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放射線による線維症の予防・治療薬(続

2008-02-08 | 癌全般
肺は非常に放射線感受性が高く、放射線治療を受ける多くの患者で腺維症や肺炎が起こることから、その発症が適切な線量を照射する妨げにもなっている。これまでさまざまな研究が行われてきた。
インテグリン変換増殖因子beta axisは線維症の発症にかかわっており、インテグリンβ6をブロックすることにより、胸部毒性を予防、および恐らく修復することも可能であると大49回ASTRO年次総会で発表された。今回の研究はマウスのものであるが、ペンシルバニア大学医師によると、この結果は強烈なもので有望なものであるという。
マウスに14グレイの放射線を照射し、インテグリンβ6モノクロナール抗体を投与したマウスでは腺維症を発症しなかったが、対照群では肺毒性がみられた。腺維症の治療に、このモノクロナール抗体は必ずしも放射線治療中に投与する必要はなく、数ヶ月経って毒性が確認されてからでも可能であるとみられる。
ただし、「このような治療が腫瘍の血管新生にどのように関与するかわかっておらず、できる限り遅らせるか回避するほうが無難である」
ASTRO: Plenary 1. Presented October 29, 2007. Medscape
    
過去チップ:放射線防護薬1


4 コメント

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今度は接着因子・・・ (くぅたろう)
2008-02-08 21:54:54
今度の方がややわかりやすいですね。
接着因子を抑えておけば、繊維化が予防できるというのは、確かに理解しやすいです。これって、肝硬変の予防も出来るんでしょうかね。

調べていたら、日本じゃ発売中止になったトレンタールの名前が出てきて懐かしく思いました。
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本題からはずれますが (匿名さん)
2008-02-09 08:01:27
正常組織に対してだけ放射線障害を防護する薬剤は、もし存在すれば素晴らしいのですが、その判断は非常に難しいと思います。アミフォスチンに関しても比較的短期の比較で放射線治療効果を減弱しないという論文が複数あったと記憶していますが、それだけでは決してエビデンスとはなり得ないと私は思います。例をあげましょうか?かなり本題から外れたかのように思えるのは勘弁して下さい。

MSKCCのZelefsky先生らがASTROで発表されたポスターがネット上で閲覧できますので、このなかの’Nadir +2 RFS’という表をご覧になっていただきたいです。
Comparison of 7-Year Outcomes between LDR Brachytherapy and
High Dose IMRT for Patients with Clinically Localized Prostate Cancer

http://astro2007.abstractsnet.com/handouts/500074_combo_vs_imrt_astro_2007_poster.pdf

この表で、局在性前立腺癌の放射線治療でIMRT 81Gy、IMRT 86.4Gy、小線源治療の長期成績が比較されています。MSKCCは以前86.4Gyの超高線量のIMRTについて5年PSA無再発率が優れ、副作用が極めて低かったことを発表しており前立腺の線量と効果の関係を示すエビデンスのひとつとなっていました。でも、表を見ると中間リスク群のPSA無再発率についてはIMRT 81Gy、IMRT 86.4Gyが5年ではそれぞれ86%、87%だったのが7年では74%、48%と逆転しています。この結果に準じた論文もRed Journalに出ています。(MSKCCは、その点に関して討論をぼかしていますが)

放射線治療は短期成績だけで有用性や安全性をエビデンスとして共有することは危険です。極論すれば、治療中のQOLを無視してでも激烈な治療がなされれば、比較的短期の局所制御率は数値的には高くなると思います。でも、本当の意味での長期的成績がどうなるか分っていない分野も存在すると私は思います。

今回のTipsに書かれていた、「このような治療が腫瘍の血管新生にどのように関与するかわかっておらず、できる限り遅らせるか回避するほうが無難である」というのは、もっと深い意味でも正しいと思います。局所にくすぶり続けた腫瘍細胞が10年たって追跡期間を過ぎてから腫瘍塊として患者さんを苦しめる結果ともなりかねないです。
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放射線防護は難しそうですが ()
2008-02-09 13:09:39
線維症だけなのでしょうかと思っていましたが、肝硬変とも共通のものなのですか。

そこまで奥深くはわかりませんが、放射線に対してこういったアプローチも可能になるかもしれないですね。
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短期と長期 ()
2008-02-09 13:22:19
匿名さん^^、ご説明ありがとうございます。

局所への線量が高ければ効果が高い、というわけではない例ですね。
放射線治療は難解で、まだコントロールも十分でない、一般にはブラックボックス化していると思います。少し論題はずれますが、こうして噛み砕いてみんなに示していただけることは大変役立ちます。

存在すれば素晴らしいー、反面まだまだ克服すべき未知の事柄がありますが、人類の進歩はどんどんSFを現実にしてきていますね。防護剤に関しても可能になればいいですね。
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