21世紀研究会編「イスラームの世界地図」のご紹介を続けます。
礼拝の順序の説明ばかりを集めましたが、とてもよいと思いましたので、掲載させていただきます。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
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(引用ここから)
イスラームの礼拝
イスラーム教徒にとって信仰の柱の一つである礼拝は、一般には次のように行われる。
まず、毎日の礼拝が義務づけられており、決まった時間に定められた形式で行われる。
場合によっては、決められた時間より後で礼拝することも認められている。
ただし先に済ませておくことは許されない。
一日5回の礼拝は、次のように定められている。
●ファジュル
早朝、または夜明けの礼拝。
白糸と黒糸の見分けがはっきりつく明るさになった時に行う。
6時半ごろ。
●ズフル
正午過ぎの礼拝。
太陽が真上に来たときに行う。
1時半ごろ。
●アスル
夕方、または午後遅くの礼拝。
太陽が半分傾きかけた時、あるいはまっすぐに立てた棒の影が棒の長さと同じになった時に行う。
4時半ごろ。
●アグリブ
日没後の礼拝。
太陽が地平線から消えた時に行う。
6時40分ごろ。
●イシャーフ
就寝前、または夜半の礼拝。
アブリブを行って約1時間半後に行う。
8時15分ごろ。
この他、安息日である毎週金曜日の午後には公式礼拝が行われる。
公式礼拝には、イスラーム教徒は男女を問わずモスクに集まり、礼拝を行う。
また説教も行われる。
礼拝はこうして決められたものだけではなく自発的に行うこともある。
礼拝にあたっては、男性は労働中の場合もあるので、最低限膝までの下半身をおおう衣服。
女性は、手と顔以外のすべてを覆う衣服を身に着けることが決められている。
●アザーン
モスクから町中に届くように礼拝の呼びかけであるアザーンが次のように唱えられる。
1 アッラーフ アクバル(4回)
意味 アラーは偉大なり
2 アシュハド アン ラー イラーハ イッラッ=ラー(2回)
意味 アラーの他に神はないことを誓う
3アシュハド アンナ ムハンマダン ラスールッ=ラー(2回)
意味 ムハンマドはアラーの使徒であることを誓う
4 ハイヤー アラッ=サラー(2回)
意味 礼拝のために来たれ
5 ハイヤー アラ=ル=ファラー(2回)
意味 成功のために来たれ
(夜明けの礼拝であるファジュルの時のみ)
アッ=サラート ハイルン ミナン=ナウム(2回)
意味 礼拝は睡眠に勝る
6 アッラーフ アクバル(2回)
意味 アラーは偉大なり
7 ラー イラーハ イッラッ=ラー(2回)
意味 アラーの他に神はいない
礼拝の順序は、一般的には次のように行われる。
宗派、国、地域、またその時々の礼拝の種類によって、繰り返す回数、動作、となえる語句が異なる。
ただしどこの国であってもアラビア語で行う。
1 メッカの方向(キブラ)に向かって立ち、礼拝の種類、回数を告げ、意思表示を行う。
2 両方の手のひらを耳の高さに上げて、次の文句を唱える。
アッラーフ アクバル(1回)
3 両手を体の前で組み、コーランの「開扉の章」他、コーランにある任意の3節以上を唱える。
「コーラン・開扉の章」は以下の通り。
「コーラン・メッカ啓示・全7節」
慈悲ふかく、慈愛あまねきアラーの御名において・・
A 讃えあれ、アラー、万世の主、
B 慈悲ふかく、慈愛あまねき御神、
C 審きの日、「最後の審判の日」の主宰者。
D 汝をこそ、我らはあがめまつる。
汝にこそ、救いを求めまつる。
E 願わくば我らを導いて、正しき道を辿らしめたまえ、
F 汝の御怒りをこうむる人々や
踏み迷う人々の道ではなく、
G 汝の嘉し給う人々の道を、歩ましめたまえ
4 両手をひざ頭につけて、次の句を唱える。
スプハーナ ラッビヤ=ル=アジーム(3回)
意味 偉大なる我が主に栄光あれ
5 直立の姿勢に戻りながら、次の句を唱える。
サミアッ=ラーフ リ・マン ハミダ
意味 アラーは称讃する者を慶び讃えたもう
6 1の句を唱えながら平伏し、次の句を唱える。
スブハーナ ラッビヤ=ル=アアラー
意味 荘厳至高なる我が主に栄光あれ
7 体を起こす
8 1の句を唱えながら平伏する
9 神を讃え、ムハンマドと善良なイスラーム教徒のために祈りの句を唱える。
10 7の姿勢に戻る。
顔を上げ、アラーへの称賛、僕であることを誓い、次の句を唱える
ラー イラーハ イッラッ=ラー
この句を唱える時は、右手の人差し指を立てて突出し、神が唯一の存在であることを示す。
この後、神へ恵みを乞う句を唱え、両側の同胞の方を向いて「アッサラーム アレイクム(あなたの上に平安あれ)と挨拶の言葉をかける。
イスラム用語小辞典
ア行
「アラー」 イスラムにおける唯一なる神の呼称。
語源的にはアラビア語で「神」を意味する語。
〝アラーという名の神“が、いるわけではない。
「アザーン」 人々に対する礼拝の呼びかけ。男性のみが行う。
「アブラハム」 旧約聖書の預言者。コーランでは「メッカのカーバ神殿を建設しアラーに捧げた」と伝えられている。
「アラブ」 遊牧民を意味する。現在では一般に「アラビア語を話すイスラム教徒で、自分をアラブ人と自覚する人々」ということになろうが、厳格に規定することは難しい。
「アラファート」 メッカ巡礼中、重要な礼拝がおこなわれる丘。預言者ムハンマドがここで別離の説教を行ったと言われている。
「アル=アルカーヌ・ル=ハムサ」(5本の柱)
イスラム教徒が実行すべき5つの務め。すなわち、信仰告白、礼拝、喜捨・施し、 断食、巡礼のこと。
「イスラーム」 アラーに絶対服従する、という意味。
「岩のドーム」 エルサレムの神殿の丘にあり、預言者ムハンマドが昇天したとされる岩の上に建てられた建物。
「ウンマ」 民族、部族、国家などと訳されることが多いが、正確にはどれもあてはまらない。
イスラーム共同体というべきか。神が人類救済するために使徒をつかわし、よびかける集団のこと。
「エルサレム」 予言者ムハンマドの時代には、礼拝の方向はエルサレムだった。
またムハンマドがここで昇天したとされ、624年、神殿の丘に岩のドームが建てられた。
カ行
「天啓の民」 アラビア語で「神が啓示した啓典を信仰する人々」のこと。
ユダヤ教徒、キリスト教徒を含む。
「コーラン」 イスラームの聖典。神から預言者ムハンマドに下された啓示。
語源は「声高く朗誦する」という意味。
サ行
「最後の審判」 イスラーム教徒の根本信条の一つ。
この世が終わりを迎えて万物が死に絶えた後に行われる、とされている。
万物の死後、天使の吹き鳴らすラッパの音ですべての人が生き返り、生前の行いについて神の裁きを受ける。
そして、良き信者は楽園に、悪しき信者と異教徒は地獄へ、と分けられる。
永遠の生命は、この最後の審判の後に得るものだとされている。
したがって現世はその前の一時的な段階に過ぎないと考えられている。
「ザムザムの泉」 メッカにある名高い水場。
アブラハムの妻が幼子イシュマエルのために水を得ようとした時、神の慈悲によって湧き出した泉とされている。
(引用ここまで)
写真(上)は14世紀につくられたコーランの彩色写本。
写真(中)はムガール朝時代の絵画。賢者たちが討論をしている図。
写真(下)は9世紀建立のモスク。
「イスラーム歴史文化地図」より
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