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飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

苦しまぎれ旋回理論 その11

2015-10-17 21:42:38 | ハング(hangglider)
今回はハンググライダーが旋回中に速度を落としていくと、バンクが深くなっていくという摩訶不思議な現象のお話…。


これ、意外に気がついてない方が多いんじゃないでしょうか?


これは是非試しにやってみてください。

先ずハンググライダーを旋回にいれます。

そして、片手だけベースバーの中心に手を添えてゆっくりと押し出してみて下さい。

ハンググライダーはどんどんバンクを深めながらスパイラル降下に入っていく筈です。



この動き…。

今までの理論だとどうしても説明できなかったのですが…。



例によって、この不思議なハンググライダーの動きも新説「ビロー失速説」で、やはり説明することが出来るんです!

(余談ですが、この特性を利用するとハンググライダーの低速のとられ{VGオフ時に限る}を正確に判断することができます。バンクが深くなっていくのはベースバーを引いて速度を増せば止まります。この特性を活用し、左右で同じバンク角にて何キロのスピードでバンク角が深くなるのが止まり安定して旋回するかを比較するのです。とられる方のスピードが必ず速くなります。)



この操作について、一般の飛行機で同じことをやったらどうなるかについて説明します。

まず飛行機にバンク角を与えます。

そして、エレベーターを引き速度を落とします。

すると、飛行機は速度不足により前を向いたまま横滑りに入ります。そして、横滑りにより偏向した風が垂直尾翼と上反角のついた翼にあたり、ゆっくりと機首を横滑りした方に向けながらやがて水平飛行に戻ります。

これはハンググライダーに似た形の無尾翼機でもまったく同じ動きになり、横滑りが起こった時点で後退角のある翼に左右不均等に風が当たることにより機首の向きを変え、やがては水平飛行に戻ってしまいます。

いわゆる「風見鶏効果」ですね!(苦しまぎれの旋回理論 その2を参照ください。)




ではなぜハンググライダーはそのような動きを取らずにバンク角がどんどん深くなってしまうのでしょうか?

一般の飛行機やハンググライダーに形が似た無尾翼機ですらこのような動きがみられないのです…。



この摩訶不思議なハンググライダーの特性について…。

まず「ビロー失速説」で、旋回したい方の翼の一部が「失速する」ことに注目してください。

もしビロー失速説が正しければ、バンク角をつけたハンググライダーの速度を落としていった場合、旋回時に生じる部分的な「失速」の範囲は、横滑りと速度の低下の両方の影響を受けて広がるはずです。

失速が起こる範囲が広がれば、そちらの揚力が減るのではないでしょうか?

その結果、バンク角はさらに深くなるのではないでしょうか?

このように簡単に説明出来てしまうんです…。



このハンググライダーのバンク角が深くなる現象。

よく観察するとバンク角が深くなるのと同時に、その方向への「ヨー」つまり機首を向ける力も同時に大きくなりスパイラル降下へと入っていきます。

これも翼の部分失速の範囲が広がっているのであれば、当然抗力も増えますからヨーの動きも大きくなることは当然であり、すべて理にかなっていることになりきれいに説明出来てしまうんです…。

つまり、「ビロー失速説」を使うと、このような今まで謎だったハンググライダーの動きが理解できるようになってしまうんです…。



さて、次回はなぜハンググライダーによってサーマル内での「浮き」の性能に違いが出るのか?ということについて触れてみたいと思います。








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苦し紛れの旋回理論 その10

2015-10-11 10:24:12 | ハング(hangglider)
この連載もとうとう10回目となりましたが、まだまだ行きますよ!

今回は、最小沈下速度以下で飛ぶとハンググライダーには「アドバースヨー」がなぜ発生するかを取り上げてみます。


これは意外にみなさん御存知ないのではないでしょうか?

ハンググライダーは最小沈下速度以下で飛ぶとアドバースヨーが発生します。

アドバースヨーとは、旋回しようと旋回方向に体重移動すると、旋回したい方とは逆側、つまり、旋回外側の方に機種を向けてしまう厄介な現象です。



もっとも、この現象は昔のただセールを張りまくるだけの作り方をしていた時代のハンググライダーで問題になっていたものです。

現在のハンググライダーでは露骨にはこの現象は発生せず、旋回しようと体重移動したとき実際に旋回に入るまでタイムロスはあり、このタイムロスがアドバースヨーの名残であると言えます。

しかし…。

現在のハンググライダーでもはっきりしたアドバースヨーは体験できます。

それは、機速を落とし続け最小沈下速度以下になったとき、はっきりしたアドバースヨーを体験することができるのです。

普段はまずそこまで機速を落とすこともなく、また、最小沈下速度以下の速度を維持するにはそれなりの技量が必要なため、あまり知られていないのだと思います。



さて、それではなぜハンググライダーは最小沈下速度以下で飛ぶとアドバースヨーが出てくるのか…。

この理由が今までの理論だとどうしても説明が出来なかったんですが…。

例によって…。

これも新説「ビロー失速説」を使うと、これまた簡単に説明出来てしまうんです…。


それはどういうことかというと…。


この連載の第3回目に、ビロー失速説を使ったハンググライダーの旋回プロセスを説明しているんですが、それをもう一度思い出してください。

第3回目では、ハンググライダーはビロー失速の効果により、強い風見鶏効果を持つことができ、その結果旋回に入れると申しました。





しかし、上図のように旋回に都合の良いようにビロー失速が発生するのって、実は決められた速度の範囲なんです…。

例えば、ひたすらハンググライダーの飛行速度を落とし続ければ…。



翼は失速状態に入り始めるわけであり…。

上に述べた「ビロー失速の効果により、強い風見鶏効果を持つことができ…。」というのは、あくまで翼に部分的な失速現象が都合よく現れてこそ実現する効果であるわけであり…。

翼に発生する失速範囲が大きくなってしまうと、もはや風見鶏効果を生む「部分失速」も発生できなくなる…。

だからアドバースヨーが発生するのではないか…。

「ビロー失速説」を使うとこのように簡単に説明できてしまうんです…。


この連載の第三回目で、本当ならばビローシフトにより旋回外側の翼の抵抗が大きくなること、さらに、重心位置の移動により重心位置を基準に考えた場合の旋回外側の翼の割合が増えることの二つの効果により、ハンググライダーはアドバースヨー

の動きに入りたがる…。

しかし…。

それを「ビロー失速が抑える」と、述べさせていただきました。

そのビロー失速の効果が薄れてしまうのです!

だから最小沈下速度以下で飛び、翼の失速範囲が大きくなると「アドバースヨー」が発生する。

そういう考え方もできると思うのです…。



ちなみに…。

この考えで行くと、翼に部分的な失速すら発生しないような超高速でも、失速そのものが発生しないのですから、もしビロー失速説が正しいのであれば、最小沈下速度以下での飛行と同じようにアドバースヨーが同じように発生す

るのではないか?という考えもできます。

例えば…。

大会でゴール目前でベースバーを思いっきり引き込んでカッとんでいるときなど…。

こんな時のハンググライダーの動きを細かく見てみると、実は大変操縦が難しい状態に入っていると言えます。

しかし、これだけ早いスピードになると、実際は後退角の効果が速度増加で効いてきて、ある程度はアドバースヨーを抑えてくれているようにも思えます。

これはグライダーやパイロットの体重によっても効果の現れ方がまちまちで、一概にはどのような動きになるかなんて、経験上言えないようにも思えますが、いろいろな効果が重なり合って複雑な動きになるのは確かです…。





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苦しまぎれの旋回理論 その9

2015-09-28 20:07:02 | ハング(hangglider)
翼の表面に突起があるとハンググライダーはノーコンになる…。

前回はそんな不可解なハンググライダーの現象をビロー失速説を使って説明してみましたが、突起とまではいかなくても、ハンググライダーは

前縁部分の表面の状態、具体的にはセールクロスの種類で、随分ハンドリングの軽さが違ってしまうものなのです。

たかがセールの種類が違うだけで?と、思われるかも知れませんが、確かに違いがでるのです…。

そして、このことについても「ビロー失速説」を使うと簡単に説明が出来てしまうんです…。


現在のマイラーセールは、ガラス繊維やカーボン繊維をクロスで編み込んで、それにフィルムコーティングを施したものが主流となっていま

す。

例として下のPX20セールや最近流行のテクノーラセールなどがありますが、これらは表面が細かな凹凸状

態となっており、この凹凸がゴルフボールのリンプルと同じように空気の流れの整流効果があるために、空気抵抗を少なく

してくれると言われています。



このセールの凹凸は大きな気流の剥離を防ぐことから、低速での翼の粘りをも良い効果をもたらしてくれ、実際失速速度を遅くしてくれます。

しかし…。



この凹凸のあるマイラーセールをハンググライダーの前縁に使用すると、コントロールが重くなってしまうんです…。


これは、アメリカのウイルスウイング社で生産されている「sport2」というグライダーでも同社がずっとこだわっていましたが、やはりこのメ

ーカーも前縁にマイラーセールを使うことを嫌っていましたが、最近ユーザーの声に押されてしまい同機のマイラーセール仕様を作り出

してしまいました。

かつてこのメーカーは上記のSPORT2の原型となるSPORTというグライダーを作っていましたが、このSPORTにはスタンダード、ハーフレース、フ

ルレースの三つのバージョンが存在していました。

このうちスタンダードとハーフレースを比較すると、その違いは前縁部分のセールクロスの違いのみで、スタンダードはノーマルダクロン、

ハーフレースは凹凸のあるプロフィールセールクロスが使用されていました。

つまり、SPORTのスタンダードは前縁部分に凹凸がなかったのです。

そして、この二種のグライダーはそのハンドリングに違いがあり、スタンダードの方が明らかに軽かったのです。

おそらくウイルスウイング社はその経験からSPORT2でも前縁部分に凹凸のあるマイラーセールを使いたがらなかったのでしょう。


それではなぜ、前縁部分に凹凸のあるマイラーセールを使うというコントロールが重くなるのか…。

その理由は極めて簡単なのです。

凹凸のあるマイラーセールは大きな気流の剥離を抑える効果があると申しました。

「ビロー失速説」では、旋回したい方の翼に部分的に失速が生じることで初めて旋回出来るという説…。



つまり、凹凸のあるマイラーセールを前縁部分に使うと、ビロー失速説でいうところの旋回に必要な部分失速をも抑えられてしま

う…。だからコントロールが重くなるのではないか…。


そう考えられるのです。


実は過去大変興味ある機体が存在していました。

フランス ラムエッティ社の作るコンペ機、たしかコンパクトからトップレスくらいにかけてだと記憶していますが、前縁部分の中央

付近、前回突起があるとノーコンになると申し上げたまさにその部分のみ凹凸のないノーマルダクロンを使用し、他の前縁部分は凹凸のあるマ

イラーセールにて空気抵抗の軽減と低速の粘りを狙ったと思える作り方をした機体がありました。

この機体、見事に私が唱えるビロー失速説を「そんなこと知ってたよ!」と言うように、コントロールの軽さに影響を及ぼすと思える本当中央

付近の前縁部分のみノーマルダクロンが使用されていました。

もしビロー失速説が当たっていたならば、これは大変理にかなった作り方をしていると言えるのです。




???

テブノさんは私がビロー失速説を持つ以前に、既に私と同じ考えを持たれていたのでしょうか???



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苦しまぎれの旋回理論 その8

2015-09-27 19:03:10 | ハング(hangglider)
今回は翼中央の上部に突起が出来てしまうとハンググライダーはノーコンになるというお話です。

これもとっても不思議な現象…。

ノーズコーンの後ろあたり。翼の中央の上部に突起がある場合、例えばよくあるのがルミラーが中で折れてしまっている場合など、わずか数ミ

リの突起があるだけでもハンググライダーはほとんどそのコントロール性を失ってしまいます。



突起が翼の上部にあると、大幅に揚力が落ちてしまうことは分かるのですが、ハンググライダーは場所が悪いとコントロールすら出来なくな

る…。

これが今までどうしても納得のいく説明ができなかったんです。

しかし、ビロー失速説が出来たおかげで、これも納得のいく説明ができるようになったんです…。


この現象は意外に知らない方が多いかもしれません。

翼中央の上部に突起があると、ハンググライダーはコントロール性を失ってしまいますが、ノーズコーンがはがれてバタバタしていたりしても

、やはりコントロールが出来なくなります。

簡単に体験してみたいならば、ルミラーポケットに100円ライターを一個入れてやれば、あなたはおそらく無事にランディング出来なくなると

おもいます。(ものすごく危険なので実際にはやらないで下さい。)




さて、それではなぜこのような現象が起こるのか…。

これをビロー失速説で説明してみます。

(というか、感の良い方はもうすでにお気づきと思いますが…。)


ビロー失速説は、曲がりたい方の翼の中央が部分的に失速状態になることにより旋回に入る…。という説です。



問題の翼中央の上部に突起があれば、もともとハンググライダーはその部分はほとんど失速角に近い状態で飛行しているのですから、突起を

きっかけに常時失速している状態に陥ってしまうはずです!

こうなると、もはやビロー失速説では旋回に必要なヨーの力がうまく得られなくなる…。

と、いう風に簡単に説明出来てしまうんです…。


このことは突起がある場合やノーズコーンがはがれた場合だけでなく、例えばマイラーセール機で雨粒が翼の表面についた時も同じ事がいえま

す。

雨粒そのものはとても小さなものですが、ハンググライダーの翼の中央はほぼ失速角になっていること、並びにビロー失速説が正解であるなら

ば、やはり気流の剥離のきっかけとなってコントロールが出来なくなって当然といえると思うのです…。

ちょっとここの部分は面白いと思いますので、次回は翼の表面の状態とビロー失速説を照らし合わせながらもう少し掘り下げて説明してみよう

とおもいます。。

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苦しまぎれの旋回理論 その7

2015-09-26 19:06:29 | ハング(hangglider)
新説「ビロー失速説」を使ってのハンググライダーの不思議な現象の説明の一番目は、「なぜビローが多すぎるとコントロールが重くなる

か?」でしたが、今回はその延長として「なぜ初級機はビローが大きく保てるか?」についてもビロー失速説で説明して

みたいと思います。


以前よりずっと疑問に思っていたのですが、コンペ機と初級機のビローの量を見ると明らかな違いがあります。

もちろん初級機の方がビローが大きく、短いスパンとその慣性重量の少なさも相まって、軽いコントロール性と旋回性を実現しています。

初級機、コンペ機のVGオフ時はそれぞれ最もハンドリングが良くなるビロー量が与えられているわけですが、じゃあどうして初級機のビローが

大きく保つことが出来るのか?そして、そのことが結果、軽いコントロール性が実現出来ているのではないか?という事を新説ビロー失速説で

説明してみましょう。


先ず初級機とコンペ機の一番の違いはと言うと「翼のアスペクトレシオ(縦横比)」に決定的な違いが見られます。

初級機がアスペクトレシオが低くボテ~とした形で、コンペ機はアスペクトレシオが高くスラッとしているのですが、実は

アスペクトレシオと翼の失速角には密接な関係があることをご存知でしょうか?


アスペクトレシオが低くボテ~とした形の翼は高い迎角でもなかなか失速に入りません。

対するアスペクトレシオの高いスラッとした翼は、迎角には敏感に反応し、浅い角度でも失速に入ってしまいます。

つまり、アスペクトレシオの低い初級機は、迎角が大きくても失速に入りにくく、アスペクトレシオの高いコンペ機は少ない迎角でも失速に

入ってしまうということが言えます。



ハンググライダーの場合、翼の中央部の迎角はビロー量で決まってしまいます。ビロー量が大きければ翼の中央部の迎角が大きくな

り、ビロー量が小さければ迎角が小さくなります。




このことを踏まえて考えると、初級機はアスペクトレシオが低いために失速に入りずらく、結果大きなビロー量でも翼の中央部分に失

速が起こりずらいと言えます。



大きなビロー量は、以前もご説明しましたが、後縁部分に大きな上反角効果をもたらし、このことはビロー失速説ではより顕著に曲が

りたい方の翼の部分失速を作り出すことができます。




つまり、このことがグライダーに、より顕著なヨーの動きを作り出すことにつながり、初級機は良好なハンドリングをもたらせてくれ

るのではないか?私はそう考えたのです。



コンペ機ではこの逆となり、アスペクトレシオが高いために失速に入りやすく、結果ビローをあまり持たせることが出来ないために、上図で解

説するところビローによる上反角効果も少なくなり、旋回に必要な部分失速が初級機のように起こらず、ハンドリングに悪影響をもたらせてい

るのではないか?

私はそんな考えを持っているのです。

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