確かに世の中には、一風変わった人はいるものです。先日地下鉄のホームで電車を待っていたところ、静かなホームにしては珍しく大きな音響の音楽が流れ始めたので、いやが応にも待っているお客は、アレッといわんばかりにそっちに顔を向けていました。
しかも日本の民謡で、なかなかリズミカルなメロディです。そのうちにこちらに近づいてきたので、やっとその人物が現れました。かなりの年配の男性。片手より大きなテープレコーダーをもって、くだんの民謡を流しながらホームを歩いて通過して行きました。
すぐに音楽は聞こえなくなったのですが、多分駅員に注意でも受けたのかもしれません。
このご老人、いつもテープを持ち歩き、民謡を聞きながら楽しんでいるのだろうなあ、と想像はしましたが、多少奇怪な人だとも思いました。としを重ねると、子どもと一緒で、あまり周囲のことを気にせず、マイペースになりやすいものだと自分でもよくわかるのですが、それにしても一風変わった出来事に出会いました。
自分が自分であることを忘れ、自分は何者?とわからなくなる年齢に差し掛かりました。世の中には確かにおやっと思うような人はいます。日本人はそんな時、何も言わず、触れないように無関心を装う人種のようです。それでいいのかもしれません。穏やかな社会をかき乱されることは誰だっていやなものです。
一瞬とはいえ、そんなご老人と出会いましたが、やがて着いた電車は何事もなかったようにホームを離れて行きました。
やさしいタイガー