べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

あの頃きみが好きだったもの

2007年04月07日 18時50分10秒 | 慕情

あの頃きみが好きだったもの
朝もやの中の小鳥のさえずり
あの頃きみが好きだったもの
朝露にぬれた名もない野花
あの頃きみが好きだったもの
しぼりたてのオレンジジュース
あの頃きみが好きだったもの
見わたすかぎりの菜の花畑
あの頃きみが好きだったもの
むらさき霞むれんげ草
あの頃きみが好きだったもの
木漏れ陽ゆれる石だたみ
あの頃きみが好きだったもの
秋の日の霧雨

あの頃のぼくたちは
濡れて歩くことも厭わなかった

あの頃きみが好きだったもの
くっきり空をよこぎるひこうき雲
あの頃きみが好きだったもの
儚げにぼんやり浮かぶ真昼の月
あの頃きみが好きだったもの
青葉きらめくせせらぎの音
あの頃きみが好きだったもの
高台から眺めるあかね雲
あの頃きみが好きだったもの
ミレーの描いた祈りの絵
あの頃きみが好きだったもの
蒼く澄んだガラスの小瓶
あの頃きみが好きだったもの
愁いをおびたノクターン

きょう
街のかたすみの
小さな花屋の店さきで
ふと目にとまった
あの頃きみが好きだった花

あの頃きみが好きだった
あれやこれやのすべてのものが
どうしようもなく懐かしい

あの頃きみが好きだった
哀しい音色のオルゴール









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