2008年の児童文学者協会の協会賞を受賞した作品です。
学校や塾、ソフトボールチームになじめない四年生の女の子の波が主人公です。
特に、何かと干渉する母親とは、波はうまくいっていません。
その象徴として、母親がしじゅう波の携帯にメールや電話をかけてくるのが、四六時中子どもを管理しようとする現代の親の姿をうまくとらえています。
波は、小学生なのにバイトに精を出している風変わりな五年生の真麻ちゃんと知り合い、高島さんというおばあさんの犬の散歩を頼まれます。
波は、高島さんの二階で同じ四年生の朝夫くんと知り合います。
実は、波は数十年前にタイムスリップしていて、朝夫くんは高島さんの息子の子ども時代の姿だったのです。
その世界で、いじめを受けて足を骨折して学校を休んでいる朝夫くんに、波は次第にひかれていきます。
波と朝夫くんは、時間を超えて水族館でデートしたりしますが、やがて別れの時がきます。
周囲から阻害されている同士である波と真麻ちゃん、波と朝夫くんの関係が、丁寧な筆致で描かれます。
抑圧されている者がタイムスリップして別の世界へ行く物語は、フィリパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」が有名ですが、その作品でトムがハティと会えるのは、バーソロミューおばあさんの夢の中だけ(非常に広いヴィクトリア朝時代の低地地方でしたが)で、ハティはこちらの世界へは来れませんでした。
ところが、この作品では、波が行けるのは朝夫くんの部屋の中だけで、逆に朝夫くんはこちらに来て家を出て、電車に乗って水族館まで行けました。
これは、抑圧されているのが波だけでなく朝夫くんでもあり、命の危険まであった朝夫くんの抑圧の方が強かったからかもしれません。
「トムは真夜中の庭で」では、トムとバーソロミューおばあさん(実はハティ)がこちらの世界で抱擁するラストシーンが感動的なのですが、この作品では波と大人になった朝夫くんとは再開しません。
しかし、朝夫くんはジャズピアニストとして成功し、母親である高島さんを呼び寄せることになっており、今は抑圧されている波にも幸せな未来が待っていることを暗示しています。
1978年に「朝はだんだん見えてくる」でデビュー(日本児童文学者協会新人賞受賞)した、岩瀬が三十年後に協会賞を受賞したわけで、彼女の息の長い創作活動に敬意を表したいと思います。
三十年前に比べて、文体も構成も格段に成熟した作品になっていると思います。
ただ、粗削りながらすごいエネルギーを感じたデビュー作と較べると、この作品はその破たんのなさがやや物足りなくも思えました。
特に、朝夫くんを失った代償のように、今まで波とうまくいっていなかった母親が急にやさしくなったラストは、とってつけたようなハッピーエンドで、何か「岩瀬成子もまるくなってしまったなあ」と慨嘆させられました。
学校や塾、ソフトボールチームになじめない四年生の女の子の波が主人公です。
特に、何かと干渉する母親とは、波はうまくいっていません。
その象徴として、母親がしじゅう波の携帯にメールや電話をかけてくるのが、四六時中子どもを管理しようとする現代の親の姿をうまくとらえています。
波は、小学生なのにバイトに精を出している風変わりな五年生の真麻ちゃんと知り合い、高島さんというおばあさんの犬の散歩を頼まれます。
波は、高島さんの二階で同じ四年生の朝夫くんと知り合います。
実は、波は数十年前にタイムスリップしていて、朝夫くんは高島さんの息子の子ども時代の姿だったのです。
その世界で、いじめを受けて足を骨折して学校を休んでいる朝夫くんに、波は次第にひかれていきます。
波と朝夫くんは、時間を超えて水族館でデートしたりしますが、やがて別れの時がきます。
周囲から阻害されている同士である波と真麻ちゃん、波と朝夫くんの関係が、丁寧な筆致で描かれます。
抑圧されている者がタイムスリップして別の世界へ行く物語は、フィリパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」が有名ですが、その作品でトムがハティと会えるのは、バーソロミューおばあさんの夢の中だけ(非常に広いヴィクトリア朝時代の低地地方でしたが)で、ハティはこちらの世界へは来れませんでした。
ところが、この作品では、波が行けるのは朝夫くんの部屋の中だけで、逆に朝夫くんはこちらに来て家を出て、電車に乗って水族館まで行けました。
これは、抑圧されているのが波だけでなく朝夫くんでもあり、命の危険まであった朝夫くんの抑圧の方が強かったからかもしれません。
「トムは真夜中の庭で」では、トムとバーソロミューおばあさん(実はハティ)がこちらの世界で抱擁するラストシーンが感動的なのですが、この作品では波と大人になった朝夫くんとは再開しません。
しかし、朝夫くんはジャズピアニストとして成功し、母親である高島さんを呼び寄せることになっており、今は抑圧されている波にも幸せな未来が待っていることを暗示しています。
1978年に「朝はだんだん見えてくる」でデビュー(日本児童文学者協会新人賞受賞)した、岩瀬が三十年後に協会賞を受賞したわけで、彼女の息の長い創作活動に敬意を表したいと思います。
三十年前に比べて、文体も構成も格段に成熟した作品になっていると思います。
ただ、粗削りながらすごいエネルギーを感じたデビュー作と較べると、この作品はその破たんのなさがやや物足りなくも思えました。
特に、朝夫くんを失った代償のように、今まで波とうまくいっていなかった母親が急にやさしくなったラストは、とってつけたようなハッピーエンドで、何か「岩瀬成子もまるくなってしまったなあ」と慨嘆させられました。
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