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脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

我那覇問題から増島記事問題

2008年05月29日 | 脚で語るJリーグ
 
 何とも低調で、無難に日本代表がその場しのぎのタイトルを獲るべく催行されたキリンカップも終わり、ライブドアスポーツ上の杉山茂樹氏のコラムが、「ド」の付くほど強烈に岡田監督体制の退屈なサッカーを批判していた。
 と思えば、今度は我那覇問題で、スポーツライターの増島みどりさんが“THE STADIUM”上にになんとも希少なJリーグの光景を引き合いに出して、“アンチドーピング”に対する原則の見直しを訴えている。それにしても、増島さん、どういうつもりなのか。以下文章は“THE STADIUM”より抜粋する。

 「翻ってJリーグを見ると、恐ろしい光景は頻繁に目撃できる。選手がゴールを奪って興奮のあまりサポーター席に駆け寄る。そこでサポーターは「ご苦労さん、ありがとう」という親愛を込めてドリンクを手渡し、これを選手がおいしいそうに、連帯の証として飲む。オリンピックでメダルを狙う選手たちが見れば、仰天して倒れてしまうような光景はJリーグの日常である。
もし、試合後の検査で禁止薬物が選手の尿から検出された場合、サポーターの善意に疑いがかかるかもしれないことを、選手もサポーターも全く考えていないという能天気な光景だ。

「ミックスゾーン」で取材している記者が、選手に親切心のために飲み物を渡しているのを目撃することもあるし、「これ大好きな何々ですよね」と言って、お菓子を差し入れする記者も見たことがある。もし選手の尿から何かが出れば、一部の国では記者が容疑の一部として拘束されることもある。これらは、規定に禁止行為と書かれてはいない。しかし、広く「ドーピング行為」にあたるということを、今回の問題で考えてもいいと思う。」(THE STADIUMより抜粋)

 ミックスゾーンの件はまだ分かるが、それにしてもいつからJリーグで、ゴール後にサポーターよって手渡されたドリンクを選手皆で“連帯の証”として飲む光景が見られるようになったのだろうか。
 増島さんは、今回の我那覇の点滴を“ドーピング規定に違反する行為”と見なしたJリーグ寄りの立場に傾倒しているが、今回の寄稿の趣旨は、サンケイスポーツが我那覇問題の第一報道を我那覇本人が記者に対する発言で拾ったことによる、極めて偶発性の高い“報道によって取り上げられることとなった選手の認識の甘さ”を指摘することと、“アンチドーピングの原則”のはずだ。そこにこれだけ希少性の高いJリーグの場面を引き合いに出して論じるのは、あまりに危うい誤解を招きかねない。現にネット上では、「捏造記事」とも書き干されているが、筆者自身も年間100試合近い公式戦を現場観戦するにあたって、こういった場面には出くわしていないから、記事からかなりの違和感を感じる訳だ。

 “能天気な光景”とまで書いておられる増島さんだが、いくらこれほど、記事の内容を訴えるための修飾引用だからと言っても、Jリーグ文化へのリスペクトに欠ける気がしてならない。Jリーグに、サッカーに関心の無い人たちがこの記事を読んで、感じてしまうことへの影響はあまりに大きいはずだが。そういう意味では、今回の増島さんの記事の方がよっぽど“能天気”と言えるのではないだろうか。

 個人的には、今回の我那覇問題は、全クラブのチームドクターから連名でドーピング規定違反の医療行為には当たらないと質問状を出した時点で、全くリーグ側とクラブ側の共通認識ができていないことを晒すお粗末な展開だったと思うし、それに結論が出るまで静観を決め込んでいたが、さすがにこの増島さんの記事には一人のJリーグファンとして、糾弾せざるを得ない気持ちに駆られた。
 確かに規定をきっちり決めて、それを共有し、違反が無いように努めるということが健全であり、理想だ。そういう意味で、今回の我那覇は少し引いた貧乏クジの程度が過ぎてしまったようで、大変可哀想ではあるのだが、世界基準のドーピング規定すらJリーグというプロスポーツ興行の場において、これだけの混乱を招くのだから、日本はまだまだスポーツ後進国ということ。世界のメインストリームから乗り遅れているのかもしれない。

 少し度が過ぎた今回の記事、しかし注目を寄せて名前を売るという意味では抜群のオーバーアイデアではある。


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2 コメント

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大切なこと (high-turbulence)
2008-05-30 01:01:57
同感です。増島氏の記事には非常に違和感を覚えました。
我那覇選手の件は、日本のサッカー界、それは選手やクラブや協会やサポーターなどなど、全てのサッカーを愛する人にとって大切なことと思います。
我那覇選手の勇気やそれに関わった多くの人達の努力を讃えたいと思っています。
それだけに、増島氏の記事は許せない思いが強かった。サッカーを本当に愛する人の言葉ではないと思いました。
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Unknown ()
2008-05-30 15:22:25
>high-turbulenceさん
コメントありがとうございます。

本当にJリーグ寄りのスタンスで、増島さんの記事にはただただ残念です。
今回の件では、“規則”に縛られたリーグ側が各クラブとドーピングに繋がる医療行為やドーピングそのものに関しての情報共有や配慮不足を露呈しました。
それを棚に上げて、あれほど白黒つけることに意地になるのも呆れるばかりですが、その自らの足元を見ずに、一選手である我那覇選手へのフォローが無さ過ぎます。

今回の記事は非常にそんなJリーグの情報操作の息がかかったとも思われてもしょうがない、実に歪曲した記事だと言えるでしょう。

我那覇は良く頑張りました。個人的にも好きな選手なので、これからリーグを見返して欲しいですね。
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