白夜の炎

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放射線被ばく地をめぐる混乱について―ICRP2007年度報告

2011-05-10 16:17:33 | 原発

ダイヤモンドオンラインに放射線数値をめぐる重要な記事があったので、一部引用します。

これをみると、ICRPの2007年度報告がきちんと日本で理解されていなこと。

そして2007年度報告に基づく理解でも、日本政府の対応が子供達を明らかに被曝させる方向にあることが分かります。

「【第167回】 2011年5月7日

坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]

福島原発震災 チェルノブイリの教訓(6)

学校の放射線許容量はなぜ迷走しているのか

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 まず4月19日付の文科省が発表した文書を抜粋しておこう。

「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方

平成23年4月19日

原子力災害対策本部

 国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急被ばくの状況における公衆の防護のための助言)によれば、事故継続時等の緊急時の状況における基準である20-100ミリシーベルト/年を適用する地域と、事故収束後の基準である1-20ミリシーベルト/年を適用する地域の並存を認めている。

 また、ICRPは、2007年勧告を踏まえ、本年3月21日に改めて「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1-20ミリシーベルト/年の範囲で考えることも可能」とする内容の声明を出している。

 このようなことから、児童生徒等が学校等に通える地域においては、非常事態収束後の参考レベルの1-20ミリシーベルト/年を学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし、今後できる限り、児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切であると考えられる。

(中略)また、16時間の屋内(木造)、8時間の屋外活動の生活パターンを想定すると、20ミリシーベルト/年に到達する空間線量率は、屋外3.8マイクロシーベルト/時間、屋内木造1.52マイクロシーベルト/時間である。

(後略)」


 ICRPの「2007年勧告」を元にして今回の措置を案出したことがわかる。1-20ミリシーベルトの幅が初めて出てきたわけだ。

 放射線被曝による細胞や遺伝子への影響は、第2次大戦後から年々研究が進み、その危険性が科学的に明らかにされてきた歴史がある。

 ICRPの前身は1920年代から活動している科学者の任意団体だが、1950年に現在の名称となり、放射線許容量を発表してきた。各国はICRPの放射線許容量の数値を根拠にして国内法へ適用してきた。

 ICRPの放射線許容量は1950年から何度か改定され、毎回厳しくしてきた。1950年の年間許容量は150ミリシーベルトほどだった。もっとも、放射線技術者や原発作業者用の基準であり、一般公衆の基準ではないが。

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ICRPは1960年に一般公衆の許容量を年間5ミリシーベルト程度とした。

 この基準が長く続いたが、チェルノブイリ原発事故(1986年)を受けて、1988-90年に改定された一般公衆の年間許容量は1ミリシーベルトまで下げている。この基準が現在も続いている。

 ICRPは2007年に大きく改定した。基準を変更したのではなく、原発の重大事故や核攻撃を受けた場合の緊急事態を想定した数値を発表したのである。

 この「ICRP2007年勧告」については、じつは日本の国内法にはまだ適用されていない。2010年1月に文部科学省の放射線審議会基本部会が「ICRP2007年勧告」の「国内制度等への取入れに係る審議状況について」という「中間報告」を出しただけである。

 日本国内で「ICRP2007年勧告」が制度化されていないので、専門家の意見の相違があらわになってしまい、国民が混乱するわけだ。

 放射線被曝による細胞や遺伝子への影響は、第2次大戦後から年々研究が進み、その危険性が科学的に明らかにされてきた歴史がある。

 私たちも「ICRP2007年勧告」をよく知っておく必要がある。邦訳版が出版されており(★注①)、図書館で閲覧が可能だ。

 「1990年勧告」に比べ、被曝対象者の分類などが詳細を極めていること、事故や核戦争を想定した緊急事態時の対応が記されていることなどから、読解が非常に難しくなっているので、本稿では放射線審議会の中間報告でまとめられている要点を2点だけ紹介しておく(★注②)。


「ICRP2007年勧告」のポイント

◆放射線防護の生物学的側面

・ 確定的影響(有害な組織反応)の誘発――吸収線量が100ミリグレイ(グレイはシーベルトとほぼ同じ)の線領域までは臨床的に意味のある機能障害を示すとは判断されない。

・ 確率的影響の誘発(がんのリスク)――LNT(直線しきい値なし)モデルを維持

 100ミリシーベルト以上の被曝で確定的影響が出るということだ。確定的影響とは、脱毛、白血球の減少、白内障などの明らかな病変である。100ミリシーベルト以下だと特定の機能障害は見られないという。

 一方、放射線が遺伝子を損傷してがんを誘発する確率的影響は、閾値(しきいち)はないとするLNTモデルを想定している(★注③)。つまり、がんが発現するリスクは、放射線被曝のゼロから線量率に比例して直線的に上昇する考え方だ。すなわち、可能な限り被曝を避けるべき、ということである。



◆ 線源関連の線量拘束値と参考レベルの選択に影響を与える因子

・ 1ミリシーベルト以下――計画被ばく状況に適用され、被ばくした個人に直接的な利益はないが、社会にとって利益があるかもしれない状況(計画被ばく状況の公衆被ばく)

・ 1-20ミリシーベルト以下――個人が直接、利益を受ける状況に適用(計画被ばく状況の職業被ばく、異常に高い自然バックグラウンド放射線及び事故後の復旧段階の被ばくを含む)

・ 20-100ミリシーベルト以下――被ばく低減に係る対策が崩壊している状況に適用(緊急事態における被ばく低減のための対策)


「計画被曝」とは、作業者のことである。したがって、この項目を公衆レベルで読むときは、太字にした「事故後の復旧段階」と「緊急事態」だけが適用される。福島県内の学校の許容量20ミリシーベルト/年とは、「ICRP2007年勧告」の「事故後の復旧段階」の上限、「緊急事態」の下限であることがわかる。

 しかし、緊急事態とは、チェルノブイリで1週間から1か月だったはずで、福島のように東電の工程表ベースで3か月から6か月のような長期緊急事態はだれも想定していないだろう。6か月で済むのかどうかさえ、まだわからないのである。

 また、緊急事態の線量限界を引き上げる措置は短期的には正しいが、がん誘発の確率的影響を抑えるためには、可能な限り緊急時対応の期間を短くし、子どもの被曝許容量を1ミリシーベルト以下へ下げることが政府の義務である

 20ミリシーベルトを復旧段階の上限と考えると、現状のような事態が相当長期化すると思われる。その上限値に園児、児童、生徒を何か月も置いておけない。政府は夏休みに再検討するという。

 できれば3か月後の6月末には学童疎開まで含めた次の対策を打つ必要があろう。もちろん改善すれば状況は変わるが、現状ではなんとも見通しが立たない。対策だけは考えておいたほうがいい。

 郡山市や福島市が校庭の除染(表土を削りだす)作業を始めたのは正しい判断だと思うが、これは東電と政府がやるべきことではないか。削りだした土の搬出先など、市や県の地理的条件を越えて、東電と政府が探すべきである。

 チェルノブイリ原発事故の際、ソ連政府の対応は遅れに遅れ、牧草から牛乳にヨウ素131が混入して子どもの被害者を増やしたが、軍による学校の除染作業は早い段階から行われていた。

 なぜならば、事故の1986年、一般公衆の放射線許容量はICRP1960年基準の5ミリシーベルト/年だったからである。5ミリシーベルトを超えれば除染し、あるいは移住させていた。

「ICRP2007年勧告」で緊急事態の許容量のバンド(幅)が設定されたため、専門家によってバンドのどこを取るかで意見が割れることになったのである。現在の政府の対策は、安全側ではなく、リスクの大きいポジションを取っているように思える。

<注①~③>
★ 注①『国際放射線防護委員会の2007年勧告』(日本アイソトープ協会訳刊、2009)
★ 注② 放射線審議会の中間報告
★ 注③ LNTモデル(しきい値なし)についても、これを認めないアンチICRPの専門家がいて、市民の理解が混乱する要因となっている。つまり、低線量ならばたいしたことはないとする専門家と、低線量でもガン誘発のリスクはあるとする専門家の対立である。」

日本の震災報道への疑問―NYタイムズ

2011-05-10 14:30:15 | 原発


以下は雑誌「選択」から。http://www.sentaku.co.jp/interview/20115.php



「これでいいのか「震災報道」

マーティン・ファクラー(ニューヨーク・タイムズ東京支局長)

2011年5月号 連載〈巻頭インタビュー〉


マーティン・ファクラー(ニューヨーク・タイムズ東京支局長)
カリフォルニア大学バークレー校大学院修了。
1996年からブルームバーグ東京支局記者、AP通信社ニューヨーク本社、東京支局、北京支局を経て、上海支局長を務めた。
05年ニューヨーク・タイムズ東京支局記者、09年2月より現職。



 ---未曽有の震災を受け、メディアは異例の報道態勢を敷いてきました。
 
 ファクラー 日本のメディアの震災報道をみると、「非常に慎重」という印象だ。典型的なのが福島第一原子力発電所の事故にまつわる一連の報道だが、彼らは東京電力が発表していることを忠実に伝えようとしていた。もっといえば、政府当局や東電からの発表をそのまま伝えているだけだ。記者クラブに陣取って情報が手渡されるのを待つだけという、従来の報道パターンを踏襲しているといっていい。各紙の視点に際立った違いがないまま、ほぼ同じような内容を毎日垂れ流しているのをみれば分かる。

 ---メディア側のイニシアチブが感じられないと。
 
 ファクラー 自分から進んでネタを探して報道するという精神がほとんどない。少なくとも、当局側と対峙して、国民側について報道する姿勢が感じられない。大マスコミになればなるほど、その傾向は強い。すでに一般の市民は東電が出す情報に対し、大いに懐疑的になっている。大メディアが一般人の立場に立ったうえで事態を理解しているかどうか。日本の大新聞の紙面と比較して、ニューヨーク・タイムズの場合は日本の当局に対してもっと批判的であり、懐疑心もはるかに強い。それにはワシントンから次々と情報が入ってくることとも関係があると思うが。

 ---NYタイムズは、NRC(米原子力規制委員会)の極秘査定報告書を入手されました。

 ファクラー 事故は日本で起きているにもかかわらず、ワシントンから入ってくる情報の方が多いというのは実に奇妙な感じがする。報告書は日本の政府当局が公表しているものよりもさらに詳細で、日本の事故対応にも疑問を呈するなど、より厳しい現状認識が示されている。日本政府は福島原発の被害をレベル7に引き上げたが、それ以前から、より懐疑的な見方は海外メディアを通じて伝えられていた。その点では日本のメディアの働きはほとんど見られなかった。

 ---この震災報道を通じて海外メディアと日本メディアの違いは。

 ファクラー 一言でいえば、日本のジャーナリズムは受け身のジャーナリズムだ。日本新聞協会が出す賞をみれば象徴的だが、賞をもらう人はスクープをするのではなく、与えられる人だ。調査報道でも何でもない。記者が記者クラブの席に座り、情報源とお酒を飲みに行き、時間が経つにつれて仲良くなる。それでスクープをもらい、賞になる。米国では人がやらないことを自ら調査・報道し、それが評価される。日本では、下りてくる情報の中身を精査する方法を知らないし、知ろうともしていないのではないか。

 ---「受け身のジャーナリズム」を生む原因はどこにあるのでしょうか。

 ファクラー 読者層も含めた市民参加型社会の欠如にほかならない。日本の大メディアの問題は、東電や政府など取材対象者との関係が近すぎることだ。メディア自体がエリート層の一部になっているから、政府と敵対関係になれない社会だ。米国でもワシントンでは同様の問題を抱えているが、近すぎると記者が自ら距離を置くように、常に綱引きが行われている。この一連の震災報道を通じて、大マスコミが似たような情報を垂れ流している姿に市民側は辟易しており、不信感さえ募らせているようにみえる。憂慮すべき状況だ。


〈インタビュアー 編集部〉」

下請け労働者をだまして原発へ―続報

2011-05-10 13:18:06 | 原発
 西成の労働者をだまして原発周辺のがれき撤去に使った県の続報。

 使っていたのは東電の下請け会社。例によって責任のなすりあい。

 労働者は嫌だとは「言えない雰囲気」だったという。


「大阪市西成区のあいりん地区で、宮城県女川町での運転手の仕事に応募した大阪市の60代男性が福島第1原発で働かされていた問題で、西成労働福祉センターは9日、男性と業者に聞き取り調査し、男性が原発敷地内で約2週間、防護服を着用して給水作業に従事していたと明らかにした。

 男性は「4日目にやっと線量計が配られた」などと話している。一方、募集した業者は、混乱の中で誤った仕事内容を伝えたと釈明している。

 「宮城県女川町、10トンダンプ運転手、日当1万2000円、30日間」―。この求人情報に応募した男性は、防護服と防じんマスクを着用させられ、福島第1原発の敷地内へと放り込まれていた。

 同センターによると、男性は3月19日に大阪を出発。岐阜県で元請け業者と合流後、特に説明がないまま原発事故の対応拠点「Jヴィレッジ」(福島県広野町など)に到着。

この時点で初めて、原発敷地内で作業することに気付いたという。

 同20日からの作業は1日約6時間。原発5、6号機冷却のため、給水タンクにホースやポンプを設けて給水車に水を移し替える内容だった。

 男性によると「4日目にやっと線量計が配られた」。放射線の情報や健康被害に関する説明は乏しく「精神的ストレスで心臓がパクパクする感じ。長生きなどいろんなことを諦めた」と振り返った。その後計測した被ばく線量は基準値以下だった。

 男性を雇った業者「北陸工機」(岐阜県大垣市)は東京電力の3次下請け

 当初、「元請けの建設業者から『現場は女川』と言われ、大阪で募集した」と主張したが、9日になって「(元請けから依頼があったのは福島第1原発での作業だったが)混乱の中で(誤って)女川町の現場を伝えてしまった」と釈明した。

 一方、愛知県の元請け業者は「“福島第1原発付近で散水車の運転手”と業務内容を伝えたが、原発敷地内の作業とは言っていなかった」と話している。


 うその労働条件を提示して労働者を集めたり契約を結んだりするのは職業安定法や労働基準法に抵触する恐れがあり、大阪労働局が調査している。

 原発の現場では4月中旬ごろから「原発建屋内なら(募集時の賃金の)3倍」「退避区域なら1・5倍」など、“危険手当”ともいえる作業員の賃金体系を業者ごとに設定。

 男性も最大で募集時の条件の倍に当たる日当約2万4000円を受け取ったが「おかしいと思ったが物を言える雰囲気ではなかった。賃金も仕事に見合っていない」と話した。

武田邦彦さんの福島での講演の案内です

2011-05-10 11:59:21 | 原発


福島・講演会2つ 5月16日

1. 二本松 夕方

日時  2011年5月16日(月)

    18時30分開場 19時開演 21時終了予定

場所  ウエディングパレス かねすい

〒964-0801 福島県二本松市向作田18-11 TEL 0243-23-3000

主催 未来復興研究会
     問いあわせ先  小林 ℡ 024-923-7502



2. 福島 午後

日時  2011年5月16日(月)

14時30分開場、15時開演、17時終了予定

演題  「食と放射能」

場所  A.O.Z(アオウゼ)

福島市曽根田町1番18号 MAXふくしま4階 多目的ホール

Tel 024-533-2344

駐車場 MAXふくしま内の駐車場をご利用いただけます。

2時間無料 以降30分ごとに100円。

入場無料、事前の申し込みも不要です。ただし先着200名様となります。

サイトウ洋食店 代表 齋藤 正臣   Tel 024-521-2342