べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

こぼれ落ちてゆくもの

2007年01月06日 12時41分30秒 | 哀愁

ふたり肩をならべて
果樹園の夢の小径を歩いていると
ふいに青く透きとおったガラスの果実が
枝からはなれて地に落ちました
熟しきった愛のように

ぼくらの愛はちょっとした油断で
簡単にこぼれ落ちてしまうのです
冬枯れのすずかけの並木の梢から
愛がこぼれ落ちてゆくように
見知らぬ異国の地から届いた絵葉書の行間から
愛がこぼれ落ちてゆくように
朝露に濡れて美しく輝く蜘蛛の巣から
そうして凍てつくような夜空から
きらきらと愛がこぼれ落ちてゆくように

ぼくらの愛はほんのちょっとしたいき違いで
あっけなくこぼれ落ちてしまうのです
けして偽りの愛ではないけれど
かといって
永久(とわ)を約束されたものでもないのですから
やさしくつないだ手と手のすき間から
そっとかさねた口唇の吐息から
愛はこぼれ落ちてしまうのです

きみのうるんだ瞳から
愛がこぼれ落ちてゆく
張り裂けたぼくの胸の傷口から
愛がこぼれ落ちてゆく
風にたゆたうあどけないきみの微笑みから
愛はこぼれ落ちてゆくのです

あんなにうるおっていた泉が枯れてゆきます
愛のように
あんなに瑞々しかった果実がしなびてゆきます
愛のように
あんなに満ちたりていた時が朽ちてゆきます
ぼくらふたりの愛のように



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