前半、セレッソ大阪の一方的ともいえる展開となった。その契機となったのが、鹿島のボランチ梅鉢がボールを持った時にプレスを掛ける戦術だった。鹿島はビルドアップできないばかりか何度も決定機を許してしまう。
そこで前半31分と早い時間に鹿島ベンチは動き、柴崎を投入。ベテランの小笠原を梅鉢のポジションに下げて対策をした。それでもセレッソの勢いは止まらず、後半終了間際に2点目を奪われる。
後半、鹿島はドゥトラを入れ、フォーメーションも変える。徐々に鹿島のペースとなり、57分と62分に得点して同点に追いついた。セレッソは防戦一方となり、ついに80分に勝ち越しゴールを許してしまう。
セレッソは前後半で全く別のチームになってしまった。
セレッソの事前の準備は万端と言えた。鹿島のウィークポイントを上手く突くことができた。それによって試合のペースを握った。鹿島は梅鉢交代という手は打ったが、戦術の変更は前半のうちに行わず、それによって追加点も取ることができた。
しかし、後半の戦術変更に為すすべがなかった。本来、ベンチワークで対応すべき場面だったが、前半15分に右SBの高橋を負傷で交代させていて、怪我明けの丸橋を投入していたが、彼の動きが万全とは言えず、結局2-2の局面で交代せざるを得なくなった。また、前半のうちにボランチ二人にイエローカードが出され、交代カードが使いにくい状況でもあった。
リードはしているが劣勢な状況の時、もっとボールポゼッションをするという選択肢があるはずだった。しかし、ボールを奪っても攻撃を急ぎ、無理なパスを引っ掛けられて相手の攻撃に繋がるという展開を繰り返した。前半攻守に渡って目立ったボランチ二人も後半は存在感が無かった。
交代カードが容易に使えない中でピッチ上の選手が状況に合わせてプレイする。それこそが「経験」ということだ。セレッソには優秀なタレントが揃うが、みな一様に若い。今季加入のブラジル人二人は未だチームをコントロールする立場とは言えず、経験のある選手はGKやバックラインにいるのみだった。
Jリーグが誕生し、日本代表が世界と少しずつ戦えるようになっていく中で、常に言われ続けたのが「経験が足りない」ということだった。
ドーハの悲劇のときに、時間を潰さずにプレイしたことは顕著な例だが、それから20年ほどが経っても未だに「経験が足りない」ことには変わりがないと思う。もちろん、当時よりは遥かに経験を積んではいるけれど。
プロ野球のアジアシリーズを見ると、韓国や台湾のプレイに時折「経験が足りない」と気付くことがある。こうした「経験」は単に試合数を積めば身に付くというものではない。
「経験」とはどれだけのことを気付いているかということだ。ありとあらゆる可能性について対応を準備しておく、それをほとんど無意識のうちに行えるかどうか。考えて準備するのでは対応が遅れてしまうことを「経験」によって予測する。
この試合でも、後半から鹿島がアジャストしてくることは予測できた。2-0でリードしているとはいえ、ここで失点すると相手に勢いを与えて厳しくなることもサッカーではよく言われることだ。その中でチームとしてどう戦うのかという共通理解が「経験」と呼べるだろう。
この試合のセレッソは文字通り「経験不足」だった。単純な若さだけでなく、チームとしてどう戦うかという明確なビジョンを持つことが出来なかった。もちろん、個々の選手たちの「経験不足」も明らかだった。
チームが「経験」を積むこと。個人個人が「経験」を積むこと。どちらも容易ではない。ゲームの経験値のように数をこなせば身に付くというものではない。しかし、数をこなさなければ身に付かないものでもある。
今季のセレッソは夏場まで五輪代表がクラブを離れる機会が多い。更に夏には清武らの欧州移籍が現実的な話となっている。
そのため今季から指揮を執るソアレス監督はこれまでのクルピ監督よりも守備を重視し結果を出していた。タイトル獲得は目標だが、J1残留が決して楽な状況だと言うわけではない。
今日のような試合を繰り返せばすぐに危機が訪れる。「経験不足」を若さのせいにしてはいけない。この敗戦を何が何でも「経験」としてプラスに替えて欲しい。
蛇足。
宮市の話。現在レンタル移籍でボルトンでプレイしているが、現状を見ると少なくともあと半年から一年はボルトン(プレミア残留できなければ別のクラブ)でプレイした方がいいと思う。
ボールを持った時の攻撃に関してはアーセナルでも他の選手に引けを取らない技量がある。しかし、サッカーはそれだけで成り立つわけではない。ボールを持っていない時の動きであるとか、守備などまだまだ「経験不足」が目に付く。アーセナルに戻ってもレギュラーというわけにはいかないだろうし、出場機会が限られればなかなか「経験」は得られない。
得意な点は練習で伸ばせても、欠点はやはり試合経験を積まないと解消されないと思うだけに、出場機会はできるだけ多い方がよいだろう。まだ若いのだし。
蛇足その2。
香川の話。先日、現地記者のコメントで「もう少し経験が必要だ」という指摘があったけれど、香川本人が思っている以上に「経験」は必要だと思う。メガクラブでも出場機会はあるだろうが、ドルトムントのようにレギュラーを取れるかどうかは微妙。限られた出場機会では「経験」を積むのは難しいのでは。
日本人の海外移籍は増えたが、こうしたメガクラブへの移籍は少なく、そういう意味での「経験不足」もある。どれだけ良いオファーでも、活躍してこそ移籍は成功なのであって、移籍金や年俸がいくらかなんてたいした問題ではない。
そこで前半31分と早い時間に鹿島ベンチは動き、柴崎を投入。ベテランの小笠原を梅鉢のポジションに下げて対策をした。それでもセレッソの勢いは止まらず、後半終了間際に2点目を奪われる。
後半、鹿島はドゥトラを入れ、フォーメーションも変える。徐々に鹿島のペースとなり、57分と62分に得点して同点に追いついた。セレッソは防戦一方となり、ついに80分に勝ち越しゴールを許してしまう。
セレッソは前後半で全く別のチームになってしまった。
セレッソの事前の準備は万端と言えた。鹿島のウィークポイントを上手く突くことができた。それによって試合のペースを握った。鹿島は梅鉢交代という手は打ったが、戦術の変更は前半のうちに行わず、それによって追加点も取ることができた。
しかし、後半の戦術変更に為すすべがなかった。本来、ベンチワークで対応すべき場面だったが、前半15分に右SBの高橋を負傷で交代させていて、怪我明けの丸橋を投入していたが、彼の動きが万全とは言えず、結局2-2の局面で交代せざるを得なくなった。また、前半のうちにボランチ二人にイエローカードが出され、交代カードが使いにくい状況でもあった。
リードはしているが劣勢な状況の時、もっとボールポゼッションをするという選択肢があるはずだった。しかし、ボールを奪っても攻撃を急ぎ、無理なパスを引っ掛けられて相手の攻撃に繋がるという展開を繰り返した。前半攻守に渡って目立ったボランチ二人も後半は存在感が無かった。
交代カードが容易に使えない中でピッチ上の選手が状況に合わせてプレイする。それこそが「経験」ということだ。セレッソには優秀なタレントが揃うが、みな一様に若い。今季加入のブラジル人二人は未だチームをコントロールする立場とは言えず、経験のある選手はGKやバックラインにいるのみだった。
Jリーグが誕生し、日本代表が世界と少しずつ戦えるようになっていく中で、常に言われ続けたのが「経験が足りない」ということだった。
ドーハの悲劇のときに、時間を潰さずにプレイしたことは顕著な例だが、それから20年ほどが経っても未だに「経験が足りない」ことには変わりがないと思う。もちろん、当時よりは遥かに経験を積んではいるけれど。
プロ野球のアジアシリーズを見ると、韓国や台湾のプレイに時折「経験が足りない」と気付くことがある。こうした「経験」は単に試合数を積めば身に付くというものではない。
「経験」とはどれだけのことを気付いているかということだ。ありとあらゆる可能性について対応を準備しておく、それをほとんど無意識のうちに行えるかどうか。考えて準備するのでは対応が遅れてしまうことを「経験」によって予測する。
この試合でも、後半から鹿島がアジャストしてくることは予測できた。2-0でリードしているとはいえ、ここで失点すると相手に勢いを与えて厳しくなることもサッカーではよく言われることだ。その中でチームとしてどう戦うのかという共通理解が「経験」と呼べるだろう。
この試合のセレッソは文字通り「経験不足」だった。単純な若さだけでなく、チームとしてどう戦うかという明確なビジョンを持つことが出来なかった。もちろん、個々の選手たちの「経験不足」も明らかだった。
チームが「経験」を積むこと。個人個人が「経験」を積むこと。どちらも容易ではない。ゲームの経験値のように数をこなせば身に付くというものではない。しかし、数をこなさなければ身に付かないものでもある。
今季のセレッソは夏場まで五輪代表がクラブを離れる機会が多い。更に夏には清武らの欧州移籍が現実的な話となっている。
そのため今季から指揮を執るソアレス監督はこれまでのクルピ監督よりも守備を重視し結果を出していた。タイトル獲得は目標だが、J1残留が決して楽な状況だと言うわけではない。
今日のような試合を繰り返せばすぐに危機が訪れる。「経験不足」を若さのせいにしてはいけない。この敗戦を何が何でも「経験」としてプラスに替えて欲しい。
蛇足。
宮市の話。現在レンタル移籍でボルトンでプレイしているが、現状を見ると少なくともあと半年から一年はボルトン(プレミア残留できなければ別のクラブ)でプレイした方がいいと思う。
ボールを持った時の攻撃に関してはアーセナルでも他の選手に引けを取らない技量がある。しかし、サッカーはそれだけで成り立つわけではない。ボールを持っていない時の動きであるとか、守備などまだまだ「経験不足」が目に付く。アーセナルに戻ってもレギュラーというわけにはいかないだろうし、出場機会が限られればなかなか「経験」は得られない。
得意な点は練習で伸ばせても、欠点はやはり試合経験を積まないと解消されないと思うだけに、出場機会はできるだけ多い方がよいだろう。まだ若いのだし。
蛇足その2。
香川の話。先日、現地記者のコメントで「もう少し経験が必要だ」という指摘があったけれど、香川本人が思っている以上に「経験」は必要だと思う。メガクラブでも出場機会はあるだろうが、ドルトムントのようにレギュラーを取れるかどうかは微妙。限られた出場機会では「経験」を積むのは難しいのでは。
日本人の海外移籍は増えたが、こうしたメガクラブへの移籍は少なく、そういう意味での「経験不足」もある。どれだけ良いオファーでも、活躍してこそ移籍は成功なのであって、移籍金や年俸がいくらかなんてたいした問題ではない。