ジェンダーから見るカンボジア

南国のカンボジアからの日記、ジェンダー視点でカンボジア社会を分析します

代理母問題

2019年04月06日 | 代理母問題調査


カンボジアで代理母問題を調査したのが私だけなので、この問題となると色々聞かれることがある。
アメリカの大学の調査団が来て、国連からの依頼でインタビューに答えることになった。
こっちから提供するだけじゃつまんないので、調査員に講義に来てもらって、学生にインタビューしてもらった。
ちょうどマダム・セクレタリーのシーズン5で代理母問題を上映したクラスだったので、関心もあるだろうと。

↓久しぶりに本当に小さかったクラス、5人で開始して6人で終わった


偶然、学生の一人が代理母問題に関して警察の研修に参加したことがあった。「中国人が代理母を適当に依頼して、お金も払わず子供も受け取らないケースがあった」「臓器販売目的で代理母を依頼した事例がある」などなど、警察がかなり事情を把握しているとのこと。ほんと?

「カンボジア人は、代理母っていうと、夫が妻以外の女性とセックスすると思ってる」という発言も相次ぎ、「3000ドルなら誰でもやりたい」との意見もあった。

ある男子は、「子供を生産する工場だとしてカンボジアの名前が世界的に有名になるのは嫌だ」。


調査員たちによると、アメリカである専門家が、「国連のような機関が、世界各国の依頼を受けて、代理母を一元化して仲介すれば搾取が減る」という意見があったそう。
国連ですら代理母について合意がないし、アメリカみたいに国際機関の決定を履行しないというか独走状態の国もあるのに、そんな夢物語があるか?

「北による南の女性の搾取、今の法制度や格差社会では、カンボジアでは禁止したほうがいい」と意見を言ったら、あーでもないこーでもないと、賛成できないのかと質問された私。
アメリカの豊かな有名大学の研究者たちなので、ゲイカップルへの代理母にも理解があって、代理母制度には賛成という立場をとっているらしい。
まあ、私だって、アメリカの代理母に反対するつもりはない(合法な州では、という意味だが)

ただ、カンボジアで、となると、事情は異なる。例えば代理母契約が3000ドルなら、縫製工場の女性の半分は(将来があまり芳しくない現状では)不安定な仕事よりも9ヶ月間の期間限定3000ドルの代理母をやりたいのではないだろうか・・・それ以上に農園で搾取されている女性はほとんどが代理母を選択するっていうのが私の調査でも結果として出てるのだ。
そうすれば、20−30万人の女性がやりたいって名乗り出て、そこから選抜が始まり・・・とか考えると、社会的混乱も大きい。
そうなると、子供を産む道具として女性の身体が使われ、人身取引と全く変わりない構図になる。

「でも、子供が欲しい夫婦のためになるし、お金が欲しい女性のためになる」と主張していた調査員。
「貧し女性が、誰かの役に立つと心から思って代理母をするのもダメなのか」とも聞かれたけれど、カンボジアの貧富の差を理解していれば、貧困ゆえに夫から無理やりやらされる女性が後をたたないのも間違いない。搾取は避けられない、新帝国主義ならぬ、豊かな国による貧しい国の奴隷化だという構図が見えないんだろうか。

合意できないというとこで合意したのである。
でも、久しぶりに高度な議論に参加させてもらって、とても刺激があった。