引き続き、白山信仰を研究しておられる前田速夫氏の「白の民俗学」のご紹介をさせていただきます。
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(引用ここから)
「傀儡と白丁(クグツとはくちょう)」
朝鮮半島には、かつて「白丁」と呼ばれた差別された人々がいた。
李朝時代の朝鮮では、滅亡時に高麗から流れこんだ放浪する被差別民のことをいい、柳器をつくり、狩猟に従事する。
獣のに関わらず、歌舞、遊芸、占い、祈祷を業とする集団々を「才人白丁」と呼んだ。
「才人白丁」は、我が国の傀儡にそっくりである。
それゆえ傀儡、サンカは有史以前に日本に渡って来た白丁族であろうとの説がある。
また、西洋ジプシーとの類似を指摘する人もいる。
対して、柳田国男、折口信夫たちは、こうした外来民族起源説には反対の立場をとって、もともとは、巫女がその起こりであるとする。
どちらが正しいかは、「細男(サイノオ)舞」や「傀儡(クグツ)舞」の発生にかかわる安曇族の
「磯良(シラ)舞」に、渡来人がどの程度関わっていたかがカギを握る。
海中から醜い姿を現した踊り手を、朝鮮の「白丁族」の象徴とみなせば、このとき、我が国の安曇族に「白丁」の風習が伝わって、それを記念したのが「磯良(シラ)舞」だったことになる。
この時代、日本列島はすでに、大和民族が形成されていたことは確かだろう。
したがって、渡来した「白丁族」が一部まぎれこむことはあったにしても、傀儡は民族としては日本人である。
ただ、彼らの生業や保持した信仰と芸能の質は、朝鮮の「白丁族」の影響を受けて、それまでと一変した可能性は大いに考えられる。
(引用ここまで)
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同書はその後、「白」(特にその音)にまつわる世界各地の象徴的な意味合いの研究に入ります。
次にご紹介するには、エスキモー(イヌイット)の世界の「白」の意味合いです。
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(引用ここから)
「SIR」の本源
次にあげるのは、エスキモーシャーマンの語る言葉である。
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「シラ」とわたしたちが呼んでいる力が存在し、それは簡単な言葉では説明できません。
世界、天候、そして地上のあらゆる生命を支える大いなる精霊。
それはあまりにも力強いものなので、人類に共通の言葉で通じることがなく、嵐、雪、雨、海の猛威などによってのみ、それと知られるものです。
人間の恐れる、自然のあらゆる力です。
しかしこの精霊は、コミュニケーションのもう一つの道を持っています。
陽の力、海の凪、自分ではなにも知らないまま無心に遊ぶ子どもなどです。
子ども達のほとんどは、女性のような、柔らかく、優しい声を聞いています。
声は子ども達のところに神秘的なしかたでやってきますが、とても優しげなので、子ども達は恐れることなく、何らかの危険の徴候があることだけを聞きます。
だれ一人「シラ」を見た者はありません。
その居所は神秘です。
その中で聖霊は、私たちの間にいると同時に、言語を絶するほどの遠いかなたにもいるのです。
・・・・・
(引用ここまで)
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読後感としては、白山信仰については、よりいっそうわからなくなったような感じがしました。
著者は、非常に広い視野で、広い関心を持って、「白」のなぞを解こうとしています。
関連著書をもう少し読まないと、ついていけないと思っています。
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