千字のおもい


徒然のことを千字を超えずに載せていきます。

秋の自選句10  2019・8・8~2019・11・7

2019年11月17日 | 俳句をつくる

   

 


秋の句   2019・8・8 ~ 2019・11・7

 

    立秋ときけば風さえその気配

天井を渡るジャズの音秋立てり

空の蒼遠く透きたる残暑かな

黄の髪の娘の合掌や曼珠沙華

秋桜を戦がせ過ぎぬ車かな

書に耽る少女が一人カフエに秋

壁際で爪を噛む子よ秋の雨

閉め忘れし窓よりしきり虫の声

シャンパンのコルク跳ね飛ぶ野分の夜

夜もすがら万どよめく台風裡

台風や闇に身丈の水の嵩

台風やなじみの川が母奪ふ

一つ来て二つも逸れぬ台風裡

飛沫上げ車過ぎゆく秋出水

台風の荒ぶる跡や家に泥

うろこ雲なにげの神籤凶とある

夫留守ぞ秋袷着て買ひ物へ

河原まで子ら引率し秋の虹

熟睡の子を胸に受け秋袷

転寝の覚めて異世界大花野

石段の小暗き底の鵜飼舟

重陽や老いの吾あるショ━ウインド━

母の指スマホにためらふ秋日影

更くる夜の塾の明かりや虫の声

秋雨やのれんを分けて同窓会

霧の径不意の車をかはしけり

秋雨を窓に独りの昼餉かな

秋雨の音と連れ立つ蛇の目傘

ワイパーの軋みて現はる里の秋

死に鴉蘆の合間に風の中

深夜バスにささめき止まぬ二十日月

雁や田面くる風ほほを撫づ

フルヌードのマネキン五体秋セール

杖で身を支へて片拝墓詣

荷を放りそを追ふ下山秋の夕

またひと葉のベンチ占拠や銀杏散る

点滴の終ひの一滴秋の暮れ

車椅子下りて蹠の花野かな

仕草まね子を追ふ母の花野かな

停車まで席を立つなと紅葉狩り

殺人者の暴かるる書の夜長かな

穭田に真黒の鴉降り立てり

斜交ひの秋日の陰にページ繰る

秋袷下る石段踏み出せり

信号の青となりたる秋の雨

抱き紐の子と両手にも鰯雲

振り返る墓に香煙秋湿り

泉下よりの妻の吐息や秋螢

眼前の尻掻く猿や山装ふ

慰めはうなづくのみの暮れの秋

点滴器引きづる廊に秋の暮れ

灯を持ちて看護師のゆく宵の廊

ブレンドを変えて珈琲秋日影

団らんの声の高まる老人会

コメント
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