現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

色川武大「少女たち」離婚所収

2017-03-21 11:06:46 | 参考文献
 「離婚」(その記事を参照してください)の前篇にあたる作品です。
 主人公が、匿名で娯楽小説(主人公を作者と考えると阿佐田哲也名義の麻雀小説)を書きはじめ、次第に売れっ子になるころです。
 先輩の事務所に居候していた主人公が、初めて独り立ちして事務所兼住処を得ます。
 そこに、秘書やアルバイトなどの名目で出入りするようになった少女たち(年齢的には二十代が大半ですが精神的には非常に幼く危うい)との不思議な関係(主人公は遊園地と呼んでいます)を描いています。
 四十近い主人公は、彼女たちの保護者気取りです(彼女たちと個人的な関係は一切なく、昼ごろから夕食まで、みんなで雑談したり、ご飯を作って食べたりしているだけです。主人公は、夜から朝方までは、一人で飲みに行ったりギャンブルに行ったりして不在です)。
 こうした関係も、主人公が売れっ子作家でお金も暇もあって、しかも家族がいない気楽な立場だからこそできることで(実際、「離婚」などの作品に登場する妻になる少女が現れて、「遊園地」は閉鎖されます)、普通の男性にとっては羨ましい話ではあります。
 現代では、こうした若い女性たちは、当時よりもはるかに自由な立場にあるように思われがちですが、実際には経済的には非常に厳しい状況が続いていて、今でも同様に危うい状況(悪い男や風俗関係の仕事にからめ捕られる)なのかもしれません。

離婚 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋
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色川武大「妻の嫁入り」離婚所収

2017-03-21 09:55:33 | 参考文献
 「離婚」(その記事を参照してください)と「四人」(その記事を参照してください)の後日談です。
 今度は、元妻は主人公からの自立を模索します。
 まず、彼女は、仕事を始めようと、ブティックに勤めはじめます。
 主人公から見ても、彼女が仕事をするとしたら、ブティックぐらいしかむいている場所はないのですが、これも長続きしません。
 次に、年下の男を好きになって、彼と結婚しようと主人公のもとを離れて同棲を始めます。
 相手の男は主人公の知人で堅気のサラリーマンなので、主人公も応援しています(これで厄介払いができるという気持ちもあります)。
 しかし、これもすぐに破たんして、元妻は主人公の元へ舞い戻ります。
「出戻りという場合は、実家へ帰るというのがきまり相場なのに、此奴は元亭主のところへ帰ってくるんだなァ。」とぼやきつつも、主人公はまんざら悪い気分ではありません。
 こうして、二人の奇妙な関係は、また復活しました。
 こうしたつかず離れずの男女関係は、普通の婚姻関係をしているのが大半だった当時の男性たちにとっては、ある意味羨ましいものでした。
 非婚化が進んだ現代では、このような関係の男女は増えているかもしれません。

離婚 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋
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