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現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

白土三平「夢の男の巻」カムイ伝所収

2019-05-03 12:08:21 | コミックス
 新たな主要人物として、夢屋七兵衛(商人)が登場します。
 江戸時代が、江戸や大坂を中心にして消費経済社会になるにつれて台頭してきた商人の代表ですが、実際には連載当時の日本人よりさえも消費や流通にたけた現代的なマーケティングセンスを持っている人物です。
 彼の手足になっている手代の日の市(実は抜け忍の赤目)が全国から集めてくる情報や、網元の借金の代わりに手に入れた漁船による流通をバックに、今までにないスケールの大きな商人(というよりは実業家)に成長していきます。
 一方、正助(百姓)も、稲や麦から、蚕や綿といった換金作物へ移行していって、百姓やたちの将来の展望を切り開こうとしています。
 また、百姓一揆も、スダレ(苔丸)を中心にしてより組織化されて、部分的ですが領主側に勝利するようになります。
 こうして物語の中心人物は、カムイ()に代表される忍者や草加竜之進(武士)に代表される剣客といった武闘派から、夢屋や正助や苔丸のような実務派へ移行していきます。
 
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白土三平「谷地湯の巻」カムイ伝所収

2019-05-03 10:34:58 | コミックス
 谷地湯というのは、物語の舞台である日置藩(架空の土地)にある自然温泉場の事です。
 この巻では、主要な登場人物(人間だけでなく動物も)が、様々な戦いに傷ついて湯治にやってきます。
 カムイ(白オオカミ)は、群れのボス争いの戦いに敗れて、全身に噛み傷を負っています。
 横目(頭)は、忍者になったカムイ()がなぎなたの名手アテナとの命懸けの練習で編み出した、かの有名な必殺技、変移抜刀霞切り(詳しくは「カムイ外伝」の記事を参照してください)で腹に深手を負っています。
 正助は、本百姓になって自分の田んぼを持ったために張り切りすぎて、怪我をしてしまいます。
 武助(百姓代)は、将軍への直訴に向かう途中で傷を負います。
 激しい闘争の合間の一時休憩(武助はここで捕まって殺されてしまいますが)といった場所なので、登場人物同士の触れ合い(正助はナナ()との愛をより深く自覚し、横目は娘のサエサのカムイ()への想いを再確認します)も描かれています。
 新しい主要人物としては、カムイの忍者としての師匠の赤目が登場し、抜け忍になって忍者群に追われ、あえて罪人になって御蔵島に流刑になります。
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白土三平「玉手騒動の巻」カムイ伝所収

2019-05-03 09:55:46 | コミックス
 いよいよ江戸時代の労働争議である百姓一揆が登場しました。
 ただし、この百姓一揆自体はまだ未組織なために、権力側(領主側)にあっさりと敗北します。
 しかし、主要な登場人物たち(特に百姓の正助)が、間接的ながら百姓一揆を経験したことにより、将来の階級闘争への下地になっています。
 新しい主要登場人物としては、百姓一揆の首謀者として苔丸(一揆敗北後に、追手を逃れるために、自ら顔をメチャクチャにして正体を分からなくして、スダレになります)が登場します。
 また、百姓が無知(文字も知らない)なために武士や庄屋に騙されていることを強調して、学習の大切さや百姓たちの団結や身分を超えたとの連帯などが、正助を初めとした子どもたちを中心に描かれています。
 このあたりは、連載当時(60年代後半)の学生運動や労働運動の主張と繋がるので、当時の革新勢力の若い人たちに支持されたのではないでしょうか。
 一方で、久しぶりにカムイ(白オオカミ)も登場して、他の一匹狼との連帯や群れとの関わりが描かれて、人間社会との二重写しになるような構成になっています。

 
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白土三平「斬首の巻」カムイ伝所収

2019-05-03 08:50:41 | コミックス
 この巻では、主要な登場人物(カムイ(白オオカミ)は登場しません)が、その境遇を脱しようともがくがゆえに、厳しい試練(親しい人(本人も)たちが次々にむごたらしく殺されていきます)に直面します。
 カムイ()は、可愛がっていた年下の友だち()を百姓に殺され、その敵を討ったために死罪になります(その後、唐突に双子の兄がいたことになって、同じカムイを名乗って復活します。かなりご都合主義ですね)。
 正助(百姓(下人))は、「ねえちゃん」と慕っている同じ村の女性(草加竜之進の恋人)が、強引に領主の側妻にされたために自害してしまいます。
 草加竜之進(家老の息子)は、邪魔な家老を陥れようとする目付の陰謀と、恋人への領主の横恋慕のために、一族郎党を抹殺され、恋人も自害して、彼自身は脱藩します。
 主人公たちの成長につれて、彼らの恋愛も描かれていきますが、それぞれに身分の違う相手同士(草加竜之進(武士)にはオミネ(百姓)、正助(百姓)にはナナ(、カムイの姉))、カムイ()にはサエサ(頭の娘、ただしサエサの片思い))なのは、ここにも身分制度による障害を設けて、より身分による差別を明確にするためでしょう。
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