恩田陸の二段組500ページ以上の長編(その記事を参照してください)を二時間弱の映画にどうまとめるのか、興味津々で観ました。
私の浅薄な予想を裏切って、人間ドラマはできるだけシンプルにして、演奏シーンに十分に(それでも原作に登場する膨大な楽曲のほんの一部ですが)時間を割いていたので、音楽ファン(というよりはオーディオマニアかもしれませんが)としては、最近の映画館の非常に優れた音響で、才能ある若手ピアニストたちの演奏を、これまた才能のある若手俳優たちの演技付きで堪能できました。
原作を読んだときと同様に、手持ちのクラシック音楽(特にピアノ曲)の音源をまとめて聴きたくなりましたし、映画館で聴いたせいで現在の自室の貧弱な音響設備を何十年かぶりで昔のように最新のものに更新したくなりました。
そういった意味では、この映画はクラシック音楽やオーディオの楽しみを発見(再発見)させてくれるものなのかもしれません。
ただ、人間ドラマをシンプルにしたために、原作を読んでいない観客には、ストーリーや人間関係がわかりにくかったでしょう。
そのため、興行的にはやや苦戦するかもしれません。