脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

カンスタ、熱狂 -岡山vs熊本-

2011年08月07日 | 脚で語るJリーグ
 震災の影響で延期されていたJ2第3節は、5日5試合が行われ、岡山・kankoスタジアムでは15位・岡山が8位・熊本と対戦。試合は後半に岡山が怒涛の4得点で4-0と快勝した。

 2007年の地域リーグ決勝大会で岡山のJFL昇格を見届けて以来、毎年kankoスタジアムには足を運んでいる。何しろ「ファジフーズ」と題されたスタジアムグルメは、バリエーションも豊富で美味しいものが多く、その雰囲気はJFL時代からJリーグさながらといった雰囲気だった。J参入後も岡山の認知度は順調に向上しているようで、この2シーズンは1万人を時に超えるほどの観客動員を記録している。グルメだけでなくスタジアムも良い雰囲気だ。この日は、岡山市内で花火大会があったらしく、キックオフ前に岡山サポーターさんから話を聞くと、やはり少ないらしい。それでも5,455人が会場に訪れていたのはなかなかのものである。

 
 岡山のサポーター席には「Forever 松田直樹」という横断幕が。

 岡山は、ここまで5勝5分8敗の15位。今季からかつて広島で活躍したFWチアゴが加わり、明らかに得点力はアップした。3連敗の後に直近5試合では2勝2分1敗と悪くない数字。今季は北九州に2連勝、栃木、徳島にも負けておらず、上位陣には相性が良いようだ。6位・札幌から19位・富山までがわずか勝点11ポイント差という混戦状態の中位陣だけあって、1勝するだけで大きく順位は変動する可能性もある。この日の先発にはGK真子をはじめ、DFに近藤、植田、ストヤノフの3バックに、竹田、千明のボランチと両翼に澤口、小林、そしてトップ下の位置に石原、臼井、1トップにチアゴという陣容でホーム5試合ぶりの勝利を狙う。
 一方の熊本は、6勝8分4敗の8位という状況だが、なんとこの5試合で3分2敗と勝利に恵まれていない。特に7/24の22節・FC東京戦では0-5と大敗。その翌週も湘南に0-1と敗れ連敗中。なんとかここで復活の1勝を挙げておきたいところ。この日は前節の湘南戦から先発5人を入れ替える荒療治。G大阪から期限付き移籍加入直後の菅沼センターバックに抜擢し、チョ・ソンジンとコンビを組ませ、サイドバックには右に市村、左に原田。そして中盤はエジミウソンの1ボランチにトップ下を武富が務め、サイドに根占、片山、前線は長身の長沢、宇留野というコンビで試合に臨んだ。

 
 試合前にここでも松田直樹のための黙祷が捧げられる。

 試合は、前半から両者互いの出だしを窺う慎重な姿勢。熊本は高さのあるエース・長沢をターゲットにしっかりエジミウソンを軸にしたポゼッションを展開。あまり全力で来ない岡山のプレスの甘さを突いてボールを回した。岡山は決してエリア内までは持ち込ませないものの、序盤からなかなか熊本陣内の深い位置まで攻め込めない。臼井、小林、澤口のドリブルでカウンターから好機を見出す。
 17分に、岡山の守備からのこぼれ球を拾った熊本・根占が強烈なシュート。ここは岡山・GK真子がセーブするが、そのこぼれ球に長沢が反応していたところを岡山・DF植田が上手くクリアした。この場面が前半の最も大きな決定機だった。ただ、このピンチで目が覚めたのか次第に岡山がパスを繋げるようになってくる。熊本にはしっかりチアゴをマークされており、ここへのチャンスボールをいかに入れられるか、またはチアゴに頼らずいかにチャンスを作るかが岡山のタスクであった。22分には左から小林のクロスをチアゴがヘッドで熊本ゴールを脅かす。41分には澤口の右からのアーリークロスにチアゴがダイビングヘッドでゴールを狙うものの、前半は互いに譲らず0-0で折り返す。

 
 岡山陣内へ攻め込む熊本・宇留野と守る岡山・ストヤノフ。

 
 マッチアップする熊本・片山を潰しにかかる岡山・澤口。

 
 熊本のFW長沢はここまで6得点。4試合ぶりにゴールを狙いたい。

 両チームが膠着状態をいかに脱するか、注目の後半戦だったが、試合は1分もせぬ時間帯に動いた。キックオフ直後に熊本陣内まで深く攻め込んだ岡山は、熊本・菅沼のクリアボールを岡山・MF竹田がエリア前からダイレクトでシュートを決める。熊本・GK南は一歩も動けず。この豪快なシュートが岡山をホームで久々の勝利に導く起爆剤となる。

 
 後半開始直後、竹田が決めて試合が動く。
 千葉とジェフリザーブズを行き来した苦労人。

 
 熊本のDF菅沼とルーキーの岡山・MF石原が競り合う。

 
 熊本のエジミウソンの存在感はさすが。

 熊本は、後半開始からFWファビオを投入。49分には左からのクロスにヘッドで合わせて岡山ゴールを狙うが、惜しくも決められず。前半と同じくポゼッションで組み立てたい熊本だったが、徐々に良い形で岡山がボールを奪える時間が増えてきた。それでも1点を追いかける熊本が試合のペースを握る岡山としては我慢の時間帯は続く。
 69分に岡山は臼井に代えて久木田を投入。シーズン前に東京大学出身のJリーガーとして話題になった選手だ。今季新加入でここまで2得点と結果も残している。すると、この影山監督の采配がすばり的中した。石原の浮き球の折り返しをチアゴがエリア内で胸で落とすと、久木田はファーストタッチでこれをバイシクル気味にダイレクトでボレーシュート。これは実に見事にゴール右隅に決まる。百戦錬磨のGK南も届かないギリギリの絶妙なコースだった。

 
 
 
 このチアゴの落としを久木田が見事に決める。
 kankoスタジアム熱狂。

 勢いに乗った岡山は、72分に石原が熊本エリア内まで強引な突破を仕掛けるが、熊本に合流したばかりの菅沼がこれを必死のクリア。しかし、この直後のストヤノフによる左からのCKをチアゴがヘッドで決めて3点目を奪った。

 
 
 
 
 ストヤノフ⇒チアゴのホットラインが炸裂。
 岡山の猛攻が止まらない。

 15位に甘んじているとは思えない岡山の得点力。時間を経過すればするほど、前半のおとなしさに比べてその勢いを増しているようだった。77分には自陣で相手のミスを突いて、ストヤノフが30mほどドリブルで攻め上がるなどこの日の岡山はホームスタジアムを盛り上げる。しかし、まだ岡山の「劇場」はこれで終わりではなかった。
 後半終了間際のアディショナルタイム。ここにきて岡山は熊本陣内で冴えあるパスワークで相手を翻弄。ボールを奪われない。そして何本もパスを回した最後は小林からストヤノフにボールが渡る。するとストヤノフはそのままするするっとエリア前までドリブルで持ち込むと左足を一閃。豪快なシュートはゴール左上に決まって岡山がダメ押しの4点目を挙げた。

 
 
 ストヤノフが魅せた最後のシュート。
 J3年目、ファジアーノ岡山にこの男の存在は大きい。

 試合は思わぬ大差がついての決着。岡山がJ参入以来初となる4得点での快勝だった。しばらくホームで勝てていなかっただけに、この試合はチームの歴史に残る大きいものになるだろう。来季のJ2で昇格レースを演じられるチーム作りへ向けて着々と上昇傾向にある岡山。次節は前回0-4と大敗を喫した東京V戦、この試合でも真価が問われそうだ。
 対する熊本は、最後まで攻撃面で噛み合わず、敗戦を喫したが、この試合でも5人が入れ替わるという苦心中。来週は大分との九州勢対決で負けられない試合になると思うが、昨季の熊本からすればまだまだこんなものではないはず。南、エジミウソンら経験者を揃えるだけに、この正念場をいかに乗り越えるか期待したい。途中加入後すぐに先発に抜擢された菅沼も少しミスが散見されたが、元来フィジカルに長けた基本技術の高い選手。メンバー定着に一戦一戦が勝負だ。

 
 ホーム・カンスタは最後まで熱狂ムード。
 なんとも素晴らしい光景だった。


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