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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

M62213Pのサンプル回路(フライバック型)

2010-08-29 19:32:43 | 電子回路
図はPWMコントローラM62213(ルネサス)のサンプル回路として「トランジスタ技術Special 」に掲載された、フライバック型スイッチング電源の回路に少し手を加えたものです。定数の一部を変更し、M52213の内部動作が分かりやすいように描きなおしてみました。

データシートに記述されているM62213の特徴をいくつか記します。

◇高速のPWMコントロールICとして開発された。(700kHz max MOS-FET対応)
◇出力電流Io(peek):±1A トーテムポール出力
◇OVP兼用のタイマ式ラッチ回路(CLMの電流制限時間を計測し動作停止、状態保持)
◇ソフトスタート回路内臓(DTC兼用)
◇フィードバック用オペアンプ内臓(フォトカプラドライブ可能)


では、本フライバック型スイッチング電源回路の動作を簡単に説明します。
2次巻線と3次巻き線が共にフライバック出力で、2次巻線を電源出力、3次巻線をM62213の電源供給と、2次巻線の出力電圧の安定化に使用しています。

電源出力である2次巻線の端子「OUT」「GND」間に負荷をつないで電流を取出すと、出力電圧は低下しようとします。すると3次巻線の電圧も低下しようとしますが、この電圧を一定に保つためにM62213がMOS-FETのスイッチングをPWM制御する(この場合はパルス幅を広げる)ので、3次巻線の電圧は低下することなく一定に保たれます。ひいては電源出力である2次巻線の電圧も一定に保たれることになります。

pin12(EA)の電圧は、内臓のオペアンプ出力が62kΩによってフィードバックされることにより2.5Vに保たれ、この2.5Vが3.6kΩと1kΩの分圧電圧ですから、3次巻線の出力は9Vに安定化されます。この安定化された9VをM62213の駆動電圧としています。

pin4(CLM):過電流制限回路(カレントリミッタ)を構成します。MOS-FETのソース電流を0.15Ωにて電圧変換し、過電流を検出するとPWMのパルス幅を短くします。(パルス-バイ-パルス)

pin10(CT):CLMが動作すると定電流を出力して外部のコンデンサを充電し、端子電圧が4Vを超えるとスイッチングを停止して、その状態をラッチ(保持)します。
(出力過電圧を検出し遮断するOVP機能兼用)

フライバック型スイッチング電源の動作原理についてはこちらを参照してください。

関連記事:PWMコントローラTL494を使ってみよう 2010-04-04
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ステップダウンチョッパとフォワード型SW電源

2010-08-25 21:02:08 | 電子回路
本稿の副題は主題に対して「ステップアップチョッパとフライバック型SW電源」となります。つまり動作メカニズムにおいて、ステップダウンチョッパとフォワード型、およびステップアップチョッパとフライバック型は同じものということです。

図に基づいて説明します。ステップダウンチョッパとフォワード型は点線内において等価と言えます。異なるのは、トランスによって1次側と2次側を絶縁しているかどうかということです。ステップアップチョッパとフライバック型も同様です。

ステップダウンチョッパとフォワード型は、スイッチングトランジスタがONのときにチョークコイル(L)を経て電流を流し出力コンデンサ(OC)をチャージし、チョークコイルに磁気エネルギーを蓄えます。トランジスタがOFFすると、チョークコイルに蓄えられている磁気エネルギーによって、フライホイールダイオード(FD)を通って電流が流れ続け、継続してOCをチャージします。

この両者共に動作の理屈上(フォワード型は1次と2次の巻線比が1:1以下の場合)、入力電源(DCV)よりも高い電圧を出力することはできない電源です。

ステップアップチョッパとフライバック型は、スイッチングトランジスタがONのときに、それぞれチョークコイルとトランスに電流を流して磁気エネルギーを蓄え、この時は出力コンデンサ(OC)をチャージしません。(トランジスタONのときに出力ラインに電流が流れないのは、図から明らかですね)
トランジスタがOFFすると、チョークコイルあるいはトランスに蓄えた磁気エネルギーによって出力ラインに電流が流れ、出力コンデンサ(OC)をチャージします。

この両者共に動作の理屈上、入力電源(DCV)よりも高い電圧を出力できる電源です。

出力電圧を安定化させるためのフィードバック電圧は、ステップダウンチョッパ、ステップアップチョッパの場合はPWMコントロールデバイス(TL494、M62213等)に直結することができますが、フォワード型、フライバック型の場合は、1次側と2次側の絶縁を保つために、フォトカプラ等で絶縁してフィードバックしなければなりません。

【ポイント】
さて、ここで1点注意が必要です。フライバック型の説明では、さりげなく「トランスに磁気エネルギーを蓄え」とお話しましたが、フライバック型に使用されるトランスは、フォワード型で使用しているトランスの2次側の極性を、ただ逆にしただけのものではありません。

そもそもトランスは変換器ですから、エネルギーを蓄えることなく、1次側と同量のエネルギーを2次側に伝達するのが役目です。もしトランス自身がエネルギーを蓄えると、その分が2次側への伝達ロスになります。よってフォワード型で磁気エネルギーを蓄えるのは、あくまでもチョークコイル(L)です。

というわけでフライバック型の場合、フライバックトランス(結合インダクタ)と呼ばれる専用のものが使われます。これはコアの磁気回路に隙間を開けて(コアの1部を切断してギャップを作る)透磁率を下げ、BH積が大きくなるようにして、磁気エネルギーを積極的に蓄える構造になっています。

関連記事:
555を使ったPWMステップアップチョッパ 2010-08-16
M62213Pのサンプル回路(フライバック型) 2010-08-29
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ブッシュマン

2010-08-23 23:58:32 | 思索
よう、久しぶり。元気にやってるか?

もうずいぶん昔の話やが、ブッシュマン(コイサンマン)という映画があったよな。
ニカウさんが有名になったもんだ。(^^)

コイ人もサン人も、ヤノマミと同じように、いまも一万年前と同じ暮らしを続けているという。

この映画の公開当時は、目新しいコメディとのみ受け止めていたが、そのストーリーを今あらためて振り返ると実に興味深い。俺が昨今思う謎のひとつは、ヤノマミの祖先が何故、文明に至る進歩を拒否したのかということだ。

知ってると思うが、この映画のストーリーを簡単に話す。

アフリカ上空を飛ぶ飛行機の窓から、白人がコーラの空き瓶を投げ捨て、それがニカウたちの村に落ちた。瓶は丸くて硬く、棍棒としても一級品だし、水でこねた穀粉を延ばすのにも都合がよかった。ニカウたちはこの瓶を、神様の贈り物として崇め感謝した。しかし瓶があまりに重宝だったため、ほどなく瓶を巡って仲間内にいさかいが起こるようになった。思案に暮れたニカウは、瓶を神様に返すために旅立つ決意をする。

まあ、こんな話だ

コーラの瓶を使うことで、今までできなかった色々なことが出来るようになったはずだ。
そして新たにできるようになったことは、次のまた新たな可能性を生む。それが進歩であり、長い時間をかけて文明に至る道なのだろう。

しかし新たな可能性は同時に、必ず新たないさかいを生む。これをニカウは見抜いたのではないだろうか。

そして瓶を放棄し、神様のもとに返しに行った。
この時、その先一万年も続くブッシュマンの運命は決まった。

同量の幸福 2010-08-12
科学は人類を幸福にしたか? 2010-07-06
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ファンクションジェネレータ XR-2206を使ってみよう

2010-08-20 22:14:11 | 電子回路
小さな16pinのDIP型IC、共立電子で1個500円。
これにいくつかの外付け部品を加えるだけで、サイン波、矩形波、三角波、ランプ波が出力できるというので、なんと便利なものがあるものかと思い、1個買ってとりあえず作ってみました。

入手できるデータシートは英文ですが、いくつかのサンプル回路を見ながら、このデバイスの全ての機能が使えるように試みました。定数はほとんどサンプル回路のままで、その他はかなり適当です。図の回路で、ともかくも無事動いてくれて諸機能を確認することができました。スウィープ機能も備えた、0.1~100kHzのファンクションジェネレータです。

Cに使用するコンデンサの最小容量値を1000pFにすれば、1MHzまで出力させることができますが、どこかの定数が良くないのか、数100kHzを超える辺りで急に歪みが増えるので、オーディオ用と割り切って100kHzまでとしました。

以下に、動作の概要を説明します。
まず、2本の5.1kΩによって電源電圧を分圧し、3pinにオフセットを与えています。電源は15Vですから、各出力波形は7.5Vを中心にスイングします。ボリュームなどを使って分圧比を可変にすれば、オフセット電圧を調整することができます。
25kΩの半固定抵抗によって波形の歪みを最小に調整します。

3pinに直列に入れている50kΩのボリュームによって振幅調整ができます。
7pinに1kΩと直列に入れている1Megのボリュームによって周波数調整ができます。

(SW2オフにて)
2pinがサイン波と三角波の出力で、SW1オンにてサイン波、オフにて三角波となります。
11pinはデューティー比50%の矩形波を出力します。
(SW1オフにて)
SW2をオンすると三角波出力がランプ波に変わります。このとき、11pinの矩形波のデューティー比が変化しています。

「SWP」「GND」間に直流電圧を入力し、DCスイープさせれば出力周波数がスイープします。プラス入力にてSweepDown、マイナス入力にてSweepUpです。
下のBuffer回路は、オフセットキャンセルと極性切り替えをするために追加したものです。オペアンプはNECのμPC814などでもよいでしょう。
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555を使ったPWMステップアップチョッパ

2010-08-16 20:44:52 | 電子回路
このステップアップチョッパは、4個直列の乾電池の電圧から、100uHのインダクタにスイッチング電流を流して磁気エネルギーに変換し、磁気エネルギーに比例して流れる電流をコンデンサ(50V470μF)にチャージすることによって昇圧する電源装置です。

2.5Vのツェナ(TL431:リファレンスIC)電圧を基準値とし、出力が15VになるようにスイッチングをPWM制御しているので、負荷に対して出力電圧の変動が小さい安定化電源でもあります。出力電流は数100mA取れると思います。ただし電流リミッタを省いていますので、実用のためにはリミッタ回路を付加した方がよいでしょう。

無安定マルチの発振周波数は12.8kHzで、トリガパルスの幅は20μSecです。
負荷電流によって出力電圧が低下し2本の1kΩによる分圧値が7.5Vを下回ると、LM358の7pin出力が上昇してワンショットマルチのパルス幅が長くなります。すると100μHを流れる電流が増加し、コンデンサにチャージされる電荷が増えて、出力電圧は15Vに復帰します。また、負荷電流が減少して1kΩによる分圧値が7.5Vを超えると、逆の動作になるわけですね。

このように、手持ちの555でステップアップチョッパもステップダウンチョパも簡単にできますが、部品数が多くなり回路も少しややこしくなりますので、実際にはやはりTL494などの専用デバイスを使用する方がいいでしょう。555で作れば、動作原理を踏まえた手作り感覚が味わえると思います。

関連記事:
555を使ったPWMコントローラ 2010-02-19
PWMコントローラTL494を使ってみよう 2010-04-04
ステップダウンチョッパとフォワード型SW電源 2010-08-25
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同量の幸福

2010-08-12 00:01:29 | 思索
年に3回、北陸の実家に帰省する。自然が豊富なのはいいが、都会暮らしの長い私にしてみれば、何かにつけ不便な田舎であり、そこに長く住めるような気がしない。実際3日もいれば田園風景にも飽きて、にわかに帰りたくなってくる。しかしこれは逆もしかりで、実家の親を都会の我が家に連れてくると、ほどなく帰りたそうな素振りを見せるようになる。まあ、これが「住めば都」ということなのだろうが、この両者共に、日ごろ暮らしている場所には存在する何かが訪問先には無く、そこに満たされないものを感じるのだろう。

都会に有って田舎には無いもの、都会には無いが田舎には有るもの。前者は分かりやすいが、後者は分かる気はするが明瞭ではない。豊富な品物と利便性によって失われていくものとは何だろう?

関連して極端な例を考えてみる。石器時代の生活を1万年以上も続けて現在に至るといわれるアマゾンのヤノマミ族を都市に連れてくると、彼らもやはりジャングルに帰りたいと思うのだろうか?これはたぶん、いや間違いなくそう思うだろう。逆に都会人も3日とジャングルにはいられないだろう。

ということは、人の幸福感はすべてが普遍的なものではなく、少なからず相対的に形成されていくもののように思える。都会人の幸福が必ずしも田舎人の幸福ではなく、田舎人の幸福は必ずしも都会人の幸福ではない。

とするなら都会に対する田舎も、文明に対する未開も対等ということになる。新たに生まれてくる子供はどこに生まれても得られる幸福に差異はない。もし実際には異なるとするなら、人ゆえの普遍的な幸福感の差異であろう。
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TL431を使用した30V2A電源の製作

2010-08-08 23:57:49 | 電子回路
【追記:2010/11/17】
2N3055のhFEがあまり大きくないため、大電流出力時にダーリントンのC2383が壊れる恐れがあります。よってC5000に変更しました。

【追記:2010/8/23】
重要な点を見逃していました。
TL431のVca(CA間の最大定格電圧)は37Vでした。電源回路が正常動作していれば大丈夫ですが、何らかの原因で暴走したりするとTL431が壊れてしまいます。よって保護用としてTL431のCA間に36Vのツェナ(RD36E:NEC)を入れてください。
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点線内がTL431の等価回路です。
このように、高精度の2.5V基準電源とオペアンプとNPNトランジスタで構成されています。
これだけの機能がワンチップに内蔵されているので、電源製作が非常に楽になります。
これで1個80円(共立電子)は安い!

TL431は基準電源ICの決定版と言えるでしょう。

図の電源回路の出力電圧は20kΩのボリュームで、2.5~30Vの範囲で可変できます。
電流制限回路は0.33ΩとNPNトランジスタ1個で構成しており、2Aで制限がかかります。

質問等ありましたら、ご遠慮なくコメント欄に記入してください。(^^)

関連記事:定電圧電源を作ろう③制御 2009-12-21
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