現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

赤羽末吉「おおきなおおきなおいも」

2019-09-10 08:28:17 | 作品論
 1972年10月に初版が出た古典的な絵本です。
 私が読んだのは、2000年11月の76刷ですから、子どもたちにはおなじみのロングセラーになっています。
 この絵本も、児童文学研究者の石井直人が「現代児童文学の条件」(「研究 日本の児童文学 4 現代児童文学の可能性」所収、その記事を参照してください)において、田島征三の「しばてん」や長新太の「キャベツくん」などと並べて、「これらの絵本の画面には、およそ(読者の)「内面」に回収できない、とんでもない力が充溢している。」と、評しています。
 たしかに雨降りでいもほりに行かれなかった園児たちが途方もない空想を展開するお話ですが、「鶴巻幼稚園・市村久子の教育実践による」と但し書きがあるように、この本は大人よりも柔軟な読み手である子どもたちの「内面」には回収できるかもしれません。
 しかし、このようなあふれるエネルギーに満ちた絵本に出会えた子どもたちは幸せです。
 天気の日には園庭で力の限りに遊び、雨の日には部屋の中でこのような絵本を好きなだけ読む、そんな幼年の日々をすべての子どもたちに味わってもらいたいものだと、心から思います。
 やたらと教育的だったり、教訓的だったりする絵本があふれている現状では、媒介者(両親、先生などの子どもたちに本を手渡す人たち)は心して本を選択しなければいけないでしょう。

おおきなおおきなおいも―鶴巻幼稚園・市村久子の教育実践による (福音館創作童話シリーズ)
クリエーター情報なし
福音館書店

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