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飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

宮崎駿氏の知識力に脱帽!

2025-06-04 20:08:17 | うんちく・小ネタ(absurd story)

少し前に、テレビで久々に宮崎アニメの「紅の豚」が放映されました。

このアニメ、飛行機オタクとしても有名な、宮崎駿氏の作品であるだけあって、飛行機の細かなところまで、実に忠実に

再現されています。

同じく飛行機オタクの私としては、見逃せないアニメなのですが…。

あるシーンに「違和感」を私は覚えたんです!

今夜はそんなお話です…。

 

…。して、その私が違和感を覚えたシーンがコレ↓

 

船底にある「水切りステップ」の位置が後ろ過ぎるのです!

「随分細かいな!」そう思われる方も多いと思いますが…。

飛行艇にとって、この水切りステップの位置ってとっても大事!

この位置のわずかなズレで、飛行艇は水から離れられなくなってしまう重要なものなのです!

コレ、どうしてかというと…。

水流の中にスプーンを入れると、スプーンは水に吸い付けられることはよく知られていますよね!

これと同じ原理で、飛行艇に水切りステップがないと、飛行艇が離水しようとしても、下に吸い付けられて、離水するこ

とが出来ないんです!

だから、この水切りステップって重要なのですが…。

更に、この水切りステップ位置が前過ぎた場合…。

水の抵抗の中心位置が、飛行艇の重心位置よりも前になってしまい、離水滑走が不安定になってしまいます。

逆に…。

水切りステップ位置が後ろ過ぎた場合、離水時に機首が上がらず、離水することが困難になります。また、直進安定が強

く出すぎるため、方向の修正も困難になってしまうのです。

つまり…。

水切りステップは、絶妙な位置で設ける必要があり、その位置が、だいたい飛行艇の重心位置のわずかに後ろくらいなの

です!

 

…。で、先ほどご紹介したシーンをもう一度見てください。

水切りステップが、ちょっと後ろ過ぎに思えませんか?

これに私は違和感を覚えたのです!

 

でも、この違和感、飛行機オタクの宮崎氏がこんなミスをするものかと、もう一度よ~くよ~く考えてみると、直ぐに納

得することが出来たんです!

考えたら、ポルコロッソの愛機「サボイア」の主翼には「後退角」が持たされているんですよね!

後退角とは、ジェット旅客機の主翼のように、後ろに翼が後退していることを言います。

この後退角のある飛行機は、その風圧中心位置もその後退角に従って、後ろに移動します。

そして、それに伴って、重心位置も後ろに移動してしまうんです!

 

これで、上のシーンの水切りステップの位置の違和感の謎が解けました!

宮崎氏は、この後退角の分も考えて、ちゃんと水切りステップの位置も、重心位置の移動に従い、後ろに移動させていた

んですね!

…。恐るべし、宮崎駿氏…。

 

ポルコロッソの愛機サボイアは、劇中では「戦闘艇」ということで紹介されていますが…。

実はこの飛行艇、モデルとなった飛行艇が実在しています。

それがコレ↓

マッキM33という飛行艇です。

確かにポルコロッソの愛機サボイアと似ていますよね!

この飛行艇、当時行われていた、シュナイダーカップと言われる、飛行艇、水上機のスピードを競うために作られたもの

です。

このシュナイダーカップは、多額の賞金が賭けられていたため、多くの人々がこの競技に参加していました。

上のマッキM33は、サボイアのように後退角がありませんが、これにもちゃんとした宮崎氏の思惑が見えてくるんで

す…。

ジェット旅客機の後退角は、音速近くでの抵抗を減らすための物なのですが…。

サボイアの飛行する速度では、まだ音速には遠く及ばないので、これと同じ理由で後退角がもたらされてはいません。

 

では、一体何のために、サボイアには後退角があるのかというと…。

これは、私の想像なのですが、サボイアはこの映画では、戦闘艇として設計されたことになっています。

戦闘艇にとって重要なことの一つに、「敵機の視認性」があります。

特に、上方から攻撃してくる敵機は危険です!このような敵機は少しでも早く認識する必要があるのですが、このことを

考えて、宮崎氏は戦闘艇のサボイアには、後退角を持たせたのだろうと私は考えています。

主翼に後退角があれば、パイロットの上方視界は一気に改善されます。

実際、第一次大戦に存在した複葉機「タイガーモス」の上翼には、この理由で後退角が持たされています。(タイガーモス

と言えば、同じ宮崎アニメの「天空の城ラピュタ」でも、ドーラ一家が乗る飛行船の名前として登場していますよね!)

つまり、飛行機オタクの宮崎氏は、サボイアを戦闘艇の設定としたがため、リアルさを出すために、その主翼には視認性

を上げるために後退角をどうしてもつけたかったのだと思います。

そして、それに従ってサボイアの重心位置も後ろになってしまうために、私が映画を見て違和感を覚えた、水切りステッ

プの位置が後ろ過ぎることも、実はちゃんと重心位置の移動に合わせた、道理にかなったことだったんですね!

 

これが分かった時、宮崎氏の知識力、想像力に、私は本当、恐れいってしまいました!

ちなみに、ついでなので、下のことについても解説しておきますが…。

 

皆さん、サボイアの操縦席の横につけられたこの風車、なんだと思います?

コレ、実は燃料ポンプなんです。

当時はバッテリー重量などが重くなったため、燃料ポンプは電動ではなく、こんなプロペラ駆動のポンプを使っていたん

ですね!

サボイアのエンジン始動時は、まず、プランジャーポンプをシュコシュコっと何度か押して、燃料タンクに空気圧をかけ

て、燃料をエンジンまで導きます。

(紅の豚のシーンでも、エンジンが空中で止まりかけたときに、ポルコロッソが一生懸命何度も押していたポンプがあり

ましたよね!あれがプランジャーポンプです。)

そのあと、イナーシャ―と言われるものを回転させます。

このイナーシャー、慣性始動装置とも言われ、円盤を高速回転させて、一気にエンジンにつなぎ、エンジンを回して始動

させていました。

現在の自動車のセルモーターと同じ役割のものですね!

これもバッテリー云々の重量のために、こんなものを使っていました。

 

こんなところも、じつに忠実に再現しているところが、まさに宮崎駿氏のスゴさでしょうね!

 

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (甲府の人)
2025-06-07 16:33:14
凄いね。それなら風立ちぬの細部なんかにも
相当なこだわりがあるんだろうな。
返信する
Unknown (石岡のみっちゃん)
2025-06-07 20:04:21
甲府の人さん、コメありがとうございます!
「風立ちぬ」も、言われる通り、凄くリアルなんですよね!私も堀越二郎の関連書物は一通り読んではいますが、あの映画はとてもリアルなものでした。
ブログ、もうすぐ完全にはてなに引っ越ししますが、これからもよろしくです!!
返信する

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