現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

奥田亜希子「キャンディ・イン・ポケット」五つ星をつけてよ所収

2017-05-31 20:08:14 | 参考文献
 高校のカースト制度の最下層(ルックスがよくない、学力もなく地元の大学に進学する予定、流行のファッションをする勇気もない、性格も地味、他の子たちとコミュニケーションする能力も低い、もちろん彼氏はいない)の主人公の女の子が、カースト制度の最上層(かわいい、ファッションセンスもいい、東京の大学に進学する学力がある、バンドのリードボーカル、コミュニケーション能力も高い、クラスの人気者、もちろん東京の大学に通う年上の彼氏もいる)の女の子と偶然知り合って、三年間同じ電車で待ち合わせて学校までの三十分を過ごします。
 主人公にとっては何事にも代えがたい、彼女との三年間の思い出を断ち切るために、主人公は卒業式を途中で抜け出して、いつも彼女からもらっていたのど飴を、彼女のコートのポケットにそっと入れます。
 作者は、最後は思いがけない結末を用意して、主人公を救っています。
 「既読スルー」を小道具に使って現代性を演出していますが、登場する女子高校生たちは少し古い感じがします。
 また、最上層の女の子の彼氏が理想化されすぎていて、「デウス・エクス・マキナ」(ギリシャ悲劇に登場する機械仕掛けの神)的な印象を受けました。

五つ星をつけてよ
クリエーター情報なし
新潮社

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