始まりに向かって

ホピ・インディアンの思想を中心に、宗教・心理・超心理・民俗・精神世界あれこれ探索しています。ご訪問ありがとうございます。

牡牛の呪力、太陽神の密儀・・ミトラス神殿について(2)

2010-11-25 | エジプト・イスラム・オリエント
引き続き、フェルマースレン著「ミトラス教」の紹介をします。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。

        *****


       (引用ここから)



ヘッデルンハイム出土の浮彫りの裏側では、太陽神とミトラス神とが殺された牡牛のレリーフの背後で一緒に横座りしている。

牡牛の皮の上に横座りする例も時々見かけるが、彼らが牡牛から取り出そうと願う呪術的な力が、ここでもまた強調されている。

コナイツ出土の浮彫りでは、“大鵜”と“獅子”(カラスとライオン)の位階の信徒2人が、それぞれの獣面をかぶり、パン、果実、あるいは魚などの酒食を供する。

あるいは太陽神がひと房の“葡萄”を手渡すと、ミトラス神はこの贈り物を畏敬の念をもって見つめる。


しばしばミトラ教の遺跡に接して発見される廃棄用の竪穴(ゴミ捨て場)からは牡牛、野猪、羊、鳥類などの骨が出る。

通常は、牡牛の肉を食べ、その血を飲んだものと推測されるが、牡牛が手に入らなかったりした場合は、他の手近の動物の肉、あるいはパンと魚を、血の代わりには葡萄酒を用いた。

信徒集団の必要経費が壁面に刻みつけられている神殿では、そのリストの冒頭に、肉と葡萄酒の代金がある。

太陽神のレリーフの手に乗せられたひと房の葡萄もその証拠の一つである。


そこで4世紀末の暴力的キリスト教徒によって最も手ひどく破壊されたのは、まさしくこれらミトラス教の「聖さん式」のシーンであった。

キリスト教神父によれば、ミトラス神崇拝者の「聖さん式」は、キリスト教のそれの“悪魔的模倣”である。


ミトラス神の信徒たちは、復活の儀式も執り行っていた。

彼らは確固としてこう信じていた。

すなわち牡牛の肉を食し、その血を飲めば、生命そのものが牡牛の血から再創造され、また蘇ることができる、と。

この食物と飲み物はいつの日にか魂を蘇らせて久遠の光に浴させ、救済をもたらすと考えられた。

この信仰を元として、牡牛は自らを供物として捧げたミトラス神に他ならないからこそ、信徒たちはディオニュシス的な陶酔的密儀の中で聖なる肉を食し、血を飲んだのだ、と著述家たちは結論した。


ユスティヌスによると、会衆は「聖さん式」の際に、キリスト教のそれと似たきまり文句を用いた。


キュモンが刊行した中世の文献では、ゾロアスターは弟子たちに次のように話しかける。

「わが肉体を食し、我が血を飲む者は、我に帰一し、我はその者に帰一するが、そうしないものは救済の極意に至らない。」


これとキリストの弟子への言葉を比較してみよう。

「我がからだを食し、我が血を飲む者は永遠の命を得る。」


このペルシア起源の重要な章句の中に、キリスト教徒と敵手との間の争いの元があるのである。



ミトラス神はこれらの秘蹟をなしとげた後に戦車に乗って昇天した、と言われる。

いくつかの浮彫りでは彼は4頭立ての太陽神の戦車の後ろから走って行く。


時として彫刻家は、戦車の進路を天界へと向ける。

そこでは翼と魔王の杖によってそれと分かるヘルメス神が道案内を務める。


しかしドナウ川地方で発見された浮き彫りでは、ミトラス神は天界ではなく、大洋に向かわんとする戦車の方に静かに足を運んでいる。

この場合、大洋は“横に伏した髭もじゃの神”の姿をとっている。(まるで布袋さまのような、リラックスしたお姿で。。)

彼の足はマントに覆われ、左手は水かめの上に置かれる。


大洋が図式化されて、波打つ線の文様で表わされることもある。

このシーンを示す浮彫りでは、大洋の神オケアヌスを一群の妖精で取り囲む図像もある。

彼の頭上には翻るヴェールが見える。

その、神の頭上に翻るヴェールの図像は、キリスト教会の下からミトラス神殿が発掘されたサンタ・プリスカ教会の、地下のミトラス神殿の礼拝用の壁画に描かれた横臥する人物と、比較されるべき類似的特徴を示している。


ドナウ川地方にある神殿の浮彫りでは、オケアヌス神の体は“蛇”によって取り囲まれている。

水界の神は、自らの中に永遠の時の神と天界の神の能力を併せ持つように見える。

この結合体は、天界と水界の両方が一つのものと考えられていた時代の名残である。

キリスト教の図像製作者達がこのテーマを描くためのインスピレーションは、オケアヌス神の代わりに“擬人化されたヨルダン川”として表現された。

(引用ここまで)


               *****


おそらく人類にとって、動物を殺すことには、同族(人間)を殺すことの暗喩が含まれているのではないか、という気がします。

「人間の死」が、テーマとなっているのではないか、とわたしは思います。

また、カラスやライオンが登場するのも、ここだけの話ではないですから、これは何か人類共通のストーリー、つまり人類の宿命が示されているのではないかと思います。

もうすぐクリスマス。。

チキンのステーキを、我が家も作ることでしょう。




wikipedia「オケアノス」より

オーケアノス(古典ギリシア語)は、ギリシア神話に登場する海神であり、ティーターンの一族に属する。

特に外洋の海流を神格化したものである。

ギリシア神話の世界観では、世界は円盤状になっており、大陸の周りを海が取り囲み、海流=オーケアノスがぐるぐると回っているとされた。

それ故、神話においてオーケアノスの領域という言葉は、しばしば「地の果て」という意味で用いられる。

また、地上の全ての河川や泉の水は、オーケアノスの水が分かれて地下を通り、地上に現れると考えられていた。

古代のアナクシマンドロスの世界観を絵にした地図で見ると、世界は、大洋=オーケアノスが周囲を取り囲み、真ん中に、エウローパ、アシアー、リュビアーの三つの領域・大陸があることになっている。



写真・ミトラス教の聖さん式・カラスとライオンのお面をつけて神々に酒食を供する (同書より)


関連記事

画面右上の小さな検索コーナーを「ブログ内」にして、

キリスト     15件
ミトラ       7件
ワイン       2件
ゾロアスター    6件
太陽神      15件
洞窟       15件
カラス      13件
地底       15件
弥勒        7件
蛇        15件
ペルシア      6件

などあります。(重複しています)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ミトラス神殿について(1)... | トップ | 弥勒の千年王国(1)・・未... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

エジプト・イスラム・オリエント」カテゴリの最新記事