広島で原爆に被爆した「はだしのゲン」の著者中沢啓治さんがなくなられたとの報を知りました。660万部とも1000万部ともいわれるベストセラーのこの漫画が幅広く読まれたことのすごさを今も思っています。
中沢さんは、広島に投下された原爆の被害により、父と姉、そして生まれたばかりの妹をなくし、自らも被爆されたのでした。作品の底流にあるものは何かこれでよくわかります。また漫画であることが読者に親しみを抱かせ、さらに平和を考えるやさしい糸口にされた作品のようです。
「はだしのゲン」は1973年、週間少年ジャンプに連載された、貴重な体験をベースに自らの人生や思いをつづられていて、当時爆発的に読者に広がっていった作品でした。
今月19日に亡くなられましたが、「はだしのゲン わたしの遺言」(朝日学生新聞社)が出版されたばかりの訃報でした。
一生忘れられない体験は、多くの被爆された方々の心に納められていることが多いようです。中沢さんもそうだったそうです。けれども被爆した母が亡くなられたとき、改めて社会への怒りに立ち上がって「黒い雨にうたれ」を68年に発表されています。
中沢さんは、体験を通して命への畏敬の念を持たなくなった人が社会の中枢を握っている世界の現状を憂いと怒りに充ちて鉄槌を振りたいほどの思いではなかったかと察します。
ぼくはあまり漫画を読まない部類の一人ですが、この本だけは読みました。軍備拡張がいかに罪深い行為であるか、どの国の中枢の人たちは自らに問いながら取り組んでもらいたいものです。
名もなき人、戦場に赴く立場にある人、またそんな窮地に送り出す家族のことを覚え、政治の中核者は、そのときどこに立っているのか、常に問うことを忘れないでもらいたい。
この漫画を読んで、私たちは決して誤ったサインを送らせない厳しい監視が必要な時代にあるということを知っておくべきだと気づきました。
それが中沢さんへの鎮魂かと思います。
やさしいタイガー
哀悼・・・・読み直してみたいです・・。