脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

08’ACLアウェイ道中膝栗毛② メルボルンビクトリー戦②

2008年04月11日 | ACLアウェイ道中膝栗毛
 
 オーストラリアが秋を迎えるこの時期、メルボルンの気候は非常に過ごしやすい。日中は26度ほど、夜間は15度ほどに落ち込む理想的な寒暖の差である。かつてキャンベラが首都になるまでの暫定首都だった面影か、新旧の建築物が多く混在している。移民の街らしく、目まぐるしく様々な人種の人々が往来し、ストリートごとにその景色を変える。中国人、韓国人、インド人、ギリシャ人、日本人などその顔ぶれも多種多様だ。
 格安航空券のレギュレーションで土曜までの滞在を強いられているわけだが、決して居心地は悪くない。宿泊しているバックパッカー宿はオージー以外の旅人たちで常に賑わい、トラムと列車の騒音が窓を閉めても飛び込んでくる。深夜の廊下はどこからか漂ってくるマリファナの香りで充満するダーティーさも併せ持つ。そんな中、一昨日のACLのゲームがここメルボルン、そしてオーストラリアでどう映っているのか探ってみた。

 街を歩いていても、この街からほとんどサッカーの匂いはしない。オージールールズ(AFL)とラグビー、クリケットが人々の関心事としては専らだ。グッズショップも歩いているだけでは目に付くのはAFLのものばかり。しかし、サッカー雑誌や新聞などを収集しようと物色すると、やはり試合のことを聞いてくる。メルボルン市には約365万人の人々が暮らす。あの日、テレストラドームに集まったオージーのファンたちは郊外からも多く駆けつけたに違いない。
 スタジアムでの彼らは非常に良い人柄の人間が多かった。暴力的挑発とは程遠い紳士的な対応をしてくれる方が多く、試合前には「ここまで良く来てくれた。お互いに良いゲームにしよう」と声をかけてくれた人もいた。盛り上がり方についてはオージーらしい。皆で突然の大合唱が始まり、その日本人より遥かに低音の効く歌声は太鼓などの鳴り物を必要とすることなくスタジアムにこだまする。イングランドのスタイルだ。コーナー側に移動を強いられた時には彼等の“Who are you?”コールが容赦なく襲ってきた。
 ゲーム中には、シドニーFCのサポーターが賛同してくれた。メルボルンビクトリーとは犬猿の仲。マフラーを掲げた彼は、ビクトリーの負けげームを観てさぞかしご満悦の様子だった。

 翌日の地元の新聞に目を通すと、全国紙“THE AUSTRALIAN”をはじめ、メルボルンを中心に発刊する“Herald Sun”も共にビクトリーの敗戦を嘆く内容だったが、まだ可能性を無くしたわけではなく、次の大阪での一戦に負けられないともとれる内容。ただ、この一戦が彼らにACLの厳しさを叩き込んだのは間違いない。特に“Herald Sun”紙に関しては、当日の紙面プレビュー記事ではキープレイヤーに遠藤の名前と、2-1でビクトリーが勝利すると書かれていた。そして翌日の記事では、GKの出来が両チームの命運を分けたとも言える内容であった。“Great contest,But it's don't ask goliies”と題して、藤ヶ谷と相手GKテオクリトスの比較について書いている。そして、上背には自信のあったビクトリーに対して、特にブラジル人ストライカーが高さで勝っていたと。そう、バレーのことだ。また、二川のミドルシュートも絶賛されている。
 しかし。揃えて両紙が訴えるのは、日本でも屈指の攻撃力を誇るガンバ大阪とACLの舞台で戦えることはAリーグの発展のためには良いことだということ。まだプロリーグができて間もないオーストラリアにとって、これまで閉鎖的だったサッカーシーンがこのアジアに参入しての戦いでレベルアップができるということを口を揃えて書いている。
 新聞で最も取り扱い方が大きかったのが、地元メルボルンの“THE AGE”である。スポーツ面の見開きと表紙を使ってこの試合をレポート。表紙はアルソップと競り合う橋本の写真が採用されている。辛口で定評のある“THE AGE”は“Reality of Asian competition hits home as Brazilian stars lead stunning raid”と題して、バレーとルーカスというブラジル人選手のクオリティがG大阪の攻撃を導いて、我々にアジアでの競争における現実を突きつけてくれたというような報道内容である。ここでも特に書かれているのは、その体躯的長所をふんだんに見せつけたバレーである。そして、やはりアジアでの戦いを通して、現実に置かれているオーストラリアサッカーのクラブ単位でのレベルを実感する内容だった。
 帰国してから、第2戦のプレビューも兼ねて、これらの新聞はゆっくり更なる解読をしようと思う。まぁその紙面のほとんどがオージールールズの内容なのだが。

 しかし、オージーは本当に気さくだ。道を聞くだけで会話が弾む。日本人のシャイぶりを改めて実感する。それはスタジアムにおいても同じく。自己表現に関しては、内輪で盛り上がるだけの日本人と比べてもその国民性において一日の長がある。サッカーに対する認識に関してはまだまだ発展途上だが、おそらく移民の街らしく、そういった欧州テイストは十分。様々な景色を楽しめるこの街をACLで訪れる機会があるのは幸運なことだ。

 そういったことを肌で感じることができるのもこのサッカーという世界共通のスポーツにおける醍醐味であろう。

 今回は現地在住の日本人の方に本当にお世話になった。今日一日共に行動した方も今夜タスマニア島にフェリーで移動し、向こうで仕事を見つけるという。農場での力仕事は大変だが、効率的に稼げるようだ。ワーキングホリディや語学留学の日本人がたくさんいるこのメルボルンには、G大阪を勝たせる素地は十分にあったのだろう。例え、圧倒的に人数で負けたが、声援で負けることはなかったのだから。


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