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パリのど真ん中、『マドレーヌ教会』は美食の殿堂。【日曜フォトの旅】

2012年09月24日 10時39分16秒 | Weblog

パリのど真ん中、『マドレーヌ教会』は美食の殿堂。【日曜フォトの旅】

 (晴れのち曇り、時々パリ)より

パリに、教会の数が幾つ有るのか、想像もつかない。

「パリ大主教区」の大聖堂で有る『ノートル・ダム・ド・パリ』以下、各小教区にそれぞれ教会が有る。

いつかざっと数えてみたら、<何とかのノートル・ダム>と名付けられた教会だけで、新旧大小30幾つかあった。


その中でも、異彩を放つ教会の一つが『マドレーヌ教会』であろう。

なぜなら、オート・クチュールを始めとして、エルメスを筆頭に超高級ブランドの立ち並ぶ「フォブール・サン・トノレ通り」と「ロワイヤル通り」が、その教区に含まれるのだから。

パリ中の教会の中でも「最もお布施の多く集まる」教会、なんて揶揄されていた事も有った程である。

     
     『マドレーヌ教会』


日本語のガイド・ブックでは「マドレーヌ寺院」よ呼ばれる事も多い様だ。


18世紀半ば、ルイ15世の治下に着工された。

有る建築家が指名されて建て始め、途中で亡くなった。

後を引き継いだ二代目の建築家は、そのまま工事を続ければ良いのに、途中まで出来かかっていた物を撤去して、自分が設計した物で工事を再開した。

その建築家も、また工事半ばで亡くなる。

その次、三代目の建築家も、そのまた続きを作る事はせず、自分が設計した物で新たに作り直そうと、いかにもフランス人のやりそうな事をした。

結局時間だけが過ぎ、完成しないままルイ16世の時代となる。

そして、革命。

騒然とした世情で「教会を建てる」どころでは無く、中断しそのまま時が過ぎる。


そしてナポレオンの登場。

彼は、権力を確立した後、自分が率いてヨーロッパ中をやっつけていた『栄光の陸軍のシンボル』としての<大殿堂>を建てる事を決める。

つまり、ルイ14世の『アンヴァリッド』に対抗して、祖国フランスの為に戦ってなくなった将兵を顕彰する為の施設、である。

幾人もの名だたる建築家の設計案を退けて曰く。

「アテネのパルテノン神殿と同じ物が欲しい」

というのも、正面に向かい合う、コンコルド広場の反対側に有る『ブルボン宮』と対称のパースペクティヴを求めたのだった。



     
     革命以来下院の国会議事堂となっている『ブルボン宮』



結局ナポレオンの生前には完成を見ず、19世紀も半ばになってから完成した。

最終的には「教会」として建てた訳では無く、「フランスの栄光の陸軍の殿堂」という、余り意味の分からない建物である為、カトリックの教会堂の蚊達からかなり外れている。

単純な長方形で、上から見たとき、十字架の形をしていない。

窓が一つもなく、古代コリントス様式の円柱が52本、周りを取り囲んでいる。


ルイ18世によって健堂され、聖マリー・マドレーヌ(マグダラのマリア)に捧げられたので、『マドレーヌ教会』と呼ばれるが、通常の様に頭に<聖>を付けずに呼ばれる。



     
     内部


中は、一列だけの「単親廊形式」である。

一番奥の祭壇部の半クーポラには、マグダラのマリアが、迫害され続けるイエスの足を洗って振りかけた香油の壷と共に、描かれている。



     


     
     イエスの足元に跪くマグダラのマリア


     
     優美に天に召されるマグダラのマリア像



この教会を取り囲むのが「マドレーヌ広場」。

所謂「グルメ」達に取っては、堪らない場所である。

というのも、美味しい物なら何でも揃うのだ。


先ず、教会正面を背に左前方に、マスタードの老舗の店が有る。

マスタードの本場「ブルゴーニュ」地方の『マイユ』である。


     
     マイユのパリの店舗


パリから南に250キロ。

ブルゴーニュ地方は、今でこそワインの名産地として名高いが、中世に於いては殆どが森であった。

炭焼き職人が木を切り倒し、炭を焼く傍らで、住処の近くに芥子菜を植えた。

何世代もに渡って炭を焼いて来たその地方は、炭の粉が土に混じり合って、芥子菜に取って最良の肥料である「ポタシウム」が豊富に含まれていたと言う。

仲買人が、炭焼きから芥子の種を買い付け、ディジョンの芥子屋に売り、芥子屋画「マスタード」に仕立てていた。

百年戦争の最中、ワイン作りを産業にまで高めたブルゴーニュの大公が、ブルゴーニュの名産品としてマスタードを手広く販売し始め、樽でフランス王の宮廷にまで届けられていた。

ちなみにブルゴーニュ大公家は、フランス王家の筆頭親族であったが、百年戦争ではイングランド王の見方をした為に、終戦と同時期の四代目大公が戦死した事で、ブルゴーニュをフランス王家の領地に併合した。

現在、1777年創業のディジョンの『グレイ・プーポン』という「手作り」の名店が、創業1747年と更に古いが「大メーカー」になっている『マイユ』に吸収されてしまった為に、手作り品も大量生産品も『MAILLE』の商標で販売されている。

昔ながらの手作りマスタードは、生ビールみたいなポンプから、目の前でニョロニョロ出して、素焼きの壷に入れられて、コルクの栓を打って、売ってくれる。


     
     <生>マスタードのポンプ



量り売りのマスタードをかって来て、小分けにする「ポット」に入れて、テーブルに出す。


     
     テーブルに出すポット


     
     木の匙


日本では、つぶつぶの残っている「昔風」の「粒マスタ-ド」が有名になっている様だが、純粋に芥子の味を味わえるのは、粉にして溶いた普通の対応の方がお勧め。

白ワイン・ヴィネガーで練ったものと、シャンパン・ヴィネガーで練ったもの、白ワインで練ったものが有るが、シンプルに「白ワイン・ヴィネガー」で練った物が、厭きなくて美味しい。

ステーキでもビーフ・シチューでも、或はハンバーグ・ステーキでも、この「ディジョンのマスタード」をつけるのと付けないのとでは、味わいに天と地程の開きが出る。

和カラシより辛味がマイルドで、ドイツの物の様に油っぽく無く、繊細で美味なので、是非試して頂きたい。

日本のスーパーでも「MAILLE」のマスタードは手に入る筈。

手作りの様な訳にはいかないが、十二分に美味しいですよ。

狭い店の奥に、創業者の肖像画が掲げられていた。


     
     創業者の肖像



マドレーヌ広場は、マスタードだけでは有りません。


80年代前半、フランス料理の根底を変えてしまった「ヌーヴェル・キュイジーヌ」の騎手『アラン・サンドランス』の店が有ります。

彼が、パリに小さな店『アーケストラート』を開いて三ツ星を獲得したときは、センセーションだった。

その後、この場所に以前から有った老舗の名店を引き継ぎ、有名人になり過ぎてからは、かなり仕事が疎かになって、私個人はガッカリした事が有り、興味を失った。

今はそれでも二ツ星を保っている。

     
     「アラン・サンドランス」


後は、パーティーや年末年始に欠かせない食材が、勢揃い。


先ずは「キャビア」の専門店が二軒も並んでいる事に、驚く。



     
     キャビアの「カスピア」


     
     極上のキャビア

階上にレストランもあり、「キャビアお試しコース」なんてのが有る。


もう一軒。


     
     「プルニエ」


ここは魚料理で名高いレストランの、ブティック。

今でこそ、どのようなレストランにも魚料理はメニューに必ず数種類載っている。

それこそ、高級レストランはメインも前菜も、肉系と魚系と数は同じ位有る程になっている。

しかし、30年前までは、肉料理5種に魚が良くて1種有れば、と言う程の物で、シーフードとは、牡蠣屋海老蟹の盛り合わせの事だった。

そんな中で、マドレーヌ近くの「プルニエ」は、魚料理の専門店で、世界中に知られていた物だった。

今では、レストランは同じ位置に有る物の、依然とは別資本で、近年このマドレーヌ広場に、キャビアの売店を出店した。


     
     プルニエ印のキャビア


更に無ゎ刷れてはならないのが、フォワ・グラとトリュフ。


     
     「メゾン・デュ・トリュフ・フォワ・グラ」

ここのレストラン・コーナーも悪く無い。



その他、日常の楽しみとして、チョコレートや紅茶、その他の蒼々たる有名食品店が並ぶ。


チョコレートも、近年多くの専門店が出来て来たが、老舗で相変わらず期待を裏切らないのが『マルキーズ・ド・セヴィニエ』である。


     
     「マルキーズ・ド・セヴィニエ」


17世紀、ルイ14世の治世下に登場した「ハイカラ」な飲み物「チョコレート」を、固形にして食べ物に仕立てたのが、18世紀ルイ15世の宮廷で、芸術家達と深く親交を結んだ才女、「セヴィニえ公爵夫人」だった。

その彼女の名前を店名にしている以上、下手な物は売れない筈と言う物だ。

最近は空港の売店でも見かけるし、日本でも輸入していて見かけるけれど、
やはり一番の老舗です。



紅茶と言えば「マリアージュ・フレール」がフランス一の老舗。


     
     「マリアージュ・フレール」


本店は「マレ地区」に有る。

最近は、全国展開して至る所に店舗を見かけるが、紅茶を飲まなくなったイギリスには既に良い紅茶は手に入らなくなった中で、フランスは昔から知る人ぞ知る紅茶の老舗は歴史が古いのです。

ちなみに、個人的には「PALAIS DES THE」が良いと思いますが。



そして、真打ち登場と言う事で、高級食料品店が二軒向き合って、にらみ合っています。


まず、おなじみのフォーション。


     
     「フォーション」


決してケーキと紅茶の店では有りません。

乾物、生鮮食料品(野菜と果物)、お惣菜、ワイン、ケーキとチョコレート、何でも最高の物を「お高い」値段で売っています。



     
     試食席


表の席では、中からかって来て自由に食べられる様になっている。


     
    ケーキのウインドウ



そして、フォーションより創業が古い、もう一軒の名店「エディアール」を忘れてはなりません。


     
     エディアール


こちらは、フォーションの様に「インターナショナル」な路線は取らず、昔ながらの「エピスリー」(乾物食料品店)のやり方で、もっと知名度を上げて行く、という戦略らしい。

勿論、紅茶やジャムやチョコレート、お菓子や各種缶詰瓶詰めなど以外にも、季節の茸や果物、貴重な野菜等、何でも揃っている。

ここのレストランも、「その日のコース」が有って、お進めです。



そして、これらの「美味しいもの」を美味しく頂く為に欠かせないのが、テーブル・ウエアーですね。

と言う訳で、最後の〆は「バカラ」と言う事になります。


     
     バカラ


この「マドレーヌ教会」の周辺は、もう少しだけ範囲を拡げると、とってもファッショナブルな地区になり、それはそれで目を楽しませてくれます。


     



あまりにも目立った所に有る悪には、訪れる事が少ない「マドレーヌ教会」は、パリにお越しの際は是非覗いてみましょう。

その後に、楽しいティー・タイムも待ってます。

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