圧Vc=E×0.632 となり、確かに電源電圧の63.2%になりますね。

関連記事:
エネルギとしての電荷と磁気① 2010-11-29
コイルに定電圧、コンデンサに定電流 2010-02-28
時定数後は63% 2009-05-25
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技能と品質

2010-11-07 01:28:36 | 安全・品質
ある機器に求められる必要な品質とは、設計時に定められた性能をすべて満足し、動作保証期間において所定の性能を下回らないと判定できることである。

必要な品質は、機器が正しく組み立てられることによって実現する。よって「正しく組み立てられる」ということを、何らかの方法によって保証できれば、機器の品質を保証することに等しい。

では、どのような方法を用いれば、正しく組み立てられることを保証できるだろう。実は、これは理屈としてはさほど難しいことではない。組み立て手順の通りに、また組み立てルールの通りに組み立てればよいのである。もちろん「組み立て手順」「組み立てルール」に一切の抜かりがあってはならない。

一般的には、組み立て手順はマニュアル等の図書によって示され、組み立てルールはマニュアルの中に記述される。組み立てルールは、寸法公差やアライメント誤差など、機器の性能に関係するポイントをすべて指示するものであり、また必要な中間試験等もこれに含まれる。

しかし、いかに秀逸なマニュアルであったとしても、手順の中に、作業のコツや勘所などを含めたすべての工程を示すことはできない。(マニュアルが如何にシンプルであるかということは重要な問題であり、マニュアルの品質を決める)

これから機器を組み立てるベテランの作業者と、まだ新米の作業者を考えてみよう。ベテランはマニュアルの中身はもちろん、作業のコツなども含めてすべて知り尽くしている。新米の方は、まだ時折マニュアルを参照しつつ作業ができるという程度。さて、この二人が各々組立てる機器に品質の差が生じるかどうか。

答えは「品質に差異は生じない」である。なぜなら、両者共に正しく組立てられることを保証する「組み立て手順」「組み立てルール」の通りに作業を行ったからである。ではすべてに差がないのかといえば、そんなはずもない。両者の作業時間、つまり組立てコストには圧倒的な差が生じる。ベテランの知識としての作業のコツや要領は時間の短縮に作用するのである。

ということで、技能レベルは品質に相関するものではなく、コストに相関するファクタとして捉えなければならない。
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CRスナバー回路は磁気リセット回路

2010-11-03 18:07:36 | 電子回路
本回路はフォワード型スイッチング電源の一例です。トランスの1次側回路に注目してください。スイッチングトランジスタのCE間に、点線で囲んだCR回路が取り付けてあります。(幾つかのメーカー製電源を調べてみましたが、このCR回路はすべて付けてありました)

トランジスタがスイッチングすると、トランスの1次側の自己インダクタンス:L1によって、開閉サージが発生します。上記のCR回路はこの開閉サージを吸収するためのもので、一般にスナバー回路と呼ばれます。ここまでは問題ないですね。

しかし最近まで、もうひとつ疑問点が残っていました。
トランジスタのスイッチングによって1次巻線に流れる電流は一方向のみです。すると、コアのBH曲線に見るように、電流がゼロになってもコアが磁化されたままになります。この残留磁束をリセットするためには、1次巻線に逆電流を流さなければなりません。

そこで、ハタと気づきました。CRのスナバー回路がサージ吸収する原理です。トランジスタがオフした時に、L1の励磁電流はスナバー回路のCに流れ込み電荷として蓄えられることによってサージ電圧を吸収します。しかしこの回路はL1とCによる直列共振回路になっているので、L1の励磁電流がすべてCの電荷に置き換われば、こんどはCからL1に向かって逆電流が流れます。この逆電流がL1の残留磁束をリセットするのです。(抵抗RはLC共振による振動を適切に減衰させるためのものです)。むしろ、この磁気リセット機能がCRスナバー回路の主たる目的でしょう。これに気づいたときは、目から鱗でした。

まとめると、このように用いられるCRスナバー回路は、サージ電圧を吸収すると共に、コアを磁気リセットするという、とても巧妙な回路なのですね。

関連記事:
LC共振回路 2007-10-03
可飽和リアクトル(マグアンプ、磁気増幅器)によるPWM 2010-10-26
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