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人々をレッテルで貶めることに何の意味があるのか・・[斎藤貴男「二極化・格差社会の真相」]

2012年02月14日 23時58分08秒 | Weblog
人々をレッテルで貶めることに何の意味があるのか・・[斎藤貴男「二極化・格差社会の真相」]
(日々坦々)より

いわゆるクレーマーの問題を調べてみた時のこと。ある雑誌の対談で、いずれ団塊の世代が大量にリタイアすると、説教タイプのクレーマー(窓口の対応次第で損なわれる企業利益を説きたがる)が増えるとして、こんな持論を語る人がいた。

「あらかじめそういう人たちをラベリングしよう。

“モンスターペアレンツ”は後からのネーミングだったので、かえって愉快犯的に拡散させてしまった。

社会防御のためには発生前に警鐘を打ち鳴らすのが重要だ」

この分野ではベストセラーもある第一人者。同席の心理学者がお追従で、「なるほど、こうなったら恥ずかしいという共通認識を広めてしまう、と」。

単純化にも程があると呆れた。

と同時に、ああ、世の中はこうやって動かされているのか、とも。

すなわち「レッテル貼り」による市民社会の分断。あるいは対立をも積極的につくり出す情報操作。

たとえば私が、「消費税を増税されたら、価格に転嫁できない自営業者が軒並み廃業に追い込まれる」と批判した。

するとネット上に、「だからどうした。

どうせ自営業の連中は脱税してんだろ、とっとと潰れて死ねばいい」の書き込みがあふれた。

橋下徹・大阪市長が市の職員に罵倒を浴びせた。

こうなるともう、何の関係もない都道府県の住民までが、

「そうだ、既得権益まみれの公務員はけしからん。

給料下げろ、全員クビだ」のシュプレヒコールときたもんだ。

どうしてみんな、少しは自分の頭で物事を考えてみようとしないのだろう。

自営業にも公務員にもサラリーマンにも、非正規労働者にも農民にも漁師にも、どんな職業にだって、立派な人もろくでもない人も、いろんな人がいる。

それぞれの職種には特有の制度や常識があって、外部から理解するのは難しい。

それだけの話ではないのか。

生半可に聞きかじったハンパな知識しか持ち合わせていないのに、全能感に酔って特定の職業人を十把ひとからげで貶(おとし)めたがる人間が、今のこの国には多すぎる。

自営業者の所得は6割しか捕捉されていないと決めつけた「クロヨン」論など財務省発の名誉毀損でしかない。

公務員や労働組合バッシングの発想は、1980年代の行革キャンペーンで臨調当局と産経新聞が手を組み、“人民の敵”をでっち上げたのがルーツのひとつだった。

権力に都合よく操られる愚だけは、お互い、もうやめにしようではないか。他者を叩きたいなら叩きたいで、自分自身の力と責任でモノを言え。

◇さいとう・たかお 1958年生まれ。

早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。

日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。

「経済学は人間を幸せにできるのか」「消費税のカラクリ」など著書多数。

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