現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

四元康裕「ゴールデンアワー」

2017-03-30 15:49:53 | 参考文献
 1960年代から70年代にかけてのテレビアニメ(「巨人の星」、「鉄腕アトム」、「あしたのジョー」など)やテレビ番組(「タイムトンネル」、「宇宙家族ロビンソン」など)やテレビ出演者(クレイジーキャッツ、コント55号など)、映画(「ミクロの決死圏」、「夕陽のガンマン」など)などを題材にした連作詩集です。
 児童文学研究者の石井直人が、「児童文学補完計画1」(その記事を参照してください)で述べた「架空へのノスタルジアを自覚した試み」という評価は、前半部分にはあてはまりますが、全体としてはそれだけでなく少年時代全体へのノスタルジアを18歳の時の母の死の予感を通奏低音にして描いた詩集でした。
 ここでいう「架空へのノスタルジア」というのは、いわゆるマンガ的リアリズムと同様に、ある世代に共通したエンターテインメント作品の理解を前提とした作品世界のことです。
 私は、作者や石井よりやや上の世代にあたるので、彼らの強い共感を少しだけ客観的に眺められる立場にいます。
 ビデオゲームがなかったそのころのテレビを中心にした架空世界は、そのころ少年時代を過ごした人々にとっては、実生活と切っても切れない関係にありました。
 それらをバネにして、子ども時代を描くような児童文学作品が、もっとあってもいいかなと思います。

ゴールデンアワー
クリエーター情報なし
新潮社
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