吉田憲司氏著「仮面の森・アフリカ・チェワ族の仮面結社の世界」のご紹介を続けます。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
「ニャウ」と呼ばれる仮面をつけた男たちは、集落に葬儀が行われる時に登場するようです。
死という恐ろしいものと直面する時、人間が何を感じ、どう対処してきたか、人間の普遍的な姿が現れているように思います。
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(引用ここから)
ニャウが登場する機会は、「マリロ」と呼ばれる「葬送儀礼」と、「チナムワリ」と呼ばれる女性の成人儀礼がある。
以下に、「葬送儀礼」における「ニャウ」の様子を述べる。
1・「埋葬儀礼」
村の中で死者が出ると、死の床の脇についていた女性たちが大声で泣き始める。
その泣き声によって、他の村人たちは死者が出たことを知る。
死の報は、その後時を移さず、死者の氏族と近隣諸村落の首長に伝達される。
ただし死の原因に邪術が疑われる場合は、女性たちが泣き始めるのをしばらく遅らせることがある。
邪術師は、人の死肉を食べるために人を殺すと信じられている。
死の発生の通報を遅らせるのは、この間に墓地を薬で処置し、死者の肉を食べに来ようとする呪術師を墓地に入れないようにするためである。
埋葬は、親族の到着を待って、死の翌日か翌々日の午前中に行われる。
埋葬の日、男たちは、早朝から墓地で墓穴を掘る。
この作業を行うのは、「ニャウ」のメンバーに限られる。
墓穴を掘り終わったところで、男たちも村へ戻り、葬儀の参列者全員が死者の家の回りに会する。
遺体には白い布か、死者が有していたもっとも清潔な服が用いられる。
その後、遺体は木製の棺に納められるか、草を編んで作ったマットに包まれて、さらにその上から黒い布をかけられた上、担架に乗せられて墓地へ運ばれる。
黒は、〝喪"を想起させる。
闇の中に入ればすべてのものが見えなくなるように、死者が二度とこの世に姿を見せないことを願って、黒を用いるのであるという。
埋葬の後、日を改めて近親者の頭や腕に、ムラザと呼ばれる布を巻く儀礼が行われる。
死者の棺を覆った残り布が裂かれ、再び死者の家の前に集まった親族の頭か腕に巻かれていく。
ムラザを巻かれると同時に、女性は大声をあげてひとしきり泣く。
こうしたムラザは、古くは一年間、巻いたままにされたという。
この期間がすなわち喪の期間である。
2・「手洗い式」
埋葬から1,2か月たって、「チサンバ・マンジャ」=「手洗い式」と呼ばれる儀礼が行われる。
この儀礼に必要な酒の醸造には、およそ1か月かかる。
最初の3週間は、主としてトウモロコシを水につけて発芽させるのに費やされる。
この発芽したトウモロコシが、発酵材料となる。
残る1週間は、こうして得られた材料を仕込み、火にかけて酒に仕上げるまでの工程に要する期間である。
この最後の1週間に、毎夜「ニャウ」が登場し、村で舞踏を演じる。
そしてその度に、各工程の酒を「ニャウ」と人々が分かち合って飲む。
「ニャウ」は、死者がこの世に蘇ってきたものとされる。
「ニャウ」すなわち死者と、埋葬にかかわった人々が酒を分かち飲むことによって、死者の霊が慰撫され、結果的に埋葬に関わった人々から死者の霊の障りを取り除くことが可能になる。
埋葬に関わった人々の「手を洗う」とは、そのことを意味している。
3・「喪明けの儀礼」
死の翌年、トウモロコシの収穫直後の時期をねらって、「ボナ」と呼ばれる儀礼が行われる。
「ボナ」は「葬送儀礼」の最終段階をなし、喪の期間の終焉をつげる儀礼である。
それはチェワ族の生活の中で最大の儀礼であり、「ニャウ」の結社にとって最も重要な活動の場となっている。
「ボナ」もまた、酒作りと平行して行われる。
○儀礼の開始
〔準備段階1日目〕
≪村にて≫
早朝、村はずれにある広場で、ドラムが叩き始められる。
その日の夜に仮面舞踏を行うことを、近隣の村々に知らせるためである。
その夜、知らせの通り、村には「ニャウ」が登場し、広場で舞踏を演じる。
人々が十分に集まった頃を見計らって、村の「ニャウ」のリーダーにより、
「明日から村では女たちがトウモロコシを挽き始め、一方、男たちは森で〝秘密の場所″」を開く」という宣言がなされる。
この〝秘密の場所″で、かぶりものが制作されるのである。
女たちは常日頃、森のその〝秘密の場所″で「男たちが「ニャウ」を水から釣り上げる」のだと言い聞かされている。
死者の霊を体現する「ニャウ」は、水の中から出てくると言われているのである。
したがって「秘密の場所を開く」という宣言は、女子どもには、「男たちがこれら「ニャウ」を釣り上げ始めるのだ」と理解される。
同時にその宣言は、周辺一帯の森への立ち入り禁止の宣告でもある。
これによって翌日以降、男たちは森で「動物型ニャウ」=「ヨレンバ」の制作を、女たちは村で酒造りを、それぞれ別々に進めていくことになる。
≪森にて≫ 「ニャウ」への「加入儀礼」
儀礼の開始が宣告された同じ夜、森の中では「ニャウ」に新たに加入する少年たちの「加入儀礼」が行われる。
加入は、「葬送儀礼」に付随して行われるのが原則である。
新たに加入する者は、「ナムワリ」と呼ばれる。
広場で2、3の「ニャウ」が踊っている間に、「ナムワリ」は導師に伴われて村を後にし、闇の中を森へ向かう。
舞踏の際に男たちが「ニャウ」の変装をする場所へ、向かうのである。
近づくと、闇に向かって、導師が呼びかける。
「死者を連れて、そちらへ行くぞ」
それを聞きつけた「ニャウ」のメンバー・・仮面を被った者も被らない者も・・は、手に手に木の枝を裂いて作った鞭を持ち、「ニャウ」特有の裏声を用いて叫ぶ。
「死者だ、死者だ」(喪に服する者の泣き声を真似る)
声を上げるが早いか、彼らは導師と「ナムワリ」の一団に襲い掛かり、容赦なく鞭を当てる。
後は「ナムワリ」をかばう導師と「ニャウ」との間で、鞭の応酬である。
鞭打ちが終わると、「ナムワリ」は一か所に引き据えられる。
「ニャウ」のメンバーが交代で「ナムワリ」の前に立ち、一人ひとりに訓戒を与えるとともに、過去の悪行の数々を並べ立てて、したたかに鞭で打ちすえる。
同時にこの瞬間、少年たちは、「ナムワリ」と「ニャウ」が死者でも動物でもなく、村の男たちが変装したものであることを知らされるのである。
「おまえは今日、「ニャウ」の場で我々の姿を見た。
今日を限りに、子供じみたふるまいはやめるのだ。
今後、父母の寝所に足を踏み入れてはならない。
女たちが使う料理用の壺に触れてはならない。
子供じみたふるまいは、やめるのだ。
お前は叔父の畑へ忍び込み、サツマイモを盗んだだろう。
二度と繰り返すな。
さもないと死んで、糞をたれることになるぞ。
「ニャウ」の中で繰り返し行われる鞭打ちは、子供としての魂を追い出し、おとなとしての魂を吹き込むためになされるという。
導師はその後、「ナムワリ」の教育係を任命する。
この日から「ナムワリ」は、夜は教育係とともに合宿し、昼は森にこもって「ニャウ」にまつわる秘密の用語や問答、さらには仮面や「動物型ニャウ」=「ニャウ・ヨレンバ」の作り方を学びあうことになる。
草は「毛」、木は「ろっ骨」と呼ばれる。
これは「動物型ニャウ」=「ヨレンバ」の骨組み「ろっ骨」を、木で作り、その上から「毛」の代わりに草でおおうからである。
「土」は「油」と呼ばれる。
これは、制作の仕上げに、人間の体なら油を塗るところを、土を塗り付けるからである。
「斧」は、男性の代表的な持ち物であるがゆえに、「小さな夫」と呼ばれる。
「火」は、「動物型ニャウ」=「ヨレンバ」を灰にし、「ニャウ」の一切の挙動を隠してくれるゆえに、
「ニャウ」の最大の導き手という意味で「大導師」と呼ばれる。
「羽製覆面」は「ムクータ」と呼ばれる。
これは、踊り手がそれをかぶった姿が、頭に羽毛が密に生えたムクータという鳥に似ていることに由来する。
村で日常使われている語を、このように置き換えることで、ニャウのメンバー同士の会話内容がカムフラー
ジュされる。
一方、「人型ニャウ」についての、秘密の問答がある。
「ニャウ」とはなんだ?
「ニャウ」は人間だ。
というものである。
それまで、「ニャウは野生動物だ」と教えられ、それ以外の言葉を口にすればきびしい体罰を加えられてきた子供たちにとって、その教えの開示はまさに世界が180度転換することを意味している。
次の、「ニャウはなにを食べる?」という問いは、その「ニャウ」の持ち物と仮面の制作に必要な物品を尋ねている。
また「どこで寝る?」という問いは、仮面の隠し場所についての質問である。
これらの問答は、見知らぬ人物が「ニャウ」の結社のメンバーかどうかを確認するために用いられる。
新入りの「ナムワリ」は、早朝人が起きだす前に村を出て、一目散に川へ行って沐浴を済ませた後、森の中の〝秘密の場所″へ向かう。
「ナムワリ」に毎日課せられる沐浴は、鞭打ちと同じく、子供としての魂を取り除くためのものとされている。
結社での一日を終えると、人々が寝静まってから村へ戻る。
姿を見られてはならないという忌避は、きわめて厳格に守られている。
同様に、加入儀礼の期間中、「ナムワリ」には年長のメンバーへの絶対服従が強制され、さらに作業時以外は、腕を組んでうつむいた姿勢でいることが要求される。
「葬送儀礼」において、服喪者に要求される姿勢と同じものである。
(引用ここまで)
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長い引用になるのですが、葬祭の文化は非常に重要で、またアフリカの葬祭の資料は少なく、さらにそれを他の文化の葬祭と比較検討することは、わたしとしては意義があると考えますので、もう少し続けさせていただきたいと思います。
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政治家は今も昔も同じですね。
読み通すのは一頑張りが必要かも。
コメントをどうもありがとうございます。
また、お返事がたいへん遅れまして、まことに申し訳ございません。
ご紹介いただいたウェブ小説は存じませんでした。
たいへん興味深く、現在はまだ、途中までですが、拝読させていただいております。
わたくしの、こんなへんてこりんなブログをみつけてくださり、ご投稿くださり、本当にありがとうございます。
こんなところでよろしければ、どうぞご紹介リンクをお張りくださいませ。
わたくしのブログはほんとにへんてこりんで、なにが焦点なのか、分かる方は少ないと思います。
しかしですね、、一応焦点は持っており、アフリカの習俗も、アメリカの習俗も、日本の習俗も平らに並べてみたい、という欲求で作っております。
日本史は、とても興味深いですね。
これからの、omachiさまのご活躍を、お祈り申し上げますとともに、どうか、当方にも、いろいろとご教示いただけますよう、お願い申し上げます。