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普天間問題が「元に戻った」というのは本当か?

2010年05月31日 10時26分26秒 | Weblog
普天間問題が「元に戻った」というのは本当か? (投稿者 喫煙者にも権利を)より

普天間移設問題は、「辺野古周辺」とする5月28日の日米共同声明で取り敢えず"決着"したが、これは何ら決着でなく、地元合意も社民党=福島瑞穂党首の同意もないままの"暫定"合意にすぎず、これから対米、対地元、(そしてもし社民党が連立に残留していれば)対与党内の本質的な議論が始まる。
実際にはどうなるかと言えば、

(1)8月末までに辺野古周辺とは言ってもどこにどういう施設を作るかを詰め「工法」を決定し、それから環境評価調査が始まる。場所と工法によっては環境評価はイチからやり直しになり、またこの施設に新規配備される主力機である垂直昇降輸送機V-22オスプレーの騒音調査はこれまでの環境評価には含まれていないので、かなり時間がかかるし、その結果がGOであるかどうかは確定的なことではない。

(2)場所と工法がどうであれ、名護市長と名護市議会は当然、移設を拒絶する。

(3)官邸としては9月下旬の名護市議会選挙に向けて、現在は26人中10人強に止まっている移設賛成派の議員を増やして、「市長は反対だが市議会は賛成」という二元状況を作って市長を孤立させようと姑息な裏工作を進めているが、たぶん成功せず、結局、地元の賛成は得られない。

(4)他方、宜野湾の伊波洋一市長は国が普天間基地の危険性を放置しているとして、今秋には国の不作為を問う訴訟に踏み切る公算が大きく(同市はすでに今年度予算にそのための法的措置の調査費120万円を計上済み)、政府はさらに追い込まれる。

(5)その伊波宜野湾市長はよく知られているように「グアム全面移転」の主唱者で、彼が11月の沖縄県知事選に出馬して当選すれば、ますます地元の反対は固まる。

(6)そこで鳩山はオバマに、「大変申し訳ないが、どうしても地元の了解を得られないので、海兵隊をグアムやテニアンに全面移転して、なおかつ日本及びアジアの平和と安全を確保する方策は考えられないか」と言う。

(7)オバマは、2015?25年を通じての「米軍再編」ヴァージョン2で、在アジア米軍兵力の削減と効率化、在日米軍基地の大幅縮小・撤去、グアムの軍事拠点化を考慮中なので、鳩山の話に耳を傾ける。

(8)そこで両首脳は、今更辺野古に新施設を建設することを避けて、グアム移転までの時限を明示して、日本本土に暫定移駐するか、もしくは普天間に我慢を求めるかするという新たな日米合意に達する。

......ということになる可能性がある。

●「見直し」に踏み出したのは間違いだったのか?

この"決着"をめぐる鳩山政権に対する非難囂々は当然だし、私自身もほとんど腰が抜けそうな失望感に囚われている。が、だからと言って、鳩山が普天間移設の06年日米合意の「見直し」に踏み込んだこと自体が間違いだったのかどうか。

5月22日付『中日新聞』の1面下のコラム「中日春秋」は、要旨こう書いている。

▼自民政権時代の日米合意に待ったをかけて始まった話なのに、結局、たどり着いた政府案というのが、それと煮たか焼いたかの内容なのだから反発は当然である。首相の手腕への失望が極まったとしても不思議ではない。

▼ただ、さはさりながら、こうも考える。では、かつての合意のまま米国に素直にハイと言っている方がよかったのだろうか...。

世論の流れに逆らうようで申し訳ないが......と言わんばかりの遠慮がちの筆致ではあるけれども、まさにそこが核心で、鳩山政権は06年の現行合意をそのまま黙って引き継いで粛々として建設開始の手続きを始めることも出来たのに、敢えて火中の栗を拾って「見直し」を表明した。06年案を地元は受け入れていたのに余計なことをしたと自民党などは主張するが、その受け入れ合意は、「日米安保が壊れてもいいのか」という恫喝のムチと700億円に及ぶ地元振興費による買収のアメで住民を真っ二つに引き裂いて無理矢理押しつけたもので、政権交代を機に一旦白紙に戻して見直そうというのはまったく適切な判断で、"英断"とさえ言えた。

しかし結果的に元の案を「煮たか焼いたかの内容」に戻ってきたのだからこの8カ月は無駄だったと言う人が少なくないが、そうではない。23日付毎日に載った宜野湾市の自営業(42歳)の「普天間問題で鳩山政権を評価」という投書はこう述べている。

●単に元の案に戻っただけなのか?

▼多くのメディアは「先延ばししただけで結局現行案に戻った」と報じているが、私は普天間問題が国民的関心事になった点で単に元に戻ったとは考えない。前政権だったら、国民は沖縄で起きていることを知らなかったはずだ。今回は大きな変化を伴って回帰したと思う。

▼これまでは「多くの米軍基地があり、いくつか事件が起きている」程度の認識しかなかったが、今回の動きを新聞、テレビが報道した結果、沖縄の現状が国民に伝わった。

▼5月末と起源を切ったため議論が尽くされていないが、日米地位協定の実情、日米安保の抑止力、日米同盟の本質などを国民が議論し、民意形成のスタート地点に立ったと考えたい。その意味で政権交代と鳩山首相誕生を評価したい...。

『サンデー毎日』6月6日号も「安保を飲み屋の話題にした鳩山の偉大なる"功績"」と題した巻頭特集を組み、次のような識者コメントを集めている。

▼鳩山首相の国外・県外移設宣言で基地問題がクローズアップされたのは確か。結果、図らずも「安保」「日米同盟」がお茶の間や飲み屋での話題になりました。日本の安全保障にここまで関心が高まったのは珍しいことですよ。自民政権では考えられません。鳩山首相の大きな「功績」と言えると思います(浅川博忠=評論家)。

▼国民に「国外・県外」を約束したのは軽率だったかもしれません。でも、問題を国民の議論の俎上に載せたことは評価していい(岩下明裕=北海道大学教授)。

▼基地の過重負担状況が変わらない中、鳩山首相の「最低でも県外」の言葉は「初めて差別問題に気づいた総理」として沖縄では評価されました。このため、移転問題が難航しても、退陣要求論は沖縄では大きくならない。「途中で投げ出さず、最後までやってくれ」という思いからです。その点、米国は(地元の共感や支持がなければ抑止力たり得ないという)「人間の抑止力」の重要性をわかっていて、地元が反発する敵地のような場所に基地は置かない。県内移設を強行すれば、沖縄戦を経験した高齢者も座り込みに加わるでしょう。反対行動は各地の米軍基地に飛び火し、それこそ米国が最も望まない状況に陥る可能性が高いように見えます(佐藤優=元外務省主任分析官)。

●基地拒否はすでに不可逆

さらにもう1人引用しよう。鹿野政直=早稲田大学教授(日本近現代思想史)は24日付朝日の文化欄に「沖縄の呻吟、本土が呼応を/米国に正対する時」と題して寄稿し、要旨次のように述べている。

▼現行案に限りなく近い反面、事態がわずかに動く兆しもみてとれる。昨年の政権交代は、沖縄の人びとを宿命論との訣別へとはずませ、否応なく問題を"全国区"化してきた。前世紀末の辺野古での座り込みに端を発する基地拒否の運動は、すでに不可逆の質を湛えている。

▼少なくとも2つの大きな問いが、わたくしたちに投げかけられているのをみることができる。1つは、沖縄の人びとの主張の核心が、基地の「移転」「移設」でなく、その「撤去」「閉鎖」であるということだ。それは政治思想としては、米海兵隊の駐留を不必要とする判断、移設に名を借りた基地の強化を許さないという見解、さらに、もはや「苦渋の選択」や「次善の策」は取らないという決意として発現している。

▼いま1つは、「基地の島65年」という歴史意識が、圧倒的に共有されつつあることだ。......基地の拒否は......本土に突きつけられた問いをなすとともに、では本土は有事を意識してきたのかとの、別の問いにも直面させずには措かず、安保の上に眠る惰性を痛撃する。沖縄の運動は、日米安保はこのままでいいのだろうかという問いを突き出した。安保解消は遠い目標としても、少なくとも地位協定の改定、いわゆる「思いやり予算」の廃止、普天間基地の閉鎖という3項目をパッケージで提起すべきではないだろうか...。

宜野湾市の投書者や『サンデー毎日』が半分は皮肉で言うように、06年合意をそのまま実行していれば本土のほとんどの人びとは普天間や辺野古のことなど気にかけることもなかっただろうに、鳩山のお陰でこの問題は"全国区"化して「お茶の間や飲み屋での話題」となり、さらには日米安保のあり方や「抑止力って何だ?」ということまで議論の対象に上ってきたのであって、まさにそれは彼の「偉大なる功績」なのである。そればかりではない。名護をはじめ沖縄の人びともまたこれを通じて「基地があるのは仕方がないのか」という宿命論的な諦めの心情から訣別して、断固として辺野古移設を拒絶する決意を固めたのであって、鳩山が日米合意だからと言ってこれを強行しようとすれば、佐藤優が言うように、座り込みの阻止闘争が全県・全国の支援を受けて高揚し、流血の事態も覚悟しなければならなくなるかもしれない。そうなれば、いくら米国でも「約束なんだから蹴散らしてでも基地を作れ」とは言えなくなる。

つまり、単に元の案に戻ったのではなく、現地・県民の覚悟と本土の意識と、その両方に劇的かつ不可逆の変化を引き起こしながら、真上から見れば確かにほとんど同じ地点のように映るけれども、横から見れば実は螺旋状に新しい次元に移動しながら戻ったのであり、宜野湾の投書者が言うようにこれが「日米地位協定の実情、日米安保の抑止力、日米同盟の本質などを国民が議論し、民意形成のスタート地点」となるのである。

●グアムに押しつければそれで済むのか?

06年合意でグアム撤退が決まっていた第3海兵遠征軍の司令部機能を含む本隊8000人及びその家族9000人だけでなく、その合意では残留することになっていたヘリ部隊を含む第31海兵遠征隊5000人とヘリ部隊、佐世保の海兵艦隊、岩国の海兵飛行隊をも全部一まとめにしてグアムに移すことは、政治的には難しいことではない。元々いわゆる「米軍再編計画」は、最西端の米領土であるグアムに在沖海兵隊の本隊のみならず陸軍の防空部隊や海軍の沿岸戦闘艦なども移駐させ、さらにアンダーセン空軍基地も拡張して駐機能力を増やし海兵隊航空部隊も受け入れられるようにし、全体としてグアムを西太平洋最大最強の軍事ハブに仕立て上げることを目標としている。

それは、普天間代替施設をどうするかとは直接に関係のない米軍の戦略的方向性であって、例えば2006年7月の米太平洋軍司令部「グアム統合軍事開発計画」では、あちこちに分散している海兵隊の陸上及び航空戦力をグアムに集中移転することをはじめ、海軍の沿岸戦闘艦などの配備、空軍の諜報・監視・偵察機能の強化、太平洋軍全体への補給ハブ機能の充実などが謳われていた。そこでは、グアムから東京まで1560マイル、台北まで1700マイル、マニラまで1600マイルと、ほとんど同距離であることの戦略的優位性を示す地図が掲げられていた。また2007年8月に開かれたグアム産業フォーラムに提出された「グアム軍事建設計画」という文書では、「グアムの戦略的位置は、米軍事力のフレキシビリティ、行動の自由、地球的行動への即応、地域的関与や危機対応を強化するもので、この地域全体に対する米軍の抑止力を維持するための配置を向上させる」と述べていた。ここでは、グアムからソウルまで4時間、ハノイまで3時間、ジャカルタまで5時間というグアムの地理的優位性を示す地図が用いられている。

その意味では----朝鮮半島での第2次朝鮮戦争タイプの大規模陸上戦闘がほとんどあり得なくなった今では特に----米国が沖縄と日本からの海兵隊全面撤退に応じない理由はない。

しかし、すでに島面積の3分の1を米軍に占領されているグアム現地(自治政府と住民)の側から見れば、06年合意による兵員8000人プラス家族9000人の受け入れさえも大変な負担である上、そのための道路や上下水道などインフラ整備の建設費用の調達方法は未だ明示されていない。本論説でも何度か触れてきたように、米海軍が行ったグアム及び北マリアナ群島の軍事ハブ化についての「環境影響調査ドラフト」は、在日海兵隊のほぼ全部をグアムに移すことを前提にしたもので、昨年11月に公表され閲覧に供された。

※環境影響評価ドラフト:〈http://www.guambuildupeis.us/documents〉

同ドラフトに対する意見聴取は今年2月で締め切られたが、応募した意見の数は約9000通にも及んでおり、それには相当数の反対意見が含まれていると見られる。カマチョ=グアム知事も意見を公表しており、その中で、もちろん総額2兆円に及ぶと見られる基地増強計画に大いに賛成しながらも、それについての米政府の予算措置は不充分かつ非現実的で、2014年とされている海兵隊移駐期限には到底間に合わないと訴えている。06年合意分でさえ受け入れるのがやっとという状況で、それにさらに上乗せしてを全ての在沖・在日海兵隊を移転させることにはグアム側に強い抵抗があろう。加えて、グアムの原住民であるチャモロ族には、現在の基地負担ですら怒りの対象であって、06年合意分はもちろん、それを超える海兵隊の移駐などとんでもない話である。とすると、沖縄県民と日本国民は、グアムに押しつければ済むのではなく、むしろグアム住民と連帯して海兵隊をハワイか米本土に押し込めるのが本筋ということになる。

●テニアンという可能性はあるのか?

そこで浮上する1つの可能性はテニアンである。グアムから北に160マイル、北マリアナ連邦のサイパンの隣にあるテニアンは、現在も海兵隊の訓練基地に使用されていて、「グアム統合軍事開発計画」でも引き続き使用することが明記されているが、現地は「それでは海兵隊が不定期にお客さんとして来るだけで金が落ちない」という理由で大いに不満で、沖縄・本土に残留することになっている部隊を丸ごと引き受けたいと申し出ている。

面白いことに、米軍機関紙『星条旗』はこのテニアン移駐の可能性について何度か採り上げていて、今年2月13日付では「テニアンは沖縄海兵隊にとって代替案となるかも」という記事で「海兵隊の皆さん!もし沖縄のヘリコプターの新しい基地を探しているならテニアンに電話しなさい。この太平洋の小さな島はあなたの電話を待っている」と書いている。同紙は4月21日付でも「沖縄にも日本本土にも普天間航空基地の移転先が見付からない中で、北マリアナ連邦上院が4月17日、テニアンに普天間部隊を受け入れることを満場一致決議した」と伝えている。

※〈http://www.stripes.com/news/tinian-may-be-alternative-for-marines-on-okinawa-1.98919〉

※〈http://www.stripes.com/news/tinian-island-makes-a-push-to-host-futenma-operations-1.101031〉

国民新党の下地幹郎や民主党の川内博史などはこのテニアン移駐の可能性に強い関心を抱いていて、川内は党内181人の署名を集めてこれを検討するよう鳩山と官邸に申し入れまでしているが、なぜか鳩山は相手にしていない。しかし、いよいよ辺野古移転が不可能となれば、この案も浮上することになろう。  

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